仮面の下には冷笑を
- 1 名前:ニッケ 投稿日:2007/09/15(土) 00:27
- 初めましてニッケと申します。
藤本さんと柴田さんを主演に物語を進めていこうと思ってます。
一応登場人物は何名か増える予定です。
更新はゆったりペースかもしれませんが、放置だけはしないよう頑張ります。
かなりの未熟者ですが、どうぞよろしくお願いします。
- 2 名前:ニッケ 投稿日:2007/09/15(土) 00:28
- 表と裏ってどっちがどっちだか分かる?
あんた達が信じきってる表と裏は実は逆でした。
とか言わなきゃ、きっと誰も気付かないんだろうね。
- 3 名前:ニッケ 投稿日:2007/09/15(土) 00:30
- 自分で言うのも何だが美貴は成績優秀で運動神経抜群だ。
しかも教師達の言うことは必ず守るっていう最近では稀に見るいい子ちゃん。
でもね、所詮それは演じているだけの表の顔でしかないんだよ?
- 4 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/15(土) 00:41
- 放課後、家に帰る生徒もいれば部活に励む生徒もいる。
しまいには校舎の裏で隠れて煙草を吸う生徒もいたりするのだろう。
そんな中美貴は教師に呼ばれ教員室に向かっていた。
どうせ今回の試験で”また”学年トップを取ったことだろう。
美貴がこの高校に入学してから2年間トップの座を誰にも譲ったことはなかった。
教師陣曰く「藤本美貴は学校始まって以来の天才」だそうだ。
正直、そんな事どうだっていいんだけどね。
だってまだ実力の半分も出しちゃいないんだし。
- 5 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/15(土) 00:49
- 教員室へ着くと美貴を呼び出した教師の元まで行く。
すると、
「凄いぞ藤本!今回の学期末試験もまたお前がトップだ!」
嬉々として教師はそう告げた。
やはり美貴の予想した通りだった。
「ありがとうございます。次もまたトップ目指して頑張ります!」
なんてね。嘘。
頑張る必要なんてどこにもない。別にトップになりたいわけじゃないから。
ただ、全部分かるから全部解いた。
そしたら必然的に美貴がトップになっただけ。
つか簡単すぎんだよ。あんなの誰だって解けるだろ。
本当、どいつもこいつもみんな馬鹿ばっかり。
- 6 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/15(土) 00:54
- 目の前の教師は下品な笑顔で嬉しそうにまだ何かを喋っている。
美貴は見た目では分からないが内心ちょっと、いや。かなりイライラしている。
なるべく早くこの場から離れたい。
「先生。今日は用事があるので失礼しても宜しいでしょうか?」
「あ、あぁそうか。すまんな呼び出したりして」
「いえ。では失礼します」
丁寧かつ綺麗なおじぎをして教員室を後にした。
“いい子”を演じれば演じるほどストレスが溜まっていく。
そろそろストレス発散させないと精神的にもキツイ。
はぁ、と一つ溜め息を零し
「今日あたり行くか」と誰にも聞こえないように小さな声で呟いた。
- 7 名前:ニッケ 投稿日:2007/09/15(土) 01:02
- すいません。
2と3のタイトル間違えましたorz
とりあえずここまでです。
お目汚しになっていたら申し訳ないです…。
次回の更新はいつになるか分かりませんがなるべく早く書きます。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/15(土) 07:27
- 珍しい組み合わせですね。
柴ちゃんがどう絡んでくるのか楽しみです。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/16(日) 13:32
- おおー
なかなか面白そうですね
次回たのしみにしています
- 10 名前:ニッケ 投稿日:2007/09/17(月) 21:51
- >>8,>>9
レス有難うございます!
期待に添えるよう頑張りたいと思います。
- 11 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/17(月) 21:54
- 完全に太陽が沈み月明かりが地面を照らす頃。
美貴は比較的動きやすいジーンズと黒のシャツに着替え、そして黒の帽子を目深にかぶると街の方に向かって歩き出した。
さぁ、これからが裏の美貴の時間だ。
- 12 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/17(月) 21:56
- ある路地裏にひっそり存在する『Romans』というバーに美貴は入った。
「こんばんは〜」
「おぉ!ミキティじゃん!久しぶりだな!!」
威勢良く迎えてくれたのは矢口さん。
小さくてとても大人には見えないが、一応この店のマスターだ。
そして、美貴が信じられる唯一の人間。
美貴がここに初めて来たのは二年前。
そのときから矢口さんにはずっと世話になっている。
うん、凄くいい人。
だってまだガキだった美貴をすんなり受け入れてくれたわけだし。
「久しぶりって言っても一週間前ですよ?」
「アホ!一週間もだ!」
「まぁ長いと言えば長いですね」
「その間毎日お前目当ての客が来てたんだからな!」
「あ、やっぱり来てましたか」
「分かってんなら早く来いよ!今日も来てるぞ。ほら」
そう言って矢口さんは店の奥を見た。
振り返って見るとそこには金髪の派手な男が座っていた。
- 13 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/17(月) 21:59
- 実は美貴、潰し屋をしていまして裏では結構有名な人なんです。
最初は人を殴るのが楽しいっていう不純な理由でやってたんだけど。
なんか気が付いたら仕事にまで発展していた。
儲かるからいいんだけどね。
一応矢口さんに了承を得てこの店を仕事の受けあい場として使わせてもらっている。
「あいつを潰してくれ」と依頼され潰した人間は数知れず。
挙句、ヤクザまで潰したもんだから「悪魔のミキ」と呼ばれ恐れられている。
それでも依頼者は後を絶たないものだから驚きだ。
「ミキティさ、あんまり危ないことすんなよ?」
「大丈夫ですよ。美貴は誰にも負けたことないんですから」
まだ何か言いたげな矢口さんに少し微笑んで男がいるテーブルへ行った。
- 14 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/17(月) 22:01
- 「お待たせしました」
男は顔を上げ訝しげに美貴を見た。
「もしかしてお前が悪魔のミキ?」
「そうですけど何か問題でも?」
威圧感たっぷりに鋭く睨み付けると男は
「い、いえ!問題なんてないっす!」と首を横にブンブン振った。
「で、用件は?」
「こいつを潰してほしいんすよ」
- 15 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/17(月) 22:03
- 一枚の写真がテーブルの上に置かれた。
意外なことにその写真に写っていたのは女だった。
「名前は確か吉澤ひとみ。
最近現れたくせに好き勝手暴れるから迷惑してるんすよ。
俺の仲間も何人かやられてて、もう我慢の限界っす!」
「ふーん。まぁ報酬次第ですね」
「…五万くらいでいいすか?」
今五万って言ったよなこいつ。ふざけてんのか?
「お前美貴のこと馬鹿にしてんの?誰が五万で引き受けるかっての」
「じゃ、じゃあ!十万でいいすか!?」
「もっと出せねぇのかよ。内臓売ってでも金作ってこい」
あれ、今美貴さらりと怖いこと言った?
なんかドン引きしてるし。
「そ、そんな…無茶苦茶っすよ!」
「うーん。じゃあ聞くけど、その吉澤って奴は強い?」
唐突にそう聞かれた男は、へ?と呆気に取られていた。
「強いのかって聞いてんだけど」
「あ、あぁ!半端なく強いっす!この辺じゃ誰も敵わないんすよ!!」
- 16 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/17(月) 22:04
- へぇ、そんなに強いんだ。
じゃストレス解消には丁度いいかも。
「んじゃ特別に十万で手を打ってあげるよ」
はい、と男に手を出した。
そしたら何故か物凄い笑顔で握手をされた。
いやいや、美貴は握手を求めたわけじゃないんだよ?
「バカ違う、金だよ。前払いでなきゃ動かないって知らないの?」
「あ!すいません!金取ってくるんでちょっと待ってて下さい!!」
そう言うと男は店を飛び出して走って行ってしまった。
- 17 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/17(月) 22:06
- そっかぁ。強いのか。
なんかワクワクしてきた。
弱いやつばっかりで最近退屈してたんだよね〜。
「お待たせしました!!」
はやっ!今出て行ったとこじゃん。
「えらく早かったね」
「酔っ払ったオヤジ連中がいて俺が金くれっつったら喜んでくれたんす!」
おー爽やかな笑顔だねぇ。
そうかそうか。いい人もいるもんだな。
ってそれ脅して奪ってんじゃん。
…まあいっか。金は金だし。
「毎度ありぃ」
さて金も受け取ったことだし仕事に向かいますか。
「矢口さん明日また来ますね」
「おう!待ってるぞ!んじゃ気を付けろよ〜!」
- 18 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/17(月) 22:12
- 店を出たあと美貴は吉澤ひとみを探していた。
この美貴としたことが場所を聞くことを忘れていたのだ。
「めんどくせー」
そう言ってキョロキョロしていたらナンパしている気障な奴が美貴の視界に入った。
うわ、今どきナンパかよ。
そう思って目を凝らして見てみると今まさに探している人物だった。
ははっ!美貴ってばツイてるじゃん!
よっしゃ、あとは声かけて潰して終わりだな。
「おいそこの吉澤ひとみとかいうやつ」
「あ?お前何?人が楽しくナンパしてんのに」
うわぁ。めちゃくちゃ不機嫌そう。
ナンパの被害者を見ると驚きと不安を詰め込んだ目で美貴を見ていた。
そんな彼女を無視して美貴は吉澤に向き合う。
「ある人にあんたを潰すよう依頼されたんだよね」
「はっ!お前がよしざーを潰す?出来るもんならやってみな」
- 19 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/17(月) 22:19
- 吉澤は挑戦的に鼻で笑うといきなり殴りかかってきた。
あらら。喧嘩っ早いのね。
こっちもストレス溜まってんだし思い切りやらせてもらおうかな。
飛んでくる拳を難なくひらりと避け美貴も蹴りを繰り出す。
しかし吉澤の髪を掠っただけの攻撃となった。
ありゃ、避けられちゃった。
今までこの蹴りを避けきれた奴はいないのにな。
依頼者が強いと言ったのはあながち間違いじゃなかった。
だけど美貴と比べれば弱いということに変わりは無い。
- 20 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/17(月) 22:22
- 喧嘩が始まってから何発も拳を繰り出してくるが美貴には一掠りもしない。
それどころか軽く息切れまでしてる。
「くっそー!何で当たんないだよっ!!」
「無闇に拳振り回したって美貴には当たらないよ」
言うが早く、美貴の拳は吉澤の顔の中心を捉えた。
バキィッ!!と豪快な音が聞こえる。
これで終わりかな?そう思って倒れた吉澤を見る。
何が起きたのかさっぱり分からない。
そんな感じで気を失ったようだ。
折角楽しめると思ったのに、つまんないの。
仕上げに腕の一本でも折っとくか。
「…藤本美貴!」
吉澤の右腕目掛けて足を振り下ろそうとしたとき
ナンパされていた人が美貴の名前を叫ぶように言った。
- 21 名前:ニッケ 投稿日:2007/09/17(月) 22:26
-
以上、更新しました。
- 22 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/18(火) 00:46
- 極悪キャラが良いですね
- 23 名前:Black 投稿日:2007/09/22(土) 17:28
- 期待大ッス!!
- 24 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/22(土) 20:35
- >Black
大ッス!!じゃなくて。(苦笑
ageないように。
- 25 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/25(火) 16:25
-
寸前でピタリと足を止めそちらを見た。
何故この人は美貴のフルネームを知っているんだろう?
裏の世界で知ってる人はいないはずなのに。
「あんた誰?何で美貴のこと知ってんの?」
「知ってるも何も、私の学校じゃ知らない人なんていないよ」
学校ってまさか。何やら嫌な予感が。
「もしかして美貴と同じ学校だったりする?」
「うん。それにしてもあの優等生がこんなことしてるなんてね」
ああ。完全に油断していた。
こんな所でこんな風にばれるなんて。
- 26 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/25(火) 16:28
-
「えっと、この事は内密にしてもらえると有り難いんだけど」
でなけりゃ今まで努力してきたのが全て無駄になってしまう。
頭を下げるなんて真似などしたくはないが仕方ない。
「じゃ今日家に泊めて。そしたら考えてあげる」
「はい?どうしてそうなんの?」
「家出しちゃって行くとこないから」
あぁ、だからこんな夜中にこんな所にいたわけね。
「おい!!よしざーを忘れんなぁ!!!」
倒れていたはずのあいつがいきなり声を荒げた。
あぁ、すっかり忘れてた。
つかもう意識取り戻したんだ。早いね。
でも、こいつに用はないしなぁ。あぁもう、めんどくさい。
「二度と暴れないって誓うんならもう帰っていいよ」
美貴はシッシッと手で追い払う仕草をしてそう言った。
「誓えないって言ったら?」
「ここで死んでもらう」
そうやって冷たく言えば大抵の奴はビビッて美貴に従う。
きっとこいつだって…。
- 27 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/25(火) 16:32
-
吉澤は小刻みに震えだすと何かを呟いた。
あまりにも小さな声だったのでちゃんと聞き取れなかった。
「かっけぇーー!!!」
今度は声が大きすぎて耳が痛い。
「あんたまじかっけぇー!決めた!よしざーあんたに一生付いて行く!!」
はぁ!?何言っちゃてんのこいつ!?
関わるとめんどくさそうなのでその話を聞かなかったことにした。
そして何も無かったかのようにもう一人の方にさっきの話の返答をした。
「学校にばらされるのは困るし今日だけ泊まっていいよ」
「やった!じゃよろしく藤本さん」
「その前にあんたの名前は?名前も知らない人を泊めたくないからね」
「あ、知らないんだ。私は柴田あゆみ」
「よしざーは吉澤ひとみ!んでよしざーも泊まる!」
「いやお前は知ってるし。つかさっさと帰れ!」
何か今日は最悪な日だな。
ストレス解消どころじゃないよまったく。
- 28 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/25(火) 16:34
-
家に着くまでの時間、柴田あゆみとの会話は無かった。
あれこれ質問攻めされるかと予想していたので少し拍子抜けした。
そして吉澤ひとみは、気付かれていないと思ってるのか美貴達の後をつけてきていた。
ちゃんと追い返したけどね。
「あ、着いたよ」
美貴が見上げた先にはどこにでもあるような普通のアパート。
見た感じはちょっとボロいけど結構住みやすかったりする。
「ねぇ、こんな夜中にお邪魔して親とか大丈夫なの?」
今さらそれですか。
さっきの強引さは一体どこにいったんだ?
「美貴一人暮らしだし大丈夫」
「へぇ、そうなんだ。やっぱり大変?」
「…もう慣れたよ」
- 29 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/25(火) 16:36
-
がちゃ、とドアの鍵を開け彼女を中に招いた。
「部屋きれいにしてるんだね。ってか何もないね」
失礼な、何もないは大袈裟だし。
布団と机とパソコンと冷蔵庫の四つがあれば十分じゃん。
それ以外のものなんて別に必要ないもんね。
「泊めてあげるんだから今日のことは黙っててね」
「分かった。けど何で隠すの?」
「約束したから」
「約束?」
「そ、母さんとの約束。じゃバレたついでに昔話でもしてあげようか」
少し重くなった空気の中美貴は静かに口を開いた。
- 30 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/25(火) 16:40
-
「昔あるところに無愛想で生意気な女の子がいました。
その子は大人よりも遥かに知能指数と身体能力が高く世の中の全てを馬鹿にしていました。
大人達は何を考えてるか分からない、気味が悪い、子供らしくないと陰口を囁き
他の子供達はその子をいじめました。
その子は馬鹿らしい、と全く相手にはしませんでした。
しかし、ある日唐突に事件が起こりました。
なんと女の子はいじめていた子供達に大怪我を負わせてしまったのです。
そのときの状況は誰から見ても酷く、それはもう悲惨なものでした。
辺りには悲鳴と呻き声、そして恐怖で埋め尽くされていました。
一つだけ違うのは女の子が場違いな微笑を浮かべていたことです。
そしてその日を境に女の子を取り巻く状況はさらに悪化してしまいました。
実の父親は「よくもあんなガキを産みやがって!」「お前なんかが産まれてきやがって!」
そう母親と子供に喚き散らし家から出て行ってしまいました。
周りからは以前よりも強く奇異や畏怖などの感情が向けられるようになり
大人達は普通ではないその子をあからさまに疎外したのです。
いつしか、それは唯一その子の味方である母親にまで向かっていました。
その子は辛くて苦しんでいるのに自分の前で明るく振舞う母親を見ていられませんでした。
だからその子は約束したのです。
“学校では喧嘩しない、誰にも暴力を振るわない。いい子を演じる”と。
そして次の日その親子は別の街へ引越し
子供は学校で優等生を演じるようになりましたとさ。
めでたし、めでたし」
- 31 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/25(火) 16:42
-
一気に喋った後、そういえば美貴の過去を誰かに話すのは初めてだな。とふと思った。
「そうだったんだ…何か壮絶だね」
彼女は下を向いてそれだけポツリと言った。
「…あんたは怖がらないの?」
思うより早くにその疑問が口から紡ぎ出された。
だってそうじゃない?
さっきの一方的な喧嘩を実際に見た上にそんな話聞いたら誰だって怖いと思うでしょ?
- 32 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/25(火) 16:43
-
「うーん。それだけ聞いたら怖いかもしれないけど、」
「けど、何?」
「けど、そんな人には見えないよ」
驚いた。
そんなこと母さんと矢口さん以外に言われたのって初めてかもしんない。
何だろう、怖いもの知らずというか何というか。
うーん。何か久しぶりに面白い奴に会った感じだな。
うんうん。と一人感心していると突然彼女に疑問を投げかけられた。
「ねぇ、何で私にその話をしてくれたの?」
「さっきも言ったじゃん。バレたついでだって」
「じゃあもし私がその話聞いて怖がって逃げたらどうするつもりだったの?」
- 33 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/09/25(火) 16:45
- …確かに、どうするつもりだったんだろ?
口封じにボコボコにする?いや違うな。
「…分かんない、かも」
「天才でも分からないことあるんだね」
「いくら頭が良くても分かんないことはいっぱいあるよ」
そう言って美貴は苦笑した。
「例えば?」
「そうだね、例えば泣き方。美貴ってば今まで泣いたこと無いんだよね」
「え?泣いたことないの?小さい頃とかも?」
「うん。何があっても美貴は泣けない。柴田あゆみは泣いたことあんの?」
彼女は何故か目をパチパチさせていた。
あれ?美貴何か変なこと言った?
「そりゃあるけど、ってかフルネームで呼ぶのはやめて」
「じゃ、なんて呼んでほしいのさ?」
「あゆみでいいわよ。その代わり私も美貴って呼ぶから」
「分かった。そういえばあゆみはどこのクラス?」
「それも知らないんだ、ちょっとショックかも。一応美貴と同じクラスなのに」
あーそうなんだ。
…ってえぇ!?まじかよ。全く知らなかったし。
クラスの奴らなんていちいち覚えてこなかったからなぁ。
ま、知らないのも当然っちゃ当然だよね。
「…さてそろそろ寝るか」
何か言いたげな彼女を無視して美貴は勝手に眠りについた。
- 34 名前:ニッケ 投稿日:2007/09/25(火) 16:50
-
少量更新ですいません。
これからもこんな感じで少しずつの更新になりそうです。
>23:Blackさん
期待して下さって有難うございます!
頑張りますのでこれからも宜しくお願いします。
- 35 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/26(水) 20:55
- 面白い組み合わせですね
続きが早く読みたい!!
更新がんばってください
- 36 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/05(月) 23:01
- 続きがめっちゃ気になります。
柴美貴は結構気になるCPですし。
- 37 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/11/09(金) 00:38
-
翌朝、カーテンの隙間から零れる光の眩しさに美貴は目を覚ました。
欠伸をしてふと横を見ると、まだ夢の中を彷徨っているであろう人物がいた。
あぁ、そういえばいたんだっけ。
なんてまだ完全に覚めていない頭でぼんやり思った。
- 38 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/11/09(金) 00:40
-
起こ……すのは後にしておこう。
何となくメンドクサイし。
とりあえず学校へ行く支度をしなければ、あと朝ご飯の準備も。
- 39 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/11/09(金) 00:42
-
トースターでパンを焼いている間にテキパキと身支度をこなす。
そして最後に鏡の前でピシャリと軽く両頬を叩く。
これは美貴が完璧な優等生を演じるにあたっての気合の入れ方だ。
後ろからトースターの音が聞こえた。
中から程よく焼けたパンを取り出し皿に乗せる。
さてと、準備も出来たことだしそろそろ起こすか。
- 40 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/11/09(金) 00:43
-
「おい、起きろ」
手短にそう言ってあゆみの肩をゆさゆさ揺さぶった。
しばらくすると、うぅーんと身動ぎをしてゆっくり起き上がった。
「…おはよう」
まだ眠いのか下を向いて手で目を擦っている。
「ん、おはよ。じゃとりあえず顔洗って目ぇ覚ましてきて」
洗面所へ向かう彼女の背中を見送っていると美貴は違和感を覚えた。
いや、実際は違和感ではなく昔を、母さんを思い出して懐かしい気分になったのだ。
- 41 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/11/09(金) 00:45
-
2年という月日は早いものだ。
しかし美貴に暗闇の奥底に突き落とすには充分な時間だった。
―――ねぇ母さん、どうして美貴を置いて逝ってしまったの?
- 42 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/11/09(金) 00:46
-
「美貴?」
後ろから呼び掛けられハッと我に返った。
どうやら人の気配にも気付かないほど酷くボーっとしていたようだ。
美貴らしくない。
- 43 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/11/09(金) 00:48
-
「美貴?どうしたの?」
「なんでもない。それより早くご飯食べて学校に行こう」
「うん。ってパンだけ?他には?」
「ない。文句言うなら食べるないでくれます?」
にっこり微笑んで言った。
「(目が笑ってないし…)大人しく食べさせて頂きます」
- 44 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/11/09(金) 00:52
-
学校へ向かう道の途中。
他愛も無い話をしていたのだが、思い立ったかのようにあゆみが急に口を開いた。
「そういえば美貴のお母さんてどうしてるの?」
「…事故で死んだ」
「そうなんだ…。なんかごめん」
「別に謝んなくていい」
「うん…。あ、その時は泣いた?」
「一体どうしたらそんな質問が飛び出る?」
「いや、だって泣いたことないって言ってたから気になって」
あーなるほど。そりゃ気になるかもね。
「その時も泣いてない。てかまじで泣き方とか分かんないから」
「ふーん…。よし決めた!!」
急にあゆみが大声を出したから吃驚した。
- 45 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/11/09(金) 00:56
-
「決めたって何を?」
「たった今、美貴の泣き顔を見ることが私の目標となりました」
なんだか嬉しそうに一人でパチパチと小さく拍手をしてあゆみは言った。
「はははっ、それが目標?くだらねー」
馬鹿にしながらもお腹を抱えて笑う。
すると、あゆみがまじまじと美貴の顔を見てきた。
「ん、何?」
「いや美貴ってちゃんと笑うんだなぁと思って」
「失礼な。美貴は常に笑顔だし」
「作りものだけどね」
にぃっと笑いながら突っ込まれた。
「まぁね」
負けじと美貴もにぃっと笑い返してやった。
「ちゃんと笑えるんだから泣く事だって出来るよ」
「そうかな?まぁいいや好きにしなよ」
とか言いながらも
泣けたとしても絶対こいつの前では泣いてやるもんか。
と密かに思っていた。
- 46 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/11/09(金) 00:58
-
そうこうしている間に美貴たちは教室へ着いてしまった。
何人かの生徒が物珍しそうにこちらを見ている。
まぁ確かに珍しいとは思うけどそんなに見ないで欲しい。
殴りたくなってしまう。
- 47 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/11/09(金) 00:59
-
「柴ちゃーん!」
こちらを見た生徒の一人が大声を上げあゆみの方へ向かってきた。
…なんか声が高くて耳が痛いんだけど。
「あ、梨華ちゃんおはよう」
「おはよう!じゃなくて昨日どこ行ってたのよ!
柴ちゃんのお母さんから電話かかってきて吃驚したんだからぁ」
「あーごめんごめん。昨日は美貴の家に泊まってたんだ」
「美貴?え?柴ちゃんと藤本さんって仲良かったっけ?」
なんかこいつウゼーな。
横で聞いてて苛々してきた。
- 48 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/11/09(金) 01:01
-
一発くらいなら殴ってもいいかな?
って駄目だ駄目だ。
あぁもうメンドクサイ。
ちらりと時計を見て
「そろそろ先生が来るから席に着いたほうがいいよ」と言って美貴は席に着いた。
すると見事なタイミングで教師が教室に入ってきた。
「おーい、お前ら席着けー授業始めるぞー」
間延びした声がざわざわと煩い教室に投げかけられた。
- 49 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/11/09(金) 01:02
-
そういえばあゆみの席って何処なんだろうか?
そう思っていたら隣の席から視線を感じた。
見ると美貴と目が合ったあゆみが笑顔でピースした。
え、まじすか?
こんなに近いのに今まで知らないとか美貴どんだけ周りに無関心なんだよ。
- 50 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/11/09(金) 01:03
-
「やっぱり知らなかったんだ」
「えぇ。全く」
動揺を隠し先程とは打って変わった笑顔でにっこり微笑んで答えた。
「お見事」
おぉーと、美貴の態度の変わりようにまるで感心するかのように言うとあゆみは黒板の方へ顔を向けた。
- 51 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/11/09(金) 01:07
-
隣同士ね。何の因果だか。
そう思いつつ美貴も黒板の方へ顔を向け
教師が書いた少し崩れた文字をノートへ書き写す作業に移った。
こんなことわざわざしなくても全部理解出来る。
だけど優等生という仮面は決してそれを許しはしない。
少しでもボロを出せばすぐさまゲームオーバー。
ちょっとした仕草一つにも細心の注意を払わなければいけない。
- 52 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/11/09(金) 01:08
-
不自由極まりない学校生活に苛立ちを感じながらもそれを表に出さない美貴は自分でも凄いと思う。
誰が真似出来る?
きっと誰も出来るはずない。そうに決まってる。
だって美貴は特殊な人間なんだから。
思い上がってるわけでもなくこれは紛れもない事実。
だからつい人を見下して嘲笑ってしまう。
お前らなんてどうせ一人じゃ何も出来やしないんだろ?って。
- 53 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/11/09(金) 01:10
-
そんなことを考えていたら自然と溜め息が零れた。
しかし美貴の手は休むことなく未だ黒板の文字を書き写し続けている。
あぁ、やっぱり美貴ってば超天才じゃん。
- 54 名前:ニッケ 投稿日:2007/11/09(金) 01:21
- 久々の更新。
待ってないかもしれませんが、お待たせしてしました。
>>22 :名無飼育さん
この前はレスし忘れていて本当に申し訳ありませんでした。
藤本さんは腹黒キャラが似合いますよねw
>>35 :名無飼育さん
このCPはどマイナーな気がしますが個人的に大好きなんです。
応援有難うございます!
ノロノロ更新ですが宜しくお願いします。
>>36 :名無飼育さん
いいですよね、このCP。
上にも書いた通りどマイナーの香りがプンプンしますがw
続きを気にして下さって嬉しい限りです!
これからも無い頭をフル活用して書きたいと思ってます。
- 55 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/11(日) 21:12
- 待ってたよ。でもあんまり待たせないでね。
- 56 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/18(日) 00:18
- 川σ_σ||
- 57 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/12/25(火) 21:36
-
ただ黙々と作業を繰り返すうちに学校は終わる。
そういった面ではかなり楽でいい。
ただ、物凄くつまらないのが惜しいとこ。
それに今日は誰からの呼び出しがないので早々に帰れる。
- 58 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/12/25(火) 21:39
-
教師からの呼び出しはマシ。
先輩方からのは何より煩わしい。
後輩達からだと面倒臭くて非常に厄介。
- 59 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/12/25(火) 21:41
-
先輩方からの呼び出しは、美貴を気に食わない者が複数集まり「調子こいてんじゃねぇ」と言わんばかりに暴力を振るう。
所謂、集団リンチという行為をするからだ。
自分より遥かに弱い奴にやられるのを耐えるなんて全く持って不愉快。
学校内でなければそいつら全員潰してやるのに。
後輩達はその逆だ。
理由は分からないが美貴は後輩に人気があるらしい。
その為告白の嵐。
誰にも興味なんて持たない美貴にとってはいい迷惑だよ。
- 60 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/12/25(火) 21:42
- さて厄介なものに捕まる前にさっさと帰ろ、と鞄に教科書を詰め立ち上がった。
「あ、美貴帰るの?」
…早速あゆみに捕まった。
- 61 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/12/25(火) 21:43
-
「そうだけど、今日はちゃんと自分の家に帰ってよ?」
「えぇー今日は泊めてくれないの?」
ちょっと待て、今日も泊まる気でいたのか。
「駄目」
「そーよ!ちゃんと帰らないと駄目なんだから!」
横からあゆみの友達で梨華ちゃんって奴が勝手に加わってきた。
美貴、こいつ苦手。
- 62 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/12/25(火) 21:45
-
「梨華ちゃん煩い…」
「えっそんな柴ちゃんヒドイわ!?」
いや確かに煩い。
「じゃ今日は自分の家に帰る」
あゆみは仕方ないといった感じでしぶしぶ了承した。
「でも美貴の家にもちょくちょく行くからよろしく!」
「いや、ちょくちょく来なくていいから」
「じゃあ毎日行く!」
いや、そういう意味ではなくてね…。
「はぁ、もういいよ。好きにして」
「うん、好きにする!」
- 63 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/12/25(火) 21:48
-
あぁ、なんか凄い嬉しそう。
それ見たらこれ以上反論するのもメンドくさくなってきたな。
もういいや、早く帰って矢口さんのとこに行こ。
今日は客居んのかなー。
- 64 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/12/25(火) 21:56
-
「じゃ美貴帰るから」
「うん。また明日ね、バイバイ!」
あゆみが手を振りながら言うから美貴も釣られて手を振り返した。
「ん、ばいばい」
- 65 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2007/12/25(火) 21:58
-
“また明日”ね。
初めて言われたかも、そんな言葉。
“バイバイ“って言葉もこんな風に言うのは初めて。
なんかむず痒いもんだなぁ。
- 66 名前:ニッケ 投稿日:2007/12/25(火) 22:07
-
少しですが更新しました。
あんまり進展しておりませんが今回はここまでという事で。
>>55 :名無飼育さん
スイマセン、またお待たせしてしまいましたorz
待っていて下さって凄く有り難いです。
次回もまた待っていて下されば嬉しい限りです!
- 67 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/12/26(水) 09:49
- 川σ_σ||<待ってるみゅん
- 68 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/09(土) 22:45
-
「矢口さんとこ行く前に少し寝よ」
陽が完全に落ちるまで時間は充分ある。
美貴は部屋に入るとすぐさま眠りについた。
- 69 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/09(土) 22:46
-
目を開けるととても暗い場所に美貴はいた。
声、が聞こえる。
すごく嫌な声だけが。
『あの子また他の子に怪我を負わせたみたいよ?』
『おっかないわねぇ。お願いだから私の子には近寄らないで欲しいわ』
『お前みたいな奴がどうして生まれてきた?』
『化け物!!』
- 70 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/09(土) 22:49
-
後ろを振り返ってみると大勢の人間が罵声を美貴に浴びせかかっている。
何人かの子供は美貴に石を投げ始めた。
あぁ、何、これ?
どうしてみんな美貴のこと邪険にするの?
逃げようとして前に向き直るとさっきまでは誰も居なかったはずの場所に母さんがいた。
- 71 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/09(土) 22:50
-
“助けて、母さん”
- 72 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/09(土) 22:51
-
何も考えず口から出たのは救いを求める言葉。
すると、『ごめんね』とたった一言、それだけ言うと母さんは消えた。
いやだ、まって、置いてかないでよ。
ねぇ、まって!!
- 73 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/09(土) 22:52
-
意識が途切れた。
いや、そうではなくて正確には眠りから覚めたのだ。
- 74 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/09(土) 22:54
-
「あー。意味分かんない。何であんな夢…」
本当意味分かんない。
第一、あんなに大勢の人間から逃げるほど弱くないし。
それに例え母さんであろうと美貴は誰かに助けを求めるなんてことしない。
絶対に、だ。
うんうん。美貴は弱くない。
だって今も昔も美貴に勝てる奴なんて誰一人としていないんだから。
あれこれ考えているうちに部屋の中が暗くなっていたことに気付いた。
「そろそろ出掛けてもいい頃かな」
そして昨日と同様の服を纏い、帽子を目深に被り家を出た。
- 75 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/09(土) 22:55
-
夜風が少し冷たくて心地いい。
変な夢を見たから尚更それが心地よく感じる。
肺一杯に新鮮な空気を送り込み美貴は走り出した。
そしてあっという間に目的地に辿り着き、美貴はそのままの勢いでドアを開けた。
- 76 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/09(土) 22:56
-
「おわっ!何だミキティかよ。吃驚したじゃんか」
本当に驚いている様子の矢口さんに笑いかけ挨拶をした。
「へへっ、こんばんは」
「今日はご機嫌じゃん、何かいいことでもあった?」
「うーん、いいことっていうか面白い奴に会いましたよ」
「へーそりゃまた珍しい。どんな奴か今度聞かせてよ」
「いいですよ」
「あ、そうだ。ミキティに客がいるよ」
「客ですか、分かりましたー」
「ほら奥にいるから会ってきなよ。なんか面白い奴だったよ」
- 77 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/09(土) 22:57
-
そう促されて目をやるとどこかで見た奴がいた。
何だか嫌な予感がする。
眉間に皺を寄せつつそいつに近づいていくと、パッとそいつが振り返った。
「げっ…!」
嫌な予感は当たるものだ。
振り返ったそいつ、吉澤ひとみは美貴と目が合うなり満面の笑みを浮かべた。
- 78 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/09(土) 22:58
-
「見付けた!」
「いや、誰が探せって言ったよ」
「あんたここらじゃ有名なんだな」
「聞けよ」
「改めて、よしざーを弟子にして下さ…っ!!」
「落ち着け」
何やら興奮状態になっている奴の頭目掛けてチョップを喰らわせた。
- 79 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/09(土) 23:00
-
「痛い。さすが師匠」
涙目で頭をさすりながらこいつは寝惚けたことを言った。
寝言は寝て言え、とはまさにこのことだ。
「誰が師匠だ、馬鹿野郎」
「ちょ、どしたの?」
この騒動に気付いたのか矢口さんが駆け付けてきた。
- 80 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/09(土) 23:01
-
「矢口さん…こいつをどうにかして下さい」
「何?問題とかあんの?」
「えぇ、問題ありまくりですよ。美貴の弟子にしろとかほざいてるんです」
「弟子?そういえばさっきもそんな事言ってたような。でもなんでまた?」
「知りませんよ、こいつに聞いて下さい」
「なんで?」
矢口さんは素直に吉澤に向かって聞いた。
一方、吉澤はというと何故か目を爛々と輝かせていた。
「そりゃもちろん、よしざーより遥かに強いから!」
そして息継ぎする暇もなくまた続けた。
「昔から決めてたんですよ!自分より強い奴がいたらその人に一生付いていくって!!」
- 81 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/09(土) 23:04
-
「だそうだ、別にいいじゃんミキティ。弟子の一人や二人くらい」
え、矢口さん?賛成しちゃうんですか?
それに一人や二人も欲しくありませんよ。
「うーん」と美貴が答えに渋ってたらまた矢口さんが口を開いた。
「弟子が嫌なんだったら仲間か友達ってことにすれば?」
あぁもう。こうなったら仕方ない。
他でもない矢口さんの頼みだ。
いや頼まれてはないか。
まぁどっちでもいい、そこまで言うなら。
- 82 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/09(土) 23:09
-
「はぁ、分かりました。矢口さんがそう言うならいいですよ…」
「だってさ、良かったな」
二カッと笑って吉澤に言う矢口さんとは対照的に美貴は凄い顔をしていたと思う。
何故なら喜んでいたはずの吉澤が若干大人しくなっていたから。
「んじゃとりあえず吉澤って呼ぶのメンドイからよっちゃんって呼ぶわ」
「じゃおいらはよっすぃーって呼ぶ」
「あの、拒否権は…「ない」
「ですよね…。じゃよしざーは何と呼んだらいい?」
「おいらはミキティって呼んでるからそうしとけば?」
「あ、じゃあミキティと矢口さんってことで宜しくお願いします」
「はいよ、お願いされました」
- 83 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/09(土) 23:10
-
こうして不本意ながらも美貴に仲間が出来た。
信用したわけじゃないけど何かあればそのときは容赦しない、ってことで。
- 84 名前:ニッケ 投稿日:2008/02/09(土) 23:17
-
またしても少量&亀更新orz
こんな具合で無事に終えることが出来るのか不安になります。
が、いつかは終わらせます。
長々となりますがお付き合い下されば幸いですw
67 :名無飼育さん
レス有難うございます。
そしてお待ちしていて下さり有難うございます!
なかなか進展できないのが悔しいですよ。
どうぞ見守っていて下さいorz
- 85 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/23(土) 02:04
-
その後、美貴は依頼がないということで日付が変わる前に早々と家に戻った。
“また明日”
ふと、あゆみが言ったその言葉を思い出した。
たったそれだけの言葉に顔が緩むのはなんでだろ。
なんだかモノクロの学校生活に一つだけ色が見えた気がした。
ふふっと小さく笑ったらお腹がぐぅ、と小さく鳴った。
あ、そういえばご飯食べてないや。
…ま、いっか。
- 86 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/23(土) 02:05
-
朝になって目が覚めると何となく気分がよく思えた。
美貴はトーストを口に加え柄にもなく鼻唄を歌いながら学校へ行く準備をしていた。
すると突然インターホンの音が部屋に飛び込んだ。
こんな朝っぱらから人が来るなんて珍しいな。
不審に思い覗き穴から外を覗く。
がちゃり、と少しだけドアを開ける。
- 87 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/23(土) 02:06
-
「何してんの?よっちゃん」
そう、そこに立っていたのは紛れもなくよっちゃんだった。
「おはようミキティ!迎えに来たぜ!」
なんで朝から元気なんだこいつは。
「おはよ。じゃなくて迎えって?あと何で美貴の家知ってんの?」
「一緒に学校行こうってことに決まってんじゃん!そんで家は矢口さんから聞いた!」
矢口さんめ、余計なことを。
- 88 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/23(土) 02:08
-
「つか学校って…」
言ってハッとした。
見れば美貴と同じ制服を着ているではないか。
なんということだ、美貴の秘密を知る人間が同じ学校に二人もいるなんて。
一応こいつにも念を押しとかなきゃ。
「学校で美貴のことバラさないでよ」
「ミキティのことって?」
「だから夜に美貴が喧嘩してること」
「へ?何で?」
「何ででも。もしバラした時どうなるか分かってんだろうな」
「は、はい!誰にも言いません!」
低くドスの聞いた声に鋭い目付きを付けて言えばよっちゃんは快く了承してくれた。
うん、物分りのいい奴だ。
- 89 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/23(土) 02:09
-
「よし、じゃあ行こうか」
美貴が歩き出すとよっちゃんは犬のように後ろを付いて歩く。
それはもう嬉しそうに満面の笑みを浮かべて。
これは歩きにくい。
まるでストーカーにでもあってるみたいだ。
まぁ嬉しそうだし別にいいか、と思いそのままの状態で学校まで歩みを進めた。
- 90 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/23(土) 02:10
-
しかし、もうすぐ教室に着くというのに一向に美貴の後を付いてくる。
「よっちゃん、どこまで付いてくるつもり?」
「え?よしざーの教室そこなんだけど」
そう言って指を差した場所は美貴の教室の隣。
まさか同じ学年だったなんて…。
しかも隣のクラス。
「あぁ、そう。じゃ美貴ここだから」
教室に入ろうとしたらよっちゃんが騒ぎ出した。
「えっ!まじ?!ミキティ隣のクラスだったんだ!」
幾人かの視線を感じた美貴はよっちゃんの肩に手を置き、
「静かにしてもらえませんか?」
と黒い笑みで宥め教室に入った。
- 91 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/23(土) 02:12
-
ふぅと軽く息を吐いて椅子に座るとあゆみが声を掛けてきた。
「おはよう美貴」
「ん、おはよ」
「ねぇさっき騒いでた人ってこの前私にナンパしてきた人だよね?」
「あぁうん。昨日の夜にさ、何か成り行きで友達になっちゃったんだよね。しかもあいつ隣のクラスっだったし」
「あの人ウチと隣なんだ。って昨日の夜?あの人とまた喧嘩してたの?」
「はぁ、喧嘩なんかしてないし」
大袈裟に溜め息を付いてみた。
「溜め息つくと幸せが逃げちゃうよー」
「別に逃げられても支障はないから」
- 92 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/23(土) 02:13
-
「何話してるのー?」
げっ、また来たよウザイのが。
話し掛けられると同時に美貴は優等生の仮面を被った。
「あ、梨華ちゃんおはよう」
「おはよう柴ちゃん、美貴ちゃん!」
ん?美貴ちゃん?…ちゃん?
ええぇ、何こいつ。
いきなりちゃん付けとか有り得ないでしょ。
- 93 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/23(土) 02:13
-
「ちょっと待って石川さん、その美貴ちゃんって何ですか?」
「えー石川さんじゃなくて私のことも梨華ちゃんって呼んでよ」
「いや、そうでなくて何でいきなりその呼び方を」
「柴ちゃんの友達は私の友達だから!」
そんな笑顔で言われても。
つか、どんな理屈なんだよそれ。
美貴は困ったようにあゆみを見たのだが。
「この子言い出すと聞かないから諦めるしかないよ」
苦笑いでそう告げられてしまった。
まじかよ、よりにもよって苦手だと思った奴と友達になるなんて。
昨日に続いてどういうことなのさ、美貴。
- 94 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/23(土) 02:14
-
「で、さっきは何話してたの?」
「隣のクラスの人の話だよ」
美貴の代わりにあゆみが答えた。
「え、だれだれ?」
「えーっと、」
今度はあゆみが困ったように美貴を見た。
あ、そっか名前知らないんだっけ。
あんまり喋りたくはなかったけど仕方ない。
「吉澤ひとみってひとですよ」
名前を言った瞬間石川さん、じゃなくて梨華ちゃんの目の色が変わった。
- 95 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/23(土) 02:16
-
「吉澤ひとみって噂の転校生だよね!?」
噂、の転校生?
何?あいつ有名なの?
ってかいつ転校してきたんだ。
「知ってるの?」
「もちろん!だって転校してきたときから凄く人気あったもの!」
興奮気味で話したのを聞いてあゆみもそういえば、と話に乗った。
「あの人なんだ。私も噂には聞いてたんだけど気付かなかった」
「美貴も全く知りませんでしたよ」
「でも美貴ちゃんも有名よね」
あぁ、やっぱり美貴って有名なんだ…。
「そんなことないですって。あ、先生来たよ」
「ほんとだ、じゃまた後でね」
梨華ちゃんは先生が教室に入ってきたのを見て少し離れた自分の席に戻っていった。
- 96 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/23(土) 02:18
-
昼休みになった頃、美貴は一人屋上に来て購買で買ったパンを食べていた。
本来なら立ち入り禁止で鍵が掛かっているのだが、美貴はこっそり合鍵を作って勝手に出入りしていた。
屋上には誰も来ないし本当に落ち着ける。
もしかしたらここは美貴の一番好きな場所かもしれない。
いや、一番好きな場所は矢口さんのお店か。
とにかく学校という閉鎖空間ではここが一番自由になれるんだ。
さてと、昼ご飯も食べ終えたことだしそろそろ教室に戻りますか。
- 97 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/02/23(土) 02:20
-
しかしその途中。
不運なことに、先輩に出くわしてしまった。
「丁度良かった。藤本さん」
「あ、先輩。何ですか?」
「今日の放課後いつもの場所来てくれる?」
また呼び出しかよ。
嫌っつうか面倒だなぁ、そんなことに時間なんて使いたくないし。
しかも美貴は手ぇ出せないし。
でも行かなくて美貴が逃げたって思われんのもムカつくしな。
「はい。分かりました」
「待ってるから逃げないでね」
その先輩はにやにや笑いながら去っていった。
めちゃくちゃきもいんだけど、その汚らしい笑顔。
その醜い顔をズタズタに引き裂いてやろうか。
内心ドス黒いことを考えながら美貴は教室に帰っていった。
- 98 名前:ニッケ 投稿日:2008/02/23(土) 02:27
-
少し更新しました。
やっと暇な時間が出来ました。
ので、近いうちにまた更新できると思います。
- 99 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 21:55
-
そんなこんなでやって来たよ、放課後が。
よっちゃんが来る前に行かなきゃ、きっと何言っても付いて来るだろうし。
ってか絶対あいつ来たらもっと面倒なことになる。
美貴はそそくさと誰にも見つからないように教室を出た。
- 100 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 21:56
-
辿り着いたのは定番の体育館裏。
そこに先輩たちは腕組みをして立っていた。
うわ、何?今日五人もいんの?
どんだけ暇してんだよ、こいつら。
受験生なんだから大人しく勉強でもしてろよ。
あぁ勉強なんてしても無駄か、こいつら落ちこぼれの集まりだしね。
- 101 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 21:56
-
「遅かったねー藤本さん」
「…す、すいません」
我ながら名演技だと思うね。
でもこうやってわざと怯えたふりすんのって疲れるんだよね。
もう、なんでもいいから早くしろよ。
「遅れたからお仕置き決定ね」
- 102 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 21:58
-
そう言うと周りにいたうちの二人が美貴の両腕をがっしり掴まえた。
そして一人一人が美貴目掛けて殴りかかってきた。
拳が鈍い音を立てて鳩尾に入る。
「…っ!」
いくら慣れてるからといって痛いのには変わりない。
いつの間にか押さえ付けてた奴らも美貴を殴っていた。
おかげで美貴は地面に倒れたまま。
またクリーニング代かかっちゃうな。
なんて違うことを考えている間も休むことなく暴行は続く。
そして頭を庇うふりして顔を隠した。
冷めた目と痛みでしかめた顔など決して誰にも見せたくなかったから。
- 103 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 21:59
-
「頭良いからって調子乗んじゃねーよ!」
「生意気なんだよお前!」
「まじ目障り!!」
あぁうざい。妬みから始まるってのがより一層うざい。
自分が頭悪いのを人のせいにしてんじゃねえよ。
どうでもいいけど早く終わってくんないかな?
いい加減まじで体が痛いんだけど。
お前らは限度ってもんを知らないのか。
だからお前ら超が付くほどの馬鹿なんだよ。
よし、こいつら卒業したら絶対ぶっ殺そう。
- 104 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:00
-
「そういえば遅れてきた分のお仕置き、まだだったよね?」
一人がどこからともなく取り出した煙草に火を付けた。
あとの四人は上から圧し掛かるように美貴を押さえ付けている。
「はい左手出してねー」
こいつら、まさか…。
嘘だろ?
- 105 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:04
-
「じゃ、灰皿よろしく!」
ジュウウ…!
押し当てられた熱は容赦なく美貴の手のひらを焦がした。
熱い、熱い熱い!
今にも叫び出しそうな唇を噛み締め何とか堪える。
「あははっ!熱い?ね、熱い?」
口から煙を吐き出しながら心底楽しそうに笑いながら訊ねられた。
熱いに決まってんだろうが!
- 106 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:05
-
「つまんねぇな、声くらい出せよ!」
そう言ってまた美貴を殴った。
人が大人しくしてるからって調子に乗りやがって!
ごめん母さん、もう我慢出来ない。
美貴、約束破る。
そう思ったとき、誰かの声がした。
「何やってるんですか!?」
- 107 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:06
-
え、何?誰?
先輩たちの声がぴたりと止んだ。
「あ、先生!早く来て下さい!!」
どうやら近くに教師が居るようだ。
すると先輩たちは「やべぇ!逃げろ!!」と慌てて退散していった。
何だ?教師ごときの存在で逃げるのか、こいつらは。
情けない奴ら。
それより、美貴は約束を破らないで済んだことにホッとした。
もしあの時誰かが来なければ確実に美貴はやり返していただろう。
うつ伏せに倒れていた状態から仰向けになり目を閉じた。
- 108 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:09
-
いたい。
手も顔も足もお腹も、とにかく全身が痛い。
口を拭った右手の甲を見ると血が付いていた。
まじかよ、最悪。
「美貴!大丈夫!?」
声の主はあゆみだったのか。
出来れば見られたくなかったな。
「うん、全然大丈夫。で?あゆみは何でここいんの?」
「教室に美貴の鞄置いてあったからまだいるのかなって探してたの」
- 109 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:12
-
「そうなんだ」と言ってゆっくり立ち上がり
そして服に付いている汚れを払いきちんと整えた。
こんな些細な動作でも体中が悲鳴を上げる。
もはや左手など握ることすらできない。
さすがの美貴でもここまでやられてしまったら限界を感じる。
「まだ動いちゃだめ!」
「平気だって」
- 110 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:13
-
無理にでも体を動かさないと意識が飛んでしまいそうなのだ。
人前で気絶するのは美貴のプライドが許さない。
「…もしかして今までずっと?」
黙って美貴を見ていたあゆみが恐る恐る口を開いた。
「何が?」
「だから、今までこうやってずっと暴行されてるの?」
「あぁうん。でもここまでされたのは初めて」
- 111 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:15
-
確かに今までは薄く痣が出来るくらいの軽いものだった。
それに服で隠れる部分だけだったから誰にも気付かれることはなかった。
しかし、今回のこれは酷い。
どう見たって隠しようがないくらいのやられようだ。
「どうしてやり返さないの?強いんじゃないの?」
「だから言ったじゃん、母さんと約束したからだって」
「でも、」
あゆみはそこで言葉につまってしまった。
「でも、何?」
「ううん、何でもない。とにかく保健室行こ?」
「いや、いいよ」
「よくないから!早く手当てしなきゃ」
「このくらい平気だって」
- 112 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:16
-
保健室に行くことを頑なに拒否をした美貴を見てあゆみは溜め息をついた。
諦めてくれたかな?
「…分かった、じゃ帰ろう。鞄取ってくるからここで待ってて」
「あれ?ちょっと待って、さっき先生呼んでなかったっけ?」
確かにさっき教師を呼んでいた。
なのにそれらしき人物などどこを見たっていない。
「あぁ、あれは嘘。うまいこといって良かった」
なるほど。やるねぇあゆみも。
「そういうことだから、ここで待っててよね」
「はいはい」
- 113 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:16
-
あゆみが行ったのを確認すると美貴は壁にもたれ、そのまま座りこんだ。
立っているだけが精一杯だった。
ただやられるだけってのが美貴の性分には合わない。
だけど約束を破ることは避けたい、だから何もしないでじっと耐える。
今日は運が悪かった。
あゆみに目撃されるなんて全くの予想外だった。
かっこわるいなぁ。
だけど来てくれたお陰で理性を保つことができた。
それだけは感謝しなくちゃ。
- 114 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:17
-
「おまたせ美貴!」
「早かったね、別に、ゆっくり来ても良かったのに」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょー」
はい、とあゆみは座り込んでいる美貴に手を差し伸べてきた。
思わずその手を凝視した。
だって今までこんなことされたことないんだもん。
その手を取るか取らないか少し悩んだ結果、美貴は取らなかった。
「いいよ、一人で立てるから。それに手、使えないし」
- 115 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:19
-
美貴はちっぽけな言い訳でそれを拒んだ。
「人の好意は素直に受け取るべきなんだよ?」
「…」
「まぁいいけど、ほら帰ろう?」
あゆみが何も言わない美貴の右手を取ってそのまま歩き出した。
「え、まさか家に来るつもり?」
「当たり前じゃない。その手じゃちゃんと手当てできないでしょ」
そして美貴は半ば引きずられるようにして家まで連れられた。
- 116 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:20
-
「ちょっ、まじで手当てなんかいらないって」
「駄目だって!ちゃんと消毒しなきゃ!」
あゆみは消毒液を手に持って近づいてくる。
美貴はじりじりと後ずさりをする。
何故こんな状態なのかというと。
美貴は家に着いてすぐ一番酷いであろう手の治療をされたのだ。
まぁそこまでは良かったのだが。
美貴が「手だけ治療出来ればあとは自然に治るし放っておく」
などと言ったせいであゆみは強制的に美貴の手当てをしようとして今に至るわけだ。
- 117 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:21
-
「だからいいってば、放っておいてもすぐ治るんだし」
「いいから大人しく手当てさせなさい!」
駄目だ。何でかこれ以上は逆らえない気がしてきた。
っていうか逆らうだけの気力がもうない。
「分かったよ、大人しく手当てされればいいんでしょ?」
「やっと観念した、初めからそうしとけばよかったのに」
「はいはい、すいませんね」
- 118 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:22
-
あゆみは少し不貞腐れた美貴を椅子に座らせると消毒液を綿に染み込ませ、
「ちょっと沁みるよ」と綿を美貴の口元にチョンチョンと付けた。
「つっ…」
予想以上の痛さに微かながら声が上がった。
これはもしかすると殴られるよりも痛いかもしれない。
「ごめん!痛かった!?」
「だ、大丈夫。痛くない」
「ねぇ美貴、さっきの火傷のときもそうだったけど、そんなに強がらなくても痛いときは痛いって言っていいんだよ?我慢する必要なんてどこにもないんだから」
- 119 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:23
-
ドキっとした。
まるで全てが見透かされているような感覚。
「…別に強がってなんかないし」
「またそんなこと言う。えいっ!」
再び綿が傷に触れ、また先ほどの消毒液の沁みる痛さが美貴を襲った。
「いってぇ!」
「それでいいの」と満足気に微笑んで絆創膏を貼られた。
- 120 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:24
- その後も手際よく怪我の手当てをこなす彼女を見て美貴は疑問に思った。
どうしてあゆみは美貴にここまでするんだろう?
一昨日初めて会話をしたばかりだというのにどうしてこんなに優しい?
美貴には分からない、どうしてなのか。
「ね、あゆみはさ、何のために美貴にここまでするの?」
疑問の声は口を割って出てきてしまった。
- 121 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:25
-
「何でって、そんなの美貴が大切だからに決まってるじゃない」
手当てする手を止めることなくさらりとそう言った。
「美貴が、大切?」
「そ、大切」
「何で?だって美貴たち一昨日知り合ったばっかじゃん」
「いつ知り合ったとか関係ないでしょー?
それに美貴が私のこと知らなかっただけで私は美貴のことずっと知ってたんだから」
「同じクラスだもんね。うん、それは悪いと思ってる」
- 122 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:26
-
ピタッとあゆみの手が止まった。
どうしたんだろ?
「そういうことじゃないのに…」
「ん?何か言った?」
あゆみの声があまりにも小さくて耳にちゃんと入ってこなかった。
聞きなおしたけどあゆみは黙ったままだ。
「あゆみ?」
「とにかく!私がここまでするのはそういうことだから!」
「う、うん。分かった」
- 123 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:27
-
「分かればいいの、じゃ次はお腹見せて」
「えっ、もういいって」
「駄目。はい、ちゃんと見せる」
僅かな抵抗も空しくがばっと服を捲り上げられた。
「うわっ、いきなり捲んないでよ」
「…美貴、これもよく我慢できたね」
驚いているところを見ればどうやら本当に酷いようだ。
ずっとズキズキ響いていたがそこまでだとの怪我だとは思わなかった。
「まぁ、それなりに耐性ついてるし」
「だから無理して耐えなくてもいいんだって」
「無理なんか、」
「してるでしょ?」
- 124 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:28
-
“してない”って言うはずだったのだがそれは遮られてしまった。
ってか何か、美貴おかしくない?
さっきからずっとあゆみのペースにはまりっぱなしじゃんか。
普段なら矢口さん以外で誰かのペースに巻き込まれるなんてこと有り得ないのに。
本当に美貴どうしちゃったんだろ。
- 125 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/03/04(火) 22:30
-
「よし、終わった!とりあえず目立つ痣のとこには湿布貼っといたからね」
美貴が思考の中にいる間に手当てが済んでいた。
絆創膏に湿布に包帯、それらを身に付けた姿は自分から見ても痛々しかった。
「手当て、あ、ありがと」
「どーいたしまして」
慣れてないお礼を言うのに躊躇ったがやはり言わないのは妙に気が引ける。
ぎこちない感じもするがちゃんと言ったので良しとしよう。
- 126 名前:ニッケ 投稿日:2008/03/04(火) 22:33
-
何とか更新できました。
藤本さんが酷いことになってるような気が。
それと、内容も少しは進展したはずです。
さて続きも早く書かなくては。
- 127 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/10(月) 18:24
- 二人の距離がグッと近くなってるじゃないですか
- 128 名前:sage 投稿日:2008/03/11(火) 17:35
-
いつも楽しみにしてます
- 129 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/06/21(土) 17:29
- みき柴&みき吉
楽しみに待ってますZ
- 130 名前:ニッケ 投稿日:2008/06/22(日) 03:05
- 長いこと放置しててすいません。
話の続きを書く時間がなくなってしまいましてorz
もう暫くお待ち頂けると嬉しい限りです。
>>127 :名無飼育さん
これからもっと進展させたいと思ってますので!
二人を生易しい目で見守っててくださいw
>>128 :sageさん
>>129 :名無飼育さん
楽しみにして下さり有難う御座いますm(_ _)m
続きも必ず書きますのでもう暫くお待ち下さい。
- 131 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/08/18(月) 14:25
-
その時だ、ピーンポ−ンと誰かが美貴の家に訪ねてきたと示す音が鳴ったのは。
「出てくるからちょっと待ってて」
一日に二回も人が来るなんて今までになかったんだけど。
誰だ?ってまたお前かよ。
ドアを開けた瞬間満面の笑みが視界に入った。
「おっすミキティー!これから矢口さんとこ行こうぜ!」
朝といい今といい、こいつはどうしてこんなに元気なんだ。
「…今から?」
「そう、今から!ってミキティ!?何だよその怪我!!」
おい、気付くのが遅いよ。
いや、むしろ気付くな。
つかいちいち叫ぶなって、頭に響く。
- 132 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/08/18(月) 14:27
-
「どうでもいいじゃん、ってか今人来てるから」
「冷たいなぁミキティは」
「美貴―?誰が来てるの?」
「こいつだよ、こいつ」
あゆみが来て美貴はよっちゃんを指差した。
「こいつって、吉澤さんじゃない」
「ミキティ、この人は?よしざーのこと知ってんの?」
一昨日の夜にお前がナンパしてた相手だろうが。
「吉澤さん、私のことナンパしてたでしょ」
あゆみがそう言うと思い出したのかよっちゃんは「あぁー!」と叫んだ。
「ごめんごめん。こんな可愛い子忘れるなんてよしざーどうかしてた!」
- 133 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/08/18(月) 14:29
-
「っておい、お前は何しに来たんだ」
今ここに来た本来の目的を完全に忘れてたな。
「あぁ、そうだった!ミキティは行かないの?」
「いや、行くよ。」
「そうこなくちゃ!」
「ご飯作るの面倒だし矢口さんとこで食べるよ」
「よしざーもそのつもり」
「あゆみは?行く?」
不意に話を振られたあゆみは「えっ?えっ?」と挙動不審な動きをした。
「行っていいんなら行くけど」
「是非来てよ!なぁミキティ!」
「うるさいから」
騒ぎ出したよっちゃんに一喝してあゆみに声を掛ける。
「来たかったら来ればいいよ」
「だったら行く!」
「よし、じゃ美貴着替えてくるから待ってて」
- 134 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/08/18(月) 14:30
- 嬉しそうな二人に背を向け美貴は部屋に戻った。
そしてまたいつもと同じ服に着替えだした。
ぱぱっと着替え終わり仕上げに帽子を被れば準備良し。
怪我もまぁ顔以外は上手く隠れているはずだし大丈夫だよね。
「よし。んじゃ行こうか」
外に出るとすっかり陽が落ちていて街灯の明かりが頼りなさ気に美貴たちを照らす。
残念ながら月は雲に隠されてしまっている。
- 135 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/08/18(月) 14:31
- にしても、まさか美貴が誰かと一緒に矢口さんの店に行くなんて想像もしたことなかった。
こうやって歩くのは悪くないし、別に嫌いでもない。
けど、どう言っていいのか美貴には分かんない。
楽しい?嬉しい?
どっちも何か違う。
美貴にとって楽しいのは喧嘩してる時で嬉しいのは強い相手と出会えた時。
じゃ、今は?
今の感情に名前を付けるならそれは何?
いつか分かる時が来るのだろうか。
この気持ちが何なのかって。
- 136 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/08/18(月) 14:31
-
「こんばんは矢口さん!」
「よぅミキティ!ってどうした怪我してるじゃんか!?」
矢口さんはかつてない勢いで驚いた。
やっぱり、こんだけの怪我は隠し切れないか。
「まぁちょっと色々ありまして」
ははは、と笑いながら言って誤魔化してみた。
- 137 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/08/18(月) 14:33
- 「誤魔化したって無駄だぞ、誰だ!誰にやられた!?」
「え、いや、あの」
「ミキティより強い奴がいるなんて!」
「いや、いませんから、って矢口さん?」
「安心しろミキティ!おいらが守ってやるから!」
ちょ、さり気なくなんてこと言ってくるんだこの人は。
けど、今はとにかく。
「…人の話を聞いて下さい!」
全くこの人は、興奮するとすぐ周りが見えなくなるんだから。
美貴より強い奴なんているはずないって矢口さんが一番よく知ってるくせに。
- 138 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/08/18(月) 14:33
- 「凄いね矢口さんって。こんな美貴初めて見た」
「よしざーも!」
笑いながらそう言ったのはあゆみとよっちゃんだった。
「おっ、よっすぃーも来てたのか!」
「こんばんは!」
「ゆっくりしてけよー!ってあれ?ミキティその子は?」
やっと落ち着きを取り戻した矢口さんがあゆみの存在に気付いた。
やっぱり今まで気付いてなかったのか。
- 139 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/08/18(月) 14:34
- 「昨日美貴が言ってた奴ですよ」
「あーこの子がそうなのか!初めまして、おいらは矢口っていうんだ」
「初めまして、柴田あゆみです」
にこやかに挨拶が交わされる。
美貴じゃこうはいかないだろうなってくらい。
「えっと柴田さんて学校とかで何て呼ばれてる?」
「?柴ちゃんとかって呼ばれてますけど?」
「よし、じゃおいらも柴ちゃんって呼ぶ!よろしく!」
「あ、はい。こちらこそ」
- 140 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/08/18(月) 14:35
- 挨拶も済んだようなので美貴は早速矢口さんに声を掛けた。
「矢口さん、お腹減ってるんでご飯お願いします!」
「ミキティはいつもの?」
「もちろんです」
「あはは。了解、二人はどうする?」
「よしざーは何でもいいです!」
「私も何でもいいですよ」
「そっか、分かった。じゃあ少し待ってな!」
早速矢口さんは食材を取り出し料理に取り掛かった。
「ね、美貴。いつものって何?」
「よしざーもそれ気になる」
カウンター席に座った途端あゆみが聞いた。
「美貴の好物。まぁ出てきたら分かるよ」
「ふーん、何だろ?」
- 141 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/08/18(月) 14:35
- 「お待たせ!」
しばらくして出来上がった料理を矢口さんが運んできた。
やばい、超いい匂いがする。
「まさか美貴それ全部一人で食べるの?」
「当たり前じゃん。いただきます!」
美貴に出された料理とは三人前はあろうかと思われる焼肉。
出された瞬間からばくばく凄い勢いで食べるもんだから二人とも驚いた様子だ。
- 142 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/08/18(月) 14:36
-
「よっすぃーと柴ちゃんはオムライスにしたけど大丈夫?」
「あっ、はい。じゃいただきます」
「うまいっす!矢口さん!」
すでに食べだしていたよっちゃんが盛大に「うまいっす!」を連呼した。
それにつられてあゆみも一口食べた。
「ほんとだ、凄くおいしいです!」
「当たり前じゃん、矢口さんの料理は最高なんだって」
美貴たちが料理をベタ褒めしていると矢口さんは嬉しそうに微笑んでいた。
すごく安心する、だって美貴たちを見る目が優しいから。
- 143 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/08/18(月) 14:36
-
「あ、忘れてた!ミキティに客来てたよ」
「来てたって今は?」
「なんか明日また来るって言って帰ってった」
「うわー待っときゃよかったのに」
心底そう思う。
怪我の痛みを忘れるくらいのことがしたかった。
今日はやられるだけやられたから本気で暴れたかったのに。
惜しいことしたなぁ。
- 144 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/08/18(月) 14:38
- 「ミキティ、この後もし客が来ても今日は大人しくしとけよ」
「え?なんでですか?」
「怪我してんだから当たり前だろ」
「えぇー、関係ないですよそんなの。美貴だったら右手だけで勝てますもん」
「おいらの言うこと聞けないのか?」
「はぁ、分かりました。今日は大人しくしてますよ」
「えらいぞミキティ!」
矢口さんはそう言って美貴の頭をわしゃわしゃ撫でた。
今までにもこうやって頭を撫でてくれているのは矢口さんだけだ。
- 145 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/08/18(月) 14:39
-
「なんかミキティと矢口さんって親子みたいだよな」
「うん、私もそう思った」
完全に忘れていた二人が口を開いた。
「「は?」」
見事にハモってしまった。
いや、それよりも親子?
じゃあ、矢口さんが母さんで美貴が娘?
それはさすがに矢口さんも嫌がるって。
「矢口さん美貴のこと可愛がってるし、美貴も懐いてるっぽいし」
「母親に甘える子供って感じ?」
ってそんな聞かれても。
つか懐いてるって美貴は犬かよ。
- 146 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/08/18(月) 14:41
-
「まぁおいらはミキティが娘でもいいけど?」
「へ?」
思わぬ発言に間抜けな声が出た。
だって、こんなんが娘だったら誰でも嫌でしょ?
いらないって、気味悪いって、言うのが普通でしょ?
だって美貴がこんなだから父さんも逃げ出して母さんもいなくなったんだ。
だから矢口さんも美貴を拒むんだと思ってた。
けど違った。
この人はどこまで信頼をくれるんだろう。
嘘みたいだけど矢口さんの目は穏やかでこれは嘘なんかじゃないんだって思えた。
- 147 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/08/18(月) 14:42
-
「あ、ありがとうございます」
本当に信じさせてくれて。
拒まないでくれて。
「よかったねー。美貴」
「…うん」
「あれ、美貴が素直だ」
失礼な、美貴はいつでも素直なんだって。
- 148 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2008/08/18(月) 14:43
- 「いいなぁ!ミキティ」
「うっさい」
「はは、やっぱ素直じゃなかった」
「なんでよしざーには冷たいんだよー!」
「気のせいだって」
「ぜってぇ嘘だぁー」
どうやら本気で落ち込んでるようだ。
そこまで落ち込まれると美貴ってば超薄情な奴みたいじゃんか。
- 149 名前:ニッケ 投稿日:2008/08/18(月) 14:50
-
放置すいませんでしたorz
少量更新ですが読んでやってください。
- 150 名前:名無し飼育 投稿日:2008/08/19(火) 01:02
- 更新お疲れ様です!
柴美貴・よしみき・やぐみきおもしろいです^^
マイペースでがんばってください
- 151 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/31(水) 21:42
- やっぱり、このお話はいいですね。
いろんなCPがあってどの組み合わせも自然だし(^w^)
まったりと待ってます。
- 152 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/21(土) 08:32
- みきしばなんて余りないので楽しみにしちゃってます。
他にもたくさんのCPがあるし。
更新を待ってます。
- 153 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/03/30(月) 17:04
-
下を向いて美貴たちに聞こえるか聞こえないか分からない程度の小言をぶつぶつ呟くよっちゃんを見て、居た堪れなくなったのかあゆみが話を変えた。
「そ、そういえば気になってたんだけど客って?美貴何か仕事でもしてるの?」
「あれ、話してなかったっけ?」
すると突然落ち込んでいたはずのよっちゃんが復活した。
「ミキティは”悪魔のミキ”って通り名があるくらいここらで有名な潰し屋なんだ!この前よしざーも潰されかけた!」
- 154 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/03/30(月) 17:04
-
はははっと楽しそうに笑って言うけど実際そんな愉快なもんじゃなかったよね。
あゆみが居なかったら美貴は本気でよっちゃんのこと再起不能にしてたし。
うん、きっと今頃は病院のベッドの上だったろうね。
「潰し屋?それ何?」
きょとんとしたあゆみが首を傾げながら聞いてきた。
「潰し屋ってのは……誰かを潰すんだよ」
「え、今明らかに説明飛ばしたでしょ」
「だって面倒なんだもん」
- 155 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/03/30(月) 17:05
- 「じゃあおいらが説明する。えっとね、目障りな奴が居るけど自分じゃどうにも出来ないって奴がミキティに依頼して自分の代わりにそいつを潰してもらうんだよ。つまりミキティは請負人ってわけ」
分かりやすい説明ありがとうございます矢口さん。
ホントすごく助かります。
「なるほど。じゃ吉澤さんのことも頼まれて潰そうとしてたんだ」
「うん、未遂に終わったけど。でもまぁ美貴と一緒だったら好き勝手に暴れたり出来ないから仕事は完了したみたいなもんだね」
- 156 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/03/30(月) 17:06
-
「そっか、あの時美貴は絡まれてた私を助けたわけじゃなかったんだね」
なんだ、と残念そうに言うあゆみに今度は美貴が首を傾げた。
確かに意識して助けにいったわけじゃない。
だけど結果的に言えばちゃんと助けたんだから残念がることないよね?
- 157 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/03/30(月) 17:07
- だが美貴が疑問の顔をしているのとは裏腹に何故か矢口さんとよっちゃんはニヤニヤしていた。
「へぇー柴ちゃんてそうなんだ」
「だからよしざーのナンパも通じなかったのかー」
そしてあゆみと美貴の方に視線を向けまだニヤニヤしたまま何やら意味深なことを言う。
何だ?そうなんだってあゆみがどうしたんだろう?
とりあえずよっちゃんのナンパがどうこうってのは関係ないと考えていいか。
- 158 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/03/30(月) 17:07
-
「ちょ、違いますよ!」
あゆみは顔を赤くして何かを否定しているし。
まじで何なんだろ。
なんか美貴、分からないことが一つ増えた気がする。
じぃーとあゆみを見てたらバチっと目が合った。
その瞬間あゆみはさっきよりもさらに顔を赤くした。
どうしたんだろ、もしかして風邪とか?
- 159 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/03/30(月) 17:08
- 「あゆみ、顔赤いけど熱でもあんの?」
熱でも計ろうかとあゆみの額に手を伸ばしたら急にあゆみが立ち上がった。
「あ、うん!私熱あるかもしれないから先に帰るね!矢口さん会計お願いします!!」
「お金はいいよ。それより頑張って!敵は手強いぞ」
矢口さんはニッコリ笑ったかと思えばまたさっきのように意味深なことを言ってニヤニヤ笑い出した。
「だから違いますってー!とにかくご飯ご馳走になりました。また来ますね。み、美貴と吉澤さんもまた明日ね!」
そう言って慌てた様子であゆみは帰っていった。
- 160 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/03/30(月) 17:12
- やっぱり風邪だったのかーと思っているとよっちゃんに話しかけられた。
「ミキティ」
「ん?何?」
「彼女、大事にしなよ?」
今度はさっきまでのニヤニヤした笑い方じゃなく、何と言うか微笑んだ感じの笑い顔だった。
もう本気で意味が分からないんだけど。
そしてしばらく談笑したあと美貴とよっちゃんも家に帰った。
- 161 名前:ニッケ 投稿日:2009/03/30(月) 17:22
- 最初に謝ります。
本当にすいませんでしたぁぁ!!
長いことお待たせした上にこんな少量更新で申し訳ないです…orz
>>150 :名無し飼育さん
>>151 :名無飼育さん
>>152 :名無飼育さん
ありがとうございます!
本当、待っていてくれる方がいるだけで幸せに思います。
というか一括ですいません。
それと、最後に藤本さん、婚約おめでとうございますm(_ _)m
- 162 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/06(月) 18:33
- やった(≧∇≦)
柴ちゃんが可愛すぎです。
そしてミキティが…。
周りもいいし、続きがまた待ち遠しいです。
- 163 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/12(日) 21:47
- 続き待ってます。
- 164 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/09/07(月) 16:40
- 翌朝、美貴はいつものように鏡の前で気合をいれ家を後にした。
家を出てからふと気付いた、今日はあゆみもよっちゃんも一緒じゃないんだと。
美貴一人、か。
って何を寂しがってるんだ美貴は!?
たった二日誰かと一緒に学校に行っただけなのに何でだ。
よっちゃんのことだって完全に信用してなかったはずなのに。
あぁもう、絶対美貴おかしくなってるって!
- 165 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/09/07(月) 16:41
- 「ミキティおはよー!」
背後からだだだっと走る音と共に声が聞こえた。
よっちゃんだ。
「あ、あぁうん、おはよ」
さっきまでの考え事のせいで歯切れの悪い挨拶になってしまった。
だが、よっちゃんは嬉しそうに口を開いた。
「さっきミキティ迎えに家行ったんだけどもう居ないっぽかったからここまでめっちゃ走ってきたんだぜー!」
間に合ってよかったー、と手で顔を扇いでいる。
- 166 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/09/07(月) 16:42
-
なんだ、今日も迎えに来てたんだ。
じゃ一人で学校行かなくていいんだ。
ってだから!何そこで安心してんだ美貴は!?
「おーいミキティ、すげぇ怖い顔になってるけどどした?よしざー何かした?」
「なんでもない。考え事してただけだから」
「そっか!なら良いんだ!」
そしてまたにかっと爽やかに笑った。
- 167 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/09/07(月) 16:44
- 「あっ!美貴に吉澤さんおはよう!」
校門に差し掛かった辺りで声を掛けられた。
振り返ってみればあゆみと石川が居た。
「おはよ、あゆみ。あ、石川さんも」
「ちょっと美貴ちゃん!柴ちゃんは名前で呼ぶのに何で私は“さん”付けなのよ!?昨日ちゃんと梨華ちゃんって呼んでって言ったじゃない!あとその怪我はどうしたの!?」
あーうるさいなぁ。
一度に全部喋られたら答えるの面倒だろ。
- 168 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/09/07(月) 16:45
- 「あ、ねぇ。あゆみ風邪は大丈夫?」
まだ何かキィキィ言ってるけどとりあえず今は無視という方向で。
「えっ、あぁうん全然平気!」
「それなら良かった。昨日、顔が赤かったからちょっと心配だったんだよね」
にこっと笑えばあゆみはまた顔を少し赤くさせた。
「また顔赤くなってるけど本当に大丈夫?」
「柴ちゃん風邪なの!?」
「ちょっ、違う違う!ちょっと暑いだけだけだから!」
- 169 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/09/07(月) 16:46
- 「無、「無理しちゃ駄目よ!」
おい石川、それは美貴が言おうとした台詞だ。
何被らせてきてんだよ。
そうキレたいところだが、今ここでその思いは叶わない。
- 170 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/09/07(月) 16:47
- 「おいっ!ミキティっ!あの子誰だよ!」
今まで静かだったよっちゃんに引っ張られ、二人から離れたところでこそっと訊ねられた。
「あの子って石川のこと?」
「石川、下の名前は?」
「梨華、あゆみの友達だよ」
「石川梨華、ね。さんきゅミキティ!」
ほんと急に何なんだ?
血相変えて訊ねてきたと思ったら今度はニヤけ出すし。
- 171 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/09/07(月) 16:53
- 「何?よっちゃん、あいつボコる気?」
「ちっげぇーよ!その逆だよ!」
……逆?
「ってつまりどういうこと?」
「だぁぁ!つまり惚れたんだよ!一目惚れってやつだよ!!」
「…はぁ?あんなキショくてうるさい奴のどこが良いのさ」
「かわいいじゃん!」
内心、そうか?と思ったが浮かれているよっちゃんを見て言うのを止めた。
たぶん今美貴が何か言っても聞こえないだろうな。
美貴は呆れて軽く溜め息を洩らした。
- 172 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/09/07(月) 16:55
- 「ねぇ、さっきから何の話してるの?」
はっと振り返るとすぐ後ろにあゆみと石川が訝しげな顔をして立っていた。
やば、全く気が付かなかった。
あ、でもまぁ美貴にとって今の話は何の都合も悪くないから別にいっか。
「なんかよっちゃんが石川、じゃなくて梨華ちゃんのこと教えろって」
「吉澤さんが?なんでまた梨華ちゃん?」
「ようやく美貴ちゃんが私の名前呼んでくれたわ、って、え!?吉澤って噂の転校生の吉澤ひとみ!?ど、どうしよう!!」
- 173 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/09/07(月) 16:56
- 泣き真似したりパニクったり、一人で騒がしい奴だなこいつは。
どうしよう、って何をどうするつもりだ。
ってかさっき会った時点で気付けよ。
ほんとツッコミ所満載だな。
「何何?よしざーのこと知ってんの?」
そんでこいつは嬉しそうだな。
「知ってるも何も学校じゃ有名よ!?」
「そっかそっか、よしざー有名なのか!まいったなぁ」
うわ、さらに嬉しそうだよ。
何が“まいったなぁ”だ満更でもないって顔してるぞ。
- 174 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/09/07(月) 16:57
- 「えっと、とりあえず教室入らない?そろそろ先生が来ちゃうよ」
ナイス、あゆみ!
とにかく美貴は一刻も早くこの場から立ち去りたかったよ。
この二人の声がでかすぎるから目立っちゃって仕方なかったんだよね。
「おーい、騒いでないで早く教室入れー。授業始めるぞ」
言った傍から来たじゃねぇか。
- 175 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/09/07(月) 17:04
- 「すみません」
軽く謝り教室へ入ろうとしたのだが、先生に肩を掴まれそれを制止されてしまった。
「ふ、藤本!どうしたんだ、その怪我は!?」
「えっと、昨日学校の帰りに絡まれまして」
無難な答えで何とか誤魔化してみた。
"先輩たちにやられました。"
なんて言ったらまた変に目立って、余計に面倒なことになりそうだから。
出来ればこれ以上面倒事を増やしたくない。
「学校に来て大丈夫なのか?何なら今日は休んでも良かったんだぞ?」
「いえ、本当に大丈夫ですので」
「それなら良いんだが、じゃあ何かあったらすぐ先生に言うように」
「はい、分かりました。有難うございます」
先生に一礼し、美貴はようやく教室に入った。
いちいち大袈裟なんだよな。
ほんと教師ってうざったい。
- 176 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/09/07(月) 17:06
- 「ね、美貴」
「ん?何?」
先生に見つからないようにこっそり話し始めた。
「凄いね、美貴に対する先生の心配の仕方。あれたぶん美貴にだけだよ」
「あぁ、そうだろうね。だって学校一の天才に何かあると困るのは学校側だし」
今のだって藤本美貴を心配したわけじゃない。
天才と呼ばれる美貴の能力だけを心配していたのだ。
だからうざったいんだ。
思わず自傷気味な笑いが零れた。
- 177 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/09/07(月) 17:08
- 「あ、ごめんね。そんなつもりで言ったわけじゃないから」
あゆみは申し訳なさそうな顔をしてシュンとしてしまった。
「いいよ別に。それに美貴のこと本気で心配してくれる人いるしね」
「え?それって矢口さん?」
「いやまぁ矢口さんもだけど、あゆみも美貴のこと心配してくれてたじゃん」
あれは違ったの?と聞けば全力で否定された。
「すっごい心配したんだから」
「んじゃあ問題ないよ」
- 178 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/09/07(月) 17:08
- 「こらそこ!私語は慎む!」
やべ、見つかった。
「すいません!」
「すみません」
まずったなぁ。
完璧な“優等生の美貴”だったら私語なんて有り得ないはずだ。
そもそもこの美貴がそんなヘマするわけがないのに。
いけない、これは気持ちが緩んできてる証拠だ。
今の美貴はゲームオーバー寸前じゃないか。
あぁもうまじで気を付けないと。
- 179 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/09/07(月) 17:10
- 「まぁいい。柴田、この問題解いてみろ」
私語をしていた罰と言わんばかりに先生はあゆみを当ててきた。
黒板に書かれているのは[x+1/x=5であるとき、x^2+1/x^2=(@)、x^3+1/x^3=(A)である。]という空欄補充問題だった。
「えっ!私ですか?」
「それ以外誰がいるんだ。ほら早く答えろ。授業を聞いていたら分かる問題だぞ」
あゆみはうぅ、と小さく唸ってちらりと美貴を見た。
- 180 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/09/07(月) 17:11
- もしかして分からないとか?
美貴はノートに答えを書いて先生に気付かれないよう小さな声であゆみを呼び先ほど書いた答えを指差した。
「えっと、@が23でAが110です」
どうやらちゃんとノートに書かれた問題の答えを確認できたようだ。
「…正解だ。これからは私語に気を付けるように」
先生は簡単に答えられて面白くなさそうな顔して問題の解説へと移った。
答えられなかったら何かとグチグチ言うつもりでいたんだろうな。
- 181 名前:仮面の下には冷笑を 投稿日:2009/09/07(月) 17:19
- 「ありがと、助かった」
「どう致しまして」
そして、もう注意されるのは勘弁だ。
とばかりにあゆみは苦笑して前を向いた。
美貴も同じように前へと向き、いつものように無心でノートを取りはじめた。
早く終わんないかなー。
- 182 名前:ニッケ 投稿日:2009/09/07(月) 17:36
- やっと更新しました。
次の更新はいつになるのか自分自身分かりません←
ですが、必ず続きを書きますのでそれまでお待ち頂ければ幸いです。
>>162 :名無飼育さん
柴田さんが可愛く書けていると聞いて安心しました。
ありがとうございます!
>>163 :名無飼育さん
お待たせして申し訳ありませんorz
これからも不定期更新になることが多いですが気が向いたときにでも覗いて下さい。
- 183 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/16(水) 13:03
- 久しぶりに覗いてみたら更新きてたー!
この話、好きなんで次の更新も待ってます♪
- 184 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/17(土) 22:28
- 更新、ありがとうございます。 待ってて良かったです(^w^)
またまた、イイコに待ってます!!
- 185 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/03/25(木) 23:27
- 今年も更新を待ってます
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