青いベンチ
1 名前:アイサー 投稿日:2005/03/25(金) 15:56
どうも、白板で微妙なの(爆)書いてます、アイサーと申します。
最近キテマースな田亀を書きたいなーと思い衝動書き(何
駄文ですが付き合ってくださったら幸いです。
2 名前:青いベンチ 投稿日:2005/03/25(金) 16:09
「ん、れな、青がいいけん。」

久しぶりに二人で買い物に来た。
しばらくブラブラして、何かペアルックのものでも買おうか、と、アクセサリー売り場にやってきた時だった。
れいなが、あるアクセサリーを指さして、そう言った。
「青ぉ?」
ハイビスカスみたいな花を模った装飾、目立つものはそれだけで、あとは青と白のスケルトンビーズが連なっている。
まぁ、実にれいならしい。
「青、好きなんだ?」
「うん、オレンジが一番やけど、色が無いけん、青。」
いや、オレンジならその隣に別な種類のが・・・。
「こっちは?」
「ダメ、こっち。」
でも、れいなは基本的に、暖色系が好きだ。
同じ種類の赤いのが、れいなの指さした隣にあった。
「れーな、赤も好きでしょ?」
「うん。やけん、赤は・・・」
そこまで言って、急に言葉に詰まる。
心なしか、ほっぺがほんのりピンク色。

「赤は、絵里に・・・好きな人につけてほしいけん。」
・・・え、う・・・。
たぶん吉澤さんあたりならさらっと言えてしまいそうな、そんなセリフも、
れいなは耳まで真っ赤にしてやっとの思いで搾り出す。
そんなところが私にとっては、もうたまらなくカワイイ。

いつの間にか両想いで、いつの間にか付き合っていた私たち。
れいなは、今よりも100倍赤い顔して、私に告白した。

『絵里・・・好きやけん。・・・ばり好いとぅ。』

赤くなってるれいなを見てると、その時の光景がフラッシュバックされて、顔がニヤケてくる。
「絵里?どげんしたと?」
「んぁっ?何でもない。・・・じゃ、コレ買おっか。」
「うん♪」
もぅ、そんな笑顔もカワイイ。
私が自分よりカワイイと認めてるのは、れいなだけなんだからね。
で、私が二番目、さゆはその次ぃ。
私は赤を、れいなは青を手にとって、それぞれレジへと持っていく。
3 名前:アイサー 投稿日:2005/03/25(金) 16:10
田亀じゃなかった・・・
亀田だった・・・(誰
世にも珍しい絵里攻めでした。ウソついてすいません(爆
4 名前:青いベンチ 投稿日:2005/03/25(金) 16:19
「絵里とお揃いー、なー、似合う〜?」

店を出てからも、人ごみの中で嬉しそうに手首を掲げるれいな。
キラリ、と光る青。
「うん、似合う、似合う。キレイだよ。」
「えへへ、絵里のもよぉ似合っとうよ。」
ニコニコ。
今のれいなの様子を言葉にするとしたら、それしか思い浮かばなかった。
白い服に青のビーズが、よく照り映えていた。
気まぐれ猫さん、今日は上機嫌。
私より半歩前を歩くれいなが、三秒も間を空けずにこっちを振り返る。
世の中全てバラ色に見える、といった表情。
でも、当然のことながら、前から来る大柄な人に、れいなは気付かないわけで。

「あ、れい・・・」
「ん?・・・うぁっ?」

我ながら完璧なるミステイクだった。声かけるのが遅すぎた。
れいなの小さな体が、大きな人の一歩前によって、たったそれだけで、ぽん、と飛んだ。
半歩の距離が、一気に私の元へと舞い戻ってきた。
「わ・・・れいなっ」
「え、絵里、どきぃっ!!」
5 名前:青いベンチ 投稿日:2005/03/25(金) 16:26
ごちっ

れいなの叫びはむなしくも、不本意な効果音にかき消された。
何か示し合わせたかのように、れいなと私の額は、仲良くごっちんこしたのであった。
「っ、いてぇーな、前見て歩け!ったく・・・」
大きな人のグチる声が聞こえた気がした。

「うっ・・・ぐぐ・・・いったぁーい・・・れーなの石頭・・・」
「なんば言うとか、絵里のがカタかったばい・・・」
頭に、いやに響くじんじんが残る。
患部を触ってみる。一瞬ピリッとしたけど、たんこぶはできてないみたい。
「う〜・・・もう最悪・・・」
手をついて立ち上がろうとした。

が、私はある異変に気付いた。

右手にしていたはずの、あの赤いアクセサリーがない。
そして、まるでその代わりとでも言うように、左手に青いアクセサリーがついている。
・・・?おかしいな・・・。
れいなのが青、で、私のは赤だったはず・・・?
「あ・・・う?絵里?」
れいなも異変に気付いたのか、不思議そうな声をあげる。
しかし、移した視線の先にあるはずのれいなの姿は、何か違っていた。

・・・てゆーか、私がいる。
6 名前:アイサー 投稿日:2005/03/25(金) 16:27
ひとまず終了。
感想・苦情(爆)・アドバイスなど頂けたら幸いです。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/25(金) 17:14
あぁ…wと思わずにやけてしまいました。
期待してますので、頑張ってください♪
8 名前:青いベンチ 投稿日:2005/03/26(土) 11:03
「れなが目の前におる・・・じゃ、今れなは何やっとうと?」
そう、博多弁で喋ったのは、やっぱり目の前の私だった。
何で私が博多弁で喋るの?
「え・・・れいな?」
「うわ!もう一人のれなが喋った!」
私の言葉に反応する私。あーもう、ワケわからん。
でもとにかく、目の前にいる私は『れいな」だってことがわかった。
「いい?れいな、落ち着いて聞いてね?」
「なん?お前、標準語喋っとうと?」
どうやら目の前のれいな(姿は私)は、自分がもう一人いると思ってるらしい。
「あのね、私、絵里なんだけど・・・」
「は?」
うん、わけがわからないのもそりゃ当然のこと。
私も「は?」って感じだけど。
でもここは、この状況を理解して、飲み込むことが重要と考えた。
そのためには、まず二人して座り込んで、道の真ん中で人々にイタイ視線を浴びせられている
この状況から、抜け出すことが必要だ。
「れーな、あっち行こ。」
「え?・・・うん。」
猫のような警戒する瞳。

れいなと一番最初に会った時に向けられていた瞳だ。
その瞳を見ていると、とても悲しくなる。
少なくとも、姿はれいな自身で、中身は絵里だっていうことが信じられなくても、
「自分」にそんな瞳を向けるのは、どんな気分なんだろう。
まぁ最も、私の顔が顔だから、それも幾分か和らいでいるのだけども。
9 名前:青いベンチ 投稿日:2005/03/26(土) 11:24
「いい?れーな」
適当な路地に入って、れいなの肩を掴む。
れいな、もとい私の眉が、いっそう険しくなる。
私ってこんなコワイ顔できたんだ・・・
「これは私の考えなんだけど、私たちきっと、入れ替わっちゃったんじゃないかなって。」
「は?なん言うとるとや?んなわけなかろぉもん。」
やっぱり・・・信じてない。
「ホントだって。手首見てみな。」
言われてから初めて気が付いたように「あっ」と言って、もちろんれいなは、自分を信じて左手を見る。
でも、れいなの左手についている青のアクセは、残念ながらそこではなく、
私の、れいなのカラダの、左手首についている。
「無いっ!絵里のがついとぉ・・・」
左手首と右手首を見比べて、そして右手首の赤を見て、がっくりとうなだれる、れいな、もとい、私。
「だから、そういうことだからさ、えっとぉ・・・」
「明日も仕事やけん、どげんする?」
うわ、早速立ち直りが早いのね。
私は明日のことより、今日家に帰ってからのことの方が心配なんだけど。
「ん、明日のことはとりあえず、れーなが私っぽく喋ればいいし、私がれーなっぽく喋ればいいし・・・」
「なっ!?絵里の舌の足らん喋り方なんてできんっちゃ!」
いや、だってすでに舌足りてないし。
自分の喋り方に舌が足りてるってことに、さっき心の片隅でちょっと感激したってのに。

れいなの博多弁が・・・「〜ちゃ」が「〜けん」が「〜と」が舌っ足らず。
こんなにも・・・こんなにも・・・

素 晴 し い 喋 り 方 が あ っ た な ん て ! !

れいな・・・私さっきから必死なのよ?
こみ上げてくる何かを抑えて、××して○○して△△したい衝動を必死に・・・(略)
「とっ、とにかく、家でのことを考えない?」
「あぁ、それもそうやね。方言出さんようにせんと。」
うぅん・・・大丈夫・・・じゃなさそう。
10 名前:青いベンチ 投稿日:2005/03/26(土) 11:29
「絵里、れないっつも家で方言バリバリやけん、頼むっちゃ。」
「えぇっ!?」
そっ、そんなっ、関西弁ならまだしも、博多弁はわかんないよぅー。
「なん?もしかしてわからんと?れなとこんなに一緒におるのに?
ぐ・・・そう言われると返す言葉がない・・・。
し、しかも心なしか涙目!?私って涙腺ゆるいんだったナァ・・・。
れいなの場合、演技なんて絶対ないから、くぅ、負けた・・・。
「わっかるよぉ〜当ったり前でしょぉ〜?」
「だよね。余計な心配したっちゃ。」
そして、その日最高と思われる笑顔。これは裏切れない。
11 名前:アイサー 投稿日:2005/03/26(土) 11:30
更新終了。

>>7
レスどうもです!
ニヤケてもらって光栄です(笑
これからも頑張ります!
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/26(土) 21:26
ヤバイ、ハマった
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/26(土) 22:19
おもしろいですよ〜
頑張ってくださいね♪
14 名前:青いベンチ 投稿日:2005/03/26(土) 22:57
「ん・・・じゃ、ばいばい。」
「ん、また。」

何となくドキドキする気持ちを抑えながら、夕方の5時頃、れいなと別れた。
強がってみたはいいものの、わけわかんないこと喋られたらどうしよう。
安倍さんみたいな、「ザンギ」とかいう意味不明な単語を並べられるんだろうか。

もちろん、完璧に覚えている田中家への道のりを、てくてく、延々と歩く。
はぁ、って、大きな溜息。
れいなのお父さん、お母さんとは、よくおじゃましてるからそこそこの仲だけど、
まさかそんな、博多弁で会話を交わしたことなんてあるわけない。
れいなの家は、別れた場所から徒歩で帰れるくらい近いところにある。
一駅電車に揺られて帰らなければならない私の家とは、かなり距離がある。
もう目の前に見えるれいなのマンション・・・。
大きな扉を押し開けると、オートロックのインターフォンがある。
れいなの家の番号を押す。『呼出』。

ピーンポォーン・・・

間延びしたチャイムの音。
その音を合図に、私の心臓は高鳴り始める。
そっ、そういえば、れいなのカバンの中に、鍵くらい入っていたんじゃないかと、今更ながら思う。
不審?私ってちょっと不審?

カチャ

心臓が高く飛び跳ねた。
『・・・はい?』
ちょっと訛ったお母さんの声。
「あ・・・とぉ・・・お母さん?」
『れいな、どげんしたん?鍵持っとるじゃろ?』
うぁう、やっぱり来た。ここは、この亀井様の素晴しき言い訳能力で・・・
「イチイチ出すのメンドかったから。開けて?」
『ふん・・・今開けるけん。めんどくさい言うとらんで自分で入ってくるようにせぇよ!』
そして、ガーッと開く自動ドア。あぁ・・・助かった。
15 名前:青いベンチ 投稿日:2005/03/26(土) 23:11
しかし、最大の難関はその先に待ち受けていた。

私は今、れいなの家の、一枚ドアを隔てた外側にいる。
鍵はきっと開いているだろう。
廊下を歩いてくる時に、「ガチャッ」て聞こえたし。

手に汗をかく。むしろ全身に冷や汗をかいている。
その時、ある意味でタイミングよく、れいなの携帯が鳴き出した。
ぅおっ、この着メロは・・・普通だった。
てっきり私の着声とかだと思ってたのに。

「・・・もしもし?」
『あ、絵里?れなもう家着いたけん。』
「えっ!?もう着いたの!?」
じゃあ私は電車一駅乗ってる間中、ずっとドアの前に立ってたってコトか・・・。
『なん?まさかまだ着いとらんと?』
「う、うん・・・まぁ・・・」
『どげんしたとね?』
この様子だとれいなは、何の躊躇もなく亀井家の敷居をまたいだんだろう。
嬉しいような、むなしいような・・・
『まさか、家に入れんと、ドアの前におるんじゃなかね?』
「ぐっ・・・」
『はぁ・・・絵里のアホ。はよ入らんと、風邪引くっちゃよ?』
そう、そうだよね。れいな、心配してくれてんだ・・・。
『れなの体なんやけん、大事にするとよ?』
・・・しまった、れいなはそんなタマじゃなかった。
「わかったよ。れいなが風邪引くといけないから、入るよ。」
『ん、よろしい。じゃ、切るけんね。』
夢もロマンもないって言うか・・・。
でも、やっぱり舌っ足らずな博多弁は最強だね、和む。
私は一つ大きく息をして、ドアノブに手をかけた。

・・・が、待ち構えていたかのように向こうからドアが開いた。
おかげで、したたかにおでこを打ち付けた。
「ぅぐ・・・」
「なーにやっとんね、バカちんが!はよ入るっちゃ!」
16 名前:青いベンチ 投稿日:2005/03/26(土) 23:16
顔を出したのはれいなのお母さんだった。
私が携帯で喋っているのを聞いたのだろう。
「絵里ちゃんばこと好いとぅのはわかるけん、ばってん、玄関の前でそげなこつされたらこっちだってたまらんっちゃ。」
うぁう。早速全開な博多弁。
そうときたら、私も何とか博多弁で返さなくちゃ・・・。
「や、しょうがないやろ、電話かかってきたんやけん。」
「まったく・・・はよ入るっちゃ。」
ふぅ。我ながら見事な切り返し。
何だ、意外と簡単なのね、博多弁。やっぱれいなと一緒にいるから?

私はおずおずと中に足を踏み入れた。
17 名前:アイサー 投稿日:2005/03/26(土) 23:18
更新終了。

>>12
レスどうもです!
うわぁ・・・ハメちゃった♪(何
もっとハマっていってくれると嬉しいですw(笑

>>13
レスどうもです!
おもしろいですか?
ありがとうございます!
チマチマな更新になると思いますが気長に待っててやってください。
18 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/27(日) 13:38
更新お疲れさまです。 一気に読まさせて頂きました。 亀田ですか、しかも設定がかなり好ましいと分かり、少し早いですが最後までお付き合いさせて頂きます。
19 名前:青いベンチ 投稿日:2005/03/27(日) 16:55
当たり前だけど、れいなの匂いがして、それと晩ご飯のカレーの匂いが混ざる。
私んちは昨日カレーだった。タイミングの悪い・・・。
「はよ着替えんしゃい。晩ご飯出来るとよ。」
「・・・はぁい。」
廊下の突き当たりがれいなの部屋。
ドアを開けると、まぁ至極当たり前といった感じで、原色系の部屋がのぞく。

サイズの小っちゃそうなコート。
朝、大急ぎで起きたあとのあるベッド。
何ものっかっていない勉強机。

全てがれいなの匂いに包まれていて、れいなのぬくもりがあった。
今は、私がれいなだけど、ホントのれいなは私になっていて・・・。
部屋の中のモノたちは、ホントウの主人の帰りを待っているように見えた。
それでも、今日から、いつまでここが私の部屋になるのかわからないけど、
たぶん一番落ち着く空間になるはずだから、早く慣れないとね。
・・・博多弁にも。
20 名前:青いベンチ 投稿日:2005/03/27(日) 17:00
食卓につくと、いい加減昨日で嗅ぎ飽きた匂い。
何てーの、心が通じ合ってるようで通じ合ってないわけ。微妙だよれいな・・・。
「それにしてもれいな、アンタいつから『お母さん』って呼ぶようになったとね?」
「えぇ・・・」
そうだった、インターフォンの時「お母さん」って呼んじゃった。
れいなは、「パパ」、「ママ」って呼んでるんだった〜!!
「いや・・・その、ちょっと魔がさして・・・」
「ヘンな奴っちゃね。・・・ほら、できたとよ。」
れいなのお母さん、いや、ママが、カレーの皿を目の前に置いた。
21 名前:青いベンチ 投稿日:2005/03/27(日) 17:19
晩ご飯を食べ終わって、さてお風呂に入ろうと思ったその時だった。
!れいなの体なんだ・・・おっ、お風呂っ!?
しまった、しまったぁあ〜っ!!
どう・・・どうしよう、れいなのハダカ!?恥ずかしくて見れない〜っ!!

私は一人パニックに陥って、頭を抱えた。
・・・そういえば、れいなはどうしてるだろう。
そう思って、れいなの携帯を取り出す。メモリには「絵里」。
あぁ、どこまでもシンプル。(はぁと)とかつけてくれてもいいのに。
さすがにそれは、れいなだから無いだろうけどさぁ。

通話ボタンを押す。三回目のコールで早くも出る。
『もしもし?』
「もしもし?れいな?今何してる?」
『ん?今?お風呂入って、寝よかなーって思ってたとこ。明日早いけん・・・』
「お風呂っ!?入ったのっ!?」
『えっ・・・うん・・・』
ぐはぁ、そんな、何の恥じらいもなく入ったのね、れいな。
何というか、さすが中学生?っていうか、もうすぐ高校生だけど。
『・・・絵里、もしかして今度はお風呂入れんと困ってるとね?』
「はい、ズバリその通りです。」
受話器の向こうで、れいなの大きな溜息が聞こえた。
や、だって意識しちゃうじゃん。私まだ青い春を満喫してるとこだし、そんな・・・
『そんなん言ってたら、着替えも何もできないっちゃろ。はよ入れ。絵里のアホ。』
着替えと言われればそれもそうだけど、いや、それもまたお風呂とは違う。
『れな、汚いまんまは嫌やけん、はよぅ』
「・・・わかったよう。」
『・・・でもあんま見んなよ。』
『はいはい。わかってるって。そんな、ハズイなぁ・・・」
『絵里、やらしかもん。れなの体に何されるか、わかったもんじゃないっちゃ。』
「ハァ!?いくら何でもそれって・・・」
『とにかくっ!明日早いけん、はよしてね。・・・それと、絵里の着メロ変だっちゃ。』
れいなはそれだけ言うと、一方的に切ってしまった。
私の着メロ・・・あ、「FIRST KISS」だった。
じゃああれはれいなの照れ隠しか、なんて思ったら、またニヤケてきた。
まぁとにかく、れいなの言う通り、入らないわけにいかないから、
私は終始目線を上に向けてお風呂に入った。
おかげで、シャワーなのに一時間かかった。
22 名前:アイサー 投稿日:2005/03/27(日) 17:21
更新終了。

>>18
レスどうもです!
けっこうありがちだと思うんですが(爆)、そう言って貰えると嬉しいです!
これからも頑張ります。
23 名前:青いベンチ 投稿日:2005/03/28(月) 11:15
お風呂からあがると、すでに時刻は22時をまわっていて、れいなのママが夜の歯磨きをしていた。
「フェいな、あふぃた、ふゃひゃひんっひゃほ?ふぁよ、ふぇんひゃい。」
博多弁より難解な歯磨き弁を、私の脳は理解してくれなかったらしく、
また、理解する気もなかったらしい。
私は多少悪いと思いつつも、れいなママの前を素通りした。

ぱたん

一瞬にして、テレビの笑い声と、歯磨き弁から解放され、静寂に包まれる部屋。
ただ、時を刻む音だけが、「チッ、チッ」と短い声を発している。
ベッドに倒れこむ。れいなの体は軽いから、キシッと小さく音がしただけだった。
れいなんちのシャンプーの香り。
「ふはー・・・」
少し睡魔が襲ってくると、明日のことが頭をよぎる。
ある程度の博多弁でトーク。
亀井絵里みたく天然キャラではいけない。

・・・そして、今までより5cm、目線が低い。
棚の上のモノに手が届かなかったり?吉澤さんあたりに取ってもらったり?
・・・れいなって大変だったんだなぁ・・・。
これからは背のことでからかわないようにしよ。なるべく。

そこまで考えて、私の意識は闇に飲み込まれていった。
24 名前:青いベンチ 投稿日:2005/03/28(月) 11:21
「あ、絵・・・れいな。おはよう。」
「おはよう、れ・・・絵里。」
朝からいびつな挨拶。
自分の名前を呼ぶなんて、まぁなかなか間抜けなことだ。
れいなもどこか恥ずかしそうにしている。
あぁ、れいな。今日はれいなが亀井絵里、私が田中れいなでがんばるんだよ。

(絵里、博多弁ちゃんと練習したっちゃが?)
(したした。れいなこそ、ちゃんと標準語喋ってよ。)
誰かに聞かれると、ワケわからんことこの上ないので、私とれいなは、ヒソヒソ声で話す。
それにしても、れいなの目線で私の姿を見上げるというのは、今更ながらすごく新鮮な感じがする。
れいなもきっと、自分の姿を見下ろして不思議な感覚を覚えているだろう。

(・・・ねぇ、絵里)
(ん?)
(・・・れいなって、チビっちゃね・・・)

・・・やっと気付いたんだ・・・。
25 名前:青いベンチ 投稿日:2005/03/28(月) 11:34
なんて正直に言ったら張り倒されそうだし、今は私の方がチビになってるわけだし。
(絵里って・・・デカイっちゃね。)
(えぇ?)
れいな、私だってそんな大きい方じゃないんだよ。
ただ、ただれいなが普通よりも小さいだけなんだよ。
って、あぁ!言っちゃった!心の中とはいえ言っちゃった!
(・・・絵里?)
(あっ、やっ、何でもない。)
ごめんよ、れいな。
絵里は、また一つ悪に近づいてしまいました。
そして、私たちの目の前にもう一つ近づいている恐ろしいもの。

・・・楽屋。
ここをどう切り抜けるかが問題。
メンバーにカミングアウトしちゃってもいいんだけど、信じてもらえるかどうか微妙だ。
おまけにそんなことすると、みんなを混乱させちゃいそうで困る。
・・・それに、こんなこととはいえ、れいなと二人だけの秘密だし・・・。
何となく、それが嬉しいから。

「・・・里・・・絵里」
「んっ?」
れいなが、怪訝そうな顔で私を覗き込む。
かなりボーっとしていたみたいだ。れいなの瞳の色が深まる。
「・・・ついたけん、開けて。」
気がつくと、目の前に楽屋の入り口が迫っていた。
私たちはその前に、二人してつっ立っている。中からは賑やかな話声が聞こえる。
あぁ、あの声はまこっちゃんだ・・・たかぁしさんと喋ってる・・・。
石川さん・・・さゆの声もするなぁ。吉澤さんは藤本さんと。
矢口さんの笑い声。ガキさんの驚いたような声。
飯田さんとこんちゃんは、また交信まがいのことでもしてるんだろう。
みんなの楽しそうな声を(交信内容はさすがに読み取れない)聞いていると、ますます入りづらくなる。
しかし、れいなはかまわず私の背中をつんつんする。
(私が開けるの?)
(当たり前っちゃろが。はよしんしゃい。)
(何ば言いよっとですかあなたは?)
私たちはまたヒソヒソ声に戻って談義。
心なしか、れいなの姿で博多弁を喋ると、イントネーションが正確な気がする。
26 名前:アイサー 投稿日:2005/03/28(月) 11:36
更新終了。
歯磨き弁を解読した方にはハワイ旅行(嘘
27 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/28(月) 13:51
分かりましたよ、歯磨き弁w
この話、面白いです。
これからも頑張ってください!
28 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/28(月) 15:17
12の者です
歯磨き弁、ムズいっす
メンバーの前で、ちゃんと振る舞えるのかなぁ?
P.S.スゴイ面白いです
29 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/29(火) 01:48
更新お疲れさまです。 歯磨き弁解読不能でした(T_T) でも引き続き解読に取り掛かりたいと思います。 二人は乗り切れますかね?次回更新待ってます。
30 名前:青いベンチ 投稿日:2005/03/31(木) 16:19
(れいな開けてよ)
(何でれなが。絵里年上っちゃろ。)
(れいな年下でしょ)

まぁ同期だから、上も下もないんだけど、もし私たちが同じ中学にいたら、
れいなは私を「亀井先輩」って呼ぶことになる。
・・・呼ばれたいなぁ・・・。
(いいから!絵里、やれっ!)
「ぅわっ!?」
くそぅ、れいな、私が妄想(=自分の好みに走った素晴しい考え)してるのをいいことに、よくも突き飛ばしたなぁ!
もちろんその結果として、私は思いっきり楽屋のドアに激突することになった。
ガン!という大きな音が空気を伝ってあたりに響き渡る。
あれだけ賑やかだった楽屋が、外からでもわかるくらい、とたんに静まり返る。

「・・・誰ぇ?」
間延びした飯田さんの声。交信の邪魔しちゃってごめんなさい・・・。
ここは一気に覚悟を決めるべきか。

「あ、あはは・・・すいませ〜ん」
至極ナチュラルにドアを開ける。みんなの顔がホッと緩む。
「なぁんだ〜れいなかぁ〜。脅かすなよ〜」
キャハハ、と矢口さん。未だに「れいな」と呼ばれることに慣れない。
本物のれいなの溜息が後ろから聞こえた。

私たちはすごすごと楽屋の隅っこに寄る。
今日はなるべく他人との会話を避けよう。ボロが出ないように。
・・・と、考えた矢先だった。
「絵里、れいな、おはよう。」
さゆがとことことやってきて、にこやかに手を振った。
私は乾いた笑いで「あはは・・・」と返した。
「さゆ、おはよう。」
隣でれいなが、当たり前のように挨拶する。
れいなってけっこうな名優なのね。その平然とした態度を見習うわ。
31 名前:青いベンチ 投稿日:2005/03/31(木) 16:28
「さっきの音、どうしたの?」
さゆが鏡を取り出しながら言う。
れいなの目が私を捉える。・・・はいはい、わかりましたよ。
「れ・・・絵里がれなのこと突き飛ばしたけん、絵里が悪い。」
私はふてくされた顔を作って、れいなを横目で見やる。
れいなの眉が一瞬吊り上がって、目つきが鋭くなる。
「なんば・・・何言ってんの!れーながもたもたしてるから!」
さゆは鏡を見ながら、「ふーん」なんて上の空。
自分で聞きたいことなのに、そんなんでいいんですか、道重さん。
まぁ不自然なとこごまかせるからいいんだけど。
「あ、そうだ。」
さゆが鏡を見たまま、突然声をあげる。
「なん?」
隣のれいなが、思わず聞き返して、口をおさえた。
訛ってるし!博多弁マスターしろとか人のこと言えないじゃんよ・・・。
「もう着替えた方がいいよ。」
でも、さゆはそんなこと気にしない。亀井絵里が訛ってても気にしない。

って、えぇ!?
よくよく見てみると、さゆはもう歌衣装。
時計を見ると本番十分前。どうやら私たちは、無意識に遅刻していたらしい。
「ちょっと絵里っ!はよ!」
「う・・・ちょ、れいなぁ!」
私はれいなの腕を掴んでぐい、と立たせる。
れいなの体の腕は、意外と力が出るみたいだ。
少し、れいなの顔が歪んだ。
32 名前:アイサー 投稿日:2005/03/31(木) 16:33
更新終了。

>>27
おめでとう!ハワイりょこ(爆死
面白いですかぁ!ありがとうございますw
頑張りますっ!

>>28
早速ボロが出てきましたよ二人(笑
歯磨き弁は、作者も何て書いたんだか途中で忘れかけました(ぇ
これからも頑張ります!

>>29
歯磨き弁、解読できましたでしょうか?
この後正解発表をしますよ〜(何
これからも頑張ります!
33 名前:アイサー 投稿日:2005/03/31(木) 16:34
歯磨き弁の解答。

「ふぇいな、あふぃた、ふゃひゃひんっひゃほ?ふぁよ、ふぇんひゃい。」

「れいな、明日、早いんっちゃろ?はよ、寝んしゃい。」

でしたぁ〜♪(何
34 名前:12の者 投稿日:2005/04/01(金) 02:12
さゆのキャラが、またスゴクいい(≧∇≦)
35 名前:青いベンチ 投稿日:2005/04/01(金) 12:44
「・・・おーい」
『はいっ!!』

ドアの向こう側からの飯田さんの呼びかけに、二人で飛び出していって応答。
私の喉はヒューヒューいって空気を吸い込んでいる。
「髪整えなよー」
それだけ言って、飯田さんはスタジオへ向かっていった。
頭に手をやると、ぐしゃっとした髪の毛が手にまとわりついてきた。
「・・・絵里、れなの頭、どうなっとる?」
れいながいつもの調子に戻る。
私であるはずのれいなが、標準語を喋り、れいなであるはずの私が、博多弁を喋るってことに、
こんなにも違和感を覚えるとは思わなかった。
れいなのいつも通りに、何となくホッとしている自分がいる。

田中れいなは、やっぱり田中れいなのままなんだ。

「れいなの頭、すごい。」
「なんそれ」
なんそれって言われても・・・すごいからすごいって言ったまでなんだけど。
「絵里の頭も、すごいっちゃよ。」
れいなが皮肉っぽく微笑んで言う。

いたずらを思いついた生意気なガキ大将みたいな顔。
からかって怒らせて、ムキになってるとこを高見の見物したくなるような表情。
顔は私になっても、表情は変わらないれいな。
私は、少し高い位置にあるれいなの頭に、ぽん、と手をのっける。
とたんにれいなの生意気な表情が崩れて、ポッと赤く染まる。
・・・ほら、期待通りの反応。これだからやめられない。
「な・・・なんばしよっとね!手ぇのけっ!」
「何よぅ、せっかく髪の毛整えてあげようと思ったのにぃー」
私のその言葉を聞いたとたん、頭の上の手に掴みかかっていたれいなの手が、おどおどと引き下がっていった。
自分の頭はさっきやっておいた。我ながら見事な手さばき。
パサパサと流れる髪の毛。真っ赤な顔。
どれもたまらなく愛しい、わたしのたからもの。
それとなくじょじょに近づく。れいなはずっと顔を背けていて気付かない。
「・・・はい。できたよ。」
「うん。ありが・・・。!?」

できたなんて、ウソだよ。

「・・・え、えぇぇぇえりっ!!」
これ以上ないってくらい赤いれいなの顔。
かわいいなぁ。できれば私の顔じゃなくて本物のれいなの顔でその表情が見たかった。

・・・れいなの唇は、甘い蜜の味がした。
36 名前:青いベンチ 投稿日:2005/04/01(金) 12:57
『お疲れ様でしたぁー』
本日のスケジュール全て終了後のみんなの疲れた声。
しかし、私たち二人は、それの1.5倍くらい疲れていた。
辛くも博多弁で切り抜けた私と、ギリギリの標準語でかわしたれいな。
賞賛に値するがんばりだったといえよう、うむ。

「のぅ、田中ちゃんと亀ちゃん」
『はい?』
私たちは二人して、訛った先輩の声に振り返った。
いわずもがな、高橋さんが立っていた。
「よしざーさんに誘われての、遊びに行かん?」
とたんに、二人で顔を見合わせた。

収録その他もろもろの仕事は、まぁ何というかプロ根性?で切り抜けたけど、
気の抜けたプライベートまで及ぶと、このことを隠し通せる自信がない。

「や・・・れな達、二人で約束があるけん、すいません、行けんっちゃ。」
「そう・・・水さすわけにもいかんしね。邪魔したの。」
高橋さんはそう言って、着替えに向かっていった。

私は、何となく顔がニヤケていく気がした。
とっさのウソとはいえ、もうすっかり私はれいなの恋人なんだ。
「二人で約束」なんて、もぉぅっ!れいなってばぁ!
「・・・絵里、おいてくとよ。」
一人悶えている私と、一歩距離をおいて振り返るれいな。
私はその冷ややかな視線を受けて、ロマンがないな、と思った。
37 名前:青いベンチ 投稿日:2005/04/01(金) 13:02
「待ってよー。ちょっと喜んでただけじゃん。」
「何に喜んでんのかわかんないのがキショイとね。」

れいなは最近よく「キショイ」という言葉を使う。
女の子なんだから汚い言葉遣いはダメだよーって言ってるのに、
「絵里がいるから悪い」とか何とか言ってくれちゃって。
もちろんそんなのは愛情の裏返しだと思ってるけど。

私が頬を膨らませていると、フッと突然、手が繋がれた。
びっくりしてれいなを見ると、れいなの顔はやっぱり真っ赤。
普段れいなからはこんなこと、皆無と言っていいほどしてこないから、
そりゃあもう私の驚きは、高橋さんのビックリ顔くらいだった。
そして、その驚きは、みるみる狂喜に変わっていった。
私のボルテージは、れいなの次の言葉でピタリと満タンになった。
38 名前:アイサー 投稿日:2005/04/01(金) 13:05
更新終了。

>>34
レスどうもです!
さゆは何か特殊な能力を持っていると思います(ぇ
たとえ上の空でも人の話はしっかり頭に入ってくるという都合のいい能力(死
39 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/04(月) 23:58
うあぁ〜、更新されてるぅぅ〜!!!!
れいな(in 絵里)は何と言ったんでしょうね?
・・・・気になる
40 名前:青いベンチ 投稿日:2005/04/05(火) 14:26
「今は・・・れなが絵里やけん、いっつも甘えてくるの絵里の方やろ?やけん、れなも同じくしないと、
不自然かなーって・・・べ、別に、れなの意思じゃなかとよ?」

気持ち早口に、ちらちらとこっちを見ながら。
その言葉とは裏腹に、死ぬほど顔を赤くしながら。
これだけで私の筋肉と脳みそは、あと三日動き続けられると思った。
「れいなぁーっ!!」
これ以上ガマンしたら体に悪いと思い、思いっきりれいなに飛びついた。
「!?う・・・わ、ちょっと、絵里っ!!」
れいなの体は細いけど、バランスを崩した私の体を倒すには、充分なスピードと重さがかかっていて、
あっけなく二人バタバタと床に倒れこんだ。
ハタから見れば攻守逆転、「珍しい!れいなが絵里を襲ってる!」ってことになるんだけど、
私たちからしてみれば、何の違いもない。
「や、ややややめるっちゃ!公の場じゃけん!」
「無理ぃー!ガマンできないー!」
「っ・・・れなは変態じゃなかっ!」
耳元で聞こえた叫びに、私の動きはピタリと止まる。
そうか、れいなのキャラからして、こんなとこでこんなことを、ましてや亀井絵里を、
他人の目も気にせず襲うなんて、テストで合計点五百点を取るよりありえない。
そして、涙腺のゆるい私の目元には、光る涙がたまっていた。
「ごっ、ごめん!つい・・・」
「れいなが手、繋いでくれたから」と、私は自分でも聞こえないくらいの小さな声で呟いた。
れいなを見ると、いつの間にか涙は引いていて、ムスっとした顔で私の目線よりちょっと下のところを見つめていた。
「今はれなが絵里なの!だから絵里はれなになるっちゃ!」
さっきほどは赤くないけど、充分照れているのがうかがえる顔の赤さ。
つまり、れいなが私に思いっきり甘えて、私がれいなと同じくらい赤面していろということか。
・・・え、ムリ。
そんなことされたら顔がニヤケて緩みっぱなしで大変なことになる。
「・・・絵里、ヘンなこと考えとるんじゃなかね?」
気がつくと、れいなの顔から照れの色は消え、眉をひそめて冷ややかな視線を向けてくる。
考えてるそばから妄想してニヤケてたのか。重度だな、私。
「・・・とにかく着替えよ。暗くなるけん。」
「うん。」
今度はどちらからでもなく、自然に手が絡み合った。
41 名前:アイサー 投稿日:2005/04/05(火) 14:28
少ないですがここまで。

>>39
こんなこと言っちゃいましたw(何
甘い話を書くのが苦手な作者は、ここまでで精一杯でした・・・
亀井さんはいつでも壊れています(爆
42 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/06(水) 00:57
更新お疲れさまです。 やっぱり甘えたい時に少し難しい感じですよね。 それにしても二人はホントに真逆の性格してますよね。 次回更新待ってます。
43 名前:青いベンチ 投稿日:2005/04/07(木) 12:09
「ねーれーなぁ〜」
「・・・なん?」


着替え終わって外に出てみると、当然のように空は黒く染まっていた。
ハァ、と一つ溜息をついて、寒空の下を二人並んで歩き出す。
「絵里のせいっちゃよ。バタバタしよって。」
「ちがぁよ。れいながカワイイことするから・・・」
「なっ・・・かっ、かわ・・・」
そしてまた赤くなるれいなを楽しみながら、「約束」通り、れいなの家におじゃまして(といっても、今は私の家だけど)
そして、今に至る。


「ヒ〜マぁ〜」
お風呂上りの濡れた髪を揺らして、れいなが不機嫌そうに振り返る。
私はれいなより早くお風呂に入ったから、もう髪は乾いた。
ベッドの上に寝転がって、足をバタバタさせている私。
れいなは、机に向かって宿題をしている。
明日はオフだけど学校があって、しかもれいなには宿題があって。
今せっせと解答欄を埋めているといった寸法。
まぁ実際れいなの中学校に行くのは私なんだけど、宿題は本人にやらせないとね。
さっきまで「れなは絵里で絵里はれななんやけん、絵里やって」とか意味のわかんないこと言われて
迫られてたけど、底はやっぱりれいながやらなくちゃってことで何とか言いくるめた。
しかし本当にかわいそうなのは、やっぱりれいなの方だと思う。
一年上の授業を受けなきゃならないし、人付き合いけっこう苦手っぽいし。
考えれば考えるほど心配になってくる。明日はとりあえず高校休みだからいいんだけど。
「あぁーもー!わからーん!」
「しっ!れいな、しーっ!」
私の声で博多弁を使われると、れいなのママに怪しまれるんだよーぅ。
れいなは、はたと気がついて、慌てて口元を手で覆った。
台所からの音に耳を澄ますと、変わらない様子で皿を洗う音が聞こえた。
私はホッと胸を撫で下ろした。
44 名前:青いベンチ 投稿日:2005/04/07(木) 12:29
「・・・もう、れーな。」
「・・・ごめん・・・」
れいなの方も変わらず不機嫌な顔をして、またくるんと机に向き直った。
水に濡れてペタリとなっているれいなの髪に、そっと指を絡める。
一瞬ピクッと体が跳ねたが、すぐにふぅっと溜息が聞こえてきた。
しかし、シャーペンは止まったまま。
「れーぃな」
「・・・んん?」
もう眠いのだろうか。てゆーか声が眠そう。
「んん?」なんて返事、滅多にしないし、体がふにゃりふにゃりとなってきている。
私のお腹のところに、すっかり全体重を預けて、眠そうに頭をぐりぐりと押し付けてくる。

・・・カワイイ。

私の体の中から、何かが湧き上がってきて、心臓あたりではじけた。
はじけて飛び散ったモノは私の体中に染み渡り、やがて脳に至った。

「・・・ね、れいな?」
「ぅんん?」
やがて脳の全部を染め上げられ、何か言い知れない衝動にかられる。
・・・あぁ、ひょっとしてガマンの限界?

「・・・いただきます。」
「へっ?ゔに゙ゃあ゙っ!?」
いいよね?家の中だしいいよね?お母さん公認だしいいよね?
その後私は、ただ本能のままに動いていった。
45 名前:アイサー 投稿日:2005/04/07(木) 12:32
更新終了。

>>42
そうですね〜素直じゃないとこがれいなの醍醐味ですから!(何
でも時には素直になれるんです。それで亀井さんに襲われるという(爆

この後エロシーンはありませんのであしからず(汗
46 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/08(金) 17:37
更新お疲れさまです。 田中ちゃん大変ですね。 じゃあもし進学学校なんて亀井ちゃんが行ってたりなんかしてたら・・・( ̄□ ̄;) 考えるのも嫌になります。エロなくとも構いません、そこまで人間が出来てませんから(ワラ 次回更新待ってます。
47 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/10(日) 23:50
元気者で愛すべき暴走キャラという亀井さんがリアルのイメージそのままで好き
そして外見は田中さんなんですな(;´Д`)ハァハァ
48 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/19(火) 14:59
更新待ってます
49 名前:青いベンチ 投稿日:2005/04/24(日) 10:04
う〜ん・・・。食べ過ぎた感が残る。
背中痛い。れいなは涙目で腰痛そう。
「・・・絵里なんかキライ・・・」
「えぇっ!れいなぁ〜・・・」
気まぐれネコさん・・・今日は気まぐれのせいなんかじゃなくて、私のせいで、不機嫌。
「二人とも、早く起きないと。れいな、遅刻するわよー」
あぁそうか。今日はれいな学校・・・って、え・・・?
「絵里・・・宿題終わっとらん。」
「あぁーっ!?」
しまった。自分の欲望に忠実になりすぎて、中学生の本来の義務を忘れていた。
机の上には昨日のままの宿題。
三分の一だけ解答欄が埋まって、あとはまっさらな宿題。
「ごはんできたよー」
れいなママののんきな声が、むなしく部屋に響き渡った。
50 名前:青いベンチ 投稿日:2005/04/24(日) 10:11
仕方なくもそもそとトーストを頬張る。
「それにしても、二人とも昨日はお盛んだったわねぇ。」
れいなママのその言葉に、れいなの眉がピクリと動く。
「しかも珍しくれいなが攻めて・・・」
ごめんなさい、れいなママ、実際問題、ポジションはちっとも変わってません。
しかし不思議よね。最中は私の声がれいなの声に聞こえて・・・。
「れいな、遅れるよ?もう行ったら?」
私が昨日の幸福を思い出していると、れいなの冷ややかな声が聞こえた。
時計を見ると、時刻はもう8時15分。
何っ!?いつの間にめざましテレビが終わったんだっ!?
カウントダウンハイパーを見ないと、私の一日は始まらないのに〜。
「早く行けぇ!!」
「は、はいはいっ!」
早くしないとれいながカンシャクを起こしそうなので、慌てて家を出た。
今日のコメンテーターはデーブだったから、とくダネ!はまぁいいとしよう。
私は宿題のことも忘れて、のんきにそんなことを考えながら歩いた。
51 名前:青いベンチ 投稿日:2005/04/24(日) 10:19
「・・・田中ぁー」
「・・・」
「れいなぁー」
「・・・」
「田中れいなゴルアァ!!」
「っはいっ!!」
けっこう嫌味ったらしそうなれいなの担任が、じとっと私を睨む。
だって、私は亀井絵里だもん。まだ、「田中れいな」って名前に慣れてないんだもん。
後ろの子がつんつんと背中をつついてくる。
あ゙っ・・・そこ、痛いんだって、ぅっ・・・ちょ・・・マジ・・・。
「っ・・・頼むから背中には触んないで。」
たまらなくなって、後ろを振り返って指を制する。
「何、何ぃー?青春したのー?」
あれは青春なのか。そうとも言うか。
「う、ん・・・まーね。」
「初めてじゃない?れいなが攻めるの・・・」
まぁ、カラダ的には初めてかも。れいなはあー見えて誘い受けだから・・・。
でも、れいなの友達、やっぱごめん、ポジション的には全く・・・
「あー、れーなー、お客さーん」
ニヤニヤする後ろの子のさらに後ろから、間延びした声が響く。
その子が指さす窓の外を見ると、校門付近に人影が見えた。
姿は亀井絵里であれど、れいながいた。
52 名前:アイサー 投稿日:2005/04/24(日) 10:24
長らくお待たせ(?)いたしました。
更新しました。

>>46
きっと亀井さんは進学校じゃないと信じています(何
だけど亀井さんにとっては、中学校の復習ができるのでいいんです(ぇ

>>47
亀井さんのイメージそのままですか!
よかった〜。
(;´Д`)ハァハァ して頂けて光栄です!(笑
これからもよろしくどうぞ。

田中さんが中学校卒業しちゃったのですが、そのへんはちょっと時間軸を戻して、
読んでいただけたら幸いです・・・。
53 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/24(日) 18:39
おっ!更新されましたね!
青春しちゃった二人、(* ̄▽ ̄*)にゃはは。にやけますな。
続き期待して待ってます。
54 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/25(月) 21:39
更新お疲れさまです。 おぉっ( ̄□ ̄;) 続きが気になる模様。 次回更新待ってます。
55 名前:青いベンチ 投稿日:2005/05/06(金) 19:41
「なっ・・・れい・・・」
思わず立ち上がって、その名を叫びそうになる。
危ない、変な人だ・・・。
私は次の授業があと五分で始まるにも関わらず、ダッシュで階段を駆け降りた。
少し慌てる気持ちと共に、嬉しい気持ちも確かに沸いてきた。
だって、私がれいなの中学校にたびたび押し入ることはあったけれど、
れいなから私のところへ来るってことは絶対になかったから。
少し自慢の足をフル稼働させて、愛しい人のもとへ。

「れいなっ!」
下までたどり着いた頃には、私の息はコンサート後より切れていたように思った。
れいなの顔は思った通りのしかめっ面だが、確かに赤くなっている。
「絵里のバカ。」
「れいな大好きぃw」
私が思いっ切り抱きつこうとした時だった。
れいなは早々と私を制し、後ろ手に持っていたものをぐい、と差し出した。

・・・これは・・・
56 名前:青いベンチ 投稿日:2005/05/06(金) 20:08
「れなは変態じゃなか。弁当忘れとろぉもん。」
いつかも聞いたようなセリフを呟いて、左手に持った弁当箱を私の胸元に押し付けた。
中学校はてっきり給食かと思っていた。そうか、購買部なんてのもないのか。
私立だから当たり前か。
「わざわざ届けてくれたんだね♪れいな、やっぱり大好・・・」
「せからしかよ、絵里。れなは変態じゃなかって。何回言わせるっちゃ。」
自分から私の元に出向くことは一度もなかったせいか、妙に落ち着きのないれいな。
早く自分で持っていけ とでも言いたそうに胸元にぐいぐいされる弁当。
その赤くなる顔が、何だかいつもの数倍かわいらしく見えた。
「それに、今日はれな休みなんやけん、手間かけさせんといてほしいっちゃ・・・」
それはもう抱きつきたくて仕方なかったけど、やっぱりれいなを変態にさせるわけにはいかないので、ぐっとがまんした。
そのかわり、とばかりに、れいなの耳元で囁く。

(帰ったら『ごほうび』あげる。)

「なん?『ごほうび』?」
ニブイれいなは『ごほうび』が何かわからないらしい。
それはそれで、私には都合が良いのだけども。
とりあえずはそれで満足した私は、弁当を受け取って、意気揚々と教室へ戻った。

・・・本鈴を二十分も過ぎていることに気付かずに。
57 名前:青いベンチ 投稿日:2005/05/06(金) 20:18
いつの間にか、私の机には他の人の机がいくつかくっつけられている。
そこに腰かけて、当たり前のように弁当の包みを広げるれいなの友達。
どうやら、れいなの昼休みは、これが当たり前のようだ。
「れいな、どうしたの?」
「えっ?あぁ、うん・・・」
私も入れて、全部で五人もいる。
この子たちと昼休みに楽しくお喋りをしながら弁当をつつくれいなの姿を想像すると、ちょっと妬けた。
私はとりあえずいつも通りをよそおって、おごそかに、れいなの届けてくれた弁当の包みを開けた。
と、一枚の紙がヒラリ、と舞い落ちた。
「れーな、何か落ちた。」
口をもぐもぐさせながら、隣の子がそれを横目で見ながら言った。
れいなのママは、今日の献立でもリストアップしているのだろうか。
と、それを拾い上げ読み上げた。

一文字目を見た瞬間、心臓が鼓動を一拍多く、間違えて打った。
58 名前:アイサー 投稿日:2005/05/06(金) 20:20
更新しました〜

>>53
えぇ、青春ですとも!(何
ニヤケ入りました!あざーす!(謎

>>54
続きはこうなりました。
また気になって待っててください(笑
59 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/05/07(土) 09:57
更新お疲れさまです。 ああっ( ̄□ ̄;) かなり気になるところで終わった・・・。 田中ちゃんの異変は一体?次回更新待ってます。
60 名前:青いベンチ 投稿日:2005/05/15(日) 18:38
『絵里へ
まださすがに慣れないっちゃが?宿題は怒られた?
れながやっとらんかったけん、れなが悪かとよ。すまんね。
家に一人でいてつまらん。
              れいな』

たった三行の文章を、何度も何度も読み返した。
ざっと十回ほど読み返した後、ニヤケた。
普段は素直じゃないれいな。宿題のことだって、きっと真っ赤になって書いたんだろう。
そして最後の一行は、「寂しいへん、はよ帰ってきて」に自動変換された。
私はいつもの二倍、ニヤケた。
「れーな、何ニヤニヤしてんの〜キモーイ。」
「なっ・・・何でもなか。せからしかばい。」
ここが私の高校だったら、こんなこと言われずに「ラブラブー♪」って冷やかされるはずなのに・・・。
れいなの人格保護のため、緩む頬を必死に引き締めて過ごした。
61 名前:青いベンチ 投稿日:2005/05/15(日) 18:45
「れいなぁっ!ただいまぁ!」
れいなママの自家用車がないことを確認して、家に入るなりそう叫んだ。
すぐにとたとた足音が聞こえてきて、ポケットに手をつっこんだしかめっ面のれいなが玄関にやってきた。
「絵里、やけに早かね?確か、れな今日は清掃当番・・・」
「サボった。」
「はぁ!?」
できれば第一声に、「おかえり」を言ってほしかったけど、あのしかめっ面を見たとたんにそれは諦めた。
いちいち自分の清掃当番の曜日を覚えているれいなはすごい。
「なんばしとっとね!内申点下がるけん!」
「れーなのクセに内申点なんか気にするなよー」
「『地元じゃ結構悪かった?』でも内申点は気にすると!」
学力点はどうなんだい、れいな・・・。
62 名前:アイサー 投稿日:2005/05/15(日) 18:48
極々僅かですが更新終了です。
もうそろそろ完結します。
終わったられいなSideでも書いてみようかなと思ってますw

>>59
れいなは手紙でも博多弁なのです(笑
ここから二人ともそろそろ真面目になってきますよ(何
63 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/05/15(日) 23:06
更新お疲れさまです。 田中チャン時々見せる可愛らしさが良いですね。   亀チャンはかなり御満足な模様。 次回更新待ってます。
64 名前:青いベンチ 投稿日:2005/05/27(金) 19:12
それっきりれいなは、ずっと不機嫌な顔をしていたけど、
「家に一人でいてつまらん」=「寂しいけん、はよ帰ってきて」は、どうやら本当だったようで、
さっきから私の隣でムスっとしてテレビを見ている。
二人の間は微妙な距離で、私の手のひらが置けるか置けないかぐらい。
ふと、れいなが横目で、チラッとこちらを見た。
その視線はすぐにテレビのタレントに戻されるが、私はれいなの耳が赤くなっているのを見逃さなかった。
「・・・寂しかったんでしょ?」
私の言葉に、れいなは軽い電気ショックでも浴びせられたかのようにビクッとなる。
顔は赤く火照り、ぐーっとヒザを抱き寄せる。
完璧なる、体育座りのできあがりだ。
「寂しかったんでしょ?」
声のトーンもイントネーションも、さっきと全く変わらず、もう一度同じ言葉を繋ぐ。
とたん、れいながキッとこちらを向いた。
変わらず顔は赤いが、なかばヤケクソになっているような気もする目だ。

「バカ絵里っ!寂しかに決まっとぉやろっ!」

ちょっと震えた声で見たこともないくらいに顔を真っ赤にして。
赤くなった亀井絵里の顔に、田中れいなの影を見た気がした。
65 名前:青いベンチ 投稿日:2005/05/27(金) 19:21
愛しいとか、そういうのもあったけど、それ以上にやるせなくなって、力いっぱいにれいなを抱きしめた。

戻りたい、亀井絵里に。
戻ってほしい、田中れいなという恋人に。

田中れいなの顔で、田中れいなの声で、田中れいなの瞳で、田中れいなの表情で。
亀井絵里になった田中れいなは、田中れいなだった。

でも、

田中れいなのままの田中れいなは、決して亀井絵里になった田中れいなではなかった。

「・・・絵里・・・絵里の顔、見たい・・・」
れいなの声は、儚く、けれど、穏やかな声音だった。
「本物の絵里の顔が見たいけん・・・」
鏡越しでもなくて、れいなの顔つきでもなくて・・・。
私も、本物のれいなの顔が見たい。博多弁は、やっぱり舌っ足らずじゃダメだね。
「・・・ねぇ、れーな?」
「なん?」
腕の中にれいなを抱いたまま、またれいなも、私の胸に顔をうずめたまま、くぐもった声が聞こえる。
「・・・遊びに行こーか。」
「・・・今?」
「今。」
「・・・うん。」
まるで意思が通じ合っているように、お互いの思っているところが手に取るようにわかる気がした。
太陽は真上からだいぶ傾いて、オレンジ色に変わろうとしていた。
66 名前:青いベンチ 投稿日:2005/05/27(金) 19:26
私の右手には赤いアクセサリー。彼女の左手には青いアクセサリー。
その右手と左手は、しっかりと繋がれていた。
二人とも、何も喋らなかった。喋らずとも良かった。
ただ、あてもなくフラフラとさまよい歩いているだけであるが、今は、それでいいような気がした。
「絵里」
「ん?」
「呼んでみただけ」
きゅっ、と、れいなの左手に力がこもる。
私も力をこめて返す。こういうの・・・何て言うんだっけ。
「れいな」
「なん?」
「呼んでみただけ」
れいなが照れた笑いを漏らす。田中れいなの面影。
私はもう一度右手に力をこめる。れいなは何も返さなかった。
67 名前:青いベンチ 投稿日:2005/05/27(金) 19:33
「れーな、ちょっと座ろっか。」
ひっそりとした公園にやってきた。静かなカップルタイム。
いたるところにたくさんのベンチがあって、おのおのがカップルで埋まっていた。
「ん、れな、青がいいけん。」
と、れいなが青いベンチを指さした。
隣には赤いベンチがあった。反対の隣にはオレンジのベンチ。
よく見ると、ここの公園のベンチは色とりどりで、見渡すと、黄、緑、紫、水色、などなど、実にカラフルであった。
しかし、私は、赤のベンチにもオレンジのベンチにも視線を移さず、言った。
「うん。座ろ。」
座るなり、肩にもたれてくるれいな。
私もさらにその上に頭をもたれて、一息ついた。
とたんに、急激な眠気。不自然なほどの眠気。

暖かく私を包み込むその眠気に逆らう理由など、私にはなかった。
68 名前:青いベンチ 投稿日:2005/05/27(金) 19:41
日は落ちて、ぼんやりと外灯が灯っている。
その中で、私もぼんやりと目を覚ました。
視界が揺れる。左肩に誰かのぬくもり。それには違和感があった。
「ん?れいな・・・」
もぞもぞと左腕を掲げると、外灯の光で何かが反射してキラリと光った。

「・・・!!れいなっ!」

瞬時に私は気が付いた。

光った色は、青。

そう、れいなが、亀井絵里になったれいながつけていたアクセサリーだ。
とっさに左隣を見る、と・・・。
「・・・絵里・・・」
目を大きく見開いて、呆気にとられたような表情の、
田中れいな。
「・・・れーな・・・れーな、れーな、れーなっ!!」
何度目をこすってみても、何度頬を叩いてみても、目の前には、本物の田中れいながいた。
「絵里、絵里やんね・・・?」
赤いアクセサリーをつけたれいなの、れいなの右手が、青いアクセサリーをつけた私の左手を握った。
細く冷たく、しかしどこか暖かい手。れいなの手。
「れいな・・・れーなだぁ・・・」
細い身体に思いっ切りしがみつく。れいなは何もしなかった。
69 名前:青いベンチ 投稿日:2005/05/27(金) 19:46
どのくらい経ったのだろうか。
れいなのぬくもりは、変わらず私の腕の中にあった。
青いベンチも、変わらず私たちを支えていた。
何も、変わっていなかった。変わっていないはずだった。

「・・・れいなぁ」
「なーん・・・?」
声は腕の中から響いてくる。
私の、私たちの視界は、変わっていた。
長らくして、れいながモゾモゾし始めたので、私もやっと腕の呪縛を解いた。
「絵里、絵里ぃ」
れいなが私の腕の袖を引っ張る。
見上げる上目遣い。れいなは、私より小さい。小さいんだ。
「なぁに?」
「呼んでみただけやけん。」
そう言って、れいなはニヒヒっと笑った。
70 名前:青いベンチ 投稿日:2005/05/27(金) 19:56
やっぱり、少し舌っ足らずな博多弁も好きだったなぁ。

と、ハキハキした博多弁でさゆと喋るれいなを、ぼんやり見ながら思った。
唯一、心残りなのはその点だけかもしれない。
どうしようもないヤツだ、と自分で思う。
あの後アクセサリーはちゃんと交換して、その日もれいなの家に泊まった。
今度こそ私の体でれいなとシた。すごくしっくり来た・・・。
あの一件があってから、れいなは何となく積極的になってきた。
カワイさはその分五割増しで、この間私んちに上がりこんでエプロンして晩ご飯作ってた時は、卒倒しそうになった。
楽屋でも、人なつっこい笑顔で甘えてくるし、この上ない幸せ。

「・・・カメコ?」
「っうぉぉい!?な、何ですか・・・吉澤さん・・・」
突然の後ろからの不意打ちに、テーブルについていた肘がずるっとすべり落ちた。
「何ボーっとしてんだよ?十分前だよ?」
「えっ!?」
てゆーか吉澤さん今「カメコ」って呼んだよなぁ、とか考えていたら、
いとも軽々しく吉澤さんが言い放ってくれた。
時計を見ると、なるほど、確かに、十分前どころか十分切って・・・

「も、もっと早く教えてくださいよぉー!!」
慌てて着替える私を見て、吉澤さんは呑気に笑っていた。
71 名前:青いベンチ 投稿日:2005/05/27(金) 20:03
メイクを済ませておいてよかった、と、楽屋に一人残された私は思った。
そして、今日の衣装も簡単なのでよかった、とも思った。
慌てて着替えて乱れた髪の毛を、鏡に向かって整える。
鏡の中には、当たり前に私の顔があった。当たり前に私がいた。
何も、変わっていなかった。
ふぅ、と一息つく。と、突然ドアを開けての侵入者があった。
しまった、マネージャーさんかな?と身構えると、ひょい、と可愛らしい顔が覗いた。

「・・・れいなっ?」
思わず時計を見ると、本番三分前。
れいな、何やってんだろ・・・忘れ物?
「絵里、好きな色は?」
忘れ物でもないらしく、それどころかとんだ的外れのことを聞いてくる。
「はぁ?何で・・・」
「いいから!」
ふと、ドアを押し開けるれいなの右手に目がいく。
青い光。
今日の青空と、公園のベンチと、同じ青のアクセサリー。
あぁ、と、私の中で何かが繋がった気がした。

「私、青が好き。」

れいなは、笑った。
72 名前:青いベンチ 投稿日:2005/05/27(金) 20:08
「あんね、絵里。」
「ん?」
帰りの着替えは慌ただしくなく、帰り道もまた同じだった。
れいなの細い腕が、私の腕に絡められている。
「絵里、青が好きって言ったけんね?」
「うん。」
「れなはね・・・」

れいなは、笑った。

「好きな人にあげた赤色が好きやけん。いっちゃん、好き。」
れいなの左手首が青く光った。
絡まり、繋がれた手が、ぎゅっとなった。
私もぎゅっと返し、そういえば、と思い出す。
「れいな、忘れてた・・・」
れいなが振り向く。

私は、約束の、忘れていた「ごほうび」を、れいなの唇に落とした。
       
                             Fin.
73 名前:アイサー 投稿日:2005/05/27(金) 20:12
更新終了!&完結!
こんなラストでいいのかという突っ込みは無しの方向で!(爆

>>63
終わらせてみました(ぇ
いかがでしたでしょうか?
こんな駄作にいつもレス下さってありがとうございました。

えー、この後ですが、田亀で短編を、もう一本書いたので、ここにupしちゃおうと思います。
その後れいなSideで。
作者は日曜日から修学旅行に旅立つので、更新は一週間後となります〜。
それでは、また。
74 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/05/27(金) 20:51
 更新お疲れさまでした。 すごくよかったです。 happy end様様ですよねぇ。 次の更新も楽しみに待ってます。 あっ、修学旅行楽しんできて下さいね。 すごく楽しい旅行になるように願ってます。
75 名前:石川県民 投稿日:2005/05/29(日) 21:54
 初レスさせていただきます。実は最初のころから楽しく読んでました。
 れいなが可愛すぎてメロメロのクラクラでございます。

 完結おめでとうございます。
良質田亀が終了してかなり寂しいですが、田中さんsideも楽しみにさせていただきます。

 ご旅行が楽しいものでありますように。
76 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/29(日) 22:06
とってもよかった
甘かったりほほえましかったり
続き楽しみにしてます
77 名前:アイサー 投稿日:2005/06/10(金) 16:54
少しだけ予定変更。
短編upは取りやめで、田中さんsideいっちまいたいと思います。
・・・べ、別に短編がありえなく駄作だったなんてことはないやよ!!(必死

>>74
最後までお付き合い頂きありがとうございましたw
ホントにありがちだと思ってたんですが、楽しんでもらえて何よりです。

>>75石川県民様
レスどうもです!
マジですか!?うわー、ありがとうございます!
良質だなんてそんな・・・えへへ(何

>>76
良かったですか?ありがとうございます!
いやー、甘いのは苦手分野だったはずなのですが・・・。

さてと、更新します。
78 名前:赤いベンチ 投稿日:2005/06/10(金) 17:11
「ん、れな、青がいいけん」

今日は本当に久しぶりに絵里と会った。
相変わらず何となく変態っぽいっちゃけど、好きなもんは好きやけんね。
そんな絵里が、「れいなとペアルックのものほし〜い」とか抜かすけん、仕方なく店の中をブラブラしとる。
「あ、れいな、アレ。」
何かどーでもいいやって雰囲気になってきた時に、絵里がどっかを指さした。
指さしたらダメって、いっつも言ってるんに・・・
絵里が指さした方に目をやると、こじんまりした小っさな棚が一個置いてあった。
・・・何か百均みたいやね・・・
よくよく見ると、アクセサリー売り場みたいっちゃね。百均てかなり失礼っちゃ・・・。
「ね、れいな、どれがいい?」
絵里は目をらんらんと輝かせて、そんなことを聞いてくる。
こんなんで絵里の欲しいヤツずばり指なんかさしてしまったら、れいな今日家に帰れんけん・・・。

てなわけで、絵里が選びそうにない青のアクセサリーを選んだ。
「青ぉ?」
なん?まさかもしかして青がよかと?
いや、絵里に限ってそんな・・・。
「青、好きなんだ?」
あら?笑顔。
なんなん、絵里。れなは結局どれを選べばいいと。
「うん。オレンジが一番やけど、色が無いけん、青。」
隣のはオレンジだけど一個しかないし・・・ペアルックにならん。
「こっちは?」
あ〜、だから一個しか無いって言うとるっちゃろ!
こっちのなら二個あるし、それに赤い色は・・・
「ダメ。こっち。」
「れーな、赤も好きでしょ?」
好きやけど・・・絵里には青より赤のが似合うから・・・って、こんなこと言えん!!
「うん。やけん、赤は・・・」
ええい、言っちゃえ!
79 名前:アイサー 投稿日:2005/06/10(金) 17:12
すみません!
用事があるのでこれで。
次回はしっかり更新します。
れいなの博多弁にはあまり突っ込まないでください(爆
80 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/10(金) 21:03
おぉっ!田中さんsideきましたねぇ〜。
これから田中さん視点でまた、甘甘な二人がみれるのが楽しみです。
次回の更新待ってます。
81 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/06/10(金) 22:51
更新お疲れさまです。 おぉっ( ̄□ ̄;) 田中チャンsideも今後が楽しみになってきました。 次回更新待ってます。
82 名前:赤いベンチ 投稿日:2005/06/12(日) 13:06
「赤は、絵里に・・・好きな人につけてほしいけん。」
うぁあ!言っちゃった・・・。
もっと吉澤さんみたくカッコよくキメられたらいいのに。
はぁ、れいなひょっとしてヘタレと?

今でこそ絵里んことば変態呼ばわりしとるっちゃけど、告ったのれなからやけんね・・・。
『絵里・・・好きやけん。・・・ばり好いとぅ。』
あん時のれいなはヘタレじゃなかったって胸張って言えると。
・・・たぶん。

ん?何か絵里の笑顔が変態ちっくになってきとー・・・気のせい?
「絵里?どげんしたと?」
「んあっ?何でもない。・・・じゃ、コレ買おっか。」
そう言ってる割には、あんまりその笑顔直っとらん・・・絵里。
まぁいいか。今日のれなはがんばったけんね。
普段ならあんなこと、口が裂けても言わん。
「うん♪」
ほら、こんな機嫌いい声も笑顔も、よっぽどいいことがないとありえんけん。
絵里はニヘニヘしながら赤のアクセサリーを持っていく。
れなも青を持ちながら、絵里の後に続く。
そういえば初めてやね、ペアルック。
83 名前:赤いベンチ 投稿日:2005/06/12(日) 13:22
買ってから、何だか妙に嬉しくなって、青い空に青いアクセサリーを照らし見る。
「絵里とお揃いー、なー、似合う〜?」
半歩後ろを歩く絵里を振り返り振り返りしては、いちいち笑顔を作る。
れな今日は何か変っちゃ。いつもより積極的・・・。
「うん、似合う、似合う。キレイだよ」
絵里の赤色も、太陽に照らされて光った。
ふーん、れなの色と合うけんね。
「えへへ、絵里のもよぉ似合っとうよ。」
ニコニコ。
今のれなの様子を言葉にするとしたら、それしかなか。
絵里の黄色のシャツに赤いビーズ、ほんに似合っとぉ。
どうしたんちゃろ、れな、今日はおかしいくらい上機嫌っちゃ・・・。
絵里と歩調を合わせればいいのに、はやる気持ちはそれを許さない。
ちょくちょく絵里の方を振り返って、その度に帰される笑顔を見て満足して、
よく考えるとばり危なかとやんね、その歩き方・・・。

「あ、れい・・・」
8度目くらいに絵里を振り返った時だった。
当たり前に笑顔が返ってくると思ったら、急にその表情が曇った。
「ん?・・・ぅあっ?」
一瞬の衝撃のうちに聞いたのは、自分のマヌケな声ただ一つ。
気付けば、絵里の顔がものすごい勢いで目前に迫っていた。
「わ・・・れいなっ」
「え、絵里、どきぃっ!!」

ごちっ
84 名前:赤いベンチ 投稿日:2005/06/12(日) 14:41
・・・っつー・・・せっかくれながどきぃ言うたんに、絵里ば・・・。
まるで磁石みたいに、お互いのおでこがいっちゃん痛かとこにぶつかった。
「っ、いてぇーな、前見て歩け!ったく・・・」
なんアイツ、そっちからぶつかっといて詫びの一つも入れんと?
文句言ってやろうと思ったら、絵里のうめき声がそれを制した。
「うっ・・・ぐぐ・・・いったぁーい・・・れーなの石頭・・・」
・・・石頭は聞き捨てならんとね、絵里。
「なんば言うとか、絵里のがカタかったばい・・・」
そういえば、おでこの出っ張ったとこがじんじんして痛か。
触ってみると、何かヒヤッとした。たんこぶはできてないからよかと。
「う〜・・・もう最悪・・・」
絵里がまたうめく。
それはこっちのセリフだとばかりに、睨みをきかせると、ある異変に気付いた。

・・・なん?これは・・・
85 名前:アイサー 投稿日:2005/06/12(日) 14:46
更新しました。

>>80
はい、れいなSide始めてみましたw
何かギャグッちくなってしまってますが・・・
絵里視点のように楽しんでもらえるようがんばります。

>>81
おぉ!将来に期待ですか(何
何だか絵里Sideよりも難しい気がします(汗
86 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/12(日) 18:55
待ってました
博多弁萌え展開というわけですね
87 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/06/15(水) 06:27
 更新お疲れさまです。 なんかかなり裏の事情を見てる気分になりますね。 一人分を見たからでしょうか? 次回更新待ってます。
88 名前:青いベンチ 投稿日:2005/06/17(金) 20:06
「あ・・・う?絵里?」
・・・なん?なん?これは一体どういう・・・。
絵里も違和感に気付いたのか、ふっと顔を上げてれなと視線を合わせる。

・・・ただ、いつもの絵里の姿ではなく。
「れなが目の前におる・・・じゃ、今れなは何やっとうと?」
ついさっきまで鼻先数ミリのところまで迫っていたはずの絵里の顔が、一瞬にしてれなの顔にすりかわった。
れなおかしくなったんちゃろか。だってれながもう一人なんているわけなか。
・・・生き別れの双子の姉(or妹)とか・・・。
ありえん!絶対ありえんけん!むしろあってたまるか!
・・・じゃあ、ここは異世界?
「え・・・れいな?」
「うわ!もう一人のれなが喋った!」
こっ、これは生き別れの双子説が有力になってきとー・・・れなは若干15歳にして人生の修羅場を向かえとぉと?
かなりごちゃごちゃ考えて、これまでたったの何秒かの間に、脳のシワがずいぶん増えた気がした。
しかし、目の前の双子れなは、妙に落ち着いた態度で言った。
「いい?れいな、落ち着いて聞いてね?」
この落ち着きぶりからして姉ちゃんか・・・たった何秒かしか生まれた時間違わないのにいい気になりよって!
おまけにしっかり訛りも抜けとう。・・・気にくわん。
「なん?お前、標準語喋っとうと?」
目の前のれなの顔が難しい顔に変わる。揚げ足取り大成功。
「あのね、私、絵里なんだけど・・・」

・・・・・。

「は?」
生き別れの双子説は一気に覆されようとしていた。
よくよく考えてみると、さっきまで一緒にいたはずの絵里が消えて、生き別れの双子の姉とばったり、なんて、
テストで合計点500点取るよりありえんけん。
けど、いっぺんに信じてしまうのもどうかと思う。
絵里は一瞬のうちにさらわれて、れなの双子の姉が何か変な組織に脅されてるかも知らん。
だったら絵里を助けないと・・・
「れーな、あっち行こ。」
「え?・・・うん。」
よぅし、言い分くらいは聞いてやろうと、警戒を解かずに絵里だかれなだかの後ろについていく。
化けの皮剥いでやるけんね、覚悟しぃ・・・。
89 名前:青いベンチ 投稿日:2005/06/17(金) 20:24
絵里だかれなだかは、じっと睨みつける私の方を時折チラチラとうかがいながら、適当な路地裏に入った。
何か悲しそうな顔しとるけんね。ばってん、騙されんとよ。
「いい?れーな」
すると急に肩を掴まれて、顔と顔の距離がぐぐっと縮まる。
本性現し始めたけんね、しっかし油断ならんヤツっちゃ。
「これは私の考えなんだけど、私たちきっと、入れ替わっちゃったんじゃないかなって。」
・・・はぁ。
何を言い出すかと思ったら、そんなマンガみたいなことあるわけなかやん。
れなが考えてることも充分マンガっぽいっちゃけど、まぁそこはご愛嬌。
「は?何言うとるとや?んなわけなかろぉもん。」
何の根拠もないっちゃけど、何か妙に正論言ってる自信があると。
「ホントだって。手首見てみな。」

・・・あ。

そうか。アクセサリー。
いちいち取り外して付け替えるヒマなんてさすがになかったっちゃろ。
れなのは左手首についてたはず・・・。

「無いっ!絵里のがついとぉ・・・」
何てことだ。やっぱり生き別れの双子より入れ替わりの方が現実味があると?
・・・れなはそんなの信じんけん・・・。けど事実っちゃ・・・。
90 名前:アイサー 投稿日:2005/06/17(金) 20:31
更新完了です。

>>86
ニセ博多弁で萌えていただけるかどうか不安ですが、なるべく頑張ります・・・。

>>87
えぇ、ある意味舞台裏というか(笑
微妙にかみ合ってない二人です。
91 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/06/17(金) 23:44
更新お疲れさまです。 田中チャン疑り深いですねぇ、こと後の豹変ぶりがかなり楽しみですね。 次回更新待ってます。
92 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/06(水) 21:55
おもしろいです↑
93 名前:赤いベンチ 投稿日:2005/07/09(土) 22:36
れなは、絵里が困惑顔してるうちにいろいろと考えを巡らせた。
さゆみたいに四六時中手鏡持ち歩いてりゃ別っちゃけど、今日は生憎持っとらんけん。
確認しようにもできない。
「だから、そういうことだからさ・・・えっとぉ・・・」
ええい、ぐじぐじしとっても始まらん。
れなは博多っ子やけん。開き直るばい。
「明日も仕事やけん、どげんする?」
絵里になったのは少々気に入らないっちゃ気にいらないけど、そんなん口に出したら何するかわからんし、
絵里の一日を覗いてみたいいたずらな気持ちのれなもどこかにおる。
目の前の自分の不安そうな顔がおかしくなるくらいに、今れなはウキウキしている。
「ん、明日のことはとりあえず、れーなが私っぽく喋ればいいし、私がれーなっぽく喋ればいいし・・・」
「なっ!?絵里の舌の足らん喋り方なんてできんっちゃ!!」
今も舌足りとらん気もしないでもないけど、たぶん気のせいっちゃ。
大して滑舌良いわけじゃないっちゃけど、絵里よりははっきり喋る自信はある。
別に、絵里の喋り方は嫌いじゃないけど・・・たまに好きだけど、自分がそうなるとちょっと困るけん。
「とっ、とにかくっ、家でのことを考えない?」
絵里の舌は何でこげん短とやんね〜とか考えていたら、絵里が何やら顔を赤くして言った。
・・・絶対やらしかこと考えとるけんね、コイツ。
「あぁ、それもそうやね、方言出さんようにせんと。」
れなは絵里みたくどんくさくなかけん、絶対問題なか。
94 名前:赤いベンチ 投稿日:2005/07/09(土) 22:45
そんで当然、どんくさい絵里の方が心配になってくるっちゃ。
「絵里、れないっつも家で方言バリバリやけん、頼むっちゃ。」
「えぇっ!?」
・・・なん、やけにデカい声出しよって。
「なん?もしかしてわからんと?れなとこんな一緒におるのに?」
いっつも博多弁カワイイカワイイ言っといてそうはいかんよ、絵里。
それともホントに一個もわからんのやったら、れな結構辛かとよ?絵里・・・。
何か目が潤んどる。乾いたかな。
「わっかるよぉ〜当ったり前でしょぉ?」
左頬に「全然わかりません」て油性マジックで書いたような顔の絵里に、いろんな意味を込めて微笑む。
「だよね。余計な心配したっちゃ。」
絵里は、引きつった笑顔で曖昧に、「あは・・・」と言った。
95 名前:アイサー 投稿日:2005/07/09(土) 22:51
お久しぶりです・・・。
更新しました。

>>91
遅くなってしまいました・・・。
博多魂に任せてさっさと進めすぎちゃったかな?かなり豹変なれいなですw

>>92
どうもです!
何か更新遅くなっちゃってますけど、気長に待っててやってくださいな。

れいなside、滅茶苦茶になってきた予感・・・(汗
96 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/10(日) 11:10
田中さんは田中さんでいろいろ考えておったんですな
現実的だけど気が小さい性格がよいです
97 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/10(日) 19:50
田中さんイイですねぇ↑
98 名前:赤いベンチ 投稿日:2005/07/18(月) 17:29
「ん・・・じゃ、ばいばい」
「ん、また。」
いつもより若干緊張した空気の中、絵里と別れた。
ここから電車乗って絵里んちば行かんとならんけん、めんどくさか。
切符を買う手つきは慣れている。嫌っちゅうほど行っとるけん朝飯前っちゃ。
絵里の家族は、いつもほんわかとした空気に包まれていて、絵に描いたような平和な家族。
どちらかというと殺伐としてる我が家とは大違いなので、いつ行っても慣れない。
絵里と同じように「れいなちゃんの博多弁はカワイイねぇ」と言うので、こそばゆい。
満面の笑顔で娘を迎え入れるであろう絵里母の姿を想像しながら、電車を降りた。
ただ、絵里んちは一軒家だから、広くて気楽なのがいい。
そう思いながら、何の迷いもなくチャイムを押した。

ピンポーン

うちのマンションとは違って、「さっさと出ろ」とでも言わんばかりのあっさりとしたチャイム。
それで本当にさっさと出てくれればいいんだけど、絵里母はいつものんびりしている。
『はぁーい』
そういえば絵里って家の鍵持っとるんちゃろか?
「絵里だよ。開けて。」
『あ、おかえりー』
何の疑いもなく気持ちよく鍵を開ける絵里母。
絵里が鍵を持ち歩いていないんなら別だけど、そうじゃなかったらちょっと無用心とよ、絵里母。
「ただいま」
今日は「絵里の恋人の田中さん」じゃないから、挨拶もそこそこに中に入る。
あんまりゴチャゴチャ話すと訛っちゃいそうで。
それに絵里も無事家に辿り着いたかどうか確認しないと。
カレーの匂いがするリビングを通り過ぎて、二階の絵里の部屋へと向かった。
99 名前:赤いベンチ 投稿日:2005/07/18(月) 17:52
今日カレーだってママが言っとったっちゃね。
亀井家のカレーの味はどんなだろうなんて考えながら、「絵里」とプレートの下がった部屋に足を踏み入れる。
・・・いつも思うけど、カーテンは赤じゃない方がいいと思う。
れなの部屋とは大違いで、ぬいぐるみやらなんやらが雑然と置かれている。
本人は、「これでも片付けてるんだから!」といつも口を尖らせて言っているけれど。
適当に荷物を投げ出して、すぐさま携帯を取り出す。
これも赤。れなに赤のアクセサリーすすめたクセに、絵里もまた赤が大好きである。
リダイアルの一番上にある自分の携帯にかける。
呼び出し音が数回鳴って、気弱そうな絵里の声が届く。
『・・・もしもし?』
「あ、絵里?れなもう家着いたけん。」
『えっ!?もう着いたの!?』
絵里が素っ頓狂な声をあげる。れなんちはあそこからばり近かはずやけど・・・。
「なん?まさかまだ着いとらんと?」
『う、うん・・・まぁ・・・』
「どげんしたとね?」
そう聞くと、絵里は小さく唸りながら黙ってしまった。
インターフォンは鳴らせば開けてくれるし、第一れな鍵持っとるし。
・・・さてはコイツ・・・
「まさか、家に入れんと、ドアの前におるんじゃなかね?」
『ぐっ・・・』
やっぱし。
「はぁ・・・絵里のアホ。はよ入らんと、カゼ引くっちゃよ?」
元に戻った時カゼなんかおっぴいてたら、疲れも二倍ってもんっちゃ。
「れなの体なんやけん、大事にするとよ。」
オートロックまで開けてもらったんだったら、部屋にも入れるだろうに。
やっぱ、絵里ってアホやけん。
『わかったよ。れいながカゼ引くといけないから、入るよ。』
「ん、よろしい。じゃ、切るけんね。」
ちょっとばかり心配が残るものの、まぁ入らないわけにもいかないから大丈夫だろう。
それにしても今日は疲れたから、ちゃっちゃとお風呂入ってカレー食べて寝よ。
ハンガーにかかっていたバスタオルを引っつかんで、今度はお風呂に向かうべくまた一階へと降りていった。
100 名前:赤いベンチ 投稿日:2005/07/18(月) 18:08
お風呂から上がるや否や、絵里母が「ごはんできたわよー」とわざわざ知らせにきた。
部屋じゅうに充満するカレーの匂い。これはこれでいい。
れなのママのカレーは、大人用の辛いのと、れな用の少し甘めのが作ってある。
絵里への辛さの配慮はあるのかと心配しつつ、濡れた髪を放って、リビングに向かう。
絵里父は、どうやらまだ帰ってきていないようだ。
「よし、じゃあ食べようか?」
「ん」
二人だけのディナータイム。多少寂しい気もする。
しかし、絵里母は楽しそうにいろいろと質問してくる。
「れいなちゃんとデート、どうだった?」
ニコニコしながら当たり前のようにそんなことを聞いてくる絵里母に危なくお茶を吹き出すところだった。
何とか飲み込むと、今度は顔が熱くなっていくのがわかる。
絵里母は不思議そうな顔をして頭上に?を浮かべている。
母親と二人、いつもこんな風に夕食の席でれなの話で盛り上がっている絵里の姿を想像すると、何となく嫌になった。
「で、どうだったの?」
「ん・・・と、べ、別に・・・」
絵里の調子で「れいながすっごくカワイクて〜w」とか話す気には、とてもなれない。
今日のところは冷めた絵里を演じよう、ごめん絵里母。

夕食もそこそこに済ませると、さっさと部屋に引っ込む。
明日も早いし、疲れたし、もう寝よう。
そう思った時だった。
101 名前:アイサー 投稿日:2005/07/18(月) 18:15
中途半端かもですがここで更新終了です。

>>96
はい、色々考えてましたw(何
舞台裏を書くのは楽しいなぁ(ぇ

>>97
イイですかぁ、どうもです♪
田中さんは一推しなので、大事に扱います(爆
102 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/07/18(月) 18:35
更新お疲れさまです。 やっぱり亀チャンは田中チャンと真逆ですよねぇ(^o^; でも明るい家庭は少し羨まし(ry 次回更新待ってます。
103 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/19(火) 23:30
絵里母イイですね〜☆田中さんもがんばっ!!
104 名前:赤いベンチ 投稿日:2005/07/23(土) 17:47
〜♪

絵里の赤い携帯が、「FIRST KISS」を鳴らし始める。
・・・まさか発売当初から使ってるんだろうか、この着メロ。
もう半分寝る体勢でベットに転がり、開いたディスプレイには「れいな(はぁと)」。
・・・出る気も失せる。

「もしもし?」
『もしもし?れいな?今何してる?』
まさかまだドアの前なわけないだろうが、絵里の声は少し焦っている。
「ん?今?お風呂入って、寝よかなーって思ってたとこ。明日早いけん・・・」
次の瞬間、耳をつんざくようなオクターブ上の声。
『お風呂っ!?入ったのっ!?』
「えっ・・・うん・・・」
なん、入っちゃいけんと?絵里専用のシャンプーとかあったと?
普通にモイスチャーミルクだったけど。
こんな時間にこんな電話をかけてくる絵里に少し苛立ったけど、何故か電話口でもじもじしている
絵里の姿が頭に浮かんだ。
・・・またやらしかこと考えとぉ、アイツ。
「・・・絵里、もしかして今度はお風呂入れんと困ってるとね?」
『はい、ズバリその通りです。』
即答されたその答えに、ただ溜息が出た。
それじゃ何の感慨もなくお風呂に浸かったれなはどうなると?
「そんなん言ってたら、着替えも何もできないっちゃろ。はよ入れ。絵里のアホ」
ドアの前で佇んでて、お風呂にも入れなくて、着替えもできん高校生なんてそういないっちゃ。
「れな、汚いまんまは嫌やけん、はよぅ」
『・・・わかったよう。』
絵里はまだ渋っている様子。ホントに入るんやろか。
けど絵里ってたまに暴走するから、釘刺しとかんと。
「・・・でもあんま見んなよ。」
『はいはい。わかってるって。そんな、ハズイなぁ・・・』
「絵里、やらしかもん。れなの体に何されるか、わかったもんじゃないっちゃ。」
そこまで変態じゃないって信じてるけど、変態一歩手前ぐらいのことしそうで怖い。
『ハァ!?いくらなんでもそれって・・・』
「とにかくっ!明日早いけん、はよしてね。・・・それと、絵里の着メロ変だっちゃ。」
それを最後に、さっさと電話を切った。
105 名前:赤いベンチ 投稿日:2005/07/23(土) 17:48
勝手に着メロ変えたら怒られるかな。まぁいいや、絵里だし。
手際よく「音」の項目に辿り着くと、ファイルを開く。

FIRST KISS

・・・一個しかないやん。徹底的やね。
もうどうでもよくなってきたので、枕元に携帯を放って、豆球をつけて、ベットに体を沈めた。
頭の中に、明日どうするかってことはあんまりなくて、何の着メロ落とすかってことが大半を占めていた。
「青いベンチ」とかどうっちゃろ。最近どこ行っても聴こえてくると。
そのまま次第に、「青いベンチ」のサビのメロディーが頭を埋め尽くしていって、いつの間にか眠りについていた。
106 名前:赤いベンチ 投稿日:2005/07/23(土) 18:36
「あ、絵・・・れいな。おはよう。」
「おはよう、れ・・・絵里。」
自分で自分に挨拶した不思議な朝。
絵里も何か腑に落ちないような顔をしている。
とりあえず今日一日は絵里で過ごさなきゃいけないのを思い出して、ちょっと気が重い。
さゆと張り合う自分大好き天然キャラ。絶対できん気がするけん。
(絵里、博多弁ちゃんと練習したっちゃが?)
(したした。れいなこそ、標準語喋ってよ。)
誰か来てもいいように、小声で話す絵里とれな。
小声はいいっちゃけど、かなり怪しい画になっとるけん。
お互い耳元に口を寄せて話すが、いつも多少伸びをしないと届かない相手の耳が、
今は見下ろせるほどの位置にある。
ちょっと嬉しいけど、その分いつもの自分がチビってことだ。
(・・・ねぇ絵里)
(ん?)
(・・・れいなって、チビっちゃね・・・)
言ったとたんに、絵里の顔が、何とも言えない、切なそうな顔になった。
れなが普通より小っちゃくて、絵里が標準サイズなのは知っとろぉやけど、れなからすれば絵里は充分デカか。
(絵里って・・・デカイっちゃね)
(えぇ?)
絵里の顔に複雑さが混じる。
まぁいいと。今はれなが絵里なんやけん、れなの方がデカか。
絵里があたふたと何か考え込んでいる。
(・・・絵里?)
(あっ、やっ、何でもない。)
大げさに胸の前で手を振る絵里。
今絵里が考えとぉことばれなに言ったら、完璧絵里は殴り倒されるだろう。
何となく、そんな気がする。
そんなことをしているうち、「モーニング娘。様」のプレートは、いつしか目の前まで迫っていた。
107 名前:アイサー 投稿日:2005/07/23(土) 18:39
更新しましたー。

>>102
真逆なのがまたよし(何
あ、別に田中家が殺伐としてるからって、暗いってわけじゃないですからね!
・・・多分(爆

>>103
絵里母って何かイメージしづらくて(汗
ただの天然お母さんになっちゃいました。
108 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/25(月) 15:19
更新お疲れさまです☆ちょっとやらしい絵里さん最高です!!
109 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/25(月) 22:20
確かに変態でしたがまあ田中さんもあれだ
110 名前:赤いベンチ 投稿日:2005/08/24(水) 10:49
さてどうするか。
あの賑やかである意味お節介なメンバーを、どうやって誤魔化し通すか。
私たち入れ替わっちゃいましたーなんて暴露したところで、藤本さんあたりに鼻で笑われそうやけん。
やっぱ隠し通すしかないっちゃけど・・・。
よしここは絵里に開けさせてやろうと見下ろすと、またボーっとしてる。
さっきからコイツなんを考えとるっちゃ。いつにも増してニヤケ顔が意味深。
「絵里、絵里・・・」
「んっ?」
絵里はアホみたいな顔して、やっとれなの目に焦点を合わせた。
れなにはそんなアホ面できんっちゃよ、絵里・・・。
「・・・ついたけん。・・・開けて。」
ドアの向こう側からは笑い声が絶えず、相変わらずのやかましさ。
まこっちゃんが伯爵夫人の練習をしてる。愛ちゃんがそれに訛りつつも突っ込む。
石川さんとさゆのナルシー教室。吉澤さんと藤本さんの軽ヤンチーム。
矢口さんがキャハハハ言って、ガキさんが素っ頓狂な声を上げる。
飯田さんとこんちゃんは絶対交信しとるっちゃね。
そんなみんなの楽しげな声を(交信内容はさっぱりわからん)聞いてか、絵里は難しそうな顔をして、いつまでも入ろうとしない。
いい加減じれったくなってきて、絵里の背中をつつく。
(私が開けるの?)
(当たり前っちゃろが。はよしんしゃい。)
(何ば言いよっとですかあなたは?)
絵里がいざ博多弁で喋ると何かムカつくけど、今はしょうがない。
またヒソヒソ声に戻って二人、ゴニョゴニョし始める。
111 名前:アイサー 投稿日:2005/08/24(水) 10:54
久しぶりな上に短いですが更新です。

>>108
亀井さんは割りといっつもやらしいと思います(爆
いやだってあの顔つきは(略

>>109
田中さんもあれですか(笑
まぁ、だいたいお互い様ってことなんでしょうか。

チマチマ更新ですみません・・・。
112 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/08/24(水) 11:54
  更新お疲れさまです。 田中チャンの視界からの亀井チャンは、かなりイッちゃってる風に見えますね(汗 次回更新待ってます。
113 名前:赤いベンチ 投稿日:2005/08/30(火) 15:54
(れいな開けてよ)
(何でれなが。絵里年上っちゃろ。)
(れいな年下でしょ)
同期だから年下もクソもないっちゃけど、そもそもそんなん言ったら藤本さんはどうなるっちゃ。
もしれなが絵里と同じ高校ば行っとったら、絵里のことを「亀井先輩」って呼ぶことになるっちゃ。
・・・自分で考えてて嫌になってきたけん。
(いいから!絵里、やれっ!!)
「ぅわっ!?」
やっぱりヘラヘラしてた絵里を容赦なく突き飛ばす。
絵里は見事に楽屋のドアに激突して、しっかり突破口を開いてくれた。
もちろんノブを回さないとドアは開かないわけで、無駄に大きい音だけが後に残った。
とたんに、楽屋から聞こえていたあれだけの声が止んで、ドアの向こうから10人分の視線が向けられているのがわかる。
「・・・誰ぇ?」
誰だと思っているのか、飯田さんが交信をやめて声をかける。
激突したんは絵里やけん、あとは任せるっちゃ。
すると、絵里はもう仕方がないといった様子で、笑顔を作ってドアを開けた。
「あ、あはは・・・すいませ〜ん」
絵里はものすごく不自然に、かなりわざとらしく楽屋に入っていく。
一瞬ヒヤッとしたが、みんなが安心したように肩の力を抜いたので、れなも何だかホッとした。
「なぁんだ〜れいなかぁ〜。脅かすなよー」
「れいな」の呼び名に体が反応したが、今はれなが絵里になってるのを思い出して、髪の毛をいじるフリをして誤魔化した。
とにかく楽屋潜入は成功っちゃ。ほぅ、と安堵の溜息。
絵里がれなの手を引いて、楽屋の思いっきり隅っこの方に引っ張っていく。
なるべく誰とも話さんようにするっちゃね。ボロが出たら困るけん、絵里にしてはいいアイデア。
・・・が、実際なかなかそう上手くはいかない。
114 名前:赤いベンチ 投稿日:2005/08/30(火) 16:18
「絵里、れいな、おはよう。」
ピンクナルシー鏡大好きさゆみんが、営業スマイルで朝の挨拶にやってきた。
絵里は焦ったのか、少しも気の利かない、「あはは・・・」なんて乾いた笑い。
「さゆ、おはよう」
さゆが挨拶に来るのはいつものことっちゃろ。
・・・こんなんで騙し通せるんちゃろか・・・。
「さっきの音、どうしたの?」
蛍光色の眩しいピンクが目に入ったかと思ったら、やっぱり鏡だった。
ぶつかったんは絵里やけん、もちろん絵里に任せるっちゃ。
絵里は私をチラ見して、小さく溜息をついた。
「れ・・・絵里がれなのこと突き飛ばしたけん、絵里が悪い。」
・・・コイツ、任しときゃいい気になりよって。
「なんば・・・何言ってんの!れーながもたもたしてるから」
早速ボロが出始めてるっちゃけど、当のさゆはもう鏡に夢中。
聞いたんお前っちゃろ・・・ホントさゆはわからんけん。
「あ、そうだ」
さゆが鏡を見たまま、うわ言のように呟く。
「なん?」
思わずいつもの調子で聞き返してしまった。今更口をおさえても遅い。
訛った・・・こげんことしとったら人んこと言えん。
「もう着替えた方がいいよ」
その点ではさゆが鏡大好きでよかった。鏡見てるうちは何も気にせんけん。

って、えぇ!?
そういえば、さゆのピンクの私服は、見事に歌衣装に変わっていた。
時計の針は本番時間の10分前をさしている。無自覚遅刻犯。
ちょぉ、これは急がんと。
「ちょっと絵里っ!早よ!」
「う・・・ちょ、れいなぁ!」
れなが立ち上がるよりも早く、絵里が手を引っ張った。
ホントにれなの体かと思うくらい強い力で。
・・・絵里のバカ力。
115 名前:赤いベンチ 投稿日:2005/08/30(火) 16:54
「・・・おーい」
『はいっ!!』
飯田さんの声がまるで何かの合図だったかのように、二人同時に楽屋を飛び出す。
ゼェゼェいっとる・・・ちょっと急ぎすぎたんやなか?
「髪整えなよー」
相変わらずのんびりした様子で一言言って、飯田さんはやっぱりのんびりとスタジオへ歩いて行った。
髪の毛のセットもおろそかにさっさと着替えたため、好き放題ぐしゃぐしゃという感じ。
「・・・絵里、れなの頭、どうなっとる?」
絵里を見下ろすと、寝起きの時のようなれなの髪型で、ボーっとこっちを見上げている。
かと思ったらニコッと笑って満足そうにしている。
ホント今日一日何考えとったんちゃろ。ボーっとしっぱなしやん。
・・・ま、そんなとこも絵里らしか。
「れいなの頭、すごい。」
「なんそれ」
笑顔でそんなん言われたらムカつくと。絵里だってすごいクセに。
「絵里の頭も、すごいっちゃよ。」
だって寝起きの時以外そんな髪型ありえんもん。
絵里が困ったような笑顔を浮かべて、すぐに意地の悪い笑みに変わった。
何をする気なのかと身構えようとしたが、それより早く絵里の手が頭の上にぽん、と置かれた。
自分の顔が、面白いくらいに熱くなっていくのがわかる。
「な・・・なんばしよっとね!手ぇのけっ!」
「何よぅ、せっかく髪の毛整えてあげようと思ったのにぃー」
・・・何か下心があるような気がするけどもう時間ないし仕方なか。
絵里のもやってやろうと思ったらもう整ってやがる。
仕方なくされるがままに髪の毛をいじられる。
・・・・・・・・・ハズい。
「・・・はい、できたよ。」
「うん。ありが・・・。!?」
!!??!
なんっ・・・!?
「・・・え、えぇぇぇえりっ!!」
どさくさ紛れに・・・紛れに・・・キス、しよった・・・。
してやったりの絵里の顔。煮え立つように熱いれなの顔。
・・・絵里の唇は、甘いミツの味がした。
116 名前:アイサー 投稿日:2005/08/30(火) 16:55
更新しましたー。

>>112
イッちゃいすぎですかねぇ(爆
亀井さんはこれくらいが丁度いいと思ってます(ぇ
117 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/09/03(土) 01:16
更新お疲れさまです。
なるほど、作者様の視点ではお二人はこんな感じなのですね(ェ

次回更新待ってます。
118 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/15(火) 00:08
続き見たいなぁ…
119 名前:赤いベンチ 投稿日:2005/11/29(火) 21:09
お疲れ様でしたぁー』
やっと長かった一日が終わった。
みんな疲れた顔しようけど、たぶんれなと絵里はそれの1.5倍くらいは疲れとぉ気がする。
れなの標準語はぐだぐだで、絵里の博多弁はこたこただった。けれども切り抜けた。
今日のれなは充分がんばったって胸張って言えると・・・疲れたよパトラッシュ。
「のぅ、田中ちゃんと亀ちゃん」
『はい?』
後ろから聞こえた訛った声に、二人揃って振り返る。
こげん訛っとろぉ人は一人しかおらん。
「よしざーさんに誘われての、遊びにいかん?」
絵里と綺麗に顔が見合わさった。
何とか仕事は切り抜けたっちゃけど、遊びまでいくと上手くいくかわからん。
遊ぶなら思いっ切り遊びたいけど、今のままじゃそれすらできん。
「や・・・れな達、二人で約束があるけん、すいません、行けんっちゃ。」
「そう・・・水差すわけにもいかんしね。邪魔したの。」
絵里は博多弁にだいぶ慣れてきたのか、れなにも違和感なく聞こえるくらい自然にそう言った。
・・・二人で約束なんかしとらんやん。もうちょっとマシな言い訳なかと?
半分照れ隠しで絵里を見ると、今日一番のニヤケ顔でくねくねしている。
れなの姿で何しとん、絵里。
「・・・絵里、おいてくとよ」
絵里と一歩距離をおいて振り返る。だって怪しかもん。
最高に冷たい視線を送ってやると、絵里はつまらなさそうな顔をした。
「待ってよー。ちょっと喜んでただけじゃん。」
「何に喜んでんのかわかんないのがキショイとね。」
最近自分でもよく思うことだけど、「キショイ」ってよく使うようになった。
もちろん相手が絵里の時だけだけど、そんなことも知らずに絵里は、もっともらしくお小言を言う。
「女の子はかわいらしくしてなきゃ」とかよく言われるけど、そんなん知らん。
そういう時は「絵里がいるから悪い」って返すと、もうあとが繋がらなくなる。
ま、これも愛情の裏返しってやつやけん。
120 名前:赤いベンチ 投稿日:2005/11/29(火) 21:10
・・・っていうか、いつまでむくれとるん?れなはそんな無愛想じゃなか。
どうやら、亀井さんは今自分がおかれている状況をしっかり把握していないようですね。

これ以上れなのイメージを悪くされても困るので、ご機嫌取りに状況確認も兼ねて、特別サービス。
・・・絵里、入れ替わっとってよかったっちゃね。
ものすごく照れるけど、おずおずと絵里の手をとる。
絵里が驚いた顔で振り返る。それはもう高橋さんのビックリ顔くらい。
「今は・・・れなが絵里やけん、いっつも甘えてくるの絵里の方やろ?やけん、れなも同じくしないと、不自然かなーって・・・べ、別に、れなの意志じゃなかとよ?」
あー、ハズい。こんなんもう二度と言わんけん、絵里よう覚えとけよ。
あぁ、でも、こんなこと言えるのも、何だかんだ言って好きだからなのかなぁなんて。
絵里こっち見とるし。もぅ、知らん!
「れいなぁーっ!!」
「!?う・・・わ、ちょっとっ、絵里っ!!」
絵里の体の方がいくらかしっかりしているはずなのに、絵里の体より細いれなの体に押し倒された。
あんなことしといて絵里が黙ってるわけないと思ってたけど、廊下ではマズい。
これじゃまるっきり、「珍しい!れいなが絵里を襲ってる!」になるやん。
121 名前:赤いベンチ 投稿日:2005/11/29(火) 21:10
「や、ややややめるっちゃ!公の場じゃけんっ!」
「無理ぃー!ガマンできないー!」
「っ・・・れなは変態じゃなかっ!」
これじゃ普段の絵里が変態ちっくと言ってることになるんだけど、幸いなことに絵里の動きが止まる。
おまけに絵里って涙腺弱いからすぐ泣きそうになるけんね。いいのか悪いのか。
「ごっ、ごめん!つい・・・」
「れいなが手、繋いでくれたから」と、絵里が蚊の鳴くような声で言う。
大体予想はしてたけど・・・状況確認にしては逆効果だったか。
「今はれなが絵里なの!だから絵里はれなになるっちゃ!」
また顔が熱くなってきた。こんなに熱くなるのは絵里といるときだけ。本人はわかっとぉのんかな。
見ていると、みるみるうちに絵里の表情がだらしなくなっていく。
たまにはピシッとした表情を見せてほしいもんだ。
「・・・絵里、ヘンなこと考えとるんじゃなかね?」
言ったとたんに絵里の顔が引き締まった。妄想癖でもあるんだろうか。
とにかく今日は早く帰りたい。帰ったら何されても問題なかと。・・・させないけどな。
「・・・とにかく早く着替えよ。暗くなるけん。」
「うん。」

今度はどちらからでもなく、自然に手が絡み合った。
122 名前:アイサー 投稿日:2005/11/29(火) 21:12
更新ですー。
スランプ中です・・・。

>>117
はい、こんな感じです(笑
特に亀井さんは最近はっちゃけてきていると思います。
123 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/11/29(火) 21:51
更新お疲れ様です。
スランプですか、実は自分もry
こうなってしまうと色々とやりにくいでしょうねぇ(ぇ
次回更新待ってます。
124 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/30(水) 08:16
更新だー!(≧▽≦)作者さん色々あるでしょうががんばって下さい!
125 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 03:30
突然失礼します。いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
126 名前:iwate 4649! 投稿日:2006/01/11(水) 18:29
青いベンチのフラッシュのホームページ教えて
127 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/25(水) 16:44
着替え終わった頃には、辺りはもう真っ暗。
絵里がやたらとモタモタしていたせいだ。
「絵里のせいっちゃよ。バタバタしよって。」
「ちがぁよ。れいながカワイイことするから・・・」
「なっ・・・かっ、かわ・・・」
すぐそういうことを言って、れなんことからかって、ニヤニヤする。
ムカつくけん、鼻の穴繋げてやろか。

そんなことを思いながら、高橋さんへの言い訳とはいえ、「約束」した手前、れなの家に行かないわけにいかなかった。
半ば強引な絵里の誘いもあってのことだ。
128 名前:赤いベンチ 投稿日:2006/01/25(水) 16:44
「ねー、れーなぁ〜」
「・・・なん?」
「ヒ〜マぁ〜」
なんがヒマか。こちとら明日までの宿題終わらすのに忙しいってのに。
そもそも絵里が悪いっちゃ、今はれなが絵里で絵里がれななのに絵里になってるれなに宿題やらせるから。
・・・あぁもう、自分でもようわからん。
れなは一個上の授業を受けなくちゃならないし、一個上の先輩と仲良くしないといけないのに。
絵里のバカ。ベッドの上でバタバタすんなっていつも言うとるっちゃろ。
イライラする。しかもこの問題ムズい。
「あぁーもー!わからーんっ!!」
「しっ!れいな、しーっ!!」
絵里が慌ててジタバタする。
しまった、絵里の声で博多弁喋ると、れなのママに怪しまれるけん。
二人でじっと耳を澄ますと、台所からの流水音。
「・・・もう、れーな。」
「・・・ごめん・・・」
悪いのは絵里なのに。何でれなが謝らんといけんの。面白くない。
くるんと机の方に向き直ると、突如として睡魔に襲われる。
間違いなくこれは真っ白い問題用紙から放たれているのだろう。
丁度よく頭がかっくんかっくんなってきた時、絵里の手が髪に絡んできた。
その手に安心しきって、眠そうな溜息が出る。
「れーぃな」
「・・・・んん?」
絵里のお腹がいい位置にある〜・・・そのままそこにおってよぉ。
れなの思考回路はどんどん回転を遅くして、あとは「寝ろ」の命令のみ。
「・・・ね、れいな?」
「ぅんん?」
絵里の声のトーンが心地いい。普段ならうっとうしいと思うはずなのに。
絵里、れなが寝たらちゃんとベッドまで連れてってよぉ・・・。

「・・・いただきます。」
「へっ?ゔに゙ゃあ゙っ!?」
眠気に力を奪われたれなの体の上に、容赦なく絵里の体が覆いかぶさってきた。
キスなんて乱暴にイスの上で、夢見心地で連れて行ってもらおうと思っていたベッドには、無理矢理押し倒された。
れなは成す術もなく、あっけなく襲われてしまったのであった・・・。
129 名前:赤いベンチ 投稿日:2006/01/25(水) 16:45
元々れなはそげな軽い女じゃなかと。
「・・・絵里なんかキライ・・・」
「えぇっ!れいなぁ〜・・・」
人が眠たいって言うとるのんに、一回終わって一休みしてればもう一回、またもう一回、いいかげんにしろ!
「二人とも、早く起きないと。れいな、遅刻するわよー。」
そうだ、絵里に文句言っとる場合じゃないけん、帰ってきたらこってり絞っちゃる・・・
って、あ・・・
「絵里・・・宿題終わっとらん。」
「あぁーっ!?」
絵里のバカー!バカだけじゃ足りん、バカチンがぁー!
あんなことしとる暇あったら、宿題してたっちゃ、眠くなったれなもバカー!
もうダメ、高校行けん・・・。
「ごはんできたよー」
真っ白に燃え尽きた二人の間に、れなのママの声だけがむなしく響き渡った。
130 名前:赤いベンチ 投稿日:2006/01/25(水) 16:45
朝のトーストがこんなにも不味いものだったとは。
だけど、怒られるのはどうせ絵里だし、今学期の成績ももうつけてしまっているだろうと思い直した。
そうでもしないと、絵里を絞め殺してしまいたくなるから。
「それにしても、二人とも昨日はお盛んだったわねぇ。」
う。
「しかも珍しくれいなが攻めて・・・」
ママ、れなはどこまで行ってもへタレと。期待を裏切っちゃってごめん。
むかむかして絵里を見たら、何やらニヤニヤして顔を赤くしている。
・・・アホっちゃろ、コイツ。
「れいな、遅れるよ?もう行ったら?」
その顔がむかつくのと、本当に遅れそうなので言ってやったら、「あっ、カウントダウン・・・」なんて呟きやがった。
それはもう何がムカつくかって全てがだ。
「早く行けぇっ!!」
「は、はいはいっ!」
れなのママがいることも忘れて怒鳴り散らしてやったら、そそくさと準備をして出ていった。
ママは「じゃあ絵里ちゃん、私も出かけてくるけんね。」と言い残して、寝室に入って行った。
これでちょっとは静かに・・・

・・・あ。
131 名前:アイサー 投稿日:2006/01/25(水) 16:48
大変更新が遅くなっています・・・。
申し訳ないです。

>>123
スランプなんかに苦しまされる作者で申し訳ない(ぇ
がんばって抜け出します。・・・たぶん(何

>>124
うわーい!(壊
更新遅くてごめんなさいね。
もっとペースを上げられるようがんばります。
132 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/26(木) 20:35
どれだけ遅くなっても私は待っています('-^*)/
133 名前:通りすがりの者 投稿日:2006/01/27(金) 00:27
更新お疲れ様です。

やはり勘は鋭いのですねぇ(ぇ
次回更新マターリ待ってます。
134 名前:通行人A 投稿日:2006/02/19(日) 17:09
その声が枯れるくらいにその仔に好きだって言えばよかったのにね。
もう遅かったんだろうね。
135 名前:一華 投稿日:2006/02/19(日) 17:18
その声が枯れるくらいに元カノに好きだって言えばよかったのにね。
たった一言なのにね、『好き』って。
なんでたった一言が言えないんだろう。
簡単そうに見えて難しいんだろうね、
『好き』って。
136 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/13(木) 04:05
初めて拝読いたしました おもしろいやら萌えるやら
所々リンクしてる二人の考え方がやっぱり恋人だなぁって
ポジション的に変わらぬまま 次回をお待ちしております
137 名前:赤いベンチ 投稿日:2006/04/16(日) 01:39
今、れなは、前から来る人が無意識に避けて通るぐらいの物凄く不機嫌な顔で、自身の通学路を歩いています。
何故かって、私の恋人という肩書きを背負っている某Kさんが、情けなくもお弁当をお忘れになられたからです。
恋人の喜ぶ顔が見たくて届けに行くんだと思っているのならば、勘違いも甚だしいです。
れなという人間は、昼の弁当を忘れて学校に行くような間抜けな人ではないからです。
某Kさんが例えそのような人であっても、れなになっている以上はきちんとしていただきたい。
さて、敬語の引き際がわからなくなるからこのへんでやめておこう。
ホント絵里ってバカ。今なら何の惜しげもなく絵里に「バカ」って言える。
ただでさえ痛い腰を引きずってわざわざお弁当一個のために30分の通学路を歩くれなっていい人。
れなもそんなに暇じゃないけん、絵里のバカっぷりもほどほどにしてほしい。
まぁ、今の時間は「たまたま」、暇だったから、仕方なく。
「たまたま」、暇だったから、手紙まで書いてやったれなって、やっぱいい人。人間国宝。

「あ、しまった。携帯忘れた。」
校門前まで来て、肝心の連絡手段を忘れたことに気付く。
学校の正面、ほぼ中央に位置する時計は、もうすぐ朝のホームルームの終了時刻を指し示そうとしているところだった。
自身の教室の窓であろうそこを、じっと見つめる他になす術がなかった。
ホームルーム終了のチャイムが鳴ると共に、窓際の席に座るれなの姿が、後ろの友達に背中をつつかれて飛び上がった。
・・・昨夜のことが余計に思い出されて、赤くなる顔を一人おさえた。
ぎこちなくれなの友達と会話する絵里。こら、笑顔が引きつっとる。

ふと、友達の一人がこちらを向く。「またか」とでも言うような顔をして、絵里に声をかけたようだった。
驚いた顔でこちらを振り向いた絵里は、すぐさま立ち上がって何かを叫びかけた。
慌てて口をつぐんで、同じく慌てて教室を出た様子。
・・・まったく、こんなに離れたところから見てるのに、こんなにハラハラするなんてさぁ。

「れいなっ!」
しばらくして、コンサートの後みたいに息を切らした絵里が、相当ダッシュでやってきた。
走ってくる最中にも顔を緩ませて、恥ずかしいったらありゃしない。
それに、何だか今になって、お弁当を届けに来たのがやたら恋人くさくて、ムダに顔が熱くなってきた。
「絵里のバカ。」
「れいな大好きぃ♪」
苦し紛れの悪口も、絵里のバカフィルターにかかってしまえば意味をもたない。
抱きつかれてしまう前に、絵里の前にお弁当を突き出す。
「れなは変態じゃなか。弁当忘れとろぉもん。」
絵里は当たり前のように呆けた顔をしている。
絵里の肩越しに、友達が窓から飽きもせずこちらを好奇の目でうかがっているのが見える。
見事勘違いをしたのか、たちまちにだらしない顔になっていろんな意味で臨戦態勢の絵里。
「わざわざ届けてくれたんだね♪れいな、やっぱり大好・・・」
「せからしかよ、絵里。れなは変態じゃなかって。何回言わせるっちゃ。」
くそぅ、絵里がれなの姿で変なことする度に、窓からの視線が痛くなる。
それはもう早く立ち去りたくてたまらなかった。
「それに、今日はれな休みなんやけん、手間かけさせんといてほしいっちゃ・・・」
やっとお弁当を受け取ってくれた絵里の顔は、欲望と自制心が心の中で入り混じっているのであろう、複雑な表情だった。
やがて、諦めたようにフッと肩の力を抜いたかと思うと、今度は耳元に顔を寄せてきた。
(帰ったら『ごほうび』あげる。)
「なん?『ごほうび』?」
絵里は意味深にニッと笑うと、「ありがと」とお弁当を揺らして教室へ戻っていった。
時計を見れば、本鈴から20分も経っていたが、言ってやらなかった。
バカ絵里はたまに怒られればいいっちゃ。
138 名前:赤いベンチ 投稿日:2006/04/16(日) 01:39
昼の一時でも過ぎてしまうと、テレビも何もやってないし、ひどくつまらなくなる。
今頃絵里は、れなの友達と相変わらずぎこちなく昼休みを過ごしているのだろう。
もう手紙見たかな。やっぱ書かなきゃよかった。絵里なら絶対変な風に誤解する。
メールしてみようかとも思ったけど、何だかんだ「気にしてる」って思われたくないし、やめた。
絵里の話は寒いけど、いてくれた方が少しは暇つぶしになるかな、やっぱ。

「・・・えり、」

ぐあぁ、何呟いてるんだれいなのバカ。今のれいなは絵里よりバカだったぞれいな。
・・・あとどんくらいで学校終わるっけ・・・。
どーせ誰も聞いちゃいないんだし、一人の時くらい素直になったっていいよね。

「絵里、早く帰ってこーい」

「暇、暇ー」

「絵里ー・・・」

絵里が一人の時、まだれなと絵里が入れ替わってない時、絵里も寂しくなったのかな。
こんな風に、れなの名前を呼んだりしたかな。
まぁ最も、絵里からは授業中だろうと何だろうとおかまいなしにメールが来たけど。
れなが簡単にそんなこと出来ないの知ってるクセに。
だから、早く帰ってきてよ。


「れいなぁ!ただいまぁ!」

・・・空耳?こんなに大きく聞こえた空耳は初めてだなぁ・・・。
いくら何でも早すぎる帰還。
玄関に出てみれば、待ち望んだ(ってことは死んでも口には出してやらないけど)絵里の姿。
「絵里、やけに早かね?確か、れな今日は清掃当番・・・」
「サボった。」
「はぁ!?」
まさか、サボられるとは思ってなかった。
学力の面で軽くヤバイどころかかなりヤバイから、内申で何とかがんばろうってこの前決めたばっかだったのに。
「なんばしとっとね!内申点下がるけん!」
「れーなのクセに内申点なんか気にするなよー」
「『地元じゃ結構悪かった?』でも内申点は気にすると!」
実はそこまで気にしてないけど。
それよりも、思ってたよりずっと早く帰ってきてくれたのが、凄く嬉しかったってことは、やっぱり死んでも口に出してやらないけど。
139 名前:アイサー 投稿日:2006/04/16(日) 01:44
お久しぶりです。更新しましたー。

>>132
そんなこと言われたら作者は嬉し涙に溺れます(何

>>133
「鋭いようで鈍い」が今回のスローガンです(ぇ
実際そんなれいなを希望(何

>>136
ポジション的には、はい(何
それはもう思いっきり萌えてくださると助かります。
140 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/28(金) 04:20
更新だ!!( ̄口 ̄)ちょーうれしいです!これからもがんばって下さい!
141 名前:赤いベンチ 投稿日:2006/05/20(土) 10:50
それからずっと、不機嫌な顔をしていたつもりだったのに、絵里は何を考えているのかニヤニヤしている。
全部お見通しって感じで、嬉しかったことがバレているような気がして、照れ隠しにもっと不機嫌な顔をする。
隣の絵里とは、れなの手のひら一個分、離れている。
いつもの絵里なら、すぐに埋めてしまうスペースだ。
何となしに気になって、絵里の方をチラ見したら、おもっきし目が合ってしまった。
なんコイツずっとれなんこと見とったと?変態っちゃ・・・。

「寂しかったんでしょ?」
絵里の中身のない声に図星をつかれて、思わず体が震える。
まともに絵里の顔なんか見れやしない、自分の赤い顔を見られないように、体を小さくするのが精一杯。
小学校の先生に「よくできました」と褒められるかと思うほど、見事な体育座り。
「寂しかったんでしょ?」
同じ声で、絵里はまた言った。
何だか、絵里だけ余裕ぶっこきって感じで、悔しくなって、ヤケになった。
ただそこにあるのが、絵里の憎たらしい顔じゃなくて、れなの顔だってことが何よりも、

「バカ絵里っ!寂しかに決まっとぉやろっ!」
やるせなかった。
いくら寂しくても、いくら絵里の名前を呼んでも、鏡を見ればいるのは絵里だし。
そのくせ絵里じゃないってことに、もうどうしようもなく嫌になって。
絵里は、少しだけ眉を下げると、静かにれなを抱きしめた。
静かだったけど、すごく力のこもった抱擁。

絵里、れなの体とアクセサリー、返すっちゃ。
・・・で、れなも絵里に全部返すばい。
そしたら、全部絵里のまんまで、も一回こうしてほしいっちゃ。

絵里の体はほんの少し震えていて、れなの腰に回る手はとても暖かだった。
142 名前:赤いベンチ 投稿日:2006/05/20(土) 10:50
「・・・絵里・・・絵里の顔、見たい・・・」
れなが出した絵里の声は、れなの声に似ていた。
絵里は、少し体を離すと、ちょっと首を傾けてれなを覗き込む。
「本物の絵里の顔が見たいけん・・・」
だって、鏡を見たって、何となく尖った顔の絵里しかいないから。
それに、目の前のれなの顔も、どことなく間が抜けていて嫌だから。
「・・・ねぇ、れーな?」
「なん?」
絵里はまた、腕の中にれなを抱くと、絵里みたいな声で言った。
「・・・遊びに行こーか。」
「・・・今?」
「今。」
「・・・うん。」
今のれなには、絵里の考えていることが全部わかるような気がした。
ようやっと、入れ替わったメリットが見えてきた気がしたけど、今までデメリットばかりだったからもういい。
出かけるには少し傾きすぎた太陽を見上げて、後ろ手にドアを閉めた。
143 名前:赤いベンチ 投稿日:2006/05/20(土) 10:50
二人ともあのアクセサリーをつけて、薄暗くなってきた街を徘徊。
れなの左には絵里がいて、絵里の右手はれなの左手と繋がっていた。
今までになかった、沈黙のデート。ただ、それがこの場に一番合っているような気がした。
特に行くところもないし、どこに行こうという気もないけれど、絵里と手を繋いでれば。
今のれなは、それでいい。

「絵里」
「ん?」
「呼んでみただけ」
名前の響きに、果てしなく混ざり合う、何か柔らかいものを感じたから。
だから、左手に力をこめた。絵里も力をこめて返した。
らぶのっく、てやつだ。

「れいな」
「なん?」
「呼んでみただけ」
悪い顔で、絵里がだらしなく笑っていた。れなも笑ったら、照れ笑いみたくなった。
絵里がまた右手に力を入れた。れなの手は、ちょっと動いただけで、力が入らなかった。
144 名前:アイサー 投稿日:2006/05/20(土) 10:53
更新しましたー。

>>140
更新です!(何
毎度毎度遅いわ少ないわですみません。
気長に待っててやってくださいな。

気が付いたら、もうじき終わりそうです。
次回で最後かも〜
145 名前:繧「繧、繧オ繝シ 投稿日:2006/08/04(金) 12:31
謳コ蟶ッ縺九i縺ェ縺ョ縺ァ荳頑焔縺乗嶌縺崎セシ繧√※縺縺ェ縺縺九b縺励l縺セ縺帙s縺後∫函蟄伜ア蜻翫〒縺吶よ代′螳カ縺ョ繝代た繧ウ繝ウ讒倥′蜈・髯「荳ュ縺ョ縺溘a縲∵峩譁ー縺碁≦繧後※縺縺セ縺吶ら筏縺苓ィウ縺ゅj縺セ縺帙s縲ゅヱ繧ス繧ウ繝ウ蠕ゥ豢サ谺。隨ャ縲∵峩譁ー縺励∪縺吶ョ縺ァ縲√b縺蟆代@蠕縺」縺ヲ縺縺ヲ縺上□縺輔>縲ゆス懆縺ァ縺励◆縲
146 名前:アイサー 投稿日:2006/08/05(土) 16:19
てす。もしや文字化けですか?
147 名前:アイサー 投稿日:2006/08/05(土) 16:23
申し訳ない。145の文字化けは私の生存報告でした。パソコンではちゃんと見られるのかな?現在パソコン修理中につき、更新ができない状態です。もう少し待っていただけると嬉しいです。作者でした。
148 名前:アイサー 投稿日:2007/04/05(木) 00:18
生存報告ばかりになってしまい、申し訳ありません。
本気でパソコンをどうにかしないとと思っております。
待ってくださっている方、いらっしゃいましたら、もうしばらく辛抱していただけると嬉しいです。
必ず更新致します。
149 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/22(日) 15:12
頑張って下さい
150 名前:アイサー 投稿日:2007/12/11(火) 22:30
放棄はしません。

待ってくださっている方には申し訳ないです…。
クリスマスにパソコンをねだってみます…(今更)

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