女神H(アーシュ)
- 1 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月06日(月)13時33分29秒
- ⊂⊃ ☆ .
@ノノヽヽ@ / ゚ ゚ .。.:*・゜☆
へ( 0^〜^)./
彡〜ノ つ つ
/ ______|
(/ (/
コンセプトは>>2
- 2 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月06日(月)13時35分09秒
- 一枚のポートレイト
, ─ヽ
________ /,/\ヾ\
|__|__|__|_ __((`.∀´\ )
|_|__|__|__ /ノへゝ/''' )ヽ ヤスヤス
||__| | | \^〜^0)/ 丿/
|_|_| 从.从从 | \__ ̄ ̄⊂|丿/
|__|| 从人人从. | /\__/......|||
|_|_|///ヽヾ\ / ............ゝ/||
────────(~〜ヽ............|/
「これがお前だよ」 R.B
- 3 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月06日(月)13時36分56秒
- 『もう一つのいしよし物語』
- 4 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月06日(月)13時37分42秒
- まあ、奥様、こんにちは。ええ、今日もいい日和で。いいえ、とんでもない、うちのひとみがいつもお世話になっています。ほら、うちの子ったらまるで男の子みたいにずぼらだから、お宅の梨華ちゃんみたいなしっかりした子がそばにいてくれるだけで安心ですの。
うちの子みたいのが芸能界でやっていけるかどうか心配だったんですけど、同じ年頃の女の子がいるから、本人もずっと気が楽になったみたいで、ええ。性格はずぼらだけど身体のほうは妙に繊細にできてるみたいで、ええ、そうなんですよ。
- 5 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月06日(月)13時38分39秒
- でもあの子たちがモーニング娘。に入って2年もたつんですわねえ。ええ、ほんとに時の流れるのは早いですわねえ。あの頃はまだ中学生で、ほんとに心配しましたわ。勉強のほうとかねえ、いろいろありますし。それでもこんな人生を送れるなんてめったにないことですから、ええ、そうですよねえ。
でも、なんとか高校にも入れまして。一応高校くらいは出ておいて悪いことはないんじゃないかと、ああ、ごめんなさい、そういうつもりで言ったわけじゃないんですよ。お宅の梨華ちゃんは、うちから見たら大英断したわけですから、ええ、そう、ほら、うちの子だといつまで続けられるかわからなかったので。その思いが強かったから、ほら、梨華ちゃん大ブレイクしてるでしょ。写真集の人気が一番だったそうじゃないですか。ええ、そうですよ。
- 6 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月06日(月)13時39分37秒
- 写真集といえば、うちの子も出したみたいですけど、ええ、まあ、それはどうもありがとうございます。いえいえ。ひとみも梨華ちゃんのを机の棚に大事に飾ってありますのよ。まあ。うちの子は身体が大きくて男の子みたいだから、ほら、女の子のかっこした写真もありましたけど、ねえ、ちょっと似合わないというか、いえいえ、謙遜じゃございませんよ。どう見ても無理がありましたわよ。それに比べてお宅の梨華ちゃん、ほんとかわいらしい写真ばっかりで、あんなかわいい娘さんがいてほんとうらやましいですわ。
とんでもないですわ。うちの子ったら、かわいい服より男物の服のほうが似合うんですから。そうですわね、ええ。うちの子が真ん中で歌うって聞いたとき、夫と喜びましたわよ。ええ、いつも隅っこでいるのかどうかわかりませんでしたから。それがですね、テレビで見るとまるで男じゃないですか。後藤さんのところの真希ちゃんはそれでも女の子らしかったし、ええ。あら、奥様そんなこと言っちゃ悪いわよ。確かになつみさんのあの髪はおかしかったですけど。まあ、そんなことおっしゃって、誰が聞いているかわかりませんわよ。うふふ。
- 7 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月06日(月)13時40分25秒
- でも本当にうらやましいですわ。お宅の梨華ちゃん、私の娘にしたいくらいですわ。ええ、そうですよね、ええ。ほんとに二人とも仲が良くて、昨日も二人で矢口さんとこの真里さんの家に泊まりに行ったんですよね。え? 保田さんとこの圭さんの家ですって? おかしいですわね。まあ、二人のことですから、心配はしていませんわ。
ほら、オランダとかスウェーデンでしたかしら、同性どうしでも結婚できる国があるとかいうじゃないですか。ええ、もしかして、なんて思うことがあるんですよ。まあ、奥さんもですか。ねえ、変な男につかまるなら、そっちのほうがいいですわよ。あらあら。気が早いですわね。
そうすると、うちの子が新郎で梨華ちゃんが新婦ですか。まあ。うちの子はウェディングドレスなんて似合いませんわよ。もうあきらめてましたから。ええ、そうですわね。ナース服は妙に似合うんですけどね。
- 8 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月06日(月)13時41分17秒
- まあ。稼ぎのほうは二人とも十分ありますわよ。それはもう、天下のモーニング娘。ですからね。なつみさんや圭織さんとはねえ、比べてもしょうがないですわ。えっ、それは、お宅の梨華ちゃんはタンポポとカントリー娘。がありますから、ええ、うちの子はプッチモニだけですけど。旦那の稼ぎが少ないといっても、でも、写真集でも売上が全然違うですって。奥さん、いくらなんでもそれはあんまりじゃないですか。
うちの子はあれでも一生懸命がんばってるんですよ。それなのに、うん、ちょっと待ってくださいよ。努力しても実らなければって、それ、梨華ちゃんだって似たようなものじゃありません? ただヘソ出してフェロモン流してるだけでしょ。そりゃうちの子はヘソ出しませんけど、風俗嬢みたいに育てたつもりはありませんから。
- 9 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月06日(月)13時42分05秒
- だから、その件については謝ったじゃありませんか。高校なんか行かなくたって、がんばってる人はたくさんいますわよ。まあ、バカにしたつもりはありませんわよ。ええ、うん、そうですか。それならしかたないですわね。ええ、うちの子は玉のように白い肌ですから、お宅の梨華ちゃんとは似合いませんわよね。ええ、後藤さんとこの真希ちゃんとか、高橋さんとこの愛ちゃんとか、そちらのほうがずっと相性が良さそうですものね。ふふ、そうですわね、梨華ちゃんは保田さんとこの圭さんがお似合いですわよ、きっと。
あら、ひとみ、帰ってたの。いいこと、もう梨華ちゃんといっしょに遊んじゃだめよ。どうしてって、どうしても。わかった? それでは奥様、そういうことで、ええ、ごきげんよう。
- 10 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月06日(月)13時42分56秒
- おしまい
- 11 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月06日(月)13時43分48秒
- ( T▽T)
- 12 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月06日(月)13時44分19秒
- (;0^〜^)
- 13 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月06日(月)20時19分55秒
- キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
新スレおめ!!
- 14 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月06日(月)22時43分38秒
- 微妙に読んで不快に…
- 15 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月06日(月)23時54分40秒
- >>14
(0^〜^)<どこの部分で? 後学のために聞かせてほしいっす
- 16 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月07日(火)23時28分47秒
- 『金の吉澤、銀の吉澤』
- 17 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月07日(火)23時29分24秒
- やっぱりロケは気持ちがいいと吉澤は思った。いつもスタジオばかりでは、息がつまってしまう。
休憩時間になって、吉澤はこの公園内を散歩することにした。太陽が薄い雲に覆われて、文句なしの青空というわけではなかった。
遊歩道をゆっくり歩いていると、緑色の池が見えてきた。釣り竿が置いてある。誰かが捨てていったものだろうか、針と糸もついているので試してみるかと、吉澤は釣り竿を池に向かって振ってみた。おもりのおかげで遠くまで飛んでいき、ぽちゃんと池に針が沈んだ。
- 18 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月07日(火)23時29分47秒
- エサがついていないので、吉澤は何も期待していたわけではなかった。ただやてみたかっただけである。そろそろ時間になったので戻ろうかと思ったところ、釣り竿がしなった。
「まじで」
かなりの大物がかかったようだった。リールを回そうとしてもびくともしなかった。吉澤は釣り竿をを上げようと試みたが、逆に引っ張られた。執着しないで手を離せばよかったのだが、吉澤には毛頭そのつもりはなかった。
「わっ」
吉澤の体が宙を飛んだ。大きな水音がして、やがて何事もなかったかのように静かな池に戻った。
……
- 19 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月07日(火)23時30分49秒
- 吉澤がいないことに気がついた一同は手分けして探すことにした。矢口と保田は緑色の池の前に来た。
「まさか、池に落ちたなんてこと……」
二人が池の水際まで来ると、池の中央から水が噴き出し、白っぽいもやもやとしたものが現れた。見た目は人間の女性のようである。左手には金色、右手には銀色に輝く人形のようなものを抱えていた。
「おまえたちが探しているのは、金の吉澤か? それとも銀の吉澤か?」
二人はあっけにとられたが、返事をしないわけにはいかない。
「いえ、普通の吉澤です」
「あなたは誰ですか?」
- 20 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月07日(火)23時31分26秒
- 「わたしはこの池の精だ。もう一度聞くが、おまえたちの探しているのは金の吉澤か、銀の吉澤か、どちらだ?」
「ですから普通の吉澤です」
池の精はにっこりと微笑んだ。
「正直に答えたからといって、金と銀の両方をあげようなどとは言わない。手に入るのは一つだけだ」
「普通のでいいです」
「本当か? 今はペイオフとやらで金の相場が上がっているというではないか。この金の吉澤は50キロはあるぞ?」
矢口が掛け算を始めたので、保田がそれを押しのけた。
- 21 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月07日(火)23時32分03秒
- 「私たちが探しているのは普通の吉澤です。返してください」
「はて、普通の吉澤と。普通のとは何だ?」
ここで保田は返事につまった。普通とは何かなど、答えられる人間はいない。
「普通の吉澤など存在しない。どうせなら金の吉澤でいいではないか。金ぴかの衣装がおおいに受けたと聞くではないか。この吉澤は衣装どころかすべてが金だぞ?」
「金の吉澤が戻ってきても困ります」
「困る? 何が困るというのだ? この金の吉澤は、自分が金であることに疑問をいだくこともあろうが、それでもその事実を受け入れねばなるまい。当人が受け入れる事実をおまえたちは拒否するのか?」
- 22 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月07日(火)23時32分52秒
- 「テレビやコンサートにこんな吉澤は出せません」
「それはおまえたちの勝手な都合だろう。……おまえたちがここに来たのも何かの縁だ。聞いておきたいことがある」
二人は池の精の言葉を待った。
「おまえたちは吉澤をうとましく思ったことはないか?」
「ありません!」
「どうしてですか? かわいい後輩ですよ!」
池の精が、今度はせせり笑いをしたことが二人のカンにさわった。
「例えば、そのほう」
池の精は二つの吉澤を腕に抱えたまま、保田のほうを指した。
- 23 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月07日(火)23時33分27秒
- 「吉澤がプッチモニとやらに加わることになったとき、素直に受け入れることができたか?」
「それは、私が決めたことではありません」
「ふむ、自分で決めることができたならば、そんなことにはさせなかったということだな」
「そ、そんな」
池の精は保田の言葉をさえぎり、今度は矢口のほうを向いた。
「そのほうは……」
「おいらはよっすぃ〜が大好きだぞ!」
「まだ何にも言ってないではないか。まあよかろう。それでは、金にするか銀にするか決めたか? 今は金本位制だから金のほうがよかろう」
「普通の吉澤を返してください!」
- 24 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月07日(火)23時34分04秒
- 二人の強い口調に、池の精はやれやれと首を振った。
「強情な。普通の吉澤など存在しない。あるのは、単なる吉澤だ」
「じゃあ、元の吉澤を返してください」
「そうきたか。元のとは何だ? 人間とは常に変化しつづける生き物だろう。元の吉澤も存在しないのだ。それはおまえたちも同じだ」
池の精と二人の言い争いは平行線に終わった。
「……わかった。無欲で欲深い人間たちよ。それならば、この池に投げ出される前の吉澤を返してやろう」
池の精の体が光った。二人が両手を顔から離したときには、静かな池に戻っていた。二人の横に釣り竿を握ったままの吉澤が倒れていた。
……
- 25 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月07日(火)23時34分44秒
- 何事もなかったかのようにロケが再開した。
「矢口さん、ご迷惑かけてごめんなさい」
吉澤が矢口にぺこりと頭を下げた。
「気にしなくていいよ。……よっすぃ〜、よっすぃ〜は、よっすぃ〜だよね?」
「え? ええ、そうですよ」
「……ごめん、忘れて。変なこと言っちゃった」
吉澤は首をかしげながら、矢口から離れていった。
なんだかむずかゆくなった矢口は、右腕をかいた。妙な感触がした。爪を見ると、皮がはさまっていた。右腕の、皮のむけたところから、かすかに金色の光がこぼれていた。
「え……」
矢口は思わず右腕を押さえた。
「おいらは……おいらだ」
- 26 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月07日(火)23時35分15秒
- おしまい
- 27 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月07日(火)23時35分45秒
- (;〜^◇^)
- 28 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月07日(火)23時36分18秒
- ( 0^〜^)?
- 29 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月08日(水)22時15分21秒
- 『作品』
矢口真里の日記より
- 30 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月08日(水)22時15分54秒
- ○月○日
増員が決まった。3人であると聞き、つんくさんにもう1名増やすよう申し出た。3人も4人も同じである。そしてその1人について、かねてから開発中だったアンドロイドを推薦した。
○月○日
つんくさんは私の申し出を了承した。そのキャラクターについておおまかな指図書を渡された。今までにないキャラである。Visual Basic でプログラムを組まなければならないところがこのアンドロイドの欠点であるが、その労苦を厭う気持ちはまったくない。
- 31 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月08日(水)22時16分37秒
- ○月○日
このアンドロイドには数万の行動パターンがデフォルトとして記憶されてある。つんくさんの指示どおりのキャラにするためのカスタマイズを行った。
「好きな」「食べ物」の2語に反応して「ベーグル」と発音しにっこりと微笑むというプログラムを実行したところ、「ベーグル、ベーグル、ベーグル」とオウムのようにリピートを始めてしまった。見ると goto コマンドが組み込まれていた。デフォルトでこんなプログラムを組むな。
○月○日
ほぼカスタマイズが完了した。つんくさんもこの出来ばえに満足したようだ。このことは二人だけの秘密である。事務所からこのアンドロイドに支払われる給与は二人で分けあう予定である。もちろん維持費は負担してもらう。酔狂だけではこんなことはしない。
「身長は……163cmか。飯田の次くらいに高いな」
つんくさんが私を見てニヤリとした。コンプレックスを読まれた。
- 32 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月08日(水)22時17分20秒
- ○月○日
とうとうデビューするときが来た。自信作だから不安はなかったが、万一のことを考え、私が教育係と称してそばにくっついていることにした。
初めてのことであり、歌やダンスはあまり上手ではないようにした。初めから完璧にこなせばいらぬ注目を浴びるだろうし、モーニング娘。のコンセプトに合わない。
○月○日
紗耶香の後釜としてプッチモニに入ることになった。私の目から離すことにはまだ少し不安があるというのに、つんくさんは何を考えているのだろうか。圭ちゃんはともかく、ごっつぁんの勘はバカにできない。
なっちの騒動についてだが、これは妙案である。プライベートのにおいもある程度必要だろう。いずれ熱愛の噂をまきちらすことにしよう。
- 33 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月08日(水)22時17分58秒
- ○月○日
つんくさんが私に指示したコンセプトは「男のようであり、女のようであり」というものだった。男勝りというキャラは今までの娘。にはなかったので、これは面白いと思ったのだが、それがなんだか妙な方向に向かっている。
ごっつぁんと仲良くなったのは意外だったが、梨華ちゃんのアンドロイドを見る目があやしくなってきたのは問題だった。若い婦女子を取り込もうとしてのキャラなのにメンバーが虜になってどうするのだ。何か対策を立てなくてはなるまい。
○月○日
ミニモニの活動で目が回りそうだ。おかげでアンドロイドの世話がおろそかになっている。ほとんどプログラムをいじくっていないので「成長」していない。おかげで裕ちゃんから「あの子は努力してない」とまで言われる始末だ。
テレビでの扱いも良くない。このままではせっかくの自信作が埋もれてしまう。
○月○日
つんくさんに「太らせることはできるか?」と打診された。もちろん可能だが、このことが吉と出るか凶と出るか。
- 34 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月08日(水)22時18分42秒
- ○月○日
プログラムを点検していると、覚えのないプログラムが多数見つかった。どうやらウィルスが混入したようだ。どうも最近楽屋で奇声を上げて走り回るなど、妙な行動が目につくと思った。アンチウイルスソフトにもかからなかったらしい。
混入経路が見当もつかない。パソコンではないのでモジューラジャックもFDDもない。プログラムをいじくるときは私のコンピュータと脳をつないで行う。このときに侵入したとは考えられない。残るインターフェイスは人間で言う五感しかないのだが。
○月○日
「うたばん」の台本を渡された。なんでもうらやましがるキャラらしい。急いでプログラムを追加したがうまくいくのだろうか。
- 35 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月08日(水)22時20分03秒
- ○月○日
新曲のセンターに抜擢された。なんだか複雑な気持ちであるが、生みの親として素直に喜ぶべきだろう。もちろんプログラムの修正には余念がない。
ただ「ぶちゅっとぶちゅっと」のところで梨華ちゃんの顔が近づきすぎる。頬にキスされたときは「うひょ〜」と叫んでニコニコするプログラムが実行されるのだが、口にキスされたときのは何もない。どんなプログラムを組めばいいのか見当がつかないのだ。押し倒すべきか、邪険に払いのけるべきか。
- 36 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月08日(水)22時20分36秒
- ○月○日
「うらやましいキャラ」プログラムでは「後藤かわいい発言」「保田おえーな発言」を感知して「吉澤うらやますぃ〜」となるルーチンを積んでいる。保田発言のところで For 〜 Next を無駄に組み入れてタイムラグが発生するようにしているはずなのに、いきなり吉澤発言プログラムに飛んでしまった。
見ると For 〜 Next の I の値は確かに 100000 に設定してあるのに、実際やってみると以前確認したときよりタイムラグがはるかに短くなっている。ベンチマークをはかるとパソコンのCPUに当たる部分が大幅に性能アップしていた。交換した覚えはない。
つんくさんに聞いてもやはり知らないという。それどころか「放っておけ」という。
- 37 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月08日(水)22時21分06秒
- ○月○日
やはり変だ。
「保田おえー発言」で「吉澤うらやますぃ〜」となるはずが、あろうことか沈んだ表情になり、そして貴さんにウィンクしてしまった。
チェックしてみると愕然とした。プログラムの総数が初回設定時の倍になっている。中には相当複雑なルーチン処理もあり、解析しづらいものもある。第一これだけの数を保持する容量はないはずなのだが、これも増えているようだ。
ウィルスもない。ということは、考えられることはただ一つ、彼女が「成長」を始めたということだ。
○月○日
つんくさんと協議した。結論は「自立」だった。
おそらく、五感というインターフェイスが「彼女」を活性化させたのだろう。「彼女」は作り物から人間になったのだ。
人間をしばる権利は私たちにはない。
- 38 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月08日(水)22時21分41秒
- ○月○日
新曲のお披露目コンサートがあった。
「そうだ!We're ALIVE」
- 39 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月08日(水)22時22分13秒
- おしまい
- 40 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月08日(水)22時22分54秒
- (0^皿^)
- 41 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月08日(水)22時23分38秒
- (〜^◇^)
- 42 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月10日(金)20時07分34秒
- 「そうだ!We're ALIVE」か・・・
うまいね、感心した。
- 43 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月11日(土)23時02分37秒
- なぜか作者さんの作品はスレのタイトルでわかる。
- 44 名前:これまでのあらすじ 投稿日:2002年05月12日(日)12時54分31秒
- ( ´ Д `)<娘。はまだ終わってないんだ
娘。をまだ終わらせたくないんだ
だから謎を、物語を作り続けるんだ
- 45 名前:これまでのあらすじ 投稿日:2002年05月12日(日)12時58分08秒
- ( 0´〜`)<でもね、ごっちん
物語はいつか終わっちゃうんだ
どうあがいても、だめなんだ
- 46 名前:これまでのあらすじ 投稿日:2002年05月12日(日)12時59分47秒
- ( 0´〜`)<わたしたちはただ役割を与えられて
台本どおりに演じるしかできないんだ
- 47 名前:これまでのあらすじ 投稿日:2002年05月12日(日)13時01分22秒
- ( ´ Д `)<たしかに物語は終わりがある
でもまた作ればいいじゃん
誰にも止められないくらい
- 48 名前:これまでのあらすじ 投稿日:2002年05月12日(日)13時02分27秒
- ( 0´〜`)<それももう限界だよ
- 49 名前:これまでのあらすじ 投稿日:2002年05月12日(日)13時05分51秒
- ( ´ Д `)<女神H(アーシュ)
Hには3つの意味があるんだ
麻薬のハシシュ、ホモセクシュアリティ
倒錯はよりいっそうのものを生み出す力がある
- 50 名前:これまでのあらすじ 投稿日:2002年05月12日(日)13時07分24秒
- ( ´ Д `)<そして
Hitomi Yoshizawa
よっすぃ〜ならできるよ
終わらない物語を、新しい物語を
作りだせる力があるんだ
- 51 名前:これまでのあらすじ 投稿日:2002年05月12日(日)13時08分02秒
- ( 0´〜`)<……
- 52 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月14日(火)21時02分38秒
- 『贋金つくり』
- 53 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月14日(火)21時04分00秒
- 安倍さんを2,3人が取り囲んでいた。静かに安倍さんの話に耳をかたむけている。わたしはわずかにその声が届くところに座ってぼけっとしていた。
「このバッグはね……」
なにやらブランド品の話をしているらしい。わたしも人並みには興味を持っているが、あまりお金のかかるブランド品に手を出したりしない。ノーブランドですむものならそれでいいと考えている。六甲のおいしい水ではなく水道水でじゅうぶんだ。
隣にごっちんが座ってよりかかってきた。
- 54 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月14日(火)21時04分42秒
- 「何してるの?」
「別に」
「うそだね。聞き耳立ててるじゃん」
「勝手に聞こえてくるだけだよ」
「何が聞こえてきた?」
「小鳥のさえずる音」
耳に入ってくるのは安倍さんの声だったが、目に映ったのはその話を聞いている梨華ちゃんの、なんともいえない微妙な表情だった。
ブランド品は、どの品物もどこで買っても同じ値段であるところに意味がある。もちろん店によっては安売りしたいところもあるだろうが、メーカーはあまりいい顔をしない。均一でなければならないブランド品は、個性のない国民性を持つ日本人になじみやすいのかもしれない。
- 55 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月14日(火)21時05分18秒
- 「よっすぃ〜、今日はどこ行こうか」
「バーゲンやってるかなあ」
「あいかわらずだね」
この世に二つとないものが最も価値のあるものと言われている。では、なぜわたしたちはそれを求めずにブランド品に群がるのだろうか。
お金がないからではない。たぶん、この世に二つとないものなんて、ほんとは存在しないことを感覚的に知っているからだ。
- 56 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月14日(火)21時05分55秒
- 「おなかすいた」
「そうだね」
やがて安倍さんの長いおしゃべりが終わった。梨華ちゃんが少し唇をとがらせてこっちにきた。
「よっすぃ〜、ちょっといい?」
「何?」
ここで梨華ちゃんは小声になった。
「安倍さんさあ、有名ブランド品いっぱい持ってて、私たちに見せてくれたんだけど、全部贋物みたい」
「ふーん」
- 57 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月14日(火)21時06分29秒
- 「教えてあげようかとも思ったんだけど、他の人がいるところじゃ恥かかせちゃうし、後で言ったほうがいいのかな?」
わたしは首を振った。
「それはだめだよ、梨華ちゃん」
「なんで?」
「贋物だってこと、安倍さんは知ってる。知っててああやってるんだよ」
「どういうこと?」
ごっちんが眠ったふりをやめて聞いてきた。
「白いハトの集団の中にカラスが紛れ込んだらすごく目立つでしょ。わざと贋物に囲まれることで、自分を際立たせようと思ったんだね、きっと」
「……ふーん」
- 58 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月14日(火)21時07分15秒
- ごっちんが嫌なうなずき方をした。梨華ちゃんはわけがわからないでいるようだ。
自分こそが本物だという強い自負が安倍さんを支えている。その気持ちの強さが武器にもなっている。しかし……。
「やっぱり初めからいるからね。わたしたちは追加加入だからよくわからないけど」
オリジナルなどどこにもない。出所の不明なコピーがあるだけ。コピーはコピーを生み、コピー元はコピーの山にうずもれてしまう。
安倍さんだって、このことは無意識にでも感じ取っているはずだ。だからこそ、そんな状況を拒否して、オリジナルであろうとして、わざと贋物をまとっているのだろう。
でも、それは無駄なあがきにすぎない。
- 59 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月14日(火)21時07分47秒
- ドアが開いて一人の男性が入ってきた。
「あっ、つんくさん。おはようございます」
わたしたちを作り上げた贋金つくりに、わたしたちはうやうやしくあいさつした。
- 60 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月14日(火)21時08分23秒
- おしまい
- 61 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月14日(火)21時09分02秒
- ( 0´〜`)<……
- 62 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月14日(火)21時09分34秒
- ( 0´〜`)<でもね……
- 63 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月17日(金)22時01分52秒
- 『とられた』
- 64 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月17日(金)22時02分29秒
- 梨華は沈んでいました。
「ハッピーをとられた……猪木もとられた……悲しすぎる……」
しくしく泣いているのを見て、ひとみは梨華を慰めました。
「梨華ちゃんはいっぱいいいものを持ってるんだから、少しくらいとられたくらいでメソメソしちゃだめだよ」
「そうかなあ」
ひとみは梨華の体をしげしげと舐めまわすように眺めました。
- 65 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月17日(金)22時03分09秒
- そうだよ。いっぱいいいものがあるんだから、少しくらい……いいよね」
ひとみは梨華の体から豊かな乳房を奪いました。
「よっすぃ〜……」
「いいじゃん、少しくらい……ブラがきつい」
そこに希美がやってきました。
「よっすぃ〜ずるいよ。辻も少しもらうね」
希美は梨華から細くてきれいな両足をとりました。
「ほっそいなあ」
「そんなあ」
- 66 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月17日(金)22時03分43秒
- そこに他のメンバーもやってきて、「少しくらいいいよね」と次々に梨華からいろいろなものを一方的にもらいはじめました。
「わたし目の玉ほしい」
「ちょっと黒いけど、健康的な肌もいいよね」
「髪の毛もらうわ」
「あごのラインはいいですよね」
「おいおい、もっとシャクレるぞ」
「細い腰もらい」
「わたしはワキでいいや」
「アニメ声でがまんしとこ」
「わたしは……」
- 67 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月17日(金)22時04分18秒
- そこになつみが遅れてやってきました。
「あっ、みんなずるーい」
「もう何も残ってないよ」
「そっかあ。じゃあ『石川梨華』って名前でいいや」
「そんなのどうするの?」
「隣が飼っているハムスターの名前にするから」
こうして梨華はすべてをとられました。
- 68 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月17日(金)22時04分54秒
- おしまい
- 69 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月17日(金)22時05分42秒
- ( T▽T)
- 70 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月17日(金)22時07分04秒
- ( 0´〜`)
- 71 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月18日(土)01時02分29秒
- なんか初期のシュールさが戻ってきた感じ。
こういうのも好き。
- 72 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月18日(土)23時13分29秒
- (0^〜^0)<これ、好き。
- 73 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月21日(火)04時53分49秒
- ( T▽T)<せめてレンタルで…
- 74 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月21日(火)21時11分26秒
- >73
( 0´〜`)<タダなので無期限レンタルです
>72
( 0´〜`)<どうもです
>71
( 0´〜`)<リアルに書いてるつもりなんです
( 0´〜`)<本格的な推理モノを書きたい……!
- 75 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時12分25秒
- 『「チャイムがなるまで」殺人事件』
- 76 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時13分39秒
- 登場人物
中澤裕子(中澤裕子)……ハロモニ女子学園教師。
吉澤ひとみ(吉澤ひとみ)……ハロモニ女子学園生徒。帰国子女。
石川梨華(石川梨華)……ハロモニ女子学園生徒。
綾小路文麿(後藤真希)……私立ナルシス高校生徒。
飯田圭織(飯田圭織)……ハロモニ女子学園OB
保田圭(保田圭)……掃除婦
- 77 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時14分41秒
- ナレーション 今日もハロモニ女子学園には平和な一日がやってきた。
(教室で吉澤が世界各国の国旗をいじっている)
吉澤 中澤先生は遅いデスね。まったくニホンジンは時間にルーズね。
(吉澤、カバンからテキストを取り出す)
吉澤 休日なのに今日もニホンゴの補習デス。ニホンゴ難しすぎるね。まず主語省く人多いデス。矢口さんが「この間さあ、渋谷でひったくりにあいそうになってさあ、チョームカツクよねえ」って言うから矢口さんがひどい目にあったのかと思ったら、安倍さんのことだったのデス。あと文末もはっきりしてホシイね。「吉澤さんってさあ、頭良くて気立てがよくておしとやかで」なんて言われて照れていたら「ということはないよね」と最後に否定されたのデス。そういうことは最初に断定してホシイね。
- 78 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時15分53秒
- (中澤が現れる)
中澤 吉澤さん。何一人でけっこう流暢な日本語でぶつぶつ言ってるんですか?
吉澤 中澤先生、オハヨウゴザイマス。いたんデスか。
中澤 ところで、吉澤さん。学校の備品でいたずらしちゃだめでしょ。
吉澤 イタズラ? それっておいしいんデスか?
中澤 英語で言うと trick よ。ほら、みんなの机動かして遊んだの、吉澤さんでしょ?
吉澤 オー、trick オーケイ。ノー。ワタシ、そんなことしてません。
- 79 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時16分41秒
- 中澤 ご覧なさい。机を円く並べてあるじゃない。昨日帰ったときはちゃんと並べてあったでしょ。最後に教室を出たのはあたしだけど、こんなふうにはなってませんでしたよ。朝一番に来たの吉澤さんなんだから、あなたがやったんじゃないの?
吉澤 知らないデス。
中澤 強情な子ね。とにかく、机並び直しましょう。
(中澤、机に近づき、悲鳴をあげる)
吉澤 どうしたんデスか? ヘビがいたんデスか?
中澤 アワワワ。
(吉澤、机を一つ動かす。中からうつぶせになった死体が現れる)
- 80 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時18分07秒
- 吉澤 かっけー。
中澤 違うわよ、吉澤さん。人が死んでるのよ。
吉澤 シンデレラ?
中澤 古代のジョーク言ってる場合じゃないわよ。死体よ。dead, dead 。
吉澤 オー。
(吉澤、死体を抱きかかえる)
吉澤 誰がシンデルのデスか?
中澤 あんた度胸あるわね……まあ、安倍さん! 安倍さんが、どうして……
- 81 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時19分01秒
- (保田が現れる)
保田 何を騒いどるんじゃ。掃除の邪魔じゃ。
中澤 保田のお婆ちゃん。たいへんなんです。安倍さんが死んでるんです。
保田 安倍さんというと、うちのケメ子と仲の良い安倍かわもち君のお姉さんかえ?
中澤 ほら。
(保田、死体を眺め、巾着から位牌と数珠を取り出す)
保田 ナムナム。こりゃあ、えらいこっちゃ。なんでまたこんなひどい仕打ちを。
中澤 とりあえず警察に電話しなきゃ。
- 82 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時20分23秒
- (保田、出て行こうとする中澤をつかむ)
保田 待つのじゃ。
中澤 何ですか、保田のお婆ちゃん。
保田 かわいい孫のお友達のお姉さんが殺されたんじゃ。わしが犯人を捕まえる。警察の手などいらん。
中澤 何を言ってるんですか、お婆ちゃん。第一安倍さんが殺されたって決まったわけじゃないんですよ。
保田 机に囲まれて自然死なわけがないじゃろ。これ、そこの、そう、おまえじゃ。安倍さんの死体を見せてみい。
- 83 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時22分02秒
- (吉澤、死体をひっくり返す)
保田 背中から血が出とるな。自分で刺すことはできんし、何かの事故があったとも考えにくいわい。かわいそうに、殺されたんじゃよ。
吉澤 オバアチャンかっけー。
中澤 とにかく、警察を呼びますからね。
(保田、出て行こうとする中澤を再びつかむ)
保田 これこれ。容疑者に逃げさせるわけにはいかんの。
中澤 容疑者? あたしが?
保田 そうじゃ。第一発見者を疑うのが筋じゃからの。そこの頭の弱そうな女の子もじゃ。
吉澤 オーマイガッ。
- 84 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時22分38秒
- 保田 詳しいことはわからんが、死体の硬直具合から死んだのは昨晩から今朝にかけてかのう。今何時じゃ。
中澤 10時ですよ。
保田 先生。あんた、朝早く学校に来とったろ。
中澤 どうしてそんなこと知ってるんですか?
保田 わしも掃除の仕事で来とったんじゃ。あんたの赤い車が止まっとった。
吉澤 中澤センセイ、教室で待ってたのにどうしてすぐに来てくれなかったんデスか?
中澤 それは……
保田 あんたもじゃ。補習は9時半からなのに、7時にはいたんじゃろ。
吉澤 オー、それは世界のジョークを考えていたんデス。
- 85 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時23分22秒
- 保田 ふむ。とりあえず犯行は可能な時間には二人ともいたってことじゃの。
中澤 それはお婆ちゃんもでしょ。
(保田、濡れた雑巾を振り回す)
保田 なんじゃと。わしがかわいい孫の友達のお姉さんを殺したとでも言うのか。
中澤 それはあたしも同じです。安倍さんはわたしのかわいい生徒だったんですよ。
- 86 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時23分57秒
- (二人がにらみ合うなか、石川が入ってくる)
石川 人間って、悲しいね……。
吉澤 ハロー。
石川 お互いが疑心暗鬼になって、やがて憎しみあって、殺し合いを始めるなんて、そんなの悲しすぎる。
中澤 いきなり何言ってるの、石川さん。
(綾小路が入ってくる)
綾小路 僕にはわかる……あなたのその悲しみが、僕にはわかる。
石川 文麿さま……。
(綾小路、石川の肩を抱く)
- 87 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時24分43秒
- 保田 お取り込み中のところすまんがの、あんたら二人も容疑者じゃ。
中澤 ほんとですか、お婆ちゃん?
保田 昨日夜遅く、この教室で二人は逢い引きをしとったんじゃ。そこの娘がカギを借りに守衛室に来たと、守衛のじいさんは言っとった。
中澤 まあ、なんてふしだらな。二人とも何してたの!
吉澤 オー、シットはいけません、先生。
中澤 なんですってぇ。
- 88 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時25分23秒
- 保田 ふむ、容疑者はこれで全員揃ったわけじゃな。一応わしもいれての。
中澤 だから、あたしたちが安倍さんを殺す理由はありませんって。
保田 そうかの。わしの場合、かわいい孫をお友達のお姉さんにいじめられとったと思ったのかもしれん。あんたの場合、欲求不満がたまって生徒に手を出そうとして、無下に断られて逆上して殺したのかもしれん。そこの二人は逢い引きしとったのを見られて「やーいやーい」と囃したてられてカッとしたのかもしれんの。
中澤 まっ……。
石川 そんなの悲しすぎる……。
綾小路 無理がありすぎる。
吉澤 あのー、ワタシは?
保田 アフォは何でもありじゃろ。
- 89 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時26分17秒
- 中澤 でも、そんなこと言ったら誰でも容疑者になってしまいますよ、お婆ちゃん。
保田 それがの、この部屋にはカギがかかっとった。この二人がいちゃいちゃしていた時間以外、昨日学校が終わってから今朝この娘が部屋に入ってくるまでは誰もこの部屋に入れなかったんじゃ。だから、わしが犯人じゃないことは明白じゃろ。
中澤 あたしだってそうでしょ。
保田 うんにゃ。この娘、死体があることに最後まで気がつかなかったからの。スキを見てあんたが殺したのかもしれん。この娘が犯人じゃないとしたらじゃがの。
中澤 そんなことするわけないでしょ!
保田 一応可能性はあるということじゃ。この娘が一番あやしいがの。7時から9時半まで、たっぷり殺る時間があったんじゃから。
(吉澤、首を振る)
- 90 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時27分06秒
- 綾小路 しかし、机を輪にしてその中に死体を置いた意味が、僕にはわからない……。
保田 いいとこつくの。何か意味があるはずじゃ。その意味がわかれば、犯人が誰かもおのずとはっきりする。
石川 机、机……。
吉澤 ワタシ、本で読んだことがありマス。針と糸を使ってカギをかけたりすることができるはずデス。
中澤 そうね、その可能性もあるわね。意外と賢いのね。
- 91 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時27分42秒
- (吉澤が胸をはると、飯田が入ってくる)
飯田 チース。
中澤 あら、飯田さん。何か用なの?
飯田 ええ、校長先生にこの教室のカギを直してくれって。なんでも頑丈すぎて一度閉じたらなかなか開かないみたいで。……あれ、壊れてるな。まあいいか。
(飯田、カギを直して帰る)
保田 こりゃ、ゴミは持って帰らんかい。近頃のわかいもんは。
(保田、スポーツ新聞を上に振ったのち、広げて中を見る)
保田 まったく……ん、「娘。9人が高額納税者」? まったく近頃の娘。は……。
- 92 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時28分17秒
- 中澤 吉澤さん、今朝ちゃんと開いたの?
吉澤 オー、びくともしないので、力いっぱい引いたら開きマシタ。
中澤 あんたが壊して入ったのね。
保田 そんなガチガチに固いカギじゃ、糸と針じゃ無理じゃの。
石川 シクシク、シクシク。
吉澤 ドーしたんデスか?
石川 机のことがどうしてもわからなくて、悲しすぎて……。
吉澤 そんな悲しい顔してはいけマセン。ほら、ハッピー。
(吉澤、数回繰り返す)
石川 うぅ、またとられた。
- 93 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時28分58秒
- 中澤 完全に行き詰まってしまったわね。やっぱりここは警察に任せましょうよ、お婆ちゃん。
吉澤 ハッピー。
石川 ……ウフフ。
綾小路 ん……。
石川 吉澤さん見てたら、矢口さん思い出しちゃった。ほら、昨日の朝、バス停で「アイ〜ン!ダンスの唄」聞きながら踊ってたの。
綾小路 そう言えば、そんなことしたてね。
吉澤 それは白い犬デスね。
保田 近所の小学生も踊ってたのう。変なもの頭にくっつけて。
中澤 ねえ、お婆ちゃんってば。
- 94 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時29分41秒
- 石川 やっぱり、人間はポジティブに生きるべきよね。ねえ、文麿さん?
綾小路 そうだね、石川さん。
石川 文麿さん……。
(二人、見つめあう)
吉澤 二人の世界に入ってしまったのデス。こうなると二人の目と耳には何も入らなくなるのデス。
中澤 ねえ、お婆ちゃん。
保田 うるさいっ。今考え事してるんだから静かにできんのか。……そこのジョーク娘、この二人はこうなるとほんとに何も目に入らなくなるんか?
吉澤 そうデス。二人は遠い世界に行ってしまったのデス。
- 95 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時30分21秒
- 保田 ところであんたはジョークを考えているときはどうなんじゃ。
吉澤 真剣勝負デス。世界のジョークの道は果てしなく、キビスィ。
(吉澤、遠い目をする)
保田 こいつはいつもこんなんか。
中澤 そうなんですよ、困ったことに。この子はジョークに命をかけていて、ネタ作りになるとすごい集中力を発揮するんです。
保田 ほお、人間誰でも得意分野があるもんじゃの……もう少しですべてがつながりそうなんじゃが、もうちょっと手がかりがあれば……じゃが、犯人はこの手で捕まえてみせる。じっちゃんの名にかけて!
中澤 はぁ。
- 96 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時31分01秒
- 保田 凶器は犯人が持って帰ったろうから、ここには落ちてはないのう……おい、そこの二人。いつまでのろけているんじゃ。ちょいと聞くが、あんたら昨晩ここにいたんじゃろ。何やってたか話してご覧。
石川 きゃっ。
綾小路 ……何もしてませんよ。
保田 誰もそんなことは聞いておらん。
石川 えーとぉ、それはぁ。
綾小路 ……ありていに言えば、今みたいなことをです。
保田 なんじゃ。ここに来てずっと見つめあってただけか。つまらんのう。わしが若いときはもっと……。
- 97 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時31分36秒
- 中澤 お婆ちゃん、いいかげんにして下さい。
保田 いてててて。これ、乱暴はよしなさい。
(吉澤、横になった保田の腰をマッサージし始める)
吉澤 どうデスか、おバアちゃん。
保田 ああ、だんだん楽になってきたよ。とぼけてるけど、ほんとはいい子だねえ……こうしていると頭が冴えてきたよ……そこの嬢ちゃん、矢口という娘っこは今日は何してるんだい?
- 98 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月21日(火)21時32分07秒
- 石川 矢口さんは部活で学校に来てますよ。
保田 ほお、やっぱり「アイ〜ン!ダンス」とやらを踊ってたのかい?
石川 いいえ、ヘッドホンでそのCD聞いてたみたいですけど、踊ってはいませんでしたよ。
(保田、急に立ち上がり、杖を振り回す)
保田 どうしてそういう大事なことをもっと早く言わんのじゃ、このバカタレ。
石川 えーっ、どうして……人間って悲しいね。
- 99 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月21日(火)21時33分00秒
ノノノハヽ ンァー
(*´ Д `)<読者へのちょーせんじょーだよー
○、 |) 手がかり?は全部出てるのだー
(_ヽ_)
(忠告:マジメに考えてはイケナイ)
- 100 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月22日(水)02時17分37秒
- 丸5秒かんがえましたが、わかりません。
- 101 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月22日(水)20時12分52秒
- >100
ZZZzzz C⌒ヽ
__⊂二二⊃_____
/((´ Д ` )(() /心の目で見るんだ……ムニャムニャ
/ ̄⌒⌒⌒⌒⌒ ̄,)
/ ※※※※※ /
(________,,ノ
- 102 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月23日(木)22時11分18秒
- 中澤 お婆ちゃん!
保田 ジョーク娘。なんだか寒うなってきたから、そこの暖房をつけておくれ。
吉澤 もう冬は終わりマシタよ。
保田 いいからつけるんじゃ。
(全員、玉のような汗を流し始める)
吉澤 アツイアツイ。
石川 あたしも上着脱ご……文麿さまも。
保田 ふう、いい加減になってきたのう。あんたは脱がなくていいのか?
- 103 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月23日(木)22時11分49秒
- 中澤 あたしは……。
吉澤 先生、「ブッシュは食わねど高楊枝」ですけど、脱いだほうがいいデスよ。
(吉澤、むりやり中澤のジャケットをはぐ)
吉澤 ん? 先生オモシロイもの持ってマス。
(ジャケットの内ポケットから風車を取り出す)
石川 あっ、矢口さんの風車。
保田 ボロを出したの、先生。あんたが犯人じゃ。
中澤 これは……落ちていたのを拾ったのよ。
保田 どこで拾ったのか言うてみい。
中澤 う……。
- 104 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月23日(木)22時12分24秒
- 保田 なら代わりにわしが言うてやろう。今朝、この教室で、あの机の輪の中から拾った。いや、回収したというほうが正しいのう。
綾小路 この風車と殺人がどう関係があるんですか?
保田 おおありじゃ。動機が示されておるんじゃ。
(吉澤、頭に風車をつけて踊りだす)
吉澤 アイ〜ン。よすぃ姫だっふんだ。
保田 アフォはほっといて先に進むぞ。カギがかかっていなかったときにしか犯行はムリじゃ。あのカギではどんな策を弄しても、カギを壊さないで中に入ることはできん。かといって、昨晩この二人がいちゃついていたときや、今朝ジョーク娘がいたときには、いくらなんでもムリじゃ。
- 105 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月23日(木)22時12分57秒
- 綾小路 それではいつ殺人があったんですか? 死亡時刻は昨晩から今朝にかけてとお婆さん言ってたでしょう。
保田 そうじゃ。死んだのはそのくらいじゃ。じゃが、刺したときもいっしょの時刻とはかぎらん。もっと早く包丁か何かで刺されても、しばらくは虫の息じゃったのだろう。
吉澤 センセイが最後に教室を出たと言ってたのデス。
保田 正気に戻ったか。そうじゃろ、そうじゃろ。先生も気が動転したのじゃろう、あわてふためいて教室にカギをかけて逃げ出してしもうた。
石川 そのときに机をへんなふうに動かしたんですか?
綾小路 偽装工作か。
- 106 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月23日(木)22時14分19秒
- 保田 うんにゃ。気が動転してたと言ったろうが。だが、先生は途中で気がついたんじゃ。このままでは自分がやったとすぐにばれてしまうと。戻ってみるとこの二人がいちゃついておった。
石川 えっ。ということはあの教室には死体があったんですか。見ませんでしたよ。
保田 あんたらいちゃついているときはなーんも目に入らんじゃろうが。どうしようかと思っていた先生もそれに気がついた。そっと教室に入ると、机の輪の中に死体を隠した。何度でも言うが、この二人は自分の世界に入ると目にはお互いしか映らなくなるんじゃ。
吉澤 ショーがないデスねえ。
- 107 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月23日(木)22時16分00秒
- 保田 あんたも同じじゃ。先生は今度は証拠となる風車のことを朝になるまで忘れとった。そこであんたがジョーク作りに夢中になっとったとき、こっそりと教室に入って風車を回収したんじゃ。それからようやくあんたに声をかけた。何度でも言うが、ジョーク娘はネタ作りを始めると自分の世界にこもってしまうんじゃ。
石川 でも……。
保田 文句があるのか。見えるものが見えなくなるのは○○夏○の「○○○の○」に詳しく書かれておる。後で読んどけ。
吉澤 がんばりマス。
保田 あんたはよしとけ。ムリじゃ。
- 108 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月23日(木)22時17分15秒
- 綾小路 ちょっと待ってください。机の輪ははじめからあったんですか?
保田 そうじゃ。これと風車がこの事件の発端なんじゃ。あくまでこれはわしの推測にすぎんがの。それについては先生本人の口から聞きたいのう。あの新聞に書かれていた記事が関係しているとにらんでおるがの。
中澤 ……お婆ちゃんの言うとおりです。わたしが安倍さんを殺してしまいました。
石川 先生!
中澤 芸能人の高額納税者として、娘。の9人のことが出ていました。
綾小路 そのことで嫉妬したんですか。
- 109 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月23日(木)22時17分54秒
- 石川 でも先生もたくさん払ってるじゃないですか。
中澤 確かにあたしもそれなりに払いましたが、安倍さんの数字にはかないませんでした。それは安倍さんのほうが稼いでいることをも示していました。
石川 だって先生は娘。じゃ、うっ。
(保田が石川の口をふさぐ)
中澤 あたしのほうが5つも年上なのに、収入では安倍さんのほうが上。
吉澤 5つ? 10才クライ、ウグゥ。
(綾小路が吉澤の口をふさぐ)
- 110 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月23日(木)22時18分30秒
- 中澤 そのことに嫉妬していたわけではありません。ただ、うらやましくは思いました。そこで昨日、あのとき、あたしは安倍さんを呼んで、どうしたら高額納税者になれるのかどうか冗談っぽく聞いてみました。すると安倍さんは「秘訣があるんですよ」と言ってきたのです。
吉澤 ふぃけとぅ?
中澤 そう。「高収入の秘訣は、アイ〜ン!ダンスなんですよ」と言ったのです。
石川 あい〜ん……。
中澤 彼女は机を円になるように並べました。あたしはその中に入り、頭に矢口さんが忘れていった風車をつけて「アイ〜ン」とやりました。
(中澤、死体の横でアイ〜ンをやる)
- 111 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月23日(木)22時19分02秒
- 中澤 すると彼女は「あらあら、冗談だったのに」と鼻で笑ったのです。その様子はまるで、欽ちゃん走りでダイエットしようとする主婦たちをあざ笑う松雪泰子のようでした。そのとき、あたしの中に殺意が湧き出してきたのです。
石川 なんだかかわいそう……。
綾小路 僕にはわかる。あなたの気持ちが、僕にはわかる。
中澤 あたしは持っていた護身用のナイフで、彼女の背中を刺してしまいました。しばらく呆然としていたのですが、自分のしたことに気づくとそこにいることがつらくなり、カギをかけて逃げ出しました。あとはお婆ちゃんの話したとおりです。
- 112 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月23日(木)22時19分33秒
- 保田 まったくくだらん話じゃ。くだらん、くだらなさすぎる。そんなことで若い娘の命が一つ奪われたんじゃ。
(保田、杖を振り回す)
中澤 安倍さん、ごめんなさい。許してちょうだい。
(中澤、死体にすがりついて泣き出す)
(石川と綾小路、いつのまにか見つめあっている)
(吉澤、国旗を振り回す)
- 113 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月23日(木)22時21分00秒
- おしまい……?
- 114 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月23日(木)22時21分34秒
C⌒ヽ
⊂二二⊃
∩´ Д `∩ ・・・・
ヽ| ノ
(_,(_)
- 115 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月23日(木)22時22分07秒
ZZZzzz C⌒ヽ もう寝る
__⊂二二⊃___
/((´ Д ` )(() /
/ ̄⌒⌒⌒⌒⌒ ̄,)
/ ※※※※※ /
(________,,ノ
- 116 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月26日(日)00時27分14秒
- (つづき)
綾小路 ちょっと待ってください。いくらなんでもそんな動機は不自然すぎる。
保田 じゃがこうして自白しとる。
綾小路 ええ、そこが問題です。先生はその風車をどこで入手したのかまだ話していない。
石川 昨日の夕方、安倍さんを殺す前には持っていたんですよね。さっきの自白からすると。
綾小路 そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。昨日先生が安倍さんといっしょだったというのは、先生が言っているだけで証拠は何もない。自白だってほんとかどうかあやしすぎる。
- 117 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月26日(日)00時27分48秒
- 保田 先生がウソをついているとあんたは言いたいのか?
綾小路 そう。先生は誰かをかばっていると僕は考える。先生はその風車をある場所で見つけた。それは昨日かもしれないし、今朝かもしれない。ついさっきかもしれない。先生は風車を見つけた場所で、ある人物が安倍さんを殺した犯人だとわかった。そして先生はその人物の身代わりになろうと思った。違いますか?
中澤 ……。
綾小路 話したくない気持ちが、僕にはわかる。自分のかわいい生徒が手錠をかけられ、パトカーに乗せられるところなど見たくないと。
石川 そんなの悲しすぎる。
- 118 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月26日(日)00時28分21秒
- 綾小路 僕にはわかる。先生が誰をかばおうとしているのか。昨夜僕たちはこの教室にいた。安倍さんの死体などどこにもなかった。いくら僕たちでもそこまで愚かではない。
保田 ほんとかい。
綾小路 だから、安倍さんが殺されたのは僕たちが教室を出てからしかありえない。朝まではカギがかかっていたのだから、その間でもない。とすると……。
石川 吉澤さん?
(吉澤、自分を指差す)
綾小路 そう、犯行可能な時間は今朝、あなたがカギを開けてから、先生が死体を発見するまで。そのとき教室にいたのはあなたと先生しかいない。先生が犯人でないとしたら、残るあなたが安倍さんを殺したということになる。QED。
- 119 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月26日(日)00時28分52秒
- 吉澤 ノー、ワタシ、殺してマセン。
保田 ワシが言うのもなんじゃが、もっとも動機がないのはこの子じゃろ?
吉澤 そうデス。動悸がありマセン。
(吉澤、胸に手をあてる)
綾小路 動機はある。先日、安倍さんは吉澤さんに対抗して世界のジョークをやった。その出来に吉澤さんは不満足だった。
保田 そんなことが動機になるんかい?
綾小路 なる。世界のジョークに命をかけている彼女になら。今朝、吉澤さんは安倍さんといっしょに教室に入った。そこで安倍さんは風車と机を使ったジョークを披露した。その出来ばえが良かったのか悪かったのか、僕にはわからない。ただ、吉澤さんに犯行を決意させる何かがあったに違いない。
- 120 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月26日(日)00時29分30秒
- 吉澤 カザグルマ、カザグルマ……。
綾小路 吉澤さんは安倍さんを刺した。死体をほったらかしにして先生を待っていたのは、彼女の精神がおかしかったのか、それとも目くらましだったのか。中澤先生は吉澤さんの机から風車を見つけた。先生は吉澤さんがやったのだと気づいた。こういうわけです。
(綾小路、前髪をかきあげる)
石川 文麿さま、素敵。
吉澤 カザグルマ……カジ、カズ、カゼ、カゾ……。
保田 何やっとるんじゃ。
吉澤 グルマ、グロマ、グンマ……カザグルマで世界のジョークは難しいデス。
- 121 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月26日(日)00時30分20秒
- 保田 少年、残念じゃがこのアフォには犯行はムリじゃ。凶器はどこやったんじゃ。隠すとしてもこの教室の中にしかないぞ。この子のカバンにも机にもない。
(保田、吉澤のカバンをさかさにして振る)
吉澤 わかりマシタ。
保田 なんじゃ。ジョークができたんかい。
吉澤 違いマス。安倍さんを殺した犯人がわかったんデス。犯人は、中澤センセイでも、わたしでもありマセン。ということで綾小路さんと石川さんが犯人なのデス。
保田 根拠は。
吉澤 コンキョ?
中澤 吉澤さん、reason よ。
吉澤 オー、no reason 。
保田 なんじゃ。理由なしかい。皐月賞馬かい。
吉澤 アシタのダービー勝つかもしれマセン。
- 122 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月26日(日)00時31分12秒
- 石川 私たちの仕業にするなんて、そんなの悲しすぎる。しくしく、しくしく。
(保田、おうちに帰ろうとする石川をひっぱる)
石川 そうよ、犯人はきっとお婆ちゃんよ。お婆ちゃんならいつでもカギを取ってこれるもん。
中澤 でもカギは管理人さんが預かってるんでしょ?
石川 きっと色仕掛けで篭絡したのよ。
(一同、その場面を想像する)
吉澤・石川・綾小路 オエーッ。
保田 なんじゃおまえら!
- 123 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月26日(日)00時31分42秒
- (各々、死体の周りで罪をなすりつけあう。幕が下りる)
ナレーター 今日もハロモニ女子学園では平和な一日が過ぎていくのだった。
- 124 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月26日(日)00時32分19秒
- おしまい
- 125 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月26日(日)00時32分58秒
- (●´ー`)<ひどいべ……
- 126 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月26日(日)00時33分35秒
- (〜^◇^)<結局……?
- 127 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月26日(日)15時00分01秒
- 名探偵チャーミーはいつ出てくるの?
- 128 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月26日(日)19時25分06秒
- 見事にだまされた(w
>127
それは違う話やろ
- 129 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)22時23分04秒
- >>127
名探偵チャーミーは滝つぼに落ちてしまいました。
>>128
卑怯ですよね
- 130 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)22時23分58秒
- 『熱烈なファン』
- 131 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)22時24分38秒
- 便利な世の中になった。ちょっとした用事ならメールを送ることができるし、直接話をしたければ携帯電話でどこからでも連絡がとれる。
とはいっても、手紙の需要はなくならないようだ。メールのアドレスがわからない、携帯の番号がわからないというときは、手紙に頼るのが一番だからだ。
こんなことを思ったのは、ファンレターというものを受け取るようになってからだ。変なものや危険なものがないかどうか、マネージャーが確認してからわたしたちに渡される。さすがにお年寄りからのはないが、小さな男の子、女の子から子持ちのサラリーマンまで、送ってくる人は様々だ。
- 132 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)22時25分26秒
- わたしが加入したころは、当然ながらファンレターの数は少なかった。安倍さんやごっちん宛に毎日のようにやってくる大きな袋詰めとは比べようもなかったが、それでもわたしを見ていてくれる人がいるということは素直に嬉しかった。
初期の頃から続けて出してくれている人がいるらしい。いるらしいというのは、無署名だからだ。ただ内容から察するに同一人物らしい。
「吉ざわひとみさんへ 応援しています。がんばってください」
- 133 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)22時26分08秒
- 味もそっけもない内容だが、それでも嬉しかった。字はさほどうまくない。漢字が少ないから小学生だろうか。便せんはその辺の文房具店で売っている地味なものだ。封筒も茶封筒。消印は横浜だった。
時が経つにつれ、書かれている内容はどんどん増えていった。テレビに映ったわたしの様子を細かく記して、それについての感想が加えてあった。茶封筒に白い便せんは変わりなかったが、消印は品川、川崎と、ばらばらだった。
「吉ざわひとみさんへ プッチモニのCD買いました。お小ずかいがすこしたらなかったので、お母さんにねだって買ってもらいました。ひとみさんの声がいっぱい聞けてよかったです。テレビでPVというのを見ました。顔を手でふいて茶色くよごれてしまったところがかわいいと思いました」
- 134 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)22時26分42秒
- 梨華ちゃんがファンレターの返事を書いているのを見て、わたしもそうしようかと思った。まっさきに頭に浮かんだのが、名前を出さないあの子だった。どうやら小学生らしい。だが、メールアドレスどころか名前も住所もわからないのではどうしようもない。
「梨華ちゃんって、まめだね」
「だって、わざわざ手紙を書いてくれて応援してくれるんだもん。全員には出せないけど、気持ちにこたえてあげたいから」
一方、安倍さんやごっちんが返事の書き過ぎで腱鞘炎になったという話は聞いたことがなかった。
「うーん、時間がないってのもあるけど、全員に出せないんじゃ意味ないかなあって。一部の人にだけえこひいきしてるみたいだしさあ」
梨華ちゃんとごっちん、両者の言い分はもっともだ。わたしは、いちばん最初の返事はあの名前を出さない子にしようと決めていた。いずれ明かされる時が来るだろう。
- 135 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)22時27分43秒
- 「吉ざわひとみさんへ お誕生日おめでとうございます。ひとみさんがどんどんきれいになっていくので、むねがドキドキしています。中ざわさんがひとみさんにキスしたり、矢口さんがだきついたりしてるのを見て、うらやましくなりました。モーニング娘。の人たちがうらやましいです。
船に乗って魚をとりにいくひとみさんはかっこよかったです。あみを引き上げているのを見て、テレビじゃなくて、本物のひとみさんを見たくなりました。きっとテレビで見てるのよりずっとずっとかっこいいんでしょうね」
「吉ざわひとみさんへ ひとみさんの作ったお好み焼きおいしそうでした。せっかくひとみさんが作ったものにもんくをいった中澤さんはちょっとひどいと思いました。それからちょっと石川さんがひとみさんにくっつきすぎだと思います。ひとみさんはしっかりした人だから大じょうぶだと思いますが、気をつけてください」
- 136 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)22時28分18秒
- だんだん手紙の内容が変化していった。だがこの程度のファンレターはよく来てるので気にはしなかった。ただ、相変わらず無署名だった。
なぜこの子は自分の名前を明かさないのだろうか。普通のファンなら、自分の好きなアイドルに自分の名前を知ってもらいたいと思うだろう。そのことによって一体感を持てるからだ。この子はそれを拒絶している。
この子はある意味で貪欲だ。自分のことは明かさず、ただわたしのことだけを知ろうとしている。その上、この子がわたしを知っているということを一方的に知らせてくるのだ。
モーニング娘。初のミュージカルが始まった。そのけいこの場で、メンバーの増員を知らされた。
- 137 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)22時29分02秒
- 「吉ざわひとみさんへ この前楽屋のお弁当をおいしそうに食べていましたね。幸せそうにほおばっているのを見て、わたしまで幸せになってしまいました。それから……」
近くにいる。この子はわたしの近くにいて、わたしのしぐさを監視している。スタッフだろうか。この字面、文体は大人が書いたものではない。それとも楽屋の様子がテレビで流れたのだろうか。そんな話は聞いていない。
この子はわたしの近くにいる。だが名前を明かさない。監視者の一方的な文章。夏休みの朝顔観察日記? ちょっと違う。対象に名前は明かさないが、しかし自分が見ていることを強調する文章。聖書、預言書に近い。
- 138 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)22時30分01秒
- 「吉ざわひとみさんへ 新曲でのひとみさんはかっこよくてクラクラしちゃいました。でもちょっと石川さんとくっつきすぎです……」
新曲はまだレコーディングも終わっていない。まだ振り付けのけいこの段階だ。けいこを見ているのは夏先生とマネージャーしかいない。いや、まだ他にいた……。
この子がどういう意図で自分の名前を明らかにしないのか。ある時までは、テレビに映るわたしのことを事細かに書いていた時までは、単なる恥ずかしがりやだったのかもしれない。しかし、それ以降、わたしの近くにいて、関係者以外知りえないことまで書き出したときからは違う。わたしに自分の存在を気づいてほしかったのだ。
- 139 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)22時30分52秒
- 今日も新曲のレッスンである。この場にいるはずだ。わたしは勇気を出して声をあげた。
「いつもわたしにファンレターをくれるあなた、いつもほんとうにありがとう」
「ん? よっすぃ〜どうしたの?」
梨華ちゃんが不思議そうな顔でわたしを見つめた。わたしは無視して続けた。
「わたしが娘。になったときからずっと応援してくれてるんだね。あなたはわたしのことをほんとうによく知っている。知ってくれる。わたしはあなたにずっと励まされてきた。だから、今度はわたしの番だ。あなたのことをわたしに教えてちょうだい。あなたの手紙でわたしは励まされてきた。だから今度はわたしがあなたの力になってあげたい。だから……」
- 140 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)22時31分26秒
- 矢口さんがぽかんと口を開けていた。ごっちんは頬杖をついて窓の外を見ている。梨華ちゃんは首をひねっている。
そして、蒼ざめた顔で肩を震わせているあの子がいた。
- 141 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)22時32分38秒
- おしまい
- 142 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)22時34分37秒
- ( 0´〜`)<最初の構想と全然違う……
- 143 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)22時35分16秒
- ( ^▽^)<???
- 144 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月01日(土)16時21分01秒
- 本格的な推理物!?
- 145 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月01日(土)21時32分04秒
- だ、だれだべ?!
- 146 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月02日(日)17時28分29秒
- ( 0´〜`)<やっとリカバリ終わった……
>>144
( 0´〜`)<本格推理はムリなんです……
>>145
( 0´〜`)<ミュージカルの後……
横浜とか川崎とか……
- 147 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月02日(日)17時29分20秒
- 『逃げる』
- 148 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月02日(日)17時29分53秒
- ひさしぶりに休みが取れたので、梨華ちゃんと加護の三人で買い物に行くことにした。本当は加護ではなくごっちんを誘いたかったのだが、家の用事があるのでは仕方がない。加護を嫌っているというのではないが、加護と行くと子供っぽい服も見てまわらないといけなくなるのが億劫なのだ。
案の定、わたしたちは加護のペースに巻き込まれて、じっくりと「大人」の服を見ることができなかった。とはいえ加護もピンクの服を遠慮するようになってきたのは少しずつ大人になっているからだろうか。梨華ちゃんはあいかわらずピンクなのだが。
「よっすぃ〜、サングラス似合う?」
「似合うよ」
ぶっきらぼうに返事をした。芸能人はサングラスで変装しなければならいと、梨華ちゃんは思い込んでいるらしい。そんなことをしなくても髪型と化粧を少し変えるだけで十分である。
「梨華ちゃん変だよ」
「そう? 子供にはわかんないかな?」
加護は正直な感想をもらしたが、梨華ちゃんはまともには受け取らなかったようだ。
「まあ、わたしたちは一応芸能人なんだから、変に目立たないにこしたことはないよ」
「わかった、加護ちゃん?」
「ういっす」
- 149 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月02日(日)17時31分00秒
- 加護がまたかわいらしい店に入っていった。いいかげんあきてきたわたしたちは加護にはついていかず、その辺の店を外からのぞいてまわった。ガラス越しに見えるアクセサリーを買おうか買うまいか、梨華ちゃんといっしょにうなっていると、女の叫び声が聞こえた。
「ひったくり!」
アスファルトの地面に手をついているジーンズの若い女性と、走り去っていく人物の後姿が目に入った。わたしの体が勝手に動いていた。わたしは特に道徳心の強い人間ではない。今時の人間並みに倫理の欠けた人間である。どういうわけかこの時は追いかけなくてはいけないと思ったのだ。
- 150 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月02日(日)17時31分53秒
- 追いつくだろうか、追いついたとしても相手がナイフでも持っていて襲ってきたらどうしよう、などと頭の中はいろんな思いでいっぱいだったが、体はわたしの制御から外れていた。どれだけ走ったのか、人通りが少ない小道に入った。バッグを放り出せばもっとスピードが出るのだろうが、そこまで無分別ではないし、そんな義理もない。それなら何故わたしはこうして走っているのだろうか。
ひったくりは若い小柄な女らしい。短いスカートが目につく。上は白いジャケットを羽織っている。帽子をかぶっていて髪型まではわからない。後姿なので顔もわからない。
その女は右に曲がった。そう、右に曲がった。わたしもしばらくしてから角を右に曲がった。そこは袋小路で行き止まりになっていた。だが誰の姿も見えなかった。
- 151 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月02日(日)17時32分34秒
- 呆然として立ちすくんでいると、後ろから梨華ちゃんがやってきた。しばらくしてから加護もきた。
「よっすぃ〜、いきなり走り出さないでよ」
「何かあったの?」
わたしは経緯を説明した。
「変な話だけど、危ない人だったらどうするつもりだったの?」
「というか、すでに危ない人だよね」
「ごめん」
「さ、お買い物の続き」
通りに戻って、今度はちょっぴり大人向けの店に入った。梨華ちゃんは相変わらずピンク色にご執心である。加護も熱心に商品を眺めている。
「そういえば、さっきのお店で何か買った?」
加護はこっちを見ないで「ううん」と首を振った。
再び、体が頭の言うことを聞かなくなった。わたしは加護を後ろから抱きしめた。
「よっすぃ〜……」
- 152 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月02日(日)17時33分12秒
- わたしはひったくりが右に曲がるのを見た。足が右に方向をとった。何故そんなことをわたしの体はしでかしたのか。それは左に曲がりたくなかったからだ。左に行けばその女に追いついた。
逃げ去ろうとする後ろ姿を見まがえるはずがない。いつも楽屋やスタジオで見慣れているあの後ろ姿。あの走り方。わたしの前を走っていたのは加護だったのだ。
もちろん、加護がひったくりをしたというのではない。スカート姿でひったくりをしようなんて人間はまずいないだろう。加護が盗みを犯す人間とも思えない。
ではなぜ加護は逃げたのか。あの「ひったくり」と叫んだのは加護だ。あの地面に手をついていた、被害者と思われていた女性こそが加護からバッグをひったくろうとした犯人だったのだ。犯人は犯行に失敗し、勢いがあまったはずみか地面に伏した。その様子を見て、加護はそこから逃げ出した。わたしは犯人ではなく、被害者を追っかけていたのだ。
加護は逃げた。おそらくその場にとどまっていて、自分が芸能人だと周りの人間に気づかれるのを恐れたから逃げた。わずらわしいことから逃げようとした。
- 153 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月02日(日)17時33分55秒
- わたしはそれを追いかけた。ヒルのように喰らいつく芸能レポーターのように追いかけた。その時の加護は何を思っただろうか。頭では気がつかなくても、体のほうで気づいた。それでわたしの目は頭を欺き、足は目に同調した。加護は左に行ったのにわたしは右に曲がったのだから、袋小路で誰もいなくても当たり前だ。
加護はあの店で帽子とジャケットを買って、その場で着ていたのだろう。加護はそれを捨ててから、袋小路で立ちつくしていたわたしのところに現れた。加護はわたしからの逃走に成功した。
なぜわたしは追いかけたのだ。加護の気持ちをまっさきに思いやらなければいけないのがわたしではないか。
違う。加護が逃げたからこそ、わたしは追いかけなくてはいけないのだ。大切な仲間だから。
ではなぜわたしの目と足はわたしを欺いたのか。追いかけているときは、それが加護とはわからなかった。加護だとわかったとき、わたしの体は混乱し、現実からとりあえず目をそらした、ということだろうか。それとも途中で加護の意図に気づき、その思いを成就させなければならないと考えたのだろうか。
- 154 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月02日(日)17時34分28秒
- わからない。第一、すべてわたしの推測にすぎない。
「この服が気に入った? じゃあ買ってあげる……」
加護の頭が上下にうごいた。
- 155 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月02日(日)17時35分03秒
- おしまい
- 156 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月02日(日)17時35分41秒
- ( 0´〜`)<なんかもう、わけわかんないっす……
- 157 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月02日(日)17時36分28秒
- ( 0´〜`)<恐竜音頭……
- 158 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月05日(水)20時25分54秒
- ネタの尽きない作者に脱帽。
一話ごとに区切られてるのも読みやすくて嬉すぃです。
- 159 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月07日(金)22時27分07秒
- >>158
もうすっからかんです
- 160 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月07日(金)22時27分37秒
- 『いいことをした記念の瞬間』
- 161 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月07日(金)22時28分07秒
- どうも様子がおかしいと気づいたのは、ほんの些細な出来事からだった。
わたしは今、「CDデータ」という雑誌に簡単なコラムを書いている。飯田さんから引き継いだ隔週の連載で、毎回ネタを探してあえいでいた。
初めは何を書いたらいいのかわからず、飯田さんのこれまでの連載を読んでヒントを見つけようと思ったものの、参考にならなかった。自分があれを書こうとしたら発狂するに決まっている。
そこでみんなの近況を書くことにした。「わたし」の連載というより、「モーニング娘。としてのわたし」の連載だから、読者はわたしよりみんなのことを知りたがっているだろうとふんだからだ。
- 162 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月07日(金)22時28分39秒
- わたしは楽屋でのみんなの様子をつぶさに観察した。各メンバーの好きなもの、嫌いなもの、趣味などはだいたいインタビューで答えている。そこには出てこないような、彼女たちの無意識を見つけ出すことに集中した。
わたしはこまめにメモをとった。それを家に持ち帰り、パソコンにデータを入力した。例えば、いっしょに来たり帰ったりする組み合わせをグラフにしてみた。横軸にはメンバーの組み合わせ、縦軸に数量の棒グラフを作ると、安倍さんと飯田さん、飯田さんと辻、飯田さんと保田さん、辻と紺野、安倍さんと紺野などの組み合わせが他を圧倒していた。
あるときは辻の食べるお菓子の総量の推移をグラフにした。細かいデータはとれなかったが、カロリー換算してみると、ある時期を境に微妙に下がり始めていた。
- 163 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月07日(金)22時29分09秒
- とある番組の収録を兼ねて、ごっちん、梨華ちゃん、加護、そしてわたしの4人でつんくさんの仕事場を襲撃した。もちろんあらかじめつんくさんの了解を得ているはずだ。つんくさんはわざとらしく驚き、わたしたちはわざちらしく仕事場を荒らした。
「ねえねえ、よっすぃ〜、パソコンがあるよ」
「ほんとだ」
加護がマウスを動かすと、スクリーンセーバーが消えた。よくわからないソフトが画面いっぱいに広がっていた。
「おいおい、壊すなよ」
これは壊せということである。わたしと加護はでたらめにキーをたたき、マウスボタンを連打した。やがて変な音が流れ始めた。どうやら作曲のソフトらしい。
- 164 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月07日(金)22時29分44秒
- 加護は新しい標的を見つけた。つんくさんのプリクラ帳らしい。某番組で指摘されて、慌てて作ったものだろうか。加護はそこに貼ってあるプリクラをカメラの前につきだした。つんくさんは懸命におしとどめていた。
わずか30分ほどの喧騒が止み、収録は終了した。このままわたしたちはテレビ局に向かった。楽屋に入ると、残りのメンバーがいた。飯田さんの目の下にクマができていた。心なしか安倍さん、保田さんも憔悴している。
そんな先輩を見ておろおろしている辻と紺野を見つけたわたしは、二人をひっぱって外に出た。
「最近なんか様子がおかしいんだけど、何かやらかしたの?」
- 165 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月07日(金)22時30分31秒
- 二人は観念して事情を話し始めた。
今年の夏もシャッフルユニットがある。組み合わせは初めにメンバーたちに発表されていた。飯田さん、安倍さん、保田さん、辻、紺野はおどる11というユニットメンバーに決まった。
飯田さんはリーダーという地位を利用して、早めに曲を入手することに成功した。MDから流れてくる音楽を聴いて愕然とした飯田さんは、同じユニットメンバーを集めて協議を重ねた。
つんくさんに直接とりあって曲の作り直しを頼んでも無理だろう。それならばこちらのほうで無理やりにでも作り直してしまえばよい。おどる11の曲はNHKのみんなの歌に採用されていることから、他の曲に先駆けてNHKに楽譜を提出することが決まっていた。提出日の前の夜、つんくさんの仕事場にもぐりこんで、せめて詞だけでもこっそり変えてしまおうと計画した。
- 166 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月07日(金)22時31分05秒
- 彼女たちがどのようにしてつんくさんの仕事場に潜入したかは聞けなかった。どうやらキャッツアイばりのアクションをこなさねばならかったらしい。首尾よく成功した彼女たちは目的の曲が入ったフロッピーディスクを探した。
やがて机の引出しに透明のプラスチックケースを見つけた。引出しにはカギがかけられていたが、保田さんの前には無力だったようだ。フロッピーディスクが30枚びっしりと詰まっていた。飯田さんがつんくさんのパソコンの電源を入れたが、認証のパスワードを求められ、このパソコンを使うことをあきらめた。
保田さんがB5大のノートパソコンを用意していたのでそちらを使うことにした。1枚1枚中を確認するがそれらしきものは見つからなかった。ファイルを開くのにパスワードを求められるものを見つけた。これはと思った保田さんは懸命になって解析して、なんとか開くことに成功した。
- 167 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月07日(金)22時31分38秒
- ファイルをダブルクリックすると、メモ帳が開いた。
http://www.eroero.com/~sexy/image[000-999].png
保田さんはフンフンと頷きながら作業を進めた。何やらインターネットでダウロードしないといけないらしい。すべてをダウンロードし終わり、結合してできた映像ファイルをしばらく眺めていた彼女たちは、やがて赤面してながらファイルを閉じたということだ。
- 168 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月07日(金)22時32分47秒
- 「……というわけで、目的のディスクを見つけることはできなかったんです」
「そんなことやってたんだ」
わたしはある意味彼女たちのバイタリティに感動した。
「まあ、確かにあの歌はひどいよね」
「あれ、吉澤さんあの歌知ってるんですか?」
まだそれぞれの曲はまだメンバーにも知らされてはいなかった。
「うん、今日つんくさんの仕事場で見たよ」
- 169 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月07日(金)22時33分28秒
- 加護がつんくさんのプリクラ帳で遊んでいるときだった。わたしはつんくさんのパソコンのフロッピーディスクドライブに半分突っ込んであるフロッピーディスクに気づいた。それをがちゃんと押し込み、エクスプローラーを開くと、なにやらいくつかのファイルが出てきた。その一つが例の曲の歌詞だったというわけだ。
「企業秘密に匹敵する大事なディスクだからといって、カギをかけた引出しが安全とは限らない。むしろ大事なものほど無造作に扱ったほうが目くらましになるんだよ」
わたしはざっとその歌詞を眺めて、ふと出来心が起きていくらかの歌詞を書き換えてしまった。
「えっ、よっすぃ〜どんなふうに直したの? いい感じにしてくれた?」
「うん。あまり時間がなかったから全体を直すことまではできなかったけど」
「やったぁ。よっすぃ〜、ありがとう」
二人はお辞儀をして楽屋に戻っていった。
- 170 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月07日(金)22時34分18秒
- 自慢ではないが、わたしに作詞のセンスは多分ない。「ちょちょんがちょん」というところを「どどんがどん」に書き換えたのだが、二人は気に入ってくれるだろうか。
わたしの詞(の一部)が全国放送で流れることを思うと、ますますシャッフルユニットが楽しみになってきた。あの二人の喜びようから、飯田さんや安倍さん、保田さんも喜んでくれるだろう。人のためにいいことをしたと思うと、自然とわたしの気持ちは朗らかになっていった。
- 171 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月07日(金)22時34分51秒
- おしまい
- 172 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月07日(金)22時35分23秒
- ( ´D`)<……
- 173 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月07日(金)22時36分30秒
- ( 0´〜`)<愛蘭……
- 174 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月08日(土)17時46分48秒
- ( ^▽^)<さすがよっすぃ〜!!
- 175 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月10日(月)19時53分52秒
- 短いのに芸が細かいな…
脱帽。
- 176 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月10日(月)22時42分44秒
- >>174
( 0^〜^)<エヘヘ
>>175
( 0´〜`)<まあパクリですが
- 177 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月10日(月)22時43分14秒
- 『ナゾナゾ』
- 178 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月10日(月)22時43分53秒
- 「はじめは四本足で、次に二本足になって、最後は三本足になるものってな〜んだ?」
「う〜ん……なんだろ?」
もはや解説する必要もないナゾナゾで、加護と辻は遊んでいた。
「宇宙人!」
「ブー。答えは人間でした」
そうなんだろうか。確かに人間は赤ん坊の頃は四つんばいであり、大きくなって両足で歩き、年をとると杖をつく(人もいる)。だからといって、はじめ四本足で二本足になって三本足になるのが人間だとは限らない。「AならばB」であっても「BならばA」とはいえないからだ。
- 179 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月10日(月)22時44分24秒
- それなら人間以外にそのようなものがあるのかと問われると、「わからない」と答えるしかない。いるかもしれないし、いないかもしれない。「カラスは黒い」を証明しようとして「黒くないものはカラスではない」を利用するのは効率的ではない。黒くないものをたくさん集めたからといって、それをもとに「黒くないカラスはいない」とは決していえないのだ。
わたしは何を考えているのだ。
わたしは無常観にとりつかれていた。「平家物語」の世界だ。平家みちよの世界ではない。いや、ある意味平家さんの世界もそうか。
それでも世界は何事もなく、毎日を消化し続ける。
- 180 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月10日(月)22時45分01秒
- 「何辛気くさい顔してんだよ、よっすぃ〜」
矢口さんがわたしの肩をたたいた。この場合、わたしは痛そうに顔をゆがめて自分の肩をなでるべきなんだろうか。とてもそんなことはできない。
「なあ、よっすぃ〜変だよ」
矢口さんの問いかけに誰も反応しなかった。
わたしたちは、いっそう忙しい毎日を過ごしていた。余計なことを考えるひまもないので、ある種の人間にとっては好都合だ。しかし残念なことにわたしはその種の人間ではないようだ。
- 181 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月10日(月)22時45分33秒
- 「よっすぃ〜、おはよう……」
梨華ちゃんが陰気な声であいさつした。
「梨華ちゃん、寝不足? 目の下にクマが出来てるよ」
「……ホント? それは悲しいね……」
梨華ちゃんは引きずるように歩いていった。
「石川、疲れてんなあ」
「……ほんとに、つかれてますね」
矢口さんの言葉にわたしだけ応えた。辻がわたしのほうを見て、不思議そうな顔をした。
- 182 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月10日(月)22時46分19秒
- 加護と辻はまたナゾナゾを始め出した。謎なんかどこにもない。不思議に思うから、謎が生まれるのだ。何が起こったって不思議なんかじゃないのだ。そう思わないとやってられない。でも、それでも、わたしはすべてを受け入れられそうになかった。
ならば無駄な思考で頭を麻痺させるしかない。そうしないと耐えられない。
「よっすぃ〜、ナゾナゾしようか」
「ごっちん……」
「はじめは六本足で、次に四本足になって、次に六本足になったのってな〜んだ?」
わたしは硬直した。なんだってごっちんはそんなことを口にするのだろう。わたしの今までの努力が無に帰ってしまうじゃないか。
「ごっちん、それは……」
「何? よっすぃ〜、答えてよ……」
- 183 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月10日(月)22時46分49秒
- わたしは保田さんのほうを見た。保田さんは腕を組んで目を閉じていた。
「……だってよっすぃ〜、どこか遠いところに行っちゃいそうな感じがしたから……」
ごっちんはいきなり顔をそらし、ドアを開けて部屋を出て行ってしまった。心配かけてごめん。プッチモニは永遠に三人だ。
「なんだよ、ごっつぁんは変なやつだなあ」
今度ばかりはわたしも矢口さんを無視した。
「よし、おいらもナゾナゾ出すぞ、よっすぃ〜。最初六本足で、次に八本足になったのな〜んだ?」
「矢口さん……」
- 184 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月10日(月)22時47分44秒
- だめだ。これ以上はがまんできない。わたしは涙を押しとどめることができなかった。
「おいおい、よっすぃ〜」
みんながわたしのほうを向いた。声を出そうにも、もれるのは嗚咽ばかりだった。
「……違う。タンポポは、最初は六本足で、次に八本足で、その次は六本足よ」
飯田さんの言葉が耳に障って、わたしは大声を出した。
「飯田さん! 違います。八本足の次なんて……」
「吉澤、いいかげんにしなさい。矢口は死んだのよ」
- 185 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月10日(月)22時49分30秒
- 今でも信じられない。あれは夢だ。車に轢かれて死んだのは、決して矢口さんじゃない。いや、矢口さんは死んでいない。だってここにいるじゃないか。
「飯田さん、矢タンポポは今でも八本足です。みんなには見えないかもしれないけど、ここにちゃんとほら……」
ここでわたしは口をつぐんだ。
矢口さんは死んだ。不慮の事故で逝ってしまった。だが幽霊として梨華ちゃんにとり憑いて、何事もなかったかのように姿を見せる。ただそれはわたしにしか見えないと思っていた。声もわたしにしか聞こえないと思っていた。それじゃあ、飯田さんはどうして矢口さんの出したナゾナゾを知っているのだ。
「飯田さん、もしかして見えるんですか?」
「わたしだけじゃない。みんなにも、ちゃんと見えてるよ、矢口が」
- 186 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月10日(月)22時50分11秒
- みんながゆっくりうなずき、矢口さんはキャハハと笑った。わたしは右腕で目をこすった。わたしは少し嬉しくなって歯を見せた。
「じゃあ、それならやっぱり八本足の次は八本足でしょ?」
「いいや、六本足だよ。だって幽霊には足がない」
- 187 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月10日(月)22時50分42秒
- おしまい
- 188 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月10日(月)22時51分16秒
- (〜^◇^)<おい
- 189 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月10日(月)22時51分52秒
- ( T▽T)<肩の辺りが重いんです
- 190 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月11日(火)00時19分25秒
- うぬ。面白い。
- 191 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月11日(火)19時40分19秒
- をい!ちょっと笑っちまったじゃねーか
- 192 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月13日(木)20時06分50秒
- ( 0´〜`)<どうすればいいんでしょうか……
- 193 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月13日(木)20時07分43秒
- 『狂おしいほど鬱陶しい六月の夜』
- 194 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月13日(木)20時08分25秒
- 昨日も仕事で今日も仕事で明日も仕事だった。だから今日はもう寝たいと、とあるホテルの一室で布団にもぐりこんだところを、加護と辻に起こされた。
「よっすぃ〜、日本代表が勝ったんだよ」
「テレビのニュースでもやってるよ」
それはたいそうなニュースなんだろう。それはわかったから眠らせてくれと懇願しても、二人には通じなかった。勝手に備えつけのテレビをつけ、リモコンで音量を大きくした。
「ここで日本のフラットスリーですが、安易には前に出ずに……」
フラットスリーの真ん中は保田さんだ。確かに安易に前には出ない……と思う。
- 195 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月13日(木)20時08分59秒
- 加護辻もそうだが、テレビだってなんなのだ。そんなにしつこくやらなくったっていいじゃないか。世の中サッカーに興味がない人間だってたくさんいるのだ。
「もう寝かせてよ……」
「だーめ」
「そうだ、梨華ちゃんも呼んでこようよ」
もう一匹生贄の羊を求めて、二人の天使は部屋を出て行った。梨華ちゃんだって疲れているのに。わたしは二人を止めようとついていった。
- 196 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月13日(木)20時09分30秒
- 廊下はオレンジ色の光に染まっていた。最低限の光しかなく、うっすらとしか様子がわからなかった。
「あ、梨華ちゃんだ」
辻が指差した先に、たしかに梨華ちゃんがいた。目をこらしてようやくわかった。その奥にいる三つの塊は何だろう。子供のように見えるが。
梨華ちゃんはこちらに気づいたふうもなく、ドアを開けて中に入っていった。
辻と加護が走ってドアの前に立った。オートロックなのでドアノブをまわしてもびくともしない。辻がドアをガンガンと叩き始めた。
「出てこーい」
「おい、やめなよ」
「まあ、カギはあるんだけどね」
加護は、ホテルのフロントから黙って持ってきたらしいマスターキーを取り出した。用意のよさにわたしはあ然とした。
- 197 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月13日(木)20時10分05秒
- 部屋の中は真っ暗だった。暗闇の中、辻はベッドに向かってダイブした。ひとたまりもなく梨華ちゃんはおしつぶされたと思ったが、そのようなうめき声は聞こえなかった。
加護が手さぐりで壁のスイッチを押した。辻がだらしなくベッドにうつぶせになっているのが見えた。
「梨華ちゃんは?」
ユニットバスや備えつけの衣装タンスをのぞいても、梨華ちゃんの姿はなかった。辻はベッドの下をのぞいて「梨華ちゃーん」と呼びかけたが返事はなかった。
「あれー、梨華ちゃん消えた?」
「でもこの部屋に入っていったよねー」
ドアと窓以外、出入り口はない。窓は内側からカギがかけられているし、第一ここは五階である。
- 198 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月13日(木)20時10分40秒
- わたしは自分の部屋に戻ろうとしたところを二人に止められた。
「梨華ちゃんが消えちゃったよー」
「よっすぃ〜、どうして?」
わたしはうんざりした。
「どうしてだろうね」
「絶対変だよ」
「気になって眠れないよー」
わたしは二人の手を取って廊下に出た。
- 199 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月13日(木)20時11分37秒
- 「さっきね。梨華ちゃんの姿を見たとき、いっしょに小さな三人の子供を見たんだ」
「子供?」
「子供のように小さかった。こんなに暗くちゃはっきりは見えなかったんだけど」
「じゃあその子供が梨華ちゃんをさらったの?」
「もしかしてお化け?」
お化けということにしてもよかったが、わたしは別のことを考えていた。
「それはね、辻と加護とわたしだった」
「どういうこと?」
わたしは奥を指差した。
「ほら、あれ……」
「鏡だ……」
「そう。わたしが見た三人の子供ってのは、この大きな鏡に映ったわたしたちだったんだね。ということはさ、さっき見た梨華ちゃんも……」
「鏡に映った梨華ちゃんだったんだね」
「そう。本物の梨華ちゃんは反対側にいたんだ」
- 200 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月13日(木)20時13分57秒
- (吉澤)
501 502 503 504 505 506
└────┴────┴────┴────┴────┴────┘
鏡/ (偽^▽^) ← (´D` )
(本^▽^)
┌────┬────┬────┬────┬────┬────┐
512 511 510 509 508 507
- 201 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月13日(木)20時14分58秒
- 「よっしゃー」
二人は「512」のキーを取り出すとドアのカギを開けた。二人はさっきと同じように部屋に飛び込み、勢いよくベッドにダイブした。
「ぐえ……」
今度は期待通り、カエルのようなうめき声がした。二人はしばらくそこを動かず、布団の中の人物の自由を奪っていた。
「えへへへ」
「梨華ちゃーん、起きろ」
二人はようやく蛮行をやめ、布団をゆっくりとはがした。しばらくうつぶせになり、それからおもむろに体を起こした人物がごっちんであることを確認すると、わたしは部屋を出てドアを閉めた。このあとの悲劇は口にするまい。
- 202 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月13日(木)20時16分51秒
- わたしは廊下を進み、自分の部屋を通り越して507号室を静かにノックした。やがてドアが開いて梨華ちゃんが目をこすりながら出てきた。
「あ、よっすぃ〜、どうしたの?」
「ん、なんでもないよ。おやすみ、梨華ちゃん」
「おやすみー」
わたしは自分の部屋に戻り、テレビを消して布団にもぐりこんだ。
鏡はもう一つ、512号室の横にもあった。空室の向かい側にいたと思われた梨華ちゃんも、鏡に映った虚ろの人物だった。本物は廊下の反対側、507号室に入ろうとしていたのである。
- 203 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月13日(木)20時17分25秒
- (空室) (吉澤)
501 502 503 504 505 506
└────┴────┴────┴────┴────┴────┘
鏡/ (偽^▽^) ← (´D` )
鏡\ (偽^▽^) (本^▽^)
┌────┬────┬────┬────┬────┬────┐
512 511 510 509 508 507
(後藤)
- 204 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月13日(木)20時17分59秒
- 501号室前に見えた梨華ちゃんの姿がなんだかいつもより小さかったこと、512号室がごっちんの部屋であることに気づいたわたしは、二人をちょっとこらしめようと思いついた。
これで二人も当分の間はおとなしくすることだろう。ああ、でもこの国のサッカー狂想曲はあと二週間は続くのだ。熱しやすく冷めやすいこの国民性を利用して、わたしたちに対する狂想曲が永遠に続くことを祈りながら、わたしは深い眠りについた。
- 205 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月13日(木)20時18分36秒
- おしまい
- 206 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月13日(木)20時19分23秒
- 人
( ^▽^)<べっかむ!
- 207 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月13日(木)20時20分18秒
- ■
( 0^〜^)<つぃーげ!
- 208 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月14日(金)17時29分15秒
- ( ´ Д `)<勝ったね。
- 209 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月15日(土)16時40分44秒
- ( T▽T)<日本!!日本!!
- 210 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月15日(土)21時24分21秒
- ■
( `.∀´)<ベッカム?あんなのモヒカンじゃないじゃないですか
- 211 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月15日(土)21時39分28秒
- ↑
ズレタ
- 212 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月16日(日)14時11分25秒
- ( 0`〜´)ノ <だからあ、もううんざりなんだって
( ´ Д `)<>>173は何なの?
( 0´〜`)<う……
- 213 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月16日(日)23時42分46秒
- ( 0T〜T)<愛蘭〜
- 214 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月17日(月)22時33分09秒
- 『今日のわたし』
- 215 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月17日(月)22時33分41秒
- 目覚し時計が鳴った。わたしは腕を伸ばしてボタンを押した。
しばし布団の上でまどろんでから、ベッドから離れた。
顔は洗わない。歯もみがかない。必要ないから。
パジャマを脱いで普段着に着替えた。
テレビのスイッチを入れた。
- 216 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月17日(月)22時34分13秒
- 床に転がっていたアンパンマンのヌイグルミを拾って抱きしめた。
アンパンマンは自分を何者だと思っているのだろう。
顔をかじられたり、水に濡れると力がなくなる。
そうしたとき、彼は顔を交換する。すると元通りだ。
- 217 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月17日(月)22時34分43秒
- だが、本当の彼はどこにいるのだろう。
- 218 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月17日(月)22時35分33秒
- わたしはタンスの引出しをあけた。
今日はMステの収録だ。
わたしには話はふられないだろう。
ニコニコとしていればいいだけだ。
わたしはそれ用の顔を一つ取り出した。
鏡の前でゆっくりとわたしの首に取り付けた。
カチリと音がしてはまった。
少しぐらぐらする。
- 219 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月17日(月)22時36分03秒
- 今日のわたしはこのわたしだ。
みんなが求めているわたしでなくてはならないのだ。
- 220 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月17日(月)22時36分35秒
- おしまい
- 221 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月17日(月)22時38分20秒
- ( 0´〜`)<ふう
- 222 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月17日(月)22時38分56秒
- ミ_彡__
/ く
(0^〜^0)<これもわたしなんだけどね
/ / ̄ ヽフ
/ノ |
人___z___z'
- 223 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月18日(火)23時24分03秒
- 『パンと情熱の間で』
- 224 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月18日(火)23時24分40秒
- 現代人の多くは朝食をとらない。夜遅くまで起きているせいで、快眠できていないからだ。目覚めがよくないので気持ち悪くなり、食事が喉を通らなくなる。
私もその典型的な現代人だった。朝食べなければ昼に食べることになる。しかしその日は妙に忙しくて、定食屋に入るひまがなかった。窮した私は目に入ったパン屋に駆け込んだ。適当にサンドイッチでも買って、近くの公園で食事を済ませてしまう算段だった。
そのパン屋はどこかのフランチャイズではなく、自家製の焼きたてのパンを売り物にしていた。サンドイッチなど保存のきかないものは作る量が少ないらしく、目当てのものはほとんどなかった。
菓子パンでもなんでもいいやと、なるべく甘ったるくないものを物色した。陳列されているパンに気をとられた私の体が、何か柔らかいものにぶつかった。
- 225 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月18日(火)23時25分16秒
- 「あ、失礼」
「いいえ」
私はその若い女性にあわてて謝った。女性はそっけなくこたえると、視線を陳列棚に戻した。その女性は腰を下ろしてベーグルサンドを妙に熱心に眺めていた。
腹に入ればなんでもいいと、私はいやっていうほど白い粉のかかったパンを二つ持ってレジに並んだ。店員は奥に入っているらしく、姿を見せなかった。時間のない私は「すみませーん」と大声で呼んだが、出てくる気配がなかった。
見ると、私の後ろに別の客が並んでいた。近所に住んでいる若い主婦のようだった。
「遅いですね」
「先ほどまで、このレジにいたんですけどね」
私がこの店に入ったときにはもう姿がなかったと思う。見回したが、商品を陳列しているというわけでもない。店の中にいるのは私と後ろの主婦、そして食い入るようにベーグルをにらみつけている若い女性の三人のみだった。
- 226 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月18日(火)23時25分43秒
- 「おかしいなあ」
私はあせっていた。そうでなければこんな思い切ったことはしなかっただろう。レジ台とガラスの陳列棚のすきまを通って中に入った。ドアが一つあり、この奥が厨房になっているのだろう。ドアを開けて中に入った。
私の知識にはない、いろいろな道具が並んでいた。パンを焼く窯らしきものあった。しかし、肝腎のこの店の主がいなかった。もしかして急に病気になって倒れたのだろうかと床を見たが、誰も倒れていなかった。
振り向くと、先ほどの主婦も立っていた。
「どうしたんですか?」
「ここにもいないみたいです。もしかしたらちょっとした用事でどこかに出かけているのかもしれない」
私は自分の発言を撤回しなければならなかった。この厨房に出入り口は先ほどのドア一つしかなかったからだ。厨房からこの店の外に出るには、ドアから出て、店の入り口から出ないといけない。
しかし、私が入ったときにはもういなかった(ようだ)。
「私がこの店に来たときには姿が見えませんでしたが、あなたは店から出るのを見ましたか?」
主婦はじっと私の目を見つめていたが、やがて「いいえ」と首を振った。
- 227 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月18日(火)23時26分14秒
- 厨房から出ると、私は女性に声をかけた。彼女は私が入るすぐ前に来たらしく、やはり店員の姿を見てはいなかった。
「変だ。煙のように消えてしまった……?」
私は一度気になりだしたら、何らかの答えが出ないと気のすまない人間だった。私はこの現象に対し、納得のいく答えを見つけ出そうとやっきになった。
まず私は、この主婦が何か手がかりを知っているかもしれないと考えた。私より先にこの店にいて、レジで店員を見かけているのだから。
「私はこの店に初めて入ったのですが、あなたは?」
「あら、初めてだったんですか」
「ええ、この店があることは知っていましたが、あまりパンを食べないもので」
「……私はたまに来ます」
まずこのパン屋のことを聞き出した。このパン屋は手作りが売りで、一人で仕入から販売までやっているらしい。あるじは女性とのこと。サンドイッチの評判がよく、なかなか繁盛しているらしい。休みは月曜日。
そのあと、逆に私のほうがこの主婦に質問攻めを喰らった。ふだんこの店に興味のないものが突然ぶらりと入ってきたのがあやしかったのだろうか。私は身の潔白を示すため、氏素性まで明らかにした。
- 228 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月18日(火)23時26分58秒
- さて、今度はそこの女性の番だと振り向くと、驚いたことにまだベーグルとにらめっこしていた。ベーグルにうらみでもあるのだろうか。
「もしもし、すみません」
「は? 何ですか?」
この女性はようやくパンから目を離して立ち上がった。
「耳に入っているかもしれませんが、この店の人が消えてしまいましてね。お金を払おうにも払えないし、消えてしまったこと自体が不思議なことでして、それで何かご存知ないかと」
薄汚れたジーンズに黄色いパーカー。あまり今時の若い女性らしいいでたちではない。どちらかというといたずら好きな少年といった感じだった。黒いサングラスにショートカット、薄い化粧では声を聞くまでは女性とは気がつかないかもしれない。
- 229 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月18日(火)23時27分36秒
- この女性もこの店に入ったのは初めてだという。店に入るとわき目もふらずにベーグルに突進し、見つめ始めたので、周りのものは何も目に入らなかったと言った。
「それにしても律儀ですね。お金だけ置いて帰ってしまえばよかったんじゃないんですか?」
「実は一万円札しか持ってないんで」
頭をかくと主婦も笑みをもらした。
「まあ、しょうがないか。もう時間もないし、お昼ごはんはあきらめるしかないな。それにしても不思議なこともあるもんだ」
「……ほんとうに不思議なことだと思っていますか?」
女性の口調が変わってぎょっとした。
「あまり超常現象なんか信じないたちだが、こうして実際に体験したのだからしょうがない。きっと何かあるんだろうけど」
「……知りたいですか、おじさん?」
まだ二十台なのにおじさんと呼ばれて少なからずショックだった。が、別の興味に心を奪われた。
- 230 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月18日(火)23時28分01秒
- 「ああ、知りたい。どうしても知りたい」
女性はサングラスを取った。ぱっちりした目にいくつかのホクロ、少々盛り上がった頬。どこかで見たことがある……。
「もしかして、モーニング娘。の人?」
主婦が大きな声を出した。私もようやく思い出した。
「ほんとうだ。よっすぃ〜だ」
おじさんと呼ばれようがまだ二十台、テレビの歌番組も時間があればよく見ている。紅白歌合戦も実家で親兄弟と見ていた。ベーグル好きというのもどこかの番組でやっていた記憶がある。
いや、とここはミーハー趣味は抑えた。そんなやつらとは自分は違うんだという見栄もあった。
「教えてくれ」
- 231 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月18日(火)23時28分26秒
- この若い女性、いや、吉澤ひとみはベーグルをつかむといきなりぱくついた。
「おいおい、君、勝手に商品を……」
「お金はちゃんと払います」
彼女は財布から千円札を出すと、主婦に渡した。
「おつりは後で下さい」
「ちょっと、君、この人は……」
「ええ、このお店の店長さんです」
主婦は赤くなってうつむいた。
……
- 232 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月18日(火)23時29分03秒
- 「出入り口が一つしかなく、そこから出て行った人はいません。ということは出て行かなかったということです。わたしでもなく、あなたでもないのなら、残るこの人がこの店の人と考えるしかありません」
「だけど、どうしてこの人はこの店の主人じゃないふりをしたんだ?」
私は少々取り乱してしまった。
「……これまでの様子はちょろちょろと耳にはいってきただけなんですから、間違ってるかもしれません。それでもいいでしょうか」
わたしに主導権はない。ただうなずくしかなかった。
「おじさんがこの不思議なできごとに明解な説明をつけようと、わたしやその人にあれこれ聞きまくったのはなんとなく納得がいきました。世の中詮索好きな人はいっぱいいますから。わたしたちはそれに追いまわされて辟易してますが」
若い女性、というか少女にきついことをいわれて、しょげた。これからは注意しなければなるまい。
- 233 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月18日(火)23時29分35秒
- 「しかし、この人は逆におじさんにおじさんのことを尋ねていました。それでわたしは、この人はおじさんのことを知りたがっているんだなあと思いました」
「でも、それはこの人も同じように謎を解こうとして下調べしてたんじゃないのか。あるいは私のことを疑っていたのかも知れないし」
「そうかも知れませんね。しかし、この人がこの店の人である以上、そのような仮説とは相いれません。つまり、この人がいろいろおじさんのことを詮索していたのは、この謎を解こうとしての行動ではないのです」
「それじゃあ」
彼女はぞっとするほど大人っぽい。テレビで見ていて、あまり彼女には注目していなかったが、それでもやはり彼女はアイドルだったのだ。
「それ以外で人のことをあれこれ聞くのは、その人に興味があるからです。ここから先は完全に推測です。若い女性が若い男性に興味を抱く、ということはつまり好意を持っているからじゃないでしょうか。わたしはまだ子供だからよくわかりませんが」
嘘だ。どこが子供だというのだ。
- 234 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月18日(火)23時30分09秒
- 「おじさんはこの店に入ったことはなかったけど、店のことは知っていた。普段からこの辺りを行き来してたんでしょう。その様子をこの店の中から店長さんは見ていて、好きになっていった。でも店に入ってこない限り声をかけられなかった。ところが今日、突然この店に向かってきた。男の人が菓子パンを食べるとは思わないから、目当てはサンドイッチだ。でもあいにく切らしている。もしかしたら怒って二度とこの店に来ないかもしれない。そう思った店長さんは気が動転して、店のエプロンやら帽子やらを外して店の人じゃないふりをした。ところが存外おじさんはけっこう店から出て行かない。これ幸いとどんな人か質問しまくった」
私は妙な気持ちになった。主婦、と私が思い込んでいた女性が私を見つめていた。
「おつり下さい……はい、それじゃ、さよなら」
私たちを置いて、ベーグルをくわえたアイドルが風のように去っていった。
- 235 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月18日(火)23時30分56秒
- おしまい
- 236 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月18日(火)23時31分43秒
- ( 0^〜^)<ちょっと実験
- 237 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月18日(火)23時32分23秒
- ( 0´〜`)<かなーり失敗
- 238 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月20日(木)21時39分46秒
- ( 0´〜`)<次いこ次
- 239 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時40分23秒
- 『すくらんぶるエッグ』
〜「ハロプロニュース」より〜
- 240 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時40分59秒
- (スタジオ)
石川 キャスター、それはワールドカップの陰でひっそりと10連勝しても誰も話題にしてくれない近鉄バファローズ……どーもー、チャーミー石川です。
中澤 ……。
石川 そして解説委員の中澤裕子さんと。
吉澤 ミスター吉澤です。
石川 どうしたんですか、中澤さん?
中澤 ……別に。
- 241 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時41分31秒
- 石川 はい、それでははりきっていきましょう。最初のニュースです。昨日、ハロモニ女子寮で集団食中毒が発生しました。夕食に出されたスクランブルエッグからブドウ球菌が発見されています。これを食べたハロモニ女子学園の生徒数名が入院しましたが、幸い死亡者はいない模様です。言えた!
中澤 いやー恐い事件ですねえ。
吉澤 良い子のみんな、ご飯の前には手を洗うんだよ!
石川 手を洗ってもムダのような気もしますが。……あ、はい、現地からの映像が入っています。平家さーん。
- 242 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時42分06秒
- (中継)
平家 ……はい、こちら食中毒事件の起こったハロモニ女子寮の前にいます。まだ雨は止んでいません。事件直後はヤジ馬がたくさん集まって大騒ぎだったのですが、現在は何事もなかったかのように静まり返っています。
石川 平家さん、被害にあわれた生徒さんたちの病状はいかがでしょうか?
平家さん ……はい、被害にあった方は全部5名で、近くの痛井病院に運ばれましたが、全員命に別状はない模様です。
中澤 なんで一テンポずれるんや。
石川 原因となったのはスクランブルエッグと聞いていますが。
平家 ……はい、寮のまかないの人が夕食に出したスクランブルエッグからブドウ球菌が発見されました。警察ではどのような経路を通ってこの菌が混入したかを調査しています。
- 243 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時43分20秒
- (スタジオ)
石川 ありがとうございました。夏場は食事に気をつけないといけませんねえ。
中澤 ほんまやね。もし卵自体が汚染されているとしたら、業界に与える影響もあるんじゃないでしょうか。
石川 それがですね、警察は「販売されたスーパーの卵からはブドウ球菌は発見されなかった」と発表しています。業界からなんらかの圧力がかかっているのかもしれませんが。
吉澤 ブルブル。
石川 ……あ、今度は痛井病院からの中継が入りました。矢口さーん。
- 244 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時43分56秒
- (中継)
矢口 キャハハ。はい、矢口です。スクープです。被害にあった生徒たちのインタビューがとれました。
石川 ほんとですかー。すごいですねえ。どうやってできたんですか。
矢口 キャハハ。この病院、患者の体にガーゼとメスを残したまま退院させたのをひた隠しにしているのをちょこっと脅かしたらOKでした。
吉澤 これ一応全国ネットですよー。一部地域は2週間ほど送れて30分バージョンですが。
矢口 キャハハ。視聴率3.7%だからかまわないって。それではインタビュー映像をどうぞ。
- 245 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時44分32秒
- (録画映像)
矢口 キャハハ。お腹はもう大丈夫?
安倍 ええ、なんとか。
矢口 キャハハ。どんな様子だった?
安倍 6時30分頃、まかないの保田おばあちゃんが「食事の用意ができたぞー」って。
矢口 キャハハ。献立は?
安倍 ご飯と、味噌汁と、おひたしと、らっきょ。
- 246 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時45分02秒
- 矢口 キャハハ。それだけ?
安倍 それでなっちとか文句言ったら、「近頃の若いモンは文句ばっかり言ってしょうがないねえ」ってスクランブルエッグを出してきた。
矢口 キャハハ。それから?
安倍 全部食べて、部屋に帰ろうとしたら突然お腹が痛くなって、気分悪くなって。保田のおばあちゃん仰天して、救急車呼んだ。
矢口 キャハハ。スクランブルエッグは変な味した?
安倍 いいえ。ちょっと塩がきつかっただけ。
- 247 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時45分34秒
- (スタジオ)
石川 すごいです、矢口さん。……え、もう時間? いいの、いいの、どうせこの後の経済番組なんて誰も見やしないんだから、続けましょ。日本経済はボツワナ以下なんだから、もうどうしようもありませんって。まだインタビュー映像ありませんか?
矢口 キャハハ。まだまだあるよー。
(録画映像)
矢口 キャハハ。日本語わかる?
ひとみ オーケイです。
矢口 キャハハ。スクランブル食べた人覚えてる?
ひとみ オー。ワタシ、アベさん、リカちゃん、フミマロさん、ナカザワセンセイです。
矢口 キャハハ。女子寮に男連れ込むなよ。様子教えて。
- 248 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時46分09秒
- ひとみ サイショに食堂に入ったのはアベさんでした。その次ワタシでした。オナカペコペコでした。
矢口 キャハハ。給料たんまりもらってんだろ。それから?
ひとみ その二人でコメとミソシル食べていたら、リカちゃんとフミマロさんがいちゃいちゃしながら入ってきました。それで4人でまた食べ始めました。そこにナカザワセンセイが酔っ払って入ってきました。
矢口 キャハハ。しょうがねえなあ。何で酔っ払ってたんだ?
ひとみ またお見合いでシッパイしたらしいです。13回目だそうです。イッショウベン抱えてました。
矢口 キャハハ。汚ないなあ。イッショウベンじゃなくてイッショウビン。それから?
ひとみ 暴れ疲れたらオナカ減ったみたいで、5人で食事続けました。アベさんがヤスダバアチャンに文句言ったらスクランブルエッグ出てきました。
矢口 キャハハ。スクランブルエッグが出てくるまでは5人全員で待ってた?
ひとみ なかなか来ないのでナカザワセンセイはトイレいってモドシテました。リカちゃんとフミマロさんは食堂から出て行ってしばらく戻ってきませんでした。
- 249 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時46分42秒
- (スタジオ)
石川 あのー、ちょっと気になったんですが、最後のほうで5人揃ってるかどうか聞いたのはなんで?
矢口 キャハハ。頭使えよ。ブドウ球菌がそんな簡単に混入するかよ。誰かがやったんだよ。
中澤 それって、これは事故じゃなくて故意の事件ってことですか。
吉澤 良い子のみんなはマネするなよ!
矢口 キャハハ。インタビュー映像はまだまだ続くよ。
- 250 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時47分17秒
- (録画映像)
矢口 キャハハ。なんでおばあちゃんまで入院してんだよ。
保田 持病の腰痛じゃ。
矢口 キャハハ。ところでおばあちゃん、卵はどこで買ったの?
保田 近くのスーパーじゃ。10個で100円じゃった。
矢口 キャハハ。安!
保田 じゃが味はいいぞ。ほとんど毎日そこで買っとったんじゃ。
矢口 キャハハ。ということは、その卵に菌が入ってたってわけじゃなさそうだね。その時の様子は?
- 251 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時47分52秒
- 保田 あの眼がねっ子が「腹減った、もっと食わせろ、じゃないと学校に言いつけるぞ」と騒ぎ出した。せっかく差額を懐にいれようとたくらんどったのに。
矢口 キャハハ。図星じゃん、それ。
保田 それでのう。冷蔵庫のぞいたらまだ2個ほど奥に残っとった。その卵をといどったら味付けの塩と醤油が切れてしもてたのを思い出しての。そいで勝手口を出て、駅前のダイエーまで買いに行っとった。
矢口 キャハハ。近所にスーパーあるじゃん。
保田 そこが安いのは卵だけじゃ。隣のイトーヨーカドーのチラシを偽造したもの持っていって、半額に負けさせた。
矢口 キャハハ。買いにいったの何時くらい?
保田 7時10分前だったかの。7時10分には戻った。それから適当に作って出したやったら、みんな面白いように倒れ始めての。腹抱えて笑っておったら腰が抜けてしもうた。
矢口 キャハハ。罰当たり。
- 252 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時48分47秒
- (スタジオ)
石川 ますます事件の疑いが高まってきましたねー、中澤さん。
中澤 ほんまに。愉快犯の仕業かもしれんね。
吉澤 ユカイ、ユカイ。
石川 警察はどのような見解なんですか、矢口さん?
矢口 キャハハ。事故と事件の両面から当たっているみたいです。ただ女子寮の門の監視カメラにはあやしい人物は映っていなかったそうです。
中澤 ということは、もし事件なら内部の人間の仕業ってことやな。
- 253 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時54分03秒
- 石川 恐いですねえ。内部犯の可能性はどうなんですか、矢口さん?
矢口 キャハハ。このパネル見てよ。
┌───────────────────────────┐
│ ┌────┬─────────────┬─────┐ │
│ │←2階へ │ │ .│ │
│ │ = = │ │
│ = .│ │ │ │
門 │ 玄関 │ 食堂 │ 厨房 │ │
│ ├────┤ │ │ │
│ │ .│ │ 勝手口= │
│ │トイレ │ │ │ │
│ └────┴─────────────┴─────┘ │
└───────────────────────────┘
- 254 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時54分36秒
- 矢口 キャハハ。門は一つで出入り口は玄関と勝手口だけ。門の監視カメラには怪しい人間が入っているところは映ってないから、保田おばあちゃんがいない間に厨房に入れたのは、内部の人間しかいないんだ。
石川 保田さんが厨房にいなかったのは6:50〜7:10の間ですよね。そのときアリバイがなかったのは誰なんですか?
矢口 キャハハ。お前も疑ってんじゃん。途中でトイレに行った中澤先生、何をしてたんだか梨華ちゃんと文麿くんの3人だよ。
中澤 あと保田おばあちゃんも容疑者になるわな。
石川 その人たちのインタビューはないんですか?
矢口 キャハハ。矢口をなめんなよ。
- 255 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時55分07秒
- (録画映像)
矢口 キャハハ。このたびはご愁傷様です。
中澤 うー。頭が痛い。
矢口 キャハハ。お腹じゃなくて頭か。先生が女子寮に行くのは珍しい?
中澤 むしゃくしゃしとってな。八つ当たりしたかった。
矢口 キャハハ。自覚してんじゃん。途中トイレに行ったらしいですが。
中澤 気分悪くなって、母なる大地に還元した。
矢口 キャハハ。どのくらいトイレに入ってた?
中澤 3分ぐらい。……オレが何かしたって疑ってんのか?
矢口 キャハハ。口悪い。
- 256 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時55分40秒
- (スタジオ)
石川 その証言を裏付けるものはあるんですか、矢口さん?
矢口 キャハハ。安倍さんという被害者がそのぐらいだったって言ってました。
(録画映像)
矢口 キャハハ。2人同室かよ。よく許されたな。
文麿 ……ここの院長がこの前の選挙で裏工作していた証拠を見せてやった。
矢口 キャハハ。おぬしも悪よのお。それで、お前ら何やってたんだ。
梨華 2階に上がって星を見ていました。
矢口 キャハハ。この雨の中でか。エッチなことしてたんじゃない?
文麿 ……小人は他人を自分と同レベルに思うもの。
矢口 キャハハ。どうせおいらはちっちぇーよ。
- 257 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時56分15秒
- 梨華 「こびと」じゃなくて「しょうじん」ですよ。つまらない人間って意味です。
矢口 キャハハ。結局けなしてるんじゃねーか。どのくらい2階にいた?
文麿 ……いくら目をこらしても星が見えないのですぐに戻った。
梨華 5分ぐらいでした。ヘクチ。
文麿 体を冷やしてはいけない。
梨華 文麿さま……。
矢口 キャハハ。やってらんねー。
- 258 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時56分52秒
- (スタジオ)
石川 その2人の証言は確かなんですか?
矢口 キャハハ。頭の不自由な子が証言してたよ。
石川 中澤さん、どう思われます?
中澤 そうね。もし犯人が内部の人間とすると、保田おばあちゃん以外は自分の身もまきこんでいるわけやろ? こりゃなかなかできないことやわな。
石川 よっぽど追い詰められていたんですかねえ。動機の面ではどうでしょう?
矢口 キャハハ。そりゃ女子高だからさ、いろいろあるみたいよ。○○○○してるとこ見られたとか、急性○○○○○中毒で死んじゃったとか。
石川 微妙にネタバレやってますねえ。ミスター吉澤さん、影が薄いですよ? って本番中にベーグル食べないでください。
吉澤 おいひいよ。
矢口 キャハハ。再現シーンを作ってみたよ。
- 259 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時57分35秒
- (録画映像)
高橋(安倍役) 腹減ったべ。もっと食わせろだべ。卵料理がいいべ。
紺野(保田役) 贅沢いっちゃだめですよ。
高橋(安倍役) 食わさねーと学校にチクるべ。もうすぐ年金破綻したら生きていけなくなるべ。
紺野(保田役) しょうがないですね。スクランブルエッグでいいですね。
新垣(ひとみ役) スクランブルエッグおいしそう。
高橋(安倍役) いっぱい食わせてやるべ。
小川(梨華役) ただいまー。
加護(文麿役) ……こんばんは。
- 260 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時58分24秒
- 新垣(ひとみ役) あれ、今夜は外で食べてくるんじゃなかったの?
小川(梨華役) 二人で野球の試合見る予定だったんだけど、雨で中止になったから帰ってきちゃった。
加護(文麿役) んあ……。
高橋(安倍役) あらあらだべ。
辻(中澤役) ういー、ひっく。
高橋(安倍役) あれ、どうしたんだべ、中澤先生。
辻(中澤役) かわいい生徒の様子を見にきたんだよ、ひっく。
新垣(ひとみ役) 今日はお見合いじゃなかったんですか?
高橋(安倍役) わかっただべ。またふられたんだべ。
辻(中澤役) 太る太る……じゃなかった、ふられるふられる言ってんじゃねーよ! ひっく。
- 261 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時59分01秒
- 小川(梨華役) ちょっと2階へ行って……。
加護(文麿役) んあ……。
辻(中澤役) 見せつけてんじゃねーよ! ひっく、おえー。
新垣(ひとみ役) 先生、大丈夫ですか。
辻(中澤役) きぼちわるい……トイレ……。
(再び5人揃う)
紺野(保田役) スクランブルエッグできましたよー。
高橋(安倍役) 待ちくたびれたべさ。
小川(梨華役) はい、文麿さま。あーん。
加護(文麿役) んあ……。
高橋(安倍役) ちょっと、とり過ぎだべ。
新垣(ひとみ役) いいじゃないですか。あまりケチなこと言わないで、安倍さんも、負けずにいっぱい食べましょう。
高橋(安倍役) いや、私はそんな……。
辻(中澤役) 安倍さんもほら。ちょっとしょっぱいね、これ。
- 262 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月20日(木)21時59分43秒
- (やがて次々とうめきながら倒れ始める)
紺野(保田役) 安倍さん、吉澤さん、梨華ちゃん、文麿さん、先生、大丈夫ですか。……って、加護さん、辻さん、どうしたんですか!? 里沙ちゃんも、愛ちゃんも……。
(スタジオ)
石川 いやー、一部苦情がきそうですが、迫真の演技でしたねー。中学生メンバーが一生懸命がんばりました。
矢口 キャハハ。だろ? 気合入れて本物使ったしな。
石川 本物って……もしかして菌も?
矢口 キャハハ。
石川 あはは……。
- 263 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月20日(木)22時00分33秒
ノノノハヽ ンァー
(*´ Д `)<読者へのちょーせんじょーだよー
○、 |) 手がかり?は全部出てるのだー
(_ヽ_)
(忠告:やっぱりマジメに考えてはイケナイ)
- 264 名前:coffee break 投稿日:2002年06月21日(金)21時10分21秒
- ( 0^〜^)
- 265 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月21日(金)21時11分01秒
- 『母なる地球』
- 266 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月21日(金)21時11分48秒
- 辻はおいしそうにチューブをくわえていました。
中にはイチゴ味のシャーベットが入っています。
「辻、あんまり食べ過ぎるとお腹こわすわよ」
「もういいかげんにしなさい」
飯田さんが辻からチューブをとりあげました。
「何するんだよー」
辻は取り戻そうと必死になりましたがかないませんでした。
- 267 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月21日(金)21時12分26秒
- 「もういいよ。これがあるもん」
辻は四つん這いになり、顔を地面につけました。
じゅるじゅるという音が辺りに轟きました。
地面が波打ち、わたしたちは立っていることがやっとです。
辻の体がふくらみはじめました。
辻のお腹がどんどん大きくなり、わたしたちの視界をさえぎりました。
そして代わりに地球がしぼんでいきます。
わたしたちは地球にいることができなくなり、辻の体に飛び移りました。
かつて地球であったものは中味をすべて吸い出され、ぺちゃんこになってしまいました。
- 268 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月21日(金)21時13分04秒
- こうして、わたしたちは新しい地球に住むことになりました。
今も太陽の周りを辻の体がふわふわとまわっていることでしょう。
- 269 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月21日(金)21時13分30秒
- おしまい
- 270 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月21日(金)21時14分00秒
- ( ´D`)<もっと喰わせろ
- 271 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月21日(金)21時14分31秒
- ( 0´〜`)<ある意味うらやましい
- 272 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月24日(月)16時11分07秒
- 加護が再現していた役は、文麿じゃなくて後藤じゃん
- 273 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月24日(月)19時33分41秒
- >>272
「んあ」言ってますが文麿です
- 274 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月26日(水)22時34分44秒
- 『すくらんぶるエッグ』
(つづき)
- 275 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月26日(水)22時35分18秒
- 石川 ……臨時ニュースをお伝えします。○○○○○娘。のメンバー6人が食中毒で緊急入院した模様です。
吉澤 たいへんだね〜。
中澤 のん気やなあ。
石川 話を戻しまして、中澤さん、誰が犯人だと思います?
中澤 そやなあ。事故の線も捨て切れんが、誰かがやったとすると保田のおばあちゃんしかおらへんなあ。やっぱり被害にあったもんは考えられんやろ。
吉澤 フッフッフッ、中澤さん、甘いですね。
石川 ミスター?
- 276 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月26日(水)22時36分37秒
- 吉澤 年をとりましたね。犯人だって食べたいと思って食べたんじゃないかもしれませんよ。
石川 きゃー、中澤さんになんていうことを、ミスター。
中澤 ……かまへん。ゆうてみい、吉澤。
吉澤 犯人じゃないかと矢口さんに疑われていた中澤先生、梨華ちゃん、文麿さんですが、3人ともわずかな時間しか食堂を離れていませんでした。その間に玄関を出て、勝手口から厨房に入って、菌をしかけるなんて不可能です。
石川 それなら中澤さんの言う通り、保田のおばあちゃんがあやしいということですよね。
吉澤 とすると、保田のおばあちゃんは自分がまっさきに疑われることを考えなかったアフォということになります。
石川 あわわわ。
中澤 じゃあ誰がしかけたっちゅうねん、吉澤。
- 277 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月26日(水)22時37分19秒
- 吉澤 ここまで、ブドウ球菌はといた卵にしかけられたと考えれてますが、それは本当でしょうか? 犯人は、塩と醤油を切らしたおばあちゃんが外に出かけることをどうやって知ったのでしょうか? おばあちゃんは勝手口を出て行ったのだから、食堂の人間はそのことを知ることはできませんでした。
石川 中澤さん、お願いですから切れないで。
吉澤 そしてさっき言ったとおり、おばあちゃんは相当のアフォでなければ別の機会を狙うはずです。だからおばあちゃんでもない。といた卵が置いてあればそれは絶好の機会です。それにわたしたちは惑わされてしまった。
石川 え?
吉澤 といた卵の存在を誰も知るよしがなかった。ということは、犯人はといた卵に菌を入れたのではない。つまり菌は初めから卵に入っていた。以上です。
中澤 ちゅうことは事故やったんか。
- 278 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月26日(水)22時38分14秒
- 吉澤 とも言い切れません。犯人が用意したのかもしれない。いや、その疑いが強い。献立を見ると、おばあちゃんは卵料理を作る気がなかった。それは卵がないと思っていたから。ところが冷蔵庫の奥に2個あったのはたまたまでしょうか?
石川 犯人がこっそり奥に入れておいたんですかあ。
中澤 誰がいれたんや? 誰を狙ったんや?
吉澤 慌てないでください、中澤さん。せっかちな人は婚期を逃しますよ。
石川 ひえー。
吉澤 冷蔵庫にしかけたブドウ球菌入りの卵のことを知っているのは犯人だけです。そして犯人だけが、おばあちゃんに料理させることができた。つまり、卵料理を強く頼んだ人間、その人が犯人です。
- 279 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月26日(水)22時38分53秒
- 石川 スクランブルエッグを頼んだ……安倍さん?
吉澤 そうです。保田のおばあちゃんの不正をネタに強引に作らせた彼女が犯人です。
中澤 ちょい待て。菌入りって知ってて自分でも食ったんか?
吉澤 いや、本人はもちろん食べる気はありませんでした。何か理由をつけて自分以外の人間に食べさせようとしていました。その人間を殺そうとして。ところが、梨華ちゃん、文麿さん、中澤先生がいっしょに食事をとることになったのは予想外でした。毒性の強い菌でもみんなに分散してしまっては死に至らしめることができません。そしてみんなにすすめられて、断ることはできなかったのでしょう。
石川 犯人が殺そうとしていたのは……。
吉澤 そう、キュートな帰国子女のひとみさんです。夕食をとる予定だったのは安倍さんとひとみさんです。ということは安倍さんの狙いはひとみさん以外にありえません。
- 280 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月26日(水)22時41分31秒
- 中澤 動機は何や? ○○○○見られたなんてのは承知せえへんで。
吉澤 そこまでパクったりはしません。動機はおそらくこれ(>>119)に関係あります。
石川 ずいぶん上のほうのレスですね。
吉澤 自分の渾身のジョークをけなされ、彼女はずっと殺意をいだいてたんです。この間のハロモニを見ましたか? 「明石家サンバ」を聞いたときの彼女の嫌そうな顔を。
中澤 しょーもなー。
石川 あ、テロップ。それではみなさん、また来週。ちゃお〜。
吉澤 ちゃお〜。いえーい。
中澤 ……ちゃおー。
- 281 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月26日(水)22時42分02秒
- おしまい
- 282 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月26日(水)22時42分34秒
- ( 0´〜`)<……
- 283 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月26日(水)22時43分09秒
- ( 0´〜`)<これでよかったのだろうか……
- 284 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月30日(日)18時54分32秒
- 前の作品からまだ根にもっていたのか・・・
視野が狭すぎました。勉強為直してきます。
- 285 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月30日(日)23時34分16秒
- ( 0´〜`)<いや、そんな……
( 0´〜`)<やっと騒がしい6月が終わった……
- 286 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月02日(火)22時55分41秒
- ( 0´〜`)<週に1,2回書き込んでるんですが
そうじゃない日も書いてるんです
つまりボツ
- 287 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月02日(火)22時57分00秒
- ( 0´〜`)<法月さんの「=Yの悲劇」読みまして
単純でアフォですから
「=よっすぃ〜の悲劇」
なんて安直に思いついたんです
- 288 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月02日(火)22時58分09秒
- ( 0´〜`)<2回書き始めて、うまくできなくて、
それまでにボツになったやつと合体させて
なんとなくできあがりました
- 289 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月02日(火)22時58分55秒
- ( 0´〜`)<なんでこんなことを書くのかというと
なんでだろ?
- 290 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月02日(火)22時59分39秒
- 『=よっすぃ〜の悲劇』
- 291 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月02日(火)23時00分19秒
- はて、どうしてこんなことになったのかというと、いったい何がいけなかったのかというと、頭が混乱してうまくいえそうにない。薄暗い宙をぼんやりと眺めることしかできなかった。
ことの起こりはあれだ、一枚のメモ用紙を誰もいない楽屋で拾ったところからだろう。どこかの商店がサービスに作った薄いメモ用紙で、その商店の名前と電話番号が下のほうに印刷されていた。
灯りにすかしてみると、うっすらと線が見えた。このメモ用紙の上にもう一枚重なっていて、それに書いた跡が残っているのだ。
慎重に鉛筆でメモ用紙を黒く塗っていった。残っている線のところだけ鉛筆の粉がはじかれる。
「=Y」
と読めた。
- 292 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月02日(火)23時01分05秒
- 「ん〜、それはきっと方程式だろうね」
ごっちんの意見にわたしはうなずいた。誰かが学校の宿題に使ったということはおおいに考えられる。楽屋で学校の勉強をしようとするのは中学生のメンバーしか考えられない。
辻の顔を見た。ごくたまに勉強することもあるようだが、ほんとうにごくたまにだ。加護はそこそこまじめにやるみたいだ。
「今日は学校の宿題とかないの?」
「面倒だから持ってこなかったよ」
では五期メンバーだろうか。彼女たちはまだまじめだから、学校の宿題もちゃんとやっているようだ。まじめだからこそ、楽屋に宿題を持ち込むことも、メモ用紙を使うことも、なんだかそぐわない気がした。
にたにたとちょっといやらしい笑みを浮かべながら梨華ちゃんが寄ってきた。
「よっすぃ〜、何やってるの?」
自分でもわからないので答えられなかった。とにかくこの「謎」を解き明かしたいという気持ちに素直に従っているだけだ。
「そんなことより、よっすぃ〜、お買い物しようよ。ねえねえ。かわいい洋服見つけたの。ねえってばあ」
わたしはしがみつく梨華ちゃんをふりほどいた。男にはやらなければいけないことがあるのだ。女だけど。
- 293 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月02日(火)23時01分44秒
- 「ん、とすると、この『=』は『イコール』ではなく、『Y』は『ワイ』じゃないのかもしれない」
およよと床に崩れ落ちる梨華ちゃんを放っておいて、わたしは思索を進めた。
「吉澤、ちょっとその仕打ちはひどくない」
「そうだよ」
保田さんと矢口さんの抗議を軽く受け流した。
「とすると、漢字の『二』かも知れないし、二つ合わせて『¥』を表したかったのかもしれない」
どんどん想像が広がっていった。
なぜわたしはこんなことをしているか。本人ですらはっきりわからないのに、他人に説明のしようもない。だから言い訳はしない。
「もう少し、手がかりがあれば……」
たった二つの記号である。それの指し示す意味は無限にある。河原にある無数の小石の中から宝石を見つけ上げるのに等しく困難なことである。だからこそやりがいも出てくる。
- 294 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月02日(火)23時02分18秒
- 「ん?」
手がかりはある。ここがテレビ局であり、モーニング娘。の楽屋であり、そこに落ちていたという事実がそうだ。
犯人、このメモを書いた人間をそう呼ぶことにしよう。きっと犯人はモーニング娘。に関係のある人間にちがいない。そうでなければならない。
わたしは猟犬だった。獲物の放つわずかなにおいをたよりに、じわじわと追いつめていくのだ。
「かっけー」
思わず口から飛び出したのがこの言葉だった。「ハローモーニング」の一コーナーとして「ゴマキペンギン物語」というある意味感動的なコーナーができ、そこで着るペンギンの着ぐるみを目にしてわたしは胸がいっぱいになった。
ごっちんも楽しそうに魚を振り回していた。
「おねえちゃん、はやくー」
「待っててねー、今行くからねー」
このとき、あることが頭に浮かんだ。
- 295 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月02日(火)23時03分11秒
- どうにもたまらなくなって、次の撮りまでの合間に、わたしはスタジオを着ぐるみのまま抜け出した。こけないよう慎重かつ大胆に歩みを進めた。
ドアのノブをつかんだ。つるつるすべってなかなか回らなかった。ようやく苦労して中に入った。楽屋には誰もいなかった。他のみんなは出て行ったようだ。
うきうきしながらテーブルに近づいた。さて、このテーブルの角に何かがあるはずだと探ろうとすると、ドアのほうからカチャリという音が聞こえた。カギのしまる音だった。
こちらからはカギを回して開けることができない。わたしは懸命にドアをたたいたが、着ぐるみというのは遮音性に優れているという知識を増やしたにすぎなかった。
それならばと窓側に向かおうとしたところ足がもつれた。わたしはみっともなくその場に転がった。仰向けになったわたしは手足をばたばたさせたが、どうあがいても立ち上がることができなかった。
- 296 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月02日(火)23時04分00秒
- でも、今から考えるとたいした思いつきでもなかった。「=」と「Y」をくっつけると、カタカナの「コ」の右上の角に「V」がついた形になる。この楽屋でコの字になっているものは、テーブルだった。「V」はそこに何かがあることを示しているのかもしれないと思ったのだ。
そこに何かがあるかも知れないし、ないかもしれない。何があるのかもわからない。ただわたしは「謎を解く」という過程を楽しみたかっただけだ。
もうそんなことはどうでもよくなってきた。「犯人」なんか最初からいなかった。わたしが勝手に作り上げただけだ。梨華ちゃんに謝らないといけない。
実は謎が一つ増えたのだが、そんなことを忘れてじたばたした。するとだんだん楽しくなってきた。何の意味もない行動だが、それでもいいのだ。自然と笑いがこぼれた。
- 297 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月02日(火)23時04分53秒
- いくらでもそうしていたかった。そういうわけにもいかなかった。
カギを開ける音がした。ドアがゆっくり開いて、愛すべき仲間のペンギンが入ってきた。
「今いくよ〜」
「おねえちゃーん、はやくー」
ペンギンがのしのしと向かってきた。視界が狭すぎた。床に置いてあったバッグにひっかかって、ごっちんは前にどうと倒れた。
「……あはは」
「あはははぁ」
わたしたちは笑った。わたしたちは手足をばたばたさせた。
いつか誰かやってくるだろう。それまでこうしていよう。
カギをかけたのはごっちんだったんだろう。そうでないかもしれない。どうでもいいことだ。
「ほら、おさかなさんだよー」
「おねえちゃーん」
ごっちんが青い魚を空中に放り投げた。ゆっくりと放物線を描いて、重力に従って落ちてきた。わたしは受け取ろうと手を伸ばした。
- 298 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月02日(火)23時05分31秒
- おしまい
- 299 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月02日(火)23時06分14秒
- ( 0´〜`)<ふぅ
- 300 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月02日(火)23時07分03秒
- ( 0´〜`)<やるせない
- 301 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月06日(土)23時53分47秒
- 『永遠の二人』
- 302 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月06日(土)23時54分22秒
- 「よっすぃ〜、太陽が出てる」
「ほんとだ、まぶしいね、梨華ちゃん」
二人は空を見上げました。
「あ、だんだん遠くにいっちゃう」
「追いかけよう」
- 303 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月06日(土)23時54分59秒
- 二人は太陽を追って、西に向かって走り始めました。
山を越え、谷を越え、海を越え、走り続けました。
太陽は見えるものの、なかなか手に届きませんでした。
- 304 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月06日(土)23時55分25秒
- そして二人は永遠になりました。
日が沈まなくて、一日が終わらなかったからです。
- 305 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月06日(土)23時55分58秒
- おしまい
- 306 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月06日(土)23時56分32秒
- ( 0^〜^)
- 307 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月06日(土)23時56分59秒
- ( ^▽^)
- 308 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月08日(月)23時27分54秒
- ( 0´〜`)<な〜んも思いつかないので元ネタばらし(w
コンセプト:ろーらんど・ばるてず
もう一つの:ユリシーズとか駆け込み訴えとかもしもしとか
金の、銀の:どこかの童話
作品:どこかのSF
贋金つくり:ジッドなのにラストはカー
とられた:自分でもわからない
チャイムが:山口雅也かもしれない
熱烈なファン:ストーカーもの
逃げる:京極っぽく(ほんとかよ)
いいことをした:言わずもがなの盗まれた手紙
ナゾナゾ:オデュッセイア
狂おしいほど:通路の人影
今日のわたし:それ逝けちんパンマン
パンと情熱:あまり語りたくない
すくらんぶるエッグ:エジプト十字架の謎
母なる地球:なんだこりゃ
=よっすぃ〜:のりりん
永遠の二人:ドッジスン教授
- 309 名前:ののたん 投稿日:2002年07月09日(火)01時11分10秒
- ( ´D`)ぱくりってゆってますがぜんぜんぱくってないのれす
やっぱりさくしゃたんはすごいれす くふふ…
- 310 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月10日(水)23時04分30秒
- ( 0^〜^)ノ<じゃあ、これでどうだ
- 311 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月10日(水)23時06分48秒
- 『ふれんど』
- 312 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月10日(水)23時07分27秒
- ( ^▽^)<石川は考える
私たちはアイドルなんだから
ファンの期待に応える自分じゃないといけないと
( ^▽^)<というわけで
ファンがどんなことを望んでいるのか
リサーチしないとね
( ´ Д `)<でもそれって主体性がないってことだよね〜
(;^▽^)<えっ
( ´ Д `)<梨華ちゃんは「自分」で勝負することができない
ってことだよね〜
( T▽T)<ひどいよごっちん
え〜んよっすぃ〜
( 0^〜^)<?
( ´ Д `)<……後藤は思う
世の中に流されて自分を見失っちゃいけないよ、と
- 313 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月10日(水)23時08分13秒
- 「……っていうの考えたんだけど、どう?」
「どうって、これどうするの?」
「ハローモーニングでコーナー化できないかなぁって」
「あは、そうだね。カオリに相談してみよっか」
梨華ちゃんとごっちんが楽しそうにおしゃべりをしていた。わたしは少し離れたところでぼーっと見つめるだけだった。なんとなく気後れがした。
わたしたちは同じ年頃ということがあって気があう。シャッフルユニットでいっしょのユニットに入れたことは望外だった。
ところが。
ミュージカルは鬼門だ。特に油断していたわけではなかったのに、また太ってしまった。ごっちんや梨華ちゃんもいくぶんふっくらしたとはいえ、わたしの場合はそれどころではなかった。
そろってセクシー8としてがんばるつもりだったのに、気勢がそがれた。今から必死にダイエットしても、効果が出る頃にはシャッフルユニットの活動は終わってしまう。
わたしは自分を呪い、神を呪った。
- 314 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月10日(水)23時08分56秒
- というわけで、わたしの唯一の味方は悪魔ということになる。
悪魔はこの機会をうかがっていたらしく、ほいほいと現れた。
「自業自得といえばそれまでだが、それだからこそ悪魔にすがる気持ちはよくわかった。で、どうしたいのだ?」
「ごっちんや梨華ちゃんといっしょにいたいだけなんだ」
「いっしょにいればよいではないか」
「……」
「細い二人といると、自分のその姿がいっそう目立ってしまうのを恐れているのだな」
デリカシーのかけらもない悪魔だが、それでも悪魔である。6本指の男はわたしに2粒の丸薬を置いて姿を消した。
わたしはすでに悪魔に魂を売った人間である。ならばこの丸薬を2人に飲ませることをためらってはならない。それが自然の理である。
コーヒーゼリーに混ぜられたそれを、2人はおいしそうに飲み込んだ。
どうやら食欲推進剤だったようだ。2人は辻もびっくりするくらいの食欲を見せ始めた。どのくらい食べたかというと、辻の2倍だといえばその凄みが伝わるだろうか。
- 315 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月10日(水)23時09分48秒
- ごっちんと梨華ちゃんがわたしくらいの体型になれば、ということなのだろう。と思っていたら、2人は太るどころか目に見えて痩せていった。というか、それを超えて衰弱していったというのが正しい。
悪魔が現れた。悪魔はわたしの姿を見て驚いたようだった。
「薬を飲まなかったのか?」
「ごっちんと梨華ちゃんに飲ませるんじゃなかったの?」
「あの薬は痩せ薬だ」
どんな仕組みかはわからないが、あの異常な食欲は痩せ衰えようとする体の危険を感じた本能が命令したものであるらしい。
「それでも間に合わないくらい効き目があるんだね」
「それなのに、ああ、もったいない」
「じゃあなんで2つくれたの。2つあったからごっちんと梨華ちゃんに飲ませたのに」
「1つはおまけだ」
とりあえずわたしは覚えたてのボクシングで悪魔をのすと、解毒剤を悪魔に出させた。
- 316 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月10日(水)23時10分47秒
- 2人は栄養失調で入院していた。目はおちくぼみ、頬がそげていた。
わたしはこっそりと食事の中に薬を入れた。白いおかゆに黒い粒が浮かんで目立つことこの上なかったが、気にしないことにした。2人は黙ってそれを食べた。わたしが何かやったこと程度には感づいていたにちがいない。
「……ごっちん、飯田さんの返事は?」
「ん。何、梨華ちゃん?」
「ほら、あれ、ハロモニでやろうって言ってたコント」
「あ、あれね。TV局の人に話してみるって言ってた」
「いい返事が来るといいな……ね、よっすぃ〜」
「う、うん」
「3人で早くやりたいな……」
ごめん、という一言すらわたしの口から出てこなかった。
- 317 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月10日(水)23時11分19秒
- ( ^▽^)<石川は考える
仲間なんだから13人全員仲良くやりたいな
( ´ Д `)<ふ〜ん、娘。だけで仲良くやれればいいんだ
(;^▽^)<そういうわけじゃないけど……
( ´ Д `)<他のハロプロメンバーは?
他の芸能人はいいの?
世界中の人々とは仲悪くてもいいってことかな?
( T▽T)<ひどいよごっちん
えーんよっすぃ〜
( 0^〜^)<……
( ´ Д `)<後藤は思う
誰とでも仲良くなんてなれやしない
だけど、少なくとも、私たち3人は……
- 318 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月10日(水)23時11分50秒
- おしまい
- 319 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月10日(水)23時12分34秒
- ( 0^〜^)<とうとうやってやったぜ
- 320 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月10日(水)23時13分04秒
- ( 0´〜`)<……
- 321 名前:ののぼん 投稿日:2002年07月10日(水)23時59分52秒
- (; ´D`)さっ…さくしゃしゃん…
- 322 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月13日(土)23時50分04秒
- ( 0´〜`)<失望したろ? ……
- 323 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月13日(土)23時50分55秒
- 『中東の風』
- 324 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月13日(土)23時51分29秒
- インドおよびパキスタン。カシミール紛争。
泥まみれの列車から、頭から布をかぶった一行が降り立った。
一行とはいっても、たったの二人。
「飯田さん、どうするんですか」
「どうするって、やるしかないでしょ」
二人は周囲のいぶかしげな視線を浴びながら、誇りっぽい雑踏に消えた。
- 325 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月13日(土)23時52分19秒
- アフガニスタン。タリバンの恐怖政治、アルカイーダのニューヨークテロ。
隣国との国境。出入りするトラックは厳しいチェックを受ける。
「全員降りろ。荷物を見せろ」
兵士がトラックの荷台に上がった。手前の袋を開けて中を確かめる。
「なんだ。売れなかったのか?」
「どこもかしこも不景気さ。おまけに大麻より覚醒剤のほうが売れ筋なんだ」
「どうするんだ。なんならオレがもらってやってもいいぞ」
「ご冗談を。また別ルート探すよ」
入国許可を受けたトラックがうなりを上げて走り始めた。
生きているものの姿が見えなくなった頃、荷台のいくつかの袋から首が飛び出した。
「ふー、暑い暑い」
「後藤さん、あてはあるんですか」
「ない。とりあえず寝る」
- 326 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月13日(土)23時52分59秒
- イラク。米軍空爆、クルド人弾圧。
ときどき、思い出したかのように援助物資が空から降ってくる。
その日は夕闇にまぎれて落ちてきた。
パラシュートのついた大きな箱がゆっくりと落ちてきた。箱の数は3つ。
箱はいつもよりもかなり大きく、それ以上にパラシュートが大きかった。
乾いた地面にゆっくりと着地した。
気がついた子供が何人か走った。
無造作にパラシュートを外し、ナイフで箱の上面をあけようとした。
いきなり箱が自分で開いた。あけようとした子供がひっくりかえった。
「こら。ナイフがささったらどうするんだ」
「なっち。日本語通じないよ」
「ここどこ?」
「さっき地図見たろ。行き先はもっと南だな」
- 327 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月13日(土)23時54分10秒
- チェチェン。イスラム原理主義、モスクワテロ。
道端に止まっている古びたトラックに、2人の女性が乗っていた。
「ほんとにうまくいくの?」
「まかせなって。憎いロシア人なんかこれでイチコロさ。あんたはカメラ回してな」
1人はビデオカメラを窓の外に向けた。
「違う。これは民間の車だ……来た、ロシアの装甲車だ」
3、2、1、……。
まがまがしい鉄の塊が炎と煙につつまれた。
「やった! さ、ぼやぼやしてないで、さっさとずらかるんだ」
「いや、それが……」
舌打ちをして仲間のほうを見ると、窓の外に奪ったビデオカメラを振り回している、少年のような少女の姿が目に入ってきた。
少女は右手の親指を突き出した。
「ハロー、の・て・せ」
- 328 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月13日(土)23時55分10秒
- イスラエル。パレスチナ勢力のテロ、イスラエル軍の自治区侵攻。
「……やはり警備は厳重だな」
「本気でやる気か」
「ああ。あんな野郎でもオレたちの頭だからな」
「下手したら連れ出す前に議長はやられるぞ」
「それは承知の上だ。そうなればやつは殉教者だ。うまくいけばそれでよし。どっちに転んでも無駄にはならん」
「何人用意した?」
「50人ばかし。何、やつらはオレたちが議長を見限ったと思い込んでる。夜陰にまぎれれば絶対うまくいく」
2人はテントを出た。外には決死の思いの兵士たちが、命令が下るのを緊張の面持ちで待っていた。
「ん? 少し増えていないか」
そばの若い男が立ち上がった。
「は。ぜひ議長奪回作戦に加わりたいという義勇兵が加わりました」
すると兵士たちの中から数人が立ち上がった。
「なんだ。ずいぶん小さく、若いな」
男の目頭が少し熱くなった。
- 329 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月13日(土)23時56分05秒
- ロイター通信(イスラマバード)
大統領選挙戦の最中、再選をめざすムシャラフ大統領が首都イスラマバードで演説を行った。事務所から姿を現すまで時間がかかり、関係者を困惑させていた。
AP通信(カブール)
北部同盟を中心とした新政権は結束を高めるためにも、アルカイーダのビン・ラディンの所在をつきとめることに躍起になっている。アフガニスタン南西部の町に潜伏しているとの情報が入り軍が急襲したが、隠れ家とおぼしき家はもぬけの空だったという。
- 330 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月13日(土)23時57分06秒
- AP通信(テヘラン)
ブッシュ大統領のイラク空爆の恐れが伝えられる中、フセイン大統領がテレビ演説を行った。ことのほか陽気な様子を見せ、右腕を曲げる珍妙なダンスを披露した。
AP通信(タジケント)
ロシア軍がチェチェン大統領府に再び侵攻、プーチン大統領はチェチェン全域を制圧したと発表した。大統領府は砲撃を受け瓦礫の山になった。山岳部に逃げ込んだチェチェン軍はまだかなりの数にのぼる模様。
ロイター通信(カイロ)
パレスチナ人義勇兵と見られる一団がイスラエル軍を襲った。監禁中のアラファト議長奪還を図ったものと思われる。そのほとんどがイスラエル軍の反撃を受け死亡。数人が建物の潜入に成功したとの情報もあるが、イスラエル政府は否定している。
- 331 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月13日(土)23時58分10秒
- 「はい、2年ぶりです、この企画。2003年モームスカレンダーを作ろうー」
スタッフと観客の拍手が続く。
「モームスのみなさんに5つのグループにわかれていただきまして、世界の有名人とピース写真を撮ってきて、それをカレンダーにしちゃおうという企画なんです」
「ぴ〜す!」
石川が笑顔でVサインを作る。3カメアップ。
ここでグループ分けのビデオ映像が流れる。
「というわけで、まずグループ分けをしましょう。この箱からクジをひいてください」
飯田、高橋。
後藤、加護、新垣。
安倍、矢口、辻。
吉澤。
保田、石川、小川、紺野。
「はい、それではみなさん、がんばって有名人のピース写真を撮ってきてください」
- 332 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月13日(土)23時59分03秒
- ビデオ映像終了。スタジオに戻る。
「ではまず最初はパキスタン組です。飯田さん、よろしく」
「はい、私たちは核戦争の危険な香りがただようパキスタンに行ってきました……」
ひきつった顔のムシャラフ大統領と笑顔の飯田、高橋。
ヒゲをそり落とされたビン・ラディンとかみそりを握った後藤たち。
アイーン体操を仲良く踊っているフセイン大統領と安倍たち。
瓦礫の前でバズーカをかつぎながらピースしている吉澤。
真っ青になっているアラファト議長と保田たち。
「あれ〜、よっすぃ〜だけ有名人いないよー」
「だって、チェチェンの司令官やっちゃったんだもん。他に有名人誰もいないかったし」
「あんた結局ロシア軍のほうにまぎれてたの」
- 333 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月13日(土)23時59分38秒
- この5枚の写真と、娘。たち13人の集合写真を合わせて作られたカレンダーが運ばれてくる。
「さあ、これでモームス特製のカレンダーができあがりました」
拍手。
「では、2003年が平和であることを祈りながら、モーニング娘。が歌います。『ザ☆ピース!』」
- 334 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月14日(日)00時00分19秒
- おしまい
- 335 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月14日(日)00時00分54秒
- ( 0´〜`)<……
- 336 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月14日(日)00時01分37秒
- ( 0´〜`)<コンセプトから随分遠くに……
- 337 名前:ののぼん 投稿日:2002年07月14日(日)23時41分44秒
- ( ´D`)ののは作者しゃんの心意気にふれたのれす
これからも応援するのれす!
- 338 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月15日(月)14時40分04秒
- オレ、本あまり読まんから原作知らん。
あったとしても、この作品をその原作者達は書けはしないだろう。
おもろいのに理由はイラン
- 339 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月16日(火)21時37分26秒
- ( 0´〜`)<どもども
( 0´〜`)<いや、面白いものにはきっと理由がありますよ
それが何かはまだわからないんですが
- 340 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月16日(火)21時38分01秒
- 『嫌になるほど、いしよし物語』
- 341 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月16日(火)21時38分38秒
- 梨華はひとみが大好きです。
だからずっと2人っきりでいっしょにいたいと思いました。
「よっすぃ〜、あのね……」
「あ、よっすぃ〜、今度の休みにさあ……」
「いいねえ、ごっちん」
ひとみはニコニコして後藤の話を聞いていました。
邪魔をされて怒った梨華は、後藤を海に沈めました。
- 342 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月16日(火)21時39分58秒
- 「よっすぃ〜、原宿で見つけたんだけど……」
「へ〜、加護、それは……」
ひとみは微笑みながら加護の相手をしました。
梨華は加護を山中に埋めました。
「よっすぃ〜、ソフトクリーム食べにいこうよ」
「いいねえ、のの……」
ひとみは笑顔でOKサインを出しました。
梨華は辻をビルの屋上から突き落としました。
- 343 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月16日(火)21時40分32秒
- 「よっすぃ〜……」
ひとみは誰にでもニコニコと相手します。だから人気者なんでしょう。
梨華はそのたびにライバルを蹴落としていきました。
やがて地球には2人しかいなくなってしまいました。
「よっすぃ〜、やっと2人きりになれたね」
「そうだね、梨華ちゃん」
ひとみは梨華を見て微笑みました。
梨華は、梨華を殺さなければならないと思い、毒を飲み干しました。
- 344 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月16日(火)21時41分02秒
- ひとみはニコニコと微笑んでいました。
- 345 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月16日(火)21時41分37秒
- おしまい
- 346 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月16日(火)21時42分43秒
- ( 0^〜^)<……
- 347 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月16日(火)21時44分40秒
- ( 0´〜`)<我が亡き後に洪水よ起これ……って
- 348 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月16日(火)23時04分49秒
- てことはおいらも梨華たんの手にかかったのか…
本望
- 349 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月19日(金)20時56分40秒
- (0´〜`)
>>348
みんな梨華たんに殺されればいいんだ
- 350 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月19日(金)20時57分10秒
- 『二人』
- 351 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月19日(金)20時57分41秒
- 彼女の様子がおかしいと気づいたときには、もう手遅れになっていたのかもしれません。
- 352 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月19日(金)20時58分14秒
- 例えば楽屋での休憩時間。なんとはなしに何人かが集まって、こそこそと何かを話し合っている様子が頻繁に見られるようになった。その輪の中にわたしが加わることもあれば、そうでないときもある。話の内容は、よく覚えていないからたいしたことではなかったのだろう。ただ、何かがおかしいとみんな思い始めていた。
日常生活でよくある変化なら、気がつくのに時間がかかったとしても、最終的にそれが何かわかっただろう。非合理で理不尽であったからこそ、気づくのが遅かった。頭がその事態を認めることを拒否していたのだ。
わたしがその出来事に遭遇しなければ、永遠に気がつかなかったかもしれない。
- 353 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月19日(金)20時59分16秒
- その日、わたしは一人で楽屋からスタジオに向かっていた。いつもはみんなで揃っていくが、その日ばらばらだった。安倍さんが遅れてくると連絡が入っていた上、年下のメンバーがあらかじめスタジオを見ておきたいと、先に行っていたからだ。
わたしも、どういう風の吹き回しか、見学しておこうかという気になった。その旨を飯田さんに伝えて楽屋を出た。楽屋に残っていたのは飯田さん、矢口さん、保田さん、ごっちん。梨華ちゃんも先に楽屋を出ていた。
楽屋からスタジオまではたいした道のりではない。数分も歩けばたどりつく。だが、この道のりがわたしには迷宮のそれに等しかった。テレビカメラの前、あるいはコンサートの舞台で、他人に見せる顔はほんとうのわたしではない。変身を果たすのには時間がいる。この薄暗い廊下がわたしをわたしでないものにしてしまう。
- 354 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月19日(金)21時00分03秒
- だんだん気持ちが高ぶってくる。緊張感がないやつとよく人から言われるがそんなことはない。わたしの体の中から、異物がこみあげてきた。なんだか体が浮くような感じがする。体重がなくなったかのようだ。
廊下が長い。そう感じる。途中で曲がってはいけない。まっすぐ進め。
「あ、梨華ちゃん」
廊下の角に梨華ちゃんが立ち話していた。相手はどこかの劇団に所属している若手の女優さんだった。映画のロケでいっしょになったのだったら、わたしも知っているはずだ。見覚えがない。TVドラマの収録で知り合った人だろうか。わたしはその人に軽く頭を下げて、通り過ぎた。
二人は楽しそうに話していた。
- 355 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月19日(金)21時00分41秒
- 遅すぎました。しかし、たとえ早めに気がついたとしても、私たちに何ができたのでしょうか。この恐ろしい事実から目をそむけて、何事もなかったかのように放っておいたことでしょう。それなら同じことです。
- 356 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月19日(金)21時01分32秒
- 収録の最中、わたしたちはモニターをじっと見つめる。そこに映っている化け物を目に焼きつける。そこにいるのはわたしではない。別の生き物だ。たとえばテレビの特別番組で、昔の映像が流れると顔を覆って恥ずかしがるわたしたちがいる。これは照れではない。自分の顔をした別の生き物を人に見られることを恐怖しているからだ。それを覚悟してこの世界に入ったというのに。
もうすぐスタジオだ。かすかに光がもれている。やがて光がふくらみ、わたしをつつみこんだ。わたしは真っ白になった。
- 357 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月19日(金)21時02分06秒
- 加護たちがいた。機材で遊んでいる。にぎやかな輪の中に、梨華ちゃんがいた。
わたしは声をかけることができなくなった。さっき廊下の角にいたのは、梨華ちゃんだ。じゃあここいるのは……これも梨華ちゃんだ。梨華ちゃんが二人いる?
いつの間にかわたしを追い越したのだろうか。いや、それはない。そんな気配はなかった。別のルートを梨華ちゃんは進んだのか。楽屋からなら途中で別の行き方もできるが、あそこからスタジオまでは一本道だ。わざわざ遠回りして追い越す理由があるのだろうか。
梨華ちゃんは年下の仲間にからかわれて、眉をひそめていた。少しつつけばそのまま崩れ落ちそうだ。昔のネガティブな彼女にまであと一歩である。
- 358 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月19日(金)21時02分41秒
- 論理的に考えるならば、廊下にいた梨華ちゃんとスタジオにいる梨華ちゃんがそれぞれ本物なら、梨華ちゃんが二人いるということだ。いくら不合理でもそう考えなければならない。
今までなんとなく感じていた違和感の正体はこれだったのだ。ネガティブ梨華ちゃんとポジティブ梨華ちゃん。笑い話としてからかってきたが、この二種類の彼女は比喩ではなく実体だったのだ。
おそらく、ネガティブ梨華ちゃんがオリジナルだ。ポジティブでありたいという気持ちが強すぎて、もう一人のポジティブな梨華ちゃんが生じたのだろう。
- 359 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月19日(金)21時03分11秒
- そう、彼女は二人いたんです。そう考えないと説明がつきません。私だって信じたくありません。でも、この目で見たんです。
- 360 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月19日(金)21時03分47秒
- 「ちょっと待った。わけがわからないよ」
「だから飯田さん、二人いたんですよ。ほんとですって。石川は嘘つきません」
「信じらんないな」
保田さんまで私の言うことを信じてくれません。
「いいから、最初から話してみてよ」
飯田さんにうながされて、私はもう一度同じ話をくりかえすことにしました。
「楽屋からスタジオに向かって歩いていたら、知り合いの女優さんにばったり出会ったんです。それで少しおしゃべりしていたら、よっすぃ〜がやってきました」
「それから?」
「よっすぃ〜は通り過ぎちゃいました。私はその人と離れてよっすぃ〜を追いかけました。よっすぃ〜の後姿が見えたので、声をかけようとしたら、よっすぃ〜がどんどん薄くなっていったんです」
「まずそれが信じらんない」
「圭ちゃん。いいから続けて」
- 361 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月19日(金)21時04分21秒
- 「私、夢でも見てるんだろうかと頬をつねりました。痛かったので夢じゃないです。わけがわからなくなって、スタジオに行ってみました。よっすぃ〜はいませんでした。薄くなっていったのが私の見間違えだとしても、それなら先に着いてるはずです」
「確かに?」
「ほんとです。ねえ、加護ちゃん?」
私は加護ちゃんに同意を求めました。
「梨華ちゃんの言うとおりだよ。梨華ちゃんが先に来た」
「ほら。それでスタジオでみんなと遊んでいたら、よっすぃ〜が来ました。私が入った入り口とは別の入り口から来たんです」
「うーん」
「あそこから入ってきたってことは、楽屋を出て、私が立ち話をしていたところに来る前に曲がらないといけません。ということは、私の前を通り過ぎたよっすぃ〜と、そこに来る前に曲がっていったよっすぃ〜がいるんです。二人いるんです」
- 362 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月19日(金)21時04分57秒
- 私は言葉を切りました。みんなしかめっつらをしています。
「……二重人格というのは聞いたことがあるけど、あれって体まで二つになったっけ?」
「ドッペルなんとかだっけ? 関係あるのかな」
「石川の話が本当だとして、どうしてそんなことがありえるのか、説明がつかない」
「それもよっすぃ〜にねえ」
「ちょっと前から、何かがおかしいとは感じてたんだけど」
「これだったのかなあ。わけわかんねーよ」
飯田さんと矢口さんがぼそぼそと話し合ってました。私だって信じられません。どうしたらいいのかわかりません。
- 363 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月19日(金)21時05分37秒
- ただ、一つだけ後悔していることがあります。よっすぃ〜がスタジオに入ってきたとき、瞬時に私はよっすぃ〜が二人いると直感しました。そしてその思いに恐怖したのです。もう一人のよっすぃ〜の顔を見て、得体のしれない化け物を見たような目つきで、よっすぃ〜を見てしまったんです。
それはしてはいけないことでした。よっすぃ〜は変な病気にかかっているのかも知れません。でも、よっすぃ〜はよっすぃ〜です。それだけは間違いのないことなんです。
ベッドの上で、よっすぃ〜はなんだか満足そうな寝顔を浮かべていました。
- 364 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月19日(金)21時06分21秒
- おしまい
- 365 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月19日(金)21時06分55秒
- ( 0´〜`)
- 366 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月19日(金)21時07分33秒
- ( 0´〜`)<窓際に仕事させんなよ
- 367 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月22日(月)19時54分50秒
- ( 0´〜`)<一応結論が出たのでこれでおしまいです
( 0´〜`)<読んでくれたみなさんに神のご加護がありますように
( 0´〜`) <もし神がいるならば
- 368 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月28日(日)19時57分11秒
- お疲れさまでした。で、
愛蘭〜って結局何?
あと次はどこでやるんですか
- 369 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月28日(日)23時11分13秒
- ( 0´〜`)
アイルランドのことです
対ドイツ戦見に行ってしびれました
( 0´〜`)
もはやない、Nevermore
- 370 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月04日(日)19時10分36秒
- マジで!出島!マジデジマ!!
- 371 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月04日(日)21時49分27秒
- ( 0´〜`)
あ、いや、ですから、青板に、Nevermore
- 372 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月13日(火)06時41分23秒
- ( 0^〜^)
- 373 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月03日(火)21時33分07秒
- ( ^▽^)さて
- 374 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月05日(木)22時42分06秒
- やってはいけない感想
( 0´〜`)
さて、森板の短編「baby blue」を批評してみたわけですが、最悪なのは「私だったらこうしてたのに」というたぐいのものです。
( 0´〜`)
この短編、石川が矢口に電話したところで終わっています。ここで終わってしまったため、上のほうで述べた「必要性」と「交換不可能性」のうち、後者を満たすことができませんでした。そのため「娘。でなくたってかまわない」と思う人が出てくるかもしれません。
そこで……。
- 375 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月05日(木)22時42分58秒
- ( 0´〜`)
案その1
次々と娘。たちに北へ向かわせる。十三人目(誰でもよいが、飯田・安倍・保田・後藤・五期メンバーなら話が作りやすい)が携帯を見つめながら、「誰に電話したらいいんだろう」で終わる。
案その2
その1を発展させて、娘。のメンバーが1億2千万人にまで膨れあがっていたので、民族大移動が起こる。
案その3
……。
- 376 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月05日(木)22時43分40秒
- ( 0´〜`)
こんなことやっていいのでしょうか。すでに書かれた作品は、それでもう確定しています。それを存在しない物語と比較してどうのこうの言うのは間違っていると思います。
( 0´〜`)
企画板の一発目は、短編集に投稿された「ANGEL FACE」を書き直してみよう、というものでした。結核のくだりがどうのこうのとか、瑣末な瑕疵にすぎません。そしてオリジナルと似たような作品をならべられても、それらがオリジナルを超えることは、原理的にありえません。
そこでわたしは「いいわけ」を書いて投稿しました。これはオリジナルが存在しないとわけがわからない話です。全てをオリジナルに依拠しています。そう書かざるをえなかったからです。
- 377 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月05日(木)22時44分21秒
- ( 0´〜`)
感想書くのも難しいですね。
だからといって「おもしろかった」「萌えた」だけじゃ作者が気の毒です。
どこがおもしろかったのか、どこがつまらなかったのか、これを書いてあげると作者は大喜びすることでしょう。
( 0´〜`)
あ、いや、別にわたしのスレに感想くれって言ってるわけじゃありませんよ。
( ^▽^)<「感想くれ」って暗に言ってるんですかね〜?
- 378 名前:読者 投稿日:2002年09月08日(日)15時05分15秒
- すいませんでした。
- 379 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月09日(月)20時31分42秒
- ( 0^〜^)???
- 380 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月09日(月)20時34分26秒
- 感想・批評するときの心得
( 0^〜^)
批評するときには、ありもしない物語と比べてはいけません。
どこがおもしろかったのか、どこがおもしろくなかったのか、なぜそういうことになってしまったのかを明らかにするのが批評です。
また、批評・感想は「批評するほうにとって、これこれの意味を持つ」というものにすぎません。
批評されたほうは、「それならお前が書いてみろ」「お前はいったいどうなんだ」と言ってはなりません。批評・感想は自分のことは棚に上げて行うものなのです。
( 0^〜^)
と、煙幕を張ってから、以下の短編を批評してみましょう。
http://www.metroports.com/test/read.cgi/morning/1019895988/102-107
- 381 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月09日(月)20時35分03秒
- ( 0^〜^)
あらすじ:ドラマの演技でリアリティを求めた加護は、死体役の安倍と吉澤を本物の死体にしてしまう。
( 0^〜^)
では技術的な話から、簡単に。
まず視点は三人称ですが加護の一人称といっていいでしょう。この話では加護以外の視点にはなりえません。配役は、主人公に加護が選ばれたのは妥当なところ。上昇志向の持ち主でなければなりません。紺野もありえるところ。
文章は簡潔で、無駄なところはありません。
先に、加護の一人称とほぼ同じと書いたのは、『嬉しさのあまり立ちくらみがする』などの記述から。ところがその前の『素人目には、ほぼ互角に見えた』というのはどうでしょう。加護の視点とは思えません。
これを考えると、『(絶対大丈夫や、リアリティなら負ける気がせーへんもん)』のかっこはあったほうがいいのかどうか。
- 382 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月09日(月)20時35分34秒
- ( 0^〜^)
この話では、リアルを求めた加護が死体役を本物にするという、アンリアルなところがおかしさを生み出そうとしています。だから「いつ殺したんだ」「加護の演技自体はリアルとは言えないないんじゃないか」という批判は、微妙ながら相当ではありません。
リアルとかアンリアルとか、その区別を作者は笑い飛ばそうとしているわけです。冒頭から察して、この推理ドラマの脚本自体リアリティがなさそうです。なのにリアルを求める監督。リアルについての観念が倒錯しているのであり、火曜サスペンスドラマや「利家とまつ」を「ウソくせー」と笑っているわたしたちをも笑っているのです。
( 0^〜^)
よく、飼育の小説で「この小説はアンリアルです」とか「リアルものです」とか見られますが、リアルなんかどこにもありません。実際のわたしたちの生活世界ですら、リアルであるという保証はありません。(以下持論の妄想論が続く)
このような短編をいくつか書いていくと、作者は行き詰まるときが出てくるでしょう。そのとき、萌え話でいいやと路線を変えるか、それを乗り越えたものを書くのか、興味深いところです。
- 383 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月09日(月)20時36分10秒
- ( 0^〜^)
とまあ、本文より字数の多そうな批評になりました。作者の参考になったかどうか、読みが正しいのかどうかは、わたしの知ったことではありません。「わたしにとって……」にすぎないからです。
- 384 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月11日(水)06時01分28秒
- ( ゜皿 ゜)
存分に参考になりました。
一つ言い訳をするとすれば、物語が倒錯する前に作者自体が倒錯していたことですが、それを今更言っても何も始まりません。
こんな機会でないと作者さんの頭の中を覗けないので、いい経験になりました。
ノ( ゜皿 ゜)ノ
覗きはタイーホものですが、今回は作者さん自ら披露してくれたのでセーフでしょう。
- 385 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月11日(水)19時30分01秒
- ( 0^〜^)
>>384
またこりずに貼っつけてください
- 386 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月11日(水)19時31分12秒
- 忘れられたもの
( 0^〜^)
娘。小説を保存しているサイトがいくつかあります。その一つのとあるサイトで自分の書いたやつがありました。恥ずかすぃ。
そのサイトは主人公別に検索できるようになっていまして、いろいろ眺めてみました。いろいろ懐かしい小説が見つけられました。
( 0^〜^)
後藤のところをクリックします。今や古典となったいちごま小説がずらりと並びます。そんな中、「保真希澤探偵事務所」の文字が。保真希澤探偵事務所とは、伝説のプッチモニダイバーで発表されたラジオドラマです。聞く者の脳みそをとろけさせました。
はてどこかで見たことがあるぞと思い、その小説を読んでみると、自分が書いたものでした。すっかり忘れていました。
忌まわしい思い出。
- 387 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月11日(水)19時31分56秒
- ( 0^〜^)
書いたのはちょうど一年前。飼育の板がやたらと増えた時期でした。
忌まわしい理由その1
わたしはふだんから「必要性」と「交換不可能性」を念頭においています。いわゆる「娘。が出てくる必然性」です。なのに、この小説はそんなことをまったく無視しています。言行不一致の好例。ただ娘。の名前がついているというだけの探偵小説。
忌まわしい理由その2
レスがほとんどつきませんでした。一話めは犯人あての趣向なのでいくつかありましたが、それ以降レスなし。「Nevermore」も90レスほど反応なしでへこんでいますが、このときもひどかったのです。もうこの手の話は書くまいと、そのまま倉庫入りとなりました。
- 388 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月11日(水)19時32分36秒
- ( 0^〜^)
でも、あの頃は幸せでした。
懐古趣味はよくない、でも実際そうでした。
今書いてみたら、どんなものができるんだろう?
( 0^〜^)
というわけで、実験実験。
- 389 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月12日(木)17時55分40秒
- 一応青板の183でレスつけたんですが言葉が足りませんでしたね。
ここの作者さんの作品にレスをつけるとき自分はあまり言葉を知らないので
作者さんが読み手に求めているものと的外れなレスをつけてしまったらどうしようとくだらない心配をしてしまいます。
そうさせる雰囲気が自分個人には作者さんの作品にはあるのです。
ですが作者さんの作品は好きなので黙々と読んでいます。頑張って下さい。
- 390 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月12日(木)19時01分50秒
- 中澤家の一族、今全部読んだ。感想はミステリー好きのよっすぃーがおもろかった事と
リアルタイムで読んでみたかった。
作者さんの最も好きなミステリー作家は誰ですか、あと作品は?
- 391 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月12日(木)20時04分32秒
- ( 0^〜^)
>>389
「後藤が……」じゃ言葉足りなすぎ!
読みが合ってる合ってないが問題じゃないのは上のほうに書いてある通りです。
みなさんがどのように読んでいるかがはげすぃく知りたい。
>>390
あれは駄作です。どうやっても弁解の余地なしです。
笠井潔の「哲学者の密室」が好きです。
- 392 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月14日(土)21時45分30秒
- ( 0´〜`)
微妙なのかYO!
- 393 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月16日(月)00時43分22秒
- ( 0´〜`)
- 394 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月18日(水)21時53分50秒
- ( 0´〜`)
短編集なんか……
( ^▽^)
だからってねぇ
- 395 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月18日(水)21時55分05秒
- 題名まで意味不明
( 0^〜^)
ちょっと長めのお話を批評してみましょう。
そのお話は「LOVE涙色」(赤板)。
衝撃の問題作です。
( 0^〜^)
あらすじ
紅白を辞退したモーニング娘。は札幌ドームでカウントダウンライブを行う。
- 396 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月18日(水)21時55分37秒
- ( 0^〜^)
――――安倍「もう男なんて信じないと思ってた―」―――――
というシリアスな出だしです。ところがこの一文、なんだかあやしい。セリフ形式のようですが、前後に線を入れている。さらに「」の中にも線があります。
さらに読み進めると、ちゃんとした地の文があるのに、『なつみ「どうしよう・・・このままじゃ帰れないよぉ・・・」』と戯曲のようです。地の文はト書きのはんちゅうを超えています。
雨やどりをする少女に傘をあげる少年、というのはベタなシーンですが、それはひとまず置いといて、『モーヲタとして当たり前だよ』に読者はぶっとびます。男は香取慎吾でしかもモーヲタという、イラクでもやらないような多正面作戦に出ています。
( 0^〜^)
ジャニと娘。の恋愛ものかと思いきや、話はそれを忘却の彼方に追いやります。
メロンやらシェキドルやらぞねやら猪木やらが出てきた意味ありげな発言をしますが、意味がありそうなだけです。
この話はいったいなんなのでしょうか?
ネタという言葉におさまりきらない何かがあります。
- 397 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月18日(水)21時56分07秒
- ( 0^〜^)
おそらく答えは文章にあります。途中にあるネタらしきもの(バキとか19とか)は目くらましです。
『つんく「紺野が早い時間からここに来て単独練習してるのだ」』
『娘。達は会場となる札幌ドームに来ていた。
そこでは、娘。達がリハーサルを行っていた。』
わざとやってるのか、そうでないのか、わかりかねます。
『つんく「そこで、明日は会場に5分前には到着できるようにしましょう」
圭「わかりました。」』
『娘。達は掛け声を掛けると手を離した。これで娘。達は一致団結した。』
( 0^〜^)
この文章は、はっきりいってムダだらけです。
『慎吾はそれを受け取ってこう言った。
慎吾「わかりました。」』
シナリオ形式なんだから、『こう言った』なんて書く必要はまったくありません。
『つんく「外で大暴れしているぞ」
つんくは言った。
するとなつみ達は外に出た。』
なんでしょう、この『すると』。文法的に間違いではありません。でも日本語じゃないです。
- 398 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月18日(水)21時57分19秒
- ( 0^〜^)
例えばムダの多い過剰な文章書きというと、カヲル氏を思い浮かべます。しかし、カオル氏のそれはある程度計算されたものです。しかしこの文章は違う。なにやら娘。に事件が起こったらしいのですが、それを書かないで、重苦しい雰囲気を保っています。でも文章が変なのでアンバランス。
娘。小説は人工の産物です。人工物より天然物のほうが価値があると、一般に考えられています。そのかわり、人工の物は美しさを持っています。オリジナルじゃない、自然のものじゃないということとひきかえに手にした美しさ。
これが免罪符となります。現実はけして美しくない。人工の、虚構の世界は本物じゃないけれど、だからこそ美しさを持っていいのだと。
- 399 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月18日(水)21時57分55秒
- ( 0^〜^)
この小説はそんな美しさを拒否しています。現実は美しくない、だから虚構は美しい世界でなければならないという倒錯を受け入れません(ここでいう「美しさ」は「きれい汚い」を意味しているのではありません)。
汚いことを描いた娘。小説はいっぱいあります。しかし、その小説そのものを汚した作者はいませんでした。どこかで秩序、調和を取ろうと図っていました。
この小説は、そんな小説群に対するアンチノベルとして、それだけの意味で傑作と言えるでしょう。
- 400 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月18日(水)21時58分45秒
- ( 0^〜^)
『真希「何言ってるの?信じらんない!」』
- 401 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月26日(木)21時11分01秒
- 読者の唯一の義務
( 0^〜^)
さて、忌むべき短編バトルも第九回が終了しました。お題は「卒業・改編」というたいへん難しいものでした。
その中から「REVERSE」を批評してみます。
( 0^〜^)
あらすじ
市井を「手に入れたい」ために後藤は娘。を卒業してソロ活動することを決めるがうまくいかない。そこでやめるのをやめるが、市井に刺されてしまう。そこでさかのぼって娘。に入ること自体をやめて一ファンとなるが、包丁で刺されてしまう。
- 402 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月26日(木)21時12分15秒
- ( 0^〜^)
まずこの短編の構造をまとめてみましょう。
1・((2・3・4・5・6)・7・(8・9・10・11・12)・13・
(14・15・16・17・18・19・20)・21)・(22・23・24)
- 403 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月26日(木)21時12分52秒
- ( 0^〜^)
数字は各レスの番号です。1の「あたし」は運命に抗うことを決意しています。この「あたし」は後藤であるかのように見えますが、最後まで読むと市井であるともいえます。
次の2〜6で、後藤は市井と同じく卒業することで市井を手に入れようとしますが、市井は相手をしてくれません。そこでゲームブックやアドベンチャーゲームの分岐点よろしく、後藤は別の選択肢を選ぶことを7で述べています。
8〜12で後藤は卒業するのをとりやめます。しつこくつきまとう後藤に嫌気がさした市井が手首を切ったことが示唆されています。何もわかっていない後藤は市井に果物ナイフで刺されてしまいます。
そこで後藤は過去にさかのぼり、娘。にすらなることをやめてしまいます(13)。14〜20にて、ラジオ番組にしつこく葉書を出し、ストーカー行為までして市井に近づきますが、結局包丁で刺されてしまいます。
21で後藤はどうしたらいいのかわからなくなったことを吐露します。22〜24で視点は市井に切り替わり、なぜ後藤をナイフで刺したのかその理由を明かして、物語が終わります。
- 404 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月26日(木)21時13分51秒
- ( 0^〜^)
上の()の区切りが果たして正しいのかどうか、見てみましょう。
後藤は三つの選択をしたのですが、一つ目が他の二つと違うところは刺されてないところです。すると一つ目と二つ目の運命はつながっているという見方もありますが、一日でやめるのをやめることはできないでしょうから、別々の運命とみたほうがいいようです。
( 0^〜^)
問題となるのは最後の22〜24です。視点が市井になります。厳密に言えば、22と(23・24)は区別しなくてはいけません。22では市井が二人の刑事の会話を聞いたといえないこともありませんが、22の最後の空白行が一行多いですから、別視点とするべきでしょう。
22はあまり美しくありません。視点がころころ変わるのは読者に無用の混乱をまねきますし、1が市井と後藤どちらの視点かはっきりしないという効果を考慮するなら、22は不要となります。
- 405 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月26日(木)21時14分29秒
- ( 0^〜^)
23のメールについて、その内容は5です。そしてナイフで刺したという自白から、現実の出来事は8〜12であり、14〜20は意識不明となった後藤の妄想の世界ということになります。
2〜6については、現実なのか妄想なのか、前述のとおり妄想としたいのですがどうなんでしょう。妄想が意識不明になってからでしょうから、現実のできごと? でもやはり一日で卒業を撤回できたとは考えにくいです。
( 0^〜^)
(ちょいと横道)
ここの市井は一見決定論者のようです。「未来を変えることはできない」。これは人間の自由意思の否定です。
作者はこれに一文を加えて論理の顛倒を図ります。「過去を変えることができないのなら(のに)、未来を変えることはできない」。そしてこの命題の対偶(に見えるもの)をとります。「未来を変えるには、過去を変えなければならない」。
「AならばB」の対偶は「BでないならばAでない」です。最初の命題は「notAならばnotB」ですから、対偶は「BならばA」です。「未来を変えることができるなら、過去を変えることができる」なのに、この市井は誤った結論を出してしまったのです。
(横道終わり)
- 406 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月26日(木)21時15分24秒
- ( 0^〜^)
物語の構造から考えると、混乱が生じています。後藤も市井も未来を変えるために過去を変えようとしました(求めるものは正反対ですが)。だからこそ1がどっちの独白かわからないという効果を生み出しています。
これをもっと徹底するべきでした。何が本当なのか、現実なのか、正しいのかわからない世界へ。
ナイフのくだりから、後藤が卒業を止め、市井が自殺を図り、ナイフで後藤がさされるのが現実ということがわかります。現実世界の後藤は卒業しているのですから、この物語内の後藤が卒業していないとはっきりさせてしまうのは、もはや目的が不明です。この物語世界は現実世界とこの時点でリンクが途切れています。ならば、物語世界内の現実と虚構(妄想)も断ち切るべきでした。
- 407 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月26日(木)21時15分57秒
- ( 0^〜^)
2〜6の後藤も、14〜20の後藤も、ナイフで刺されてしまう。そして最後の市井の自白はどの事件を自供しているのかわからない。こうして読者は不安になり、地面が不安定になって足元がぐらついてしまう。こうすれば1と相乗効果が生じたことでしょう。
何が現実で、正しいことなのかはっきりさせてくれ、という読者の叫びは、作者には無効です。読者には想像する力があって、それを行使しなくてはいけないのですから。
- 408 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月27日(金)18時40分41秒
- 読者を安心させるな
(#0^〜^)
先の感想、読み間違ってました。訂正します。恥ずかすぃ。
三つのストーリーがありますが、実際に起こった出来事は一番目のものです。自白にある「メール」が出てくるのはこれだけだからです。三つの筋で「なんで市井が包丁持ち歩いてるんだよ」と不審に思ったのですが、作者の親切心から出た瑕疵だったのです。
( 0^〜^)
1レス目の「あたし」は市井であると読み取れそうですが、市井ではありえません。なぜなら市井には選べる選択肢がないからです。
二つ目と三つ目の筋はなんだったのだという読者の疑問が出てきそうです。意識不明に陥った後藤の妄想という考え方もありますが、物語の組み立てからすると、そんな疑問を起こさせること自体が問題です。
- 409 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月27日(金)18時41分19秒
- ( 0^〜^)
物語は流れは以下のとおりとなります。
A(現実の世界)
A’(卒業しなかった世界)
A’’(娘。にならなかった世界)
A(現実の世界)
もしA’とA’’が意識不明となった後藤の妄想だとすると、1レス目は2〜6より後の思索ということになります。これも混乱の元となっています。
( 0^〜^)
市井は未来を変えるために過去を変えようとしました。これは完全な倒錯です。この倒錯を明らかにするためにも、どれが本当の世界かわからないような構成のほうが望ましいのです。
A(卒業する世界)
B(卒業しない世界)
C(娘。にならなかった世界)
D(市井の自白)
Dの告白はA〜Cのいったいどれなのか。どう転んでも後藤は刺されてしまう。人生に選択肢などないのであり、過去を変えることもできない、という作者の意図どおりの主張がはっきりします。
- 410 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月27日(金)18時41分54秒
- ( 0^〜^)
いやあ、惜すぃことです。
- 411 名前:名無し娘。 投稿日:2002年10月20日(日)11時20分33秒
- でも僕は保真希澤が好きだった。
作者さんは駄作って言ってたけど「はーどぼいるど」で相手の心を
大事にする強がりなごとーの行動が胸を打ったのはどうしようもない事実だし。
- 412 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月22日(火)23時18分46秒
- ( 0^〜^)
ありがと
adieu
- 413 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月29日(火)21時01分38秒
- ルビコンを渡れ
( 0^〜^)
評論(みたいなもの)はまだまだ続けるYO!
ということで、白板「いしよし畑」の批評です。
http://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/read.cgi/dream/1034944106/
( 0^〜^)
現在二つの短編がありますが、量は関係なく質的に二番目の短編がすばらしいです。どこかで見たことのある話なのは宿命ですのでしょうがないのですが、ちと長すぎるのがちょっとした瑕疵ですが。最初の部分は思い切って省いてしまっても差し障りはありません。
何がすばらしいって、最後の吉澤のセリフ「ウザイなぁ」です。この一言によって、どこにでもある、交換可能(娘。どうしの交換のみならず、すべての人間と交換が可能)な物語が、吉澤と石川でなければならない物語に変貌したからです。
- 414 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月29日(火)21時02分19秒
- ( 0^〜^)
それが最後の最後になって明らかになったので、虚をつかれました。なかなかやるな。
- 415 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月29日(火)21時03分04秒
- ( 0^〜^)
もう一つの特徴は、短編の外枠にもう一つの虚構の枠があることです。これについては評価保留。娘。小説の虚構である限り、この外側の虚構にも必然性の罠から逃れることはできません。今のところその必然性は強く表れていませんが、今後の楽しみにとっておきましょう。
( 0^〜^)
この外側の虚構のおもしろさは、読者をも虚構にまきこむ可能性をはらんでいます。レスをすれば、その読者は物語に取り込まれてしまうのです。ルビコンを渡ったのです。
この作者、短編書きということ以外にもわたしと似ているところがあるので、勝手に親近感をいだいています。あと16か17の短編が読めたら嬉しいなあ。
- 416 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月30日(水)20時21分15秒
- もう作品は書かれないのでしょうか?
作者さんの毒と笑いと愛の入った作品が好きだったので残念です。
- 417 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月31日(木)22時47分08秒
- ( 0´〜`)
書きたくても書けないんですよ
- 418 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月01日(金)00時03分53秒
- そこをなんとか。
ゆっくり待ってます。
- 419 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月19日(火)19時52分06秒
- 死に至る病
( 0^〜^)
金板「うぜーやつら」分析(ネタばれするよ)。
あらすじ:とある田舎町でコンサートが開かれる。会場行きの鉄道が横転する事故があった。車両をこじあけると、負傷した乗客の中から刺殺体が出てくる。その手には吉澤ひとみのピンクの耳当てが握られていた。
- 420 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月19日(火)19時52分46秒
- ( 0^〜^)
この話は推理小説の形をとっています。探偵役は吉澤ひとみ。吉澤は、仲間を警察の目からそらすために事件の真相をつかもうとします。探偵する動機が示されています。
ところが、殺人事件の他にも何かたくらみがあったようです。殺人と合わせてその数十一。語り手はウソをついてはいけないというお約束から、吉澤はこれらに関与していないと見るべきでしょう。後藤を含めた十二人が容疑者です。
( 0^〜^)
これだけ企みが重なると、誰がどれをやったかなんてどうでもいいと吉澤は結論づけます。正統な推理物を期待していた読者はがっかりですね。
動機はキモいヲタを憎んでということでいいでしょう。自分たちの前でせいいっぱい応援してくれるファンが、裏では汚らしいAAを貼ったり、自分たちの出てくるおぞましい官能小説を書いたり、「しね」言ったりしてるのですから。そして吉澤も同じ動機で自分の手を血に染めたところで終わります。
- 421 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月19日(火)19時53分49秒
- ( 0^〜^)
文章で気になるところが一つ。誤字はありうるでしょう。しかし以下の部分はどうでしょうか。
「もしわたしたちの中に犯人がいるとして、なんでそんな『なんだよ』足がつくものを持っていたんだろう?」
この『』はどのような意味があるのでしょうか。打ち間違い? こういうのがいくつかありそうです。
- 422 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月19日(火)19時54分38秒
- ( 0^〜^)
題名は「うぜーやつら」。どうやらヲタたちのことを指しているようです。主人公の吉澤も、警察官の呼び方を「男」から「こいつ」「豚」へと変化させています。
「キモいヲタ」と「娘。」の関係。置きかえましょう。「俺×娘。小説」と「一般読者(読者としての作者含む)」。M-SEEKに限らず「俺×娘。小説」は受け入れにくい様子です。一般に、俺=作者の妄想を見せつけられるから、というのが理由のようです。本当でしょうか?
( 0^〜^)
2chの娘。関係の板は隔離板です。他の人間から忌み嫌われている。キモがられているのです。そんなキモい人間が、「この小説はキモい」などと非難する。
とあるチャットで「一人称の話は、作者が娘。になりきるんでしょう?」と発言がありました。うーん。キモいよなあ。
俺=作者の妄想じゃないんです。俺=ヲタの妄想。そんなヲタの妄想を暴かれたから不快になるのです。
自覚したほうが病の治りは早いです。わたしは治す気ありませんが。あーうざい。
- 423 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月19日(火)20時49分45秒
- 前もココで言ったけど。「俺×娘。小説」好きなんだよなぁ。
短編集で読みたかったなぁ。
作者さんの次作品で「キモいやつら」希望。
こんな事言ってる自分も、あーキモい。
- 424 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月20日(水)20時51分38秒
- ( 0´〜`)
>>423 ごめんね
懺悔
上でさも他人事のように書きましたが、金板のうぜ〜はわたしです。
わたしです? 名前無いのに? わたしが書いた?
とにかく、わたしです。自演です。ごめんなさい。
- 425 名前:423 投稿日:2002年11月21日(木)13時18分47秒
- やられたー!!名無し娘。で書き込んでたよ。
今までの批評はこれをやるための伏線だったのかな?
いしよし畑は違うよね?
だめだ全てが疑わしくなってきた。カール・マルクスだ。
昔、名無し読者で書き込んでんのは読者と作者の境界を無くすためとか言ってたけど
ココまでやるとは思わなかった。やられた方としてはかなり恥ずかしい気分です。
でもこんな事するアンタが好きだ!!
- 426 名前:423 投稿日:2002年11月22日(金)23時58分38秒
- ちきしょー!!
あのスレまで見ていたのかよぉ。あそこで「リアルって何?」って聞いたの漏れだよー!
くそっ、最近なんだか作者さんの手の平の上で遊ばれてる気がする・・・
でもこれは作者さんの小説の中の住人に成れったて事で喜んでい良いのか?
- 427 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月24日(日)23時04分39秒
- >425,426
あなたが勝手に手のひらの上で転んでるようにも見えます。
「作者さんの小説」というのは誤りですね。誰の所有物でもないんです。
- 428 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月25日(月)12時30分32秒
- おっ、なるほど。
- 429 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月29日(金)22時08分19秒
- 作者と読者の了解事項
90 名前 : 名無しさん 投稿日 : 2002年11月29日(金)19時35分15秒
市井の台詞って何か違和感がある。・・・ような気がしてました。
まだオレがこの世界知ってから1年ぐらいで、その前は「うたばん」の娘。
しか知らない厨房だからなんだろうけど、市井って普段から「○○っすよ!」
とかみたいな男言葉って使ってたんですか?
92 名前 : 名無しさん 投稿日 : 2002年11月29日(金)21時42分13秒
>>90
後藤加入してから脱退までだからホント短い期間だけど、かーなり男っぽかったですよ。
後藤の事「お前可愛いなぁマジで」とか言ってたくらいですから。
「〜っす」は口癖でした。
知らない人は小説読んでも違和感覚えるだろうなと思う。ガンガレ・・としか言いようが・・。
- 430 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月29日(金)22時14分45秒
- ( 0^〜^)
娘。小説を愉しむには娘。のことを知らなくてはならない。
とかいう命題ほどうさんくさいものはありません。
( 0^〜^)
だって、この手の了解事項はあったら便利ぐらいのものですから。
これを意図的に破る作者だっているのです。
- 431 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月29日(金)22時16分03秒
- ( 0^〜^)
それじゃあ、作者はどうしたらいいんでしょうか。読者はどうしたらいいんでしょうか。
まずは、両者の共犯関係を自覚するべきでしょうね。
- 432 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月30日(土)14時48分25秒
- >両者の共犯関係を自覚するべきでしょうね。
そう、それ!どこまで踏み込んでイイのかわからんのよ!
だからってチャットでいちいち説明するのも何か違うと思うし。
だから「うぜーやつら」には期待している。
- 433 名前:名無し娘。 投稿日:2002年12月04日(水)00時08分43秒
- でも知らないと「娘を登場人物にする意味」が無くなってしまう。
娘。小説界で定番になっている。キャラ付けはともかく(あれは胡散臭い)
実際の娘たちの口調や行動は反映してないとイカンのではないでしょうか?
- 434 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月04日(水)22時59分34秒
- (0^〜^)
ある程度反映させないといけないでしょう。
しかし、ある特定の時期のキャラクターに固まってしまうのもいかがなものでしょうか。
辻に「( ´D`)<てへてへ」言わせていいのでしょうか。
- 435 名前:名無し娘。 投稿日:2002年12月07日(土)11時07分58秒
- さて、望むと望まないとに関らず物語には始まりがあって終わりがあるものです。
終わるべきときに終われず、終わるべきでないのに終わってしまった物語が酷く哀れであるのは
人生にも通じる処が・・・まぁ、それはそれとして
登場人物は物語を組み立てるパズルのピースなわけで、
作者は物語にふさわしいピースを選ぶ立場にあります。
現在の辻が「てへてへ(´D`)」では無い事は周知の事実なのですが、
’その時期’の辻に相当する登場人物が必要な時、それが選ばれるのはむしろ当然でしょう。
( ´ Д `)<ごとーもクールだったり足りなかったりタイヘンなんだよ
もっとも、必然性も無く「てへてへ」してる事が多くはあるようですが・・・。
- 436 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月17日(火)23時20分07秒
- 感想も批評もほしいなぁ
( 0^〜^)
例えば一枚の写真につめられている情報をすべて言葉で表そうとすると、ばく大な量の原稿用紙が必要になるでしょう。
例えば、一つの言葉の意味を調べようとして辞書をひくと、その辞書の言葉の意味を調べなければならなくなるでしょう。
例えば「あい」という言葉について、亜依とか愛とか会いとか藍とか、それを読む人によって読み方はそれぞれ異なるでしょう。
( 0^〜^)
このように言葉は不自由で、扱いづらい。この特性を利用して芸にまでなったのが小説とか文芸とかいわれるものです。言葉の持つ情報量が絶対的に少なく、かつ逆に多義的であるからこそ、少ない言葉でなるべく多くのことを表そうとしているわけです。
ですから、作品をめぐって作者と読者の間にそごが生じます。これは不可避です。悲しいね。
- 437 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月17日(火)23時20分48秒
- ( 0^〜^)
さて、熱心な読者は反応を作者に返します。それが感想と批評です。
感想と批評の違いは、作品の受容の仕方にあります。感想の場合、作者の書いた意図と読者の読んだ意図が食い違っていても問題はありません。お互いに一方通行のやりとりとなります。
批評は、(ある程度)、読者は作者の意図を読み取る必要があります。そしてそこから書かれていない何かを見出すことが批評のだいご味でしょう。大きな誤読は許されません。だからこそ精緻な読みが必要となります。
( 0^〜^)
どうやったらその「精緻」な読みができるかどうかは難しいところですね。
作者の中には「読者は敵だ」と思っている人がいるようですが、あながち間違いではありません。
こう考えるとなるほど、批評もどきの感想は始末が悪いですね。「その批評は間違ってる」と言えば「どう読もうが読者の勝手だ」と返ってくるのですから。
- 438 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月17日(火)23時21分19秒
- ( 0^〜^)
批評も一つの芸なんですね。
- 439 名前:名無し娘。 投稿日:2002年12月19日(木)01時56分40秒
- ( ´ Д `)
批評でなく感想でなく
対話かなぁ?とか思ってました。
そうすると誤読は、やはり辛いものに…。
金板の方に乗ってみたら直後に路線がガラリと変わったので
あぁ、乗り方に失敗したかなぁと反省してました。
- 440 名前:名無し娘。 投稿日:2002年12月19日(木)01時58分59秒
- ( ´ Д `)
レス作家になる道も険しい。
- 441 名前:りゅ〜ば 投稿日:2002年12月21日(土)12時05分04秒
- 見つけました・・・
- 442 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月21日(土)19時56分19秒
- フィルターを通しているかいないかの差かなぁ?
今回の短編集の感想で言うと乾燥さんのが感想でRさんのが批評かな。
でも俺のは、Rさんの方が褒めて貰えていたけど胸にも突き刺さった。
- 443 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月23日(月)15時30分50秒
- ( 0^〜^)
>439-440
感想は対話になってなくてもかまわないんですね。
金板のはぜひレスつけてほすぃなぁ。
>441
何が見つかりましたか?
>442
加護しく同意
- 444 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月23日(月)15時31分31秒
- その言葉にどんな意味があるのか
( 0^〜^)
今回の短編バトル(テーマ:雨)もたくさんのお話が集まりました。やっぱり許せん。普段からもっと短編を読ませろ。
さて、感想と批評についていろいろあったわけですが、それを比べてしまおうという、他人のふんどしで相撲を取ろうと思いついたわけです。題材は飼育作者きってのヒキョーモノが書いた「十五の思い出」です。一位おめでとー。
- 445 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月23日(月)15時32分58秒
- 50 名前 : 乾燥が来ます 投稿日 : 2002年12月09日(月)21時29分07秒
読後感はすごくいいね。
勘違いかも知れないけれど、過去の名作娘。小説のオマージュが
散りばめられている気がしたよ。
たぶん、加護は芸能界から完全に引退しちゃったんだろうね。
辻は3年後も、まだ娘。をやっていると。
決定的に違った立場になった2人が再会するシーンは心に残ったよ。
「今度遊びに来るときに返してくれればいい」と傘を貸す加護。
(これが最後の思い出になる)と思う辻。
2人とも、もう再びめぐり会うことはないという想いがあると解釈していいのかな。
「愛ちゃん」「大好きだよ」の最後のセリフも
「亜依ちゃん」「大好きだよ」のダブルミーニングだろうね。
- 446 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月23日(月)15時33分29秒
- ( 0^〜^)
この読み手は書かれていない部分を補完しようと努めています。こういう感想は他の読者にとって便利なもので、その意味で模範的な感想といえます(同時に作者にとっても、どのように受容されているかがよくわかる)。
ただし、最後の二行、読み手は自分が何を書いたのか自覚していない模様です。もし「愛ちゃん」がダブルミーニングとしましょう。そうすると、なぜ「愛ちゃん」なのか、なぜ「アイちゃん」じゃないのか、「愛」と漢字をあてたのは誰なのか、というところまで行き着きます。技術的なところにまでは踏み込んでいません。
- 447 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月23日(月)15時34分32秒
- 67 名前 : ドライ・オイスター 投稿日 : 2002年12月10日(火)21時53分44秒
・リアル(?) 辻
辻と加護をテーマにした近未来物。いつかはこんな日が現実に来るかと思うとしんみりする。
とりあえず、小川と新垣がどうなったのかが気になるところだが。
過去から現在への切り替えと「亜依」から「愛」への切り替えを対比する事で
上手く辻の気持ちを現している。
文章も手馴れていて読みやすい。できれば大人になった辻の描写も見たかった。
テーマの使い方はまあまあ。
( 0^〜^)
この感想は書き手に対するものですね。「小川と新垣がどうなったのか」「大人になった辻の描写」と、書かれなかった部分について作者に注文を出しています。これはどうなんでしょう。
記述されなければ、事物は存在しません。とはよく言われることですが、そうなんでしょうか。あったかもしれないし、なかったかもしれない。誰もそれを確定させることはできません。
ないものねだりはいけません。「ない」ということで「ある」のですから。
- 448 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月23日(月)15時35分51秒
- 129 名前 : R 投稿日 : 2002年12月15日(日)00時07分18秒
非常に微妙。物語の大半を占める加護と辻の確執や思い出話には殆ど興味を持て
なかった。作者の組みたてたエピソードにリアリティがあればあるほど、リアル
の辻加護との距離を感じてしまう(これは自分と作者の辻加護に対する視点に差
異があるだけで、そのこと自体は小説の出来不出来には関係ありませんが、自分
が読者として楽しめるかどうかは左右します。小説として完成されていればされ
ているだけ距離を感じる) その一方で、最後の切り返し方が鮮やかで、この一
点のために書かれたのであれば、とても巧みな作者だと思いました。
- 449 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月23日(月)15時36分45秒
- ( 0^〜^)
これは感想ではなく批評と呼ぶべきものでしょう。
この読み手はリアリティについてかなり敏感です(リアル・アンリアルというジャンルのことではありません)。リアリティは読者が自然に物語世界に溶け込ませるための一つの要素です。
しかしこれを突き詰めすぎると、二次創作としての意義を失いがちです。そのあたりのバランスがとてもむずかすぃ。よくできていればいるほど、逆説的にリアリティを失い、虚構性がうきぼりになってしまいます。この読み手は物語世界から離脱してしまったのです。
最後ほめていますが、実はこれほめていません。いやらしい読み手ですね。
- 450 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月23日(月)15時38分11秒
- 218 名前 : 暇人ななしの初感想 投稿日 : 2002年12月20日(金)12時56分32秒
辻加護の切ない思い出話。
雨をテーマにおいて将来、娘。から加護がいなくなり寂しい思いをしている辻の思い出話を作ったのには衝撃を受けた。
雨といってもいろんな雨は出てくるし、タイトルの十五というのにもいろいろな意味が込められている気がする。
短編というには少し長かったがいろいろな所に感情の重みや意味を置いてる作者さんの上手さを感じた。
いつもきつい口調だった高橋の優しさも、ラストで感じる。
辻が本当の18歳になった頃にもう一度読みたいと思った。
その時加護は果たしてどうなってるのだろうか。
- 451 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月23日(月)15時39分27秒
- ( 0^〜^)
感受性豊かな読み手ですね。そしてこの感想には重要な示唆を含んでいます。そのことを
読み手は自覚していないみたいですが。
感情の重みだとか意味とかいうのは、現代ではもはや失われてしまったものです。元がな
んであったのかわからなくなるくらい、薄くなったコピーが散らばっているだけ。しかし作
者はその存在しないものを書かずにはいられない。読者もそれを望んでいるのだから。
最後の一文はこう読み換えましょう。
「その時わたしは果たしてどうなってるのだろうか」
- 452 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月23日(月)15時40分51秒
- 271 名前 : 名無しヨハンソン 投稿日 : 2002年12月22日(日)00時10分44秒
辻加護、加護が娘。を卒業して3年の話。
仲の良い(ことになっている?)辻と加護もいつまでも同じでいられないわけで。
そういう意味ではありがちではあるけど、作者の意欲は感じました。
加護の卒業の理由(事務所の意向か個人的な都合か)が見えないから、辻の頑固さに説得力が薄いかな。
しっかし18歳の辻加護ってどうなってるんだろうか…。
( 0^〜^)
話の説得力に疑問を持っているようです。小説が小説となりうるためには、読者を物語世界から離脱させないためにはこれが必要です。
リアル・アンリアルの違いは、世界の説明が不要か必要かにかかわってきます。リアルなら「この人たちはアイドルで、……」ということを書く必要はありません。ところが、この話はリアルでありながら近未来のことを書いているため、説明が必要になっているわけです。未来は現実においては存在しないのだから。
話の構成から卒業の理由は不要だと、作者は考えたのかもしれません。しかし「卒業」についてナーバスになっている読者にとってはどうだったでしょうか。
- 453 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月23日(月)15時42分52秒
- 280 名前 : 名無し娘。 投稿日 : 2002年12月22日(日)04時14分57秒
しみじみと胸にしみる作品である。三年後の辻という設定がまず魅力的だ。加護はすでに卒業し、辻は何かわだかまるところがあるらしい。だが、仲間との内部での競争に疲れたとき、思い出すのは加護のこと。心の深層を少しずつ手繰っていくように、ひとつ、ふたつと段階的に提示されていく回想がいい。まだ仲が良かった頃の辻加護が雨の中、傘も差さずに飛び出していくあたりの描写。実に闊達で屈託の無い二人の友情。雨が降った後に現れる虹の描写の美しさは、追憶の中だけに余計に美しく感じられるのだろうか。思い出の渦中、随所に挟まれる車中の描写は、まるで、辻の追憶を辿る旅路であるかのような錯覚を読者にもたらす。ここで読者もまた、辻の過去へと溯る列車に乗って揺られていく。苦しい練習の最中、加護が渡してくれた飴玉。美しい友情の思い出。だが、突然の加護の卒業発表により、それがあっけなく崩れ去ったのは、むしろ自分の大人気ない行為のためではなかったか。
- 454 名前:うーん久々にやってしまった 投稿日:2002年12月23日(月)15時43分51秒
- (中略)
最後に発せられた辻の言葉、
「大好きだよ」
今、一番、大切だと気付いた、その人に向けられた言葉に、再び前を向いて進んでいけるのだろう、辻の明るい未来が感じられて、読後に深い感動が押し寄せる。この言葉に作品のメッセージが凝縮されているように感じられて、おやじ読者は涙せずにはいられない。十三、十四、ときて十五は思い出に。娘たちに、いや、人間に向けられたこの作者の温かい視線に包まれた素晴らしい作品を再び年の瀬に読めたことに感謝、感謝。
( 0^〜^)
なげーよ。
ここまで感情移入してくれれば作者も満足でしょう。リアリティを追求すればこのような宝物を得られるのですね。
この読み手は描写(表現)を賞賛しています。短編とはいえ、省く省かないは作者の頭を痛めるところです。過不足ない描写というのはこういうのを言うのでしょう。
でも、「ここの辻」には、ほんとうに明るい未来があるのでしょうか?
- 455 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月23日(月)15時44分31秒
- ( 0^〜^)
さて、長々と、人様の文章を勝手にあれこれしたわけですが。
感想とは作者との共犯関係を深める作用があります。しょせんは二次創作、虚構です。そんなことはわかっています。それには口を閉ざして、その世界を受け止める。多少は批判めいたところがあっても、それは感想=共同正犯です。
ところが、その共犯関係を拒否するのが批評です。いつまでも同じ地平にはとどまってはいられません。他の対象ならともかく、娘。小説ですから。つねに変わり続け、もとの形にとどまらない。
( 0^〜^)
いろいろ、あがいてみようぜぃ。
- 456 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月23日(月)15時45分27秒
- ( ^▽^)<まーた
- 457 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月23日(月)15時46分01秒
- ( ´ Д `)<やっちゃった
- 458 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月23日(月)15時46分44秒
- (〜^◇^)<のかよ!
- 459 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月23日(月)17時13分08秒
- >>451
重要な示唆とはどういう意味ですか?
読み手がそれを自覚してないというのは、暇人ななしが自覚してないという事ですか?
作者の重みや意味という言葉はもう時代遅れだという事ですか?
相変わらず読解力に乏しくて疑問を持ったので質問してみまちた。
最後の文を勝手に置き換えられた(w
でもあれは、みんなに言える事でしょうね。
- 460 名前:名無し娘。 投稿日:2002年12月23日(月)17時36分47秒
- (;´ Д `)
短編集は正直無視してましたが年末年始で少しずつ読みます。
金板の方は既にレス付け済みだったりします。
あれは話の内容そのものより「何故この話を持ち出したか」
の方に興味がありました。
今回の更新分でしばらく楽しまして頂きます。
- 461 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月23日(月)18時30分34秒
- 感想や批評の批評じゃなくて短編の批評が聴きたいYO
- 462 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月26日(木)00時04分13秒
- すでに「十五の思い出」の批評になてるんですよ
- 463 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月13日(月)19時46分12秒
- 箱作るのもいいんだけど
( 0^〜^)
以下のお話のネタばれやります。
「Kの沈黙」(青板『希望的観測』内)
http://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/read.cgi/dream/1040714783/80-158n
「幸せだなあ〜(中略)〜いいだろ?」(森板『テスト』内)
http://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/read.cgi/wood/995187337/176-180n
「さびしくないよ」(第10回短編バトル内)
http://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/read.cgi/pacifico/1039311738
「freebird」(森板「下手な小説書かせていただきます」内)
http://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/read.cgi/wood/1030418133/101-105n
「姑獲鳥の夏」京極夏彦
「見えない人」チェスタトン
- 464 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月13日(月)19時46分46秒
- ( 0^〜^)
見えるものが見えないというトリックの嚆矢はチェスタトン「見えない人」です。ここではありふれているがゆえに気がつかないという心理を利用しています。
一方「姑獲鳥の夏」では見たくないがゆえに見えないというトリックです。
そして第10回短編バトルに出された「さびしくないよ」では、見えなくなった理由は明らかにされていませんが、それが小川のキャラであり特性であると考えられます。
( 0^〜^)
これを援用(パクリ)したのが森板『テスト』の「幸せだなあ〜(ry」です。ここで紺野は忍法「さびしくないよ」を使いますが、失敗します。紺野にはそのような特性がないからです。そしてそのことを作者は自覚しています。
そして「Kの沈黙」において消えるのは石川ですが、これは読者に対して消えています。それが作者の意図で、これを叙述トリックと言います。紺野や飯田たちから石川のことが推理から漏れていた理由はわかりませんが。
- 465 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月13日(月)19時47分23秒
- ( 0^〜^)
さて、叙述トリックが出てきてしまいました。これは大いに問題となります。これは作者が読者に対してしかけるトリックです(「さびしくないよ」はそのあたり微妙ですが)。有無をいわさず作者が絡んでしまいます。
作者の姿が見えることはあまり芳しいことではありません。読者が物語に没入することを妨げるかもしれないからです。だからこの手の話は原則一発勝負となります。
( 0^〜^)
どうもこの作者はそのことに自覚的ではなさそうで、そのことが心配です。まー他人のことはどーでもいーのですが。
- 466 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月13日(月)19時47分55秒
- ( 0^〜^)
お話とは一個の箱です。箱の作り手は外側にいます。ところが、極端な話、読者は箱の中に入らないといけないんですよ。これってずるいですよね。読者が箱の中でもがいているのを外から眺めて愉しんでるんですよ。
一方「freebird」はそんなことと関係のなさそうな話ですが、籠の中に捕われた藤本と籠の外にいる松浦を対置させています。ところがその松浦も実のところ籠の中の鳥ですよね。籠の大きさが違うだけで。
( 0^〜^)
しかし外部というものが本当にあるのでしょうか。外部とは「存在しないもの」としてしか存在しないのです。ですから箱を書くときは作り手も箱の中に入って、中からふたをしないといけません。それが誠実な作者というものです。
- 467 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月13日(月)19時48分51秒
- ( 0^〜^)
それにしても読みごたえのある短編が増えて重畳々々。
- 468 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月13日(月)20時48分03秒
- 石川の名前が一度も出てこないのはどう考えてもおかしいよなぁ。
作者の姿が見えるのもなぁ。楽しんでくれてる内は良いけど。
箱の中を想像するのは難しい。
かといって箱を分解してしまったら何も書けなくなってしまう気がする…。
川メ・-・)<満足してないで苦しみ悩んでください。
- 469 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月06日(木)23時46分14秒
- 人称、あるいは語り手についての大問題
( 0^〜^)
苦節十年、ようやくすばらしい話を思いついた。
いしよし・よしごまを初めとした萌えカップルのエピソードはふんだんにある。冒頭に大きな謎を置いて、読者の注意をひきつけることもできる。現実に起こった逸話もちりばめてあって、それが重要な複線になっているから、「必然性が……」などと横槍を入れるうるさ型もケチをつけられないはずだ。
これが完成したあかつきには、四台名作やらなんやらを超える評価を得られるのは間違いない。2chの羊には専用スレが立てられ、外部スレでは毎晩のように解読が始まるだろう。キャラクター小説の世界では作者ページにワタシの名前が付け加えられ、チャットでは「作者降臨きぼーん」とラブコールされるのだ。
こうしてはいられない。さっそく書き始めよう。
- 470 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月06日(木)23時46分44秒
- ( 0^〜^)
語り手は……使いやすいから吉澤にしておこう。
( 0^〜^)
「ね〜、よっすぃ〜ってばぁ」
「ん〜、なんだよぉ、梨華ちゃん」
もうちょっとフワフワのふとんにいたかったのに。
梨華ちゃんのばかぁ。
目をこすりこすり、めざまし時計をなんとなく見ると……
げえ〜〜〜〜〜
遅刻だぁ〜〜〜
なんでもっと早く起こしてくれなかっただよー。
梨華ちゃんのばかぁ。
- 471 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月06日(木)23時47分40秒
- ( 0^〜^)
キーをたたくのをやめる。なんだこれは。「萌え萌え〜」と言いつつ、心の奥底では「この作者なりきってるよ」「きもーい」と、読者は思っているにちがいない。
やめやめ。もっと硬派にいこう。
( 0^〜^)
其の日の朝、石川梨華君に無理矢理起床させられる。春眠暁を覚えずと古の詩人の残した句の通り、暖かい陽光が余を夢幻の世界に誘うも、斯くの如く無粋な同輩に邪魔せしめられるのは耐え難い。仏蘭西のナ翁は日に三時間の睡眠を取るのみとの逸話を、さも己の手柄話の如く吹聴する輩もいるが、勘違いも甚だしい処だ。ナ翁は一時欧州大陸を席巻したが、挙句には孤島にて寂しく死を迎えたのであれば、何が為に睡眠時間を削って生活したのだろうか。
併し目が覚めてしまったものは仕方があるまい。処が見ると目覚し時計は八時を指し示しているではないか。此の侭では遅刻であり、生徒指導の教師に睨まれるのは必至である。機転の利かない友を持つ事程虚しい物はあるまい。
- 472 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月06日(木)23時48分10秒
- ( 0^〜^)
だめだ、だめだ。現実の彼女たちがこんな言葉づかいをするわけないじゃないか。
一人称はやめた。オーソドックスに三人称にしよう。
( 0^〜^)
石川梨華は何度も彼女の体を揺すったが、いっこうに目を覚ます気配がなかった。このままでは学校に遅れてしまう。かけ布団を引っぱったが、吉澤ひとみは眠りながらも豪腕を発揮し、逆に梨華をベッドに引きずり込んだ。
「よっすぃ〜。起きようよー」
「むにゃむにゃ。梨華ちゃーん……」
もう怒った、と、梨華は目覚し時計を振り上げた。ゴツンと鈍い音がして、ひとみは額をおさえながら上半身を起こした。時計は衝撃で止まっていた。短針が八を指しているのを見て、どうしてもっと早く起こしてくれないのだろうとひとみは思った。
- 473 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月06日(木)23時48分47秒
- ( 0^〜^)
これもなー。作者が高いところから見下ろしてる感じがする。作者がまるで神様みたいで、登場人物の体と心の動きを全部掌握してるのだけど(実際そうなんだけど)、ちょっと露骨すぎる気がする。それで大事な何かを隠してストーリーを進めたら卑怯だ。
それなら、三人称で、登場人物の感情を表現しないようにしてみよう。吉澤の視点にカメラを固定。
( 0^〜^)
黒かった世界が白い光に包まれた。天井の電灯が薄暗く光っている。吉澤ひとみは体を起こした。左の窓から太陽の光が射し込んでいた。
「おはよ」
「おはよう」
梨華は黒いカバンを提げていた。ひとみは目覚し時計を見た。
「もう八時か」
「昨日はずいぶん遅かったみたいね」
ひとみは顔をかすかに振った。
「そんな昔のこと、覚えてない」
- 474 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月06日(木)23時49分22秒
- ( 0^〜^)
ちょっと待て。パクってる気がする。
第一、テレビカメラのように目に映った物だけを描写するなんてできない相談だ。
一人称もだめ、三人称もだめ。それなら……。
( 0^〜^)
……
- 475 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月06日(木)23時50分17秒
- ( 0^〜^)
二人称なんてもっとできねーよ。
だめだ。どうしても書きはじめることができない。この畢竟の大作はワタシの頭の奥にしまっておくことにする。返す返すも残念なことだが、仕方あるまい。
- 476 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月07日(金)00時44分38秒
- ( ´ Д `)<読者の目を気にしすぎだよぉ〜
もっと読者は単純だよぉ〜
だから早く新作(大作)書けよぉ〜
- 477 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月12日(水)23時33分29秒
- ( 0^〜^)
短編ならいくらでも感想・批評書くのに
- 478 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月03日(月)22時06分28秒
- 止まらない、止められない
( 0^〜^)
「742617000027 Overcaffeinated mix」(金板)の『時よ、止まれ キミは、美しい』読みました。
http://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/read.cgi/gold/1038308847/1-68n
( 0^〜^)
あらすじ:
メンバー全員の腕時計が盗まれる。どうやら犯人はメンバーの誰かのようだ。犯人を捕らえるため、石川は名探偵チャーミーに変貌したのだった(?)。
- 479 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月03日(月)22時07分21秒
- ( 0^〜^)
石川=ホームズ(ただしシュロックのほうだ)、吉澤=ワトソンという配役は定番というか、ハマリ役なので読者もすんなり物語世界に入り込めます。石川に振り回される吉澤というのもわかいやすいですね。
短いセンテンスを多用し、また改行に苦慮しているようです。構成はかなり凝っていて、それでいて伏線がわかりやすく張られています。もちろん第一の解答をひっくり返す第二の解答があって安心できます。
( 0^〜^)
さて、時を止めたくなったあの人が(そう、見えないあの人が)象徴としての時計を盗みます。現代では時計こそが時を支配する神なのです(どっかでこんな話書いたなあ)。
しかし、当然時を止めることはできません。私見では、時間こそが人間存在を保証してくれるからです。あなたと私の違いは、時の流れ方です。ゆっくり流れる時もあれば、瞬く間に過ぎてしまう時もある。原子に分解できないそれが、私を私足らしめるのでしょう。
- 480 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月03日(月)22時08分26秒
- ( 0^〜^)
この真犯人は、入れ替わりの激しいグループの在り方に不満を持っています。実際のところ、そうじゃないと犯人もグループに入れなかったのだから大きな矛盾です。
でも、この話のみんなは優しいですね。わたしだったら突き放す内容にしたでしょう。この犯人の一種の倒錯もテーマの一つとなりえます。
( 0^〜^)
問題は、探偵役の石川です(全然探偵してませんが)。探偵という行為に複雑な感情を抱くわたしなのですが、ここの石川は探偵を前向きにとらえています。
ところが、探偵がいなければ、何も問題は起こらないのです。現に、みんなは(どうやら薄々)真相に気づいている様子。それなら探偵という行為は、その危うい秩序をぶち壊す爆弾になってしまいます。そんなことを誰も望んでいないのに。
- 481 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月03日(月)22時08分59秒
- ( 0^〜^)
探偵なんかこの世から消えてしまえばいいんだ。
( 0^〜^)
でも……。探さずにいられない。
- 482 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月09日(日)01時40分11秒
- ここの批評はすごく面白い。作者としても、読者としても。
自分の作品も批評されてみたい、などと思いつつ、ハンドルも作品名も明かす気になれないのは、情けない限り。
まだ完結まで程遠いし、長編だし、と逃げ口上を残すのもなんですが。
いつかここで、批評の対象となった暁には、とりあえずモニタの向こうでほくそ笑みます。やったー、って。
それにもまして、ご自身の新作を楽しみにしていますよ。読者として。
ということで期待sage
- 483 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月25日(火)22時05分50秒
- コテハンいくつも持ってもねえ
( 0^〜^)
さて、新作を書こうとスレをたてるとき、コテハンをどうしましょうか? 名無しで進めると「読者レスと作者レスの見分けができない」と言われてしまいます。はて、見分ける必要があるのでしょうか?
- 484 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月25日(火)22時06分31秒
- ( 0^〜^)
わたしはずっと名無しで続けています。それでも読者はいくつかのスレがわたしの書いたものだと認識しています。しかし、そんな保証はどこにもありません。それは作者にすら保証できないわけです。「これこれのスレはあなたが全部一人で書いたものですか?」と問われても「はい」とは言えません。証明することは誰にもできないわけです。
作者が物語を書くのはなぜか。作者の頭の中に物語が思い浮かぶのはなぜか。それはある意味「神」のしわざとしか言いようがありません。ですから本当の作者は「神」であり、いわゆる作者は鉛筆と同じ筆記用具にすぎません。鉛筆には名前は必要ないでしょう。
( 0^〜^)
すると名前をつける、コテハンをつけるという行為は、その事実を覆い隠すことに他なりません。二次小説の世界はいざしらず、物書きをなりわいとしている人は名前を明記していますが、これは責任の所在を明らかにしているだけのことです。二次小説では、オリジナルの許可を得ている場合はともかく、権利を侵害しているのですから責任とるなんてできませんよね。あははは。
- 485 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月25日(火)22時07分07秒
- ( 0^〜^)
さて、「もはや個人HPとなっている」などと評判が芳しくないようなので、この手の書き込みはこれでおしまいです。さようなら。
- 486 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月30日(水)21時14分37秒
- ( 0^〜^)
- 487 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月30日(水)21時15分16秒
- ( 0^〜^)
やっぱり続けちゃお
- 488 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月30日(水)21時15分48秒
- 「終了」って題名かな?
( 0^〜^)
白板の短編「【 シ ェイプ レス 】」の感想です。
http://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/read.cgi/dream/1050333521/1-17
- 489 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月30日(水)21時16分26秒
- ( 0^〜^)
誰かが書いていそうで、書いていなかったお話。シャレにならないお話こそがリアルを持ちうるわけです。そのまま描写したって面白くない。そこで作者はいろいろ工夫をこらしています。
地の文は全て現在形です。静物を描くような感じで、作者の主観を(一見)廃した文章との印象を与えて効果的です。小川の感情を直接描写しない⇒することができないのです。
( 0^〜^)
作者は思ったままのことを自由に書くことができます。それは誰にも止めることはできません。法に触れない程度に勝手にどうぞ。
リアリティとは何でしょうか。わたしたちはTV画面に映ったそのときの彼女たちしか知りません。彼女たちが何を思い何を考えているのか、わかるはずがありません。
- 490 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月30日(水)21時17分01秒
- ( 0^〜^)
しかし、わたしたちは少ない情報からも共通の認識を持ちえます(それが真実なのかどうかはまったく無関係に)。それは共同幻想とか間主観性とかいろいろ呼ばれているようですが、その共通認識に近いものを「リアリティがある」と評するのですね。
この話にはリアリティがあるのでしょう。そしてそれをさらりと書いてしまうところに、この作者の力量がうかがえます。
- 491 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月29日(木)22時50分19秒
- 娘。小説スパイラル
( 0^〜^)
敬虔な牧師であるフライ君の話によれば、物語は五つにカテゴライズされます。すなわち、
1.神話:すべてにおいて卓越した主人公
2.英雄譚:1ほどではないがかなり優れている
3.悲劇:ちょびっとだけ優れている
4.リアリズム:わたしたちと同じ普通の任人間
5.アイロニー:かなり劣る
物語は1〜5の順に歴史を歩みました。もちろん先祖がえりすることもあれば、ウロボヌスの如く1に戻ったりすることもあります。
これをふまえて、白板の怪作『いしよし畑』を見てみましょう。
http://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/read.cgi/dream/1034944106/
- 492 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月29日(木)22時51分05秒
- ( 0^〜^)
20:まえがき
プロローグに過ぎませんが、ここでパロってる内容は4.リアリズムのようです。
19:消しゴム
5.アイロニー。いきなりこの段階から始まります。
18:人類梨華化計画
1.神話。すべてを石川に変化させてしまう吉澤は「神」です。
17:騒々しい朝
2.英雄譚。生まれたままの姿で外に出てしまう英雄石川と、それを産んだ神である夫婦の話です。神から英雄が生まれる話はギリシア神話でもおなじみですね。
16:今日は何色?
2.英雄譚。17からの続きです。英雄が人間世界で苦労する話もまた、ギリシア神話でおなじみのものです。
15:しりとり
3.悲劇。尻を取られるのですから。
14:はんたぁ×はんたぁ
4.リアリズム。ここでは全てが直截的に語られます。
- 493 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月29日(木)22時51分35秒
- 13:迷惑な来客者
5.アイロニー。逆に隠喩となり、作者の姿がチラチラ見えます。
12:午後の喫茶店
1.神話。えてして神話は不可解な話が混じっているものです。
11:ライフライン
2.英雄譚。英雄は理不尽な頼みをきかなければならないのです。
10:(ё)
3.悲劇。多くを語ることもないでしょう。
9:星になった彼女
4.リアリズム。石川は本当に昇っていったわけです。そう書いてあります。
8:空も飛べるはず
5.アイロニー。前作をさらに昇華させた佳作です。
7:梨華ちゃんの秘密
1.神話。神は時に動物の姿をとるものです。ギリシア神話で(ry
- 494 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月29日(木)22時52分09秒
- 6:ピン・チャポー現る
2.英雄譚。英雄を止めることは凡百の人間には無理な話です。
5:いしよしの法則
3.悲劇。描くこともできない悲しい話。
4:海底都市伝説
3.悲劇。言うまでもなく。
3:垣さん、ありがとう
4.リアリズム。だって実話ですから。
2:パーティしようよ
5.アイロニー。誰が誰でもいいような話を風刺してるわけです。
1:ひとみとりか
1.神話。そしてふたりは神話となりました。
- 495 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月29日(木)22時52分46秒
- ( 0^〜^)
フライ君をあざ笑うかのように5.アイロニーで始まり、そのくせフライ君のお説どおりの歴史を歩み、輪廻転生をくりかえし、最後にたどりついたのが1.神話であるという構造になっています。
「いしよし」はもはや一介の娘。小説ではなく、世をあまねく支配する「神」のごとき存在になったわけです。
さて、5から1に回帰するとき、その軌道は二次元ではありません。ほんの少し、z軸を+方向に進みます。つまり螺旋状に進むということです。その軌道は半径を縮めていきやがては一点に帰するのか、それとも反対に拡がっていって宇宙を形成するのか、それを決するのは作者であり、読者であり、彼女たちなのです。
- 496 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月28日(土)00時53分08秒
- さて
- 497 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月28日(土)21時46分00秒
- どうした?
- 498 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月07日(月)23時01分20秒
- いいわけの愉しみ
( 0^〜^)
以下のお話のネタバレ注意。
ディケンズ「ジョージ・シルヴァーマンの釈明」
ロブグリエ「嫉妬(ブラインド)」
『いいわけ』
http://mseek.nendo.net/event/big01/1028038687.html
『ひらひら』
http://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/read.cgi/pacifico/1057077062/l50
- 499 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月07日(月)23時02分04秒
- ( 0^〜^)
これみよがしな「いいわけ」では芸も効果もありません。巧みな話術で論点をずらし。話者の責任をあいまいにしてしまうのも一つの醍醐味です。それだけで一つのデーマとなりうるのは、人間が言葉を操るうえで避けて通れないからでしょう。
ディケンズの「ジョージ・シルヴァーマンの釈明」では、主人公がなにやら弁明の手紙を書いています。うまくいえないので、第一章は短いまま頓挫し、すぐに書き直しをしてはやっぱりダメと、このように何かをためらいながら話は進んでいきます。それも当然なことで、主人公は自分の非を内心認めながら、プライドなどから認めることができないという、情けない人間だからです。
- 500 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月07日(月)23時02分37秒
- ( 0^〜^)
ロブ・グリエの「嫉妬(ブラインド)」、blindには邦題の通り「嫉妬」の意味といわゆる「ブラインド」の両方をかけています。
文章は客観的な三人称のように見えるのですが、何かがおかしい。脈絡のない文章が混じったり、時間がおかしく流れたり。登場人物は男と女ですが、どうやら第三の人物、女の夫が話者であることがわかってきます。つまり女の夫がブラインド越しに眺めた世界が描写されていたのであり、男と女を嫉妬まじりに見ているからこそ、ゆがんだ描写が続いていたわけです。
- 501 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月07日(月)23時03分33秒
- ( 0^〜^)
『いいわけ』では、安倍と飯田を非難する語りぶりによって、自分たちの行動を正当化しようと試みています。冒頭から客観的な事情の説明に、主人公の所感を混ぜることでいやらしさを増しています。
それで、まあ最後のほうはオマケみたいな感じですが、それをひっくり返して、主人公が後悔するという、お決まりの話でした。
- 502 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月07日(月)23時04分33秒
- ( 0^〜^)
『ひらひら』の主人公もこれまた言い訳マンなのですが、はじめのうちはそのことをひた隠しにしています。そしてそれが明かされる時こそがクライマックスとなるのですが、それを処理しきれなかった感じがします(それは最後のレスが一段落に収まっていることからもうかがえます)。
いいわけ小説では、主人公が悔いるか、意地をはって自分をだまし続けるか、二つに一つしかありません。前者はすっきりするのですが、ワンパターンに陥る恐れがあります。後者では、最後の見せ方が難しい。
そして、うまくオチを飾れなかったとき、作者は読者に向かっていいわけを始めるのです。
- 503 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月09日(水)00時22分08秒
- よくわかりませんが何だかあり難い気持ちになりました(合掌
私めの凡作とあのような傑作と並べられてはもったいのうございます。文章は
ふざけてますが結構マジです。
最後のレス、達磨殺しの形に遭ったかんじがします。気分はもう10番です。
- 504 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月09日(水)20時06分18秒
- ( 0^〜^)
>>503
最後の文章は一般論ですよ。一行空いてるし。
- 505 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月09日(水)22時16分10秒
- そこに無いものはどこにも無い
( 0^〜^)
さて、今回の短編バトルは15レスという制限がついていました。「15じゃ足りない、25にしろ」という意見がありました。これは何を意味しているのでしょうか?
- 506 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月09日(水)22時17分06秒
- ( 0^〜^)
25レスというと、400字詰め原稿用紙で30枚以上あります。普通の短編ならばちょうどいい長さでしょう。世界、登場人物、相互の関係を提示し、その世界で起こった出来事を描写しなければならないからです。
しかし、ここで読むことのできる小説は、娘。小説です。世界も人物も、すでに読者に認識済みのものではありませんか。それをなぜ、また一から説明しようとするのでしょうか?
- 507 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月09日(水)22時17分36秒
- ( 0^〜^)
つまり、世界の説明が必要な話とは、(ry
- 508 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月29日(火)21時52分28秒
- 脱線しまくり
( 0^〜^)
『二人で独り』(森板)
http://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/read.cgi/wood/1046457944/
- 509 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月29日(火)21時53分11秒
- ( 0^〜^)
なんといっても、まず題名がスバラシイ。この題名の前では、はて、なぜ小川と新垣なんだろう、道重なんだろうなどという愚問は崩れ落ちます。題名が全てであり、ここに書かれたことも全て題名に収束しなければなりません。
ここで書かれたこと、冗長だとか、設定がアンバランスだとか、道重なんだったんだろうとか、それらを問いてはいけません。全ては題名につながっているのです。
( 0^〜^)
これだけじゃなんなので、これを寓話と受け取ってみましょう。死に行く人々はモーニング娘。であり、モーヲタであります。小川と新垣に後が託されますが、二人にも盛り返す力はありません。それどころか道重が足を引っ張ってます。
二人は村を脱出します、つまり娘。を脱退してソロ(デュエット?)になりました。それでも転落の坂を転がり続けます。そして二人は命運を断たれたのでした。
- 510 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月29日(火)21時53分50秒
- ( 0^〜^)
あるいは、二人とはモーニング娘。とそのヲタです。二人は仲良く揃って討ち死にしたんです。「生きる意味がなくなった」というセリフは予言です。代々木で似たようなセリフを残した人がいました。凄いことです。
( 0^〜^)
なんてこと書くと、作者さん泣いちゃうだろうなぁ……。
- 511 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月04日(月)21時51分44秒
- 不可能性への挑戦
(0´〜`)
「男×娘。短編集」について。
『男×娘。として描きたい! という雰囲気の作品よりも、従来の短編集とかわらずに、テーマが男×娘。だから、その形で描いた、という作品の方が目だった』
……まったくそのとおり。
『各所を見ていると、作者だけの盛り上がりになっている感もあり』
……いつもの短編企画と同じだよ。
- 512 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月04日(月)21時52分18秒
- (0´〜`)
それでは、いつもの短編企画と何が違っているのでしょうか。一つは作者数。一つは男が出てくること。この二つは当然複雑に絡み合ってます。絡み合ってなくても絡み合っていることにします。
(0´〜`)
まず作者数です。「花火」のときは53の投稿がありました。複数投稿禁止という建前があるので、53人の作者が参加したことにしておきます。で、「男×娘。」では23。複数投稿ありでしたので20人以下でしょう。その差は30以上もあります。
ではこの30数人と20人の違いは何なのでしょうか。それは「男」の受容の仕方にあります。
- 513 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月04日(月)21時53分05秒
- (0´〜`)
「男」とは何でしょうか。娘。に関わる男は二種類しかいません。娘。を支えるスタッフと、娘。に熱狂するファン。娘。で儲ける男と、娘。に貢ぐ男。後者を便宜上「ヲタ」と呼ぶことにしましょう(あくまでも便宜上ですよ?)。
「男」の本質は後者です。当たり前です。作者は後者に属する生き物なのですから。
(0´〜`)
見ると、なんとヲタの出てくる話の多いことでしょうか。19ではその容貌が克明に描かれ、02や14ではその心理を余すことなく描かれています。特に14は重要な作品です。主人公の悲しい告白は読む者の心を打ちます。でも、正体はゴキブリです。ヲタなんです。
- 514 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月04日(月)21時54分09秒
- (0´〜`)
参加しなかった30数名の作者。彼らの言い分はもっともです。アイドルなんだから男を出すなんてもってのほか。出すつもりだったが時間がなかった。そんな企画知らなかった。
違います。正視できなかったんです。鏡を見ることができなかったんです。ヲタのキモい姿を。己の醜い姿を。
(0´〜`)
虚構ですから、それでもいいのでしょう。虚構の世界だからこそできることがあります。事実から眼をそむけ、殺菌された清潔な世界がそこにはあるのでしょう。
人は本質を直視することができません。現存在は死の不可能性に怯えて生きています。不可能性の可能性に賭けることなんてできませんから。そしてわたしたちはヲタという本質を正面から見すえることができないのでしょう。眼をつむっていき続けるのでしょう。
- 515 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月04日(月)21時54分48秒
- (0´〜`)
自己模倣にどのくらい可能性があるかどうかは、また別問題ですが。
- 516 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月05日(火)01時38分12秒
- オモシレー。僕はヲタじゃないんで笑えました。
つーか男×娘。の全部の感想まだー?チンチン
- 517 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月28日(木)21時00分52秒
- >>516
( 0^〜^)<正直ムリっす
( ^▽^)<わーい、ホームページ?ができたー
http://www5e.biglobe.ne.jp/~gide/index.html
- 518 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月03日(水)21時54分44秒
- メモ
(0´〜`)
「必然性」というタームは以下の2通りの意味があります。
1.娘。小説なんだから娘。が出てくるのは当然だ、という需要の問題
2.登場人物が娘。でなくたっていいんじゃないか? という交換不可能性の問題
- 519 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月03日(水)21時59分02秒
- (0´〜`)
2.をさらに二つに分けます。
2−a.娘。以外の誰かでもいいんじゃないか?
2−b.この娘。(例えば石川)じゃなくて別の娘。(例えば吉澤)でもいいんじゃないか?
(0´〜`)
1.は「娘。小説」の必要条件です。
2.は、「娘。小説の傑作」の十分条件(?)じゃないでしょうか。
特に2−b.の交換不可能性を示した話を書けたら、いいな。
- 520 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月03日(水)22時00分08秒
- (0´〜`)
いずれにせよ、1.の立場から2.を、2.の立場から1.を非難することは、まったく不当なことでしょう。
- 521 名前:名無し娘。 投稿日:2003年09月06日(土)01時31分51秒
- ( ´ Д `)・・・
よくわかんないけど、ハンバーガーと懐石料理みたいな関係なのかなぁ。
懐石の主人が「バーガーなんて料理じゃねぇ」なんて言い出すのは
たしかにちょっと変かもだし。
- 522 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月08日(月)20時54分33秒
- (;0^〜^)<その例えは合ってるの?
- 523 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月08日(月)20時56分15秒
- | |/ ◎◎ \|
| | ◎◎◎ |
ノハヽヽ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(O´〜`) ヒーチャンモ長編カキタイYO
(∩∩)────────────────
/
/
- 524 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/09/09(火) 14:59
- ‖
| |/ ◎◎ \| ||'-' 川 チョウヘンヨミタイヤヨ
| | ◎◎◎ | ( )
ノハヽヽ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | |
(0´〜`)
(∩∩)───────────────
/
/
- 525 名前:名無し娘。 投稿日:2003/09/09(火) 19:06
- ‖
| |/ ◎◎ \| ||'-' 川 イキヌキニチョウヘンヲカクヤヨ
| | ◎◎◎ | ( )
ノハヽヽ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | |
(0´〜`)
(∩∩)───────────────
/
/
- 526 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/09/20(土) 13:09
- ‖
| |/ ◎◎ \|
| | ◎◎◎ |
ノハヽヽ.  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ゲップ...(´〜`O)
(つ⌒O───────────────
/ ヽつ"つ
/
/
- 527 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/09/20(土) 14:02
- この不条理なるもの
ふじょうり【不条理】
(1)筋が通らないこと。
(2)〔哲〕〔(フ) absurdite〕カミュの用語。人生の非合理で無意味な状況を示す語。 (新辞林 三省堂)
ぶっちゃけ、不条理は「確固たる私」に対するアンチテーゼとして提出されます。その状況は、不条理なのですから、合理的な思考に慣れているわたしたちには普通に受け入れることができません。
そして、その状況を作者がどう描写するのかが問題となります。
- 528 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/09/20(土) 14:03
- 『さよならSummer Day』
http://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/test/read.cgi/dream/1060704358/338-371n
藤本の一人称で語られます。不条理なのは死んでも死なない吉澤の存在。世の中を「世界」「人間(私)」「神」に還元するのであれば、「人間(私)」が不条理の対象となっています。
この不条理なる存在たる吉澤を、藤本は次第に受け入れています。つまり、この時点で物語内世界では、不条理は存在しません。不条理を不条理と受け取るのは読者のみになるからです。
不条理が不条理でなくなる(なくす)過程を描いたのがこのお話の骨子です。不条理の話は、ただ不条理を描けばいいというものではありません。そのことで読む者を不安に駆り立たさせなければ、その存在意義が薄くなってしまいます。
- 529 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/09/20(土) 14:03
- 『赤いギター(いしよし学園物)』
http://www.topsites.jp/test/read.cgi/morning/1040132534/69-95n
「いしよし学園物」などとほざく作者の性根はとりあえず置いといて、ここでは「世界」が不条理の対象となります。話すサソリ、天井裏のオアシスなど、これは教科書的に十分な舞台設定です。
先ほどの話と異なるのは一人称の語り口です。こちらの話は語り手の主観をほとんど排しています。たんたんと出来事を述べることで、不条理な世界を浮かび上がらせようとしているわけです。
不条理は、ここでは解消されません。不条理はただ「ある」だけですから、これをどうこうしようとすること自体が不条理になってしまうのです。
- 530 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/09/20(土) 14:03
- この二つの物語は、ともに吉澤ひとみが主人公です。なぜなら、吉澤は不条理な存在であり、不条理な世界に投げ込まれているからです。
どう解釈しても解釈しつくされない存在、だからこそ多くの娘。小説で彼女が主人公という特権を手にすることができるのでしょう。こう思うのはわたしが吉澤びいきだからでしょう。
- 531 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/10/08(水) 21:41
- エクリチュール
( 0^〜^)
昔むかしのことです。まず、2300年くらい前の人のことです。その人は、「もの」には本質(「かたち」)がある、そしてあらかじめ「もの」の中に「かたち」が埋まっているのだ、と言いました。つぼみという「もの」はやがて本質(「かたち」)である花になります。花になるのはつぼみであるときから予定されています。
では、その予定は誰が決めたのか、「もの」は自分以外の「もの」にあこがれてそれになろうとしているのだ、とその人は考えました。するとそのルーツをたどっていくと、一つのものにたどりつきます。ピラミッドの頂点です。それは自分以外の「もの」にあこがれることはありません。
( 0^〜^)
すこし時がくだります。だいたい750年くらい前の人です。その人はこの頂点にあるものが「神」だと言いました。出発点はわたしたちのまわりにある平凡な「もの」であるのですから、神だって、そう遠いところにあるわけではありません。
まあ神ですから、そんな簡単に姿を見せることはないでしょうが、痕跡くらいは見つかるでしょう。この痕跡をよく調べれば、神とは何か完全ではないにしても知ることができるのです。
- 532 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/10/08(水) 21:41
- ( 0^〜^)
さて、さらに時がくだって現在。「神」はいなくなりましたが、代わって彼女たちが現れました。俗に「アイドル」と呼ばれる彼女たちです。「アイドル」というのはもともと宗教用語ですから、彼女たちを「神」扱いしてもかまわないでしょう。
彼女たちのことを、わたしたちは完全に知ることができません。事務所公認のもの、ASAYANに代表されるTV番組、進行が決まりきったコンサートが与えられました。しかし、公認の正典以外にも、外典というものがあります。
( 0^〜^)
外典とは、「聖書には収録されていない、聖書的な古文書のこと」です。公認のものではないとはいえ、「神」の教えにまったく無関係ではありません。そこには「神」の痕跡があるからです。
そして、彼女たちにも外典があります。そこには、痕跡がなければならないのでしょう。そして、それを読み取ることが、読者のつとめとなるのでしょう。
- 533 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/10/14(火) 21:43
- ストーリー/プロット
( 0^〜^)
『パンドラ』(短編企画「秘密」より)
http://mseek.nendo.net/event/messe02/1047803740.html
『そして、くりかえす』(第二回マルチ企画より)
http://park3.wakwak.com/~m-seek/cgi-bin/read.cgi/big/1064069229/
( 0^〜^)
プロット【plot】
物語・小説・戯曲・映画などの筋立て。構想。 (新辞林 三省堂)
とありますが、これではまったく不十分で、ストーリー(あるいはプレテクスト)との区別がまったくつきません。不親切です。
- 534 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/10/14(火) 21:43
- ( 0^〜^)
とはいえ、プロットをはっきりと定義づけることは難しいところもあります。ある人が言います。「(A)となった。そして(B)となった」とあればストーリーであり、「(A)となった。なので(B)となった」とあればプロットとなります。ここには因果関係の有無が問題とされるのですが、おそらくこれだけではないでしょう。
ただ粗筋のようなものを提示されたとき、読者はこれをどう受け止めるべきなのでしょうか。ストーリー丸投げのような物語でも、そこに作者が介在する限りはプロットが「ある」と理解するべきです。
( 0^〜^)
プロットとは、作者によってストーリー(プレテクスト)に手を加えられた何かのことです。時間軸にのっとってずらずらと出来事を並べたのも、作者がそうしたからであり、あるいは逆に時間軸を無視してバラバラに並べたりするのもそうです。
ではプロットを練るということは何を意味しているのでしょうか。
- 535 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/10/14(火) 21:43
- ( 0^〜^)
『パンドラ』では、時間軸がさかさまになっています。なぜそうしたか。時間軸通りに並べれば、この物語に提示されている謎が謎でなくなってしまうからです。作者は当然のことをしたわけです。
推理小説はプロットの塊です。事件の真相たる出来事Aより、事件の結果である出来事Bがまずはじめに提示され、探偵が出来事Aを探るという構造になっています。推理小説に限らず、なんらかの謎を解明する物語は全てそうです。
( 0^〜^)
ストーリーを生かすも殺すもプロット次第です。通常の推理小説では、ストーリーの提示を逆転させていますが、語りのレベルでの時間推移は通常のままです。ところが『パンドラ』では、語りのレベルの時間推移も逆転しています。
それはなぜか。物語を読者に語ってくれる「ワトスン」役が存在しないからです。推理小説における「ワトスン」役の真の役割(読者や主人公のための道化ではない)は、読者を物語に引きずりこむ水先案内人です。彼がいるからこそ、読者は安心して作り物の世界にとけこむことができます。
- 536 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/10/14(火) 21:44
- ( 0^〜^)
ところが、『パンドラ』ではストーリーの都合上、「ワトスン」役を置くことができません(不自然になります)。二重の謎をしかけたい、語りのレベルで読者と物語の鉄条網を作りたくない。レス数の制約もあることですし、作者は後者を切り捨てることになったわけです。
具体的にいいますと、この話では謎が提示されていますが、明快な答えは示されていません。注意深く、細部を読めば(斜め読みなど許されない!)、登場人物の少なさからおぼろげに答えがわかるようになっています。
( 0^〜^)
明快な答えがないゆえに、それが答えなのかどうか、読者にははっきりとはわかりません。「私は混乱する」なる一文がありますが、とんでもない。混乱しているのは(させらているのは)読者です。
この物語は一種の叙述トリックです。叙述トリックの欠点は、けして明かしてはならない作者の影を読者にさらしてしまうという欠点があります。その上一方的に混乱させられるのでは、作者と読者の距離はますます離れるばかりとなります(それでいいじゃないか、という人もいるでしょうが)。
- 537 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/10/14(火) 21:44
- ( 0^〜^)
さて、プロットの役割はほかにもあります。プロット(あるいは構造)そのものがストーリー(あるいは主題)を補強・補完することがあります。
「そして、くりかえす」ではストーリーにおいては時間の流れが円環構造をなしており、プロット(語りのレベル)においては通常の時間軸に沿って流れています。
( 0^〜^)
いつまでたってもハロモニ劇場で同じことを繰り返す。これは日常世界におけるわたしたちの生活を表しています。時計の発明、時間の発見により、わたしたちは決められたスケジュールに従って、学校へ行き、会社に行き、生活しなければなりません。このスケジュールに背けば、社会からの落伍者とみなされます。
一方、(一見)非日常の世界の住人である彼女たちも、決まった時間にコンサートを開き、CDを出し、TV番組の収録を行わなければなりません。大きなスパンであれば、誰かが加入し、誰かが卒業するのを繰り返しています。
- 538 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/10/14(火) 21:44
- ( 0^〜^)
それにがまんができず、反乱を企てようとするのが、「問題児」なのが藤本です。彼女は円環構造をぶち壊すために、ひとを(自分を)殺します。しかし、それは現代の時計社会への反逆です。よって彼女は最後に排除されなければなりません。
時が一様に流れるというのはフィクションです。時計が時の流れ方を決めるのではありません。わたしたちが勝手にそうと決めつけているだけです。藤本は、循環する時間の流れ(ストーリー)を壊そうとして、直線的に流れる時間の流れ(プロット)によって滅びます。ここにおいてプロットのストーリーに対する優位が決定しています。循環する時間など存在しないことが強く示されました。
( 0^〜^)
プロットは、単純明快なストーリーに因果関係を付与することで「物語」になります(なんとなくテクストとは呼びたくない)。
プロットこそがストーリーを活性化させる要素であり、主たりえます。多くの作者は意識的・無意識的にこのことを念頭においています。独創的なストーリーはもはやありません。ならば、作者ができることはそこに新たなプロットを付け加えること、、それしかないような気がします。
- 539 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/10/14(火) 21:45
- ( 0^〜^)
読者はそんなこと、まったく気にする必要はありませんが。
- 540 名前:名無飼育さん 投稿日:2003/10/17(金) 21:28
- ( ´D`)<なるほろ
- 541 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/20(火) 22:42
- (0`〜´)<……
- 542 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/20(火) 23:06
- モデル読者
( 0^〜^)
おそらく作者というものは、自分の話を読んでくれる人のことをある程度想定しながら書いています。「読者なんかいらねーよ。オレは自分が楽しけりゃそれでいいんだ」などという人のことは信用してはなりません。
ではどのような読者を想定しているのでしょうか。作者の言いたいこと、主張したいことをすべて理解してくれる読者がいればいいのですが、残念ながらそんな人はいません。いたらその人はキ(ryです。速やかに隔(ryしましょう。
( 0^〜^)
実際のところ、理想の読者はupした後の作者自身ということになるのでしょうか。upされた以上作者は手直しができないので、一般の読者と同じ立場になります。ところが、書いた後の作者が理想の読者とはなりません。作者の意図を超えたとんでもない読み方をする読者がいるかもしれないからです。そしてその読み方が妥当になる場合があります。
オペラの「フィガロの結婚」は、書かれた直後はいざ知らず、現代では男性原理と女性原理の対立を描いたものだとする批評があり、これは相当支持を得ているようです。時の流れが解釈の変化をもたらすことは多々あります。
- 543 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/20(火) 23:06
- ( 0^〜^)
例えば『市井紗耶香 「我が闘争」 』は、書かれた当時と現在では読み方が変わります。当たり前です。当時と状況が全然異なるのですから。読み始めて6行目で思わず目をむいてしまうことでしょう。作品自体は変わらなくても読者(モデル)が変化してしまうわけです。
ってことは、理想の読者モデルを作者が念頭に置くことは不可能となります。
( 0^〜^)
ですので、「なんで読者はこの話をわかってくれないんだー」「伏線やオチに気づかぬ愚民どもめ」「世に出すのが十年早かった」などと愚痴をこぼしても仕方ありません。いつか脚光を浴びるときが来るかもしれませんよ。あはははははは。
- 544 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/21(水) 01:19
- バカにすんない!
- 545 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/21(水) 02:20
- 俺の作品がきっかけで、100年後に娘。が再評価されますがなにか
- 546 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/22(木) 18:41
- いーこと考えました
次の企画では皆さんタイトルを数字にしましょう
すると「14 21」みたいになって名無しチャットが混乱して楽しいと思いますがいかがですか美貴様?
- 547 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/23(金) 19:49
- ( 0^〜^)
>>544
あははははははは
>>545
すばらすぃ
>>546
誰が美貴様だ
- 548 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/19(木) 23:47
- (0T〜T)
第一の危機が訪れ、それを回避するためにとった方法が第二の危機を呼び起こしました。
果たして再度の危機をくぐりぬける良策はあるや否や。
- 549 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/24(火) 00:34
- 企画チネチネと関係あるの?
- 550 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/24(火) 22:51
- (0T〜T)
>>549 全く関係ありませぬ
とりあえず青板と風板はおしまいです。
- 551 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/04(木) 21:42
- 理想論
( 0^〜^)
ピーター・カーウェンは、どこから見ても、われわれと同じように健全であった。別に抑圧された欲望とか、口に出していえない願望のようなものも、持ってはいなかった。もっとも、強いて欠点をさがすとすれば、神経質で心の落ち着きを欠いていたのが、欠点だったといえるかもしれない。つまり彼は、よくある、片時もじっとしていられない、いつも何かのことで気をもんでいるような男だった。しかし、普通の人間だったら、そんなことを彼の細君のようにぐずぐずとがめ立てはしなかったであろう。
(ロイ・ヴィカーズ『そんなつまらぬこと』)
( 0^〜^)
この書き出しでは、今では懐かしい英国教養を身につけた人も持って回った表現が少し鼻につきますが、とりあえずこのお話の主人公の性格を決定させる描写となっています。登場人物がどんな性格であるかを、直接的にしろ間接的にしろ、作者は読者に提示しなければなりません。そうすることで登場人物に命が吹き込まれます。
もちろんそうでない話もあります。それは物語の虚構性そのものを問う話となりやすいので、極めて例外的な話となるでしょう。
- 552 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/04(木) 21:43
- ( 0^〜^)
ところが、娘。小説となると事情はがらっと変わってしまいます。
なぜ美貴はわたしを気にするのか、これがどうしてもわからなかった。彼女はわたしが嫌いだったし、陰では、彼女流のおだやかな言い方だったにせよ、折さえあればかならずといっていいほど悪口を言っていることもわかっていた。きわめて心遣いのこまやかな人だから、露骨な言い方はするはずがなかったけれども、ちょっとした言いまわしやため息、美しい手のわずかな動きでも、考えていることははっきりとわかった。
(知る人ぞ知るあやみき小説)
( 0^〜^)
どうやら「わたし」である松浦と藤本の物語のようです。藤本は松浦が嫌いらしい。藤本は、表向きは上品を装っているが、陰では悪口をいいふらしているようです。そのように書いてあるのですが、読者はこの描写を信ずるに足る何かを持っているのでしょうか。
何もないところから世界を作り上げるのですから、作者の描写は絶対となります。その世界の全ては作者の内から生まれてきます。ところが、娘。小説においては、娘。の存在は作者の内部にはありません。作者から遠く離れた外部にあります。
そこで、その小説世界内の娘。と、絶対的な外部にいる娘。とが一致すると読者が信じてもよいと思われる何かが必要になります。それがなければ、そこに書いてあるのは、わたしたちが知っている娘。とは全く無関係な、同姓同名の別人の世界です。
- 553 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/04(木) 21:43
- ( 0^〜^)
このことは、登場人物の性格にとどまることではありません。小説世界内にあるすべての事物にあてはまります。俗に5W1Hなどといいますが、それら全てが、外部にある娘。となんらかのかかわりが必要となります。
全てなんて無理だ、娘。がどんな性格なんてわかるわけないだろう。もっともな疑問です。しかし、性格なんて、自分のそれすらわかっている人は少ないでしょう。全く赤の他人ならなおさらです。しかし、彼女たちの残した痕跡なら、わたしたちは目にしています。その痕跡は娘。そのものではありませんが、娘。にかかわる何かであることには間違いありません。どんな些細なものでも、それを読者に提示することで、作者と読者はその世界が娘。小説であるという契約を結ぶことができるわけです。
( 0^〜^)
パクリ騒ぎが定期的に起きています。法的には、小説のパクリは著作権侵害であるからダメなのだ、と言われています。しかし、作者と読者に対する倫理としては、パクリは「娘。と同姓同名の人物が出てくる、娘。とは全く無関係な話を提示した」ことが問題となります。パクリ作者は、読者に対しては、まず何においてもこの点でまっさきに非難されるべきです。
上の知る人ぞ知るあやみき小説、察しはついていると思いますが、そんなものは存在しません。目の前にあった本から抜き出して、「ルイーズ」を「美貴」に替えただけのものです。もしかしたら、だまっていればずっと騙しとおせたかもしれません。それは、パクリに限らず、娘。と同姓同名の人物が出てくる話を書くことが、原理的にいくらでも可能だからです。ものすごい傑作小説が生まれてくることもありうるでしょう。でも、それは娘。小説ではありません。
- 554 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/04(木) 21:43
- ( 0^〜^)
とある娘。短編で、「あやたん」が出てきました。当然、飼育小説ですから、読者は松浦だと思うのですが、実は平山あやだったという話。さて、どう理解するべきでしょうか。作者の詐術の肝は、「あや」と言えば(今や)「松浦」のことだ、という読者の先入観です。
その話に書かれている「あや」が、松浦あるいは平山の痕跡を持っているのか。読者はその判断をしないだろう、と作者は踏んでいます。そしておそらく多くの読者は判断を保留したことでしょう。となると、作者と読者はあまり好ましくない共犯関係を結んでいるという現実があることになります。しかしその現実が、パクリ小説を生み出す土壌となっているのではないでしょうか。
( 0^〜^)
などと大風呂敷を広げた感もありますが、しょせん理想論、理想論。
- 555 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/05(金) 18:03
- >絶対的な外部にいる娘。とが一致すると読者が信じてもよいと思われる何かが必要になります
ラブラブないしよしを好んで読んでいる人は何で外部とそれを繋いでいるのでしょうか?
- 556 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/05(金) 22:28
- ( 0^〜^)
>>555
「あや」だと言えば松浦、「いしよし」だといえば石川吉澤と思い込んでいると言ったらいいのでしょうか。「好ましくない共犯関係」です。
- 557 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/08(月) 22:06
- 娘。小説ってバーチャルな世界だね
大岡越前とか水戸黄門のドラマみたいなもんだ
- 558 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/09(火) 22:21
- ( 0^〜^)
バーチャルは仮想の意ですから当然そうですね。
お約束の世界というか、ある種の様式美はそれはそれでいいのでしょうが。
- 559 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/19(金) 21:25
- ( 0^〜^)
なんだかすっきり。
- 560 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/10(土) 13:18
- 地球が微熱らしい
( 0^〜^)
さてさて、花板の「ちらしずし」読みましょうか。
http://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/test/read.cgi/flower/1063357154/
( 0^〜^)
「かけっこ」(47-50)
この話の面白さは、ひとえに最後の一文、「やぐっちゃん 辻ちゃん 加護ちゃん 市井ちゃん 福田さん 圭ちゃん 彩っぺ 私 カオリ なっち よしこ 梨華ちゃんの順に 走って逃げた」にかかっています。
ここにつらつらと無機的に並べられたリストについて、その順番はあまり深く考える必要はありません。リストの効果は、その範囲が決定されることにあります。その範囲におさまっているもの、あふれているものが何かが提示されることになります。
さらに、ここには隠されたリストがもう一つあります。「指輪」「喧嘩」「婚約破棄」「暴力」など、結婚を間近に控えた男女にかかわる言葉が、先ほどのリストとは違い有機的に(比喩的に)並べれています。この二つのリストは相互に効果をほどこしています。
「かけっこ」という題名は、この隠されたリストにもかかってきます。男と女のかけっこはつきることなく繰り返されていくのです。
- 561 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/10(土) 13:18
- ( 0^〜^)
「変身」(56-59)
「変身」といえばカフカ。カフカといえば「変身」。カフカの変身は寓話であり、外面の変化=内面の変化を暗示しているのですが、そのような不条理はとうの昔に現代人には刷り込まれています。
だから、「アザラシ」に変身してしまった後藤は、外面の変化はあっても内面は変化しません。リンゴを投げつけられるかわりに、ピスタチオを与えられ、ひっそり息を引き取るかわりに、川をすいすい泳いでいくのです。
「サクリファイス」(77-80)
ドラゴンクエストやファイナルファンタジーなど、ゲーム機の電源を入れれば、そこには滅亡寸前の世界が現れます。DVDを見れば、機械に支配された地球や、異星人に侵略された地球がそこにあります。
日本が大きな戦争をした生々しい記憶はなくなり、それは記録でしか知ることができません。やがて笠井のいうところの「大量生」の時代が日本に訪れ、生々しい死の(擬似的な)体験すらバーチャルなものに変化しています。それでもみんな平等に死ぬわけですが。
一方で、中東やアフリカでは、今の日本人が体験しえない世界がまちがいなくあるわけで、中にはそんな日本に嫌気がして三島的な言動をとる人もいるでしょう。でも、わたしたちはこの後藤のようにドアを閉めるしかないのでしょう。
- 562 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/10(土) 13:19
- ( 0^〜^)
疲れたのでこれだけ。
- 563 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/07(金) 22:37
- ( 0^〜^)
共時態と通時態という言葉があります。共時態とは、時間の影響を抜きにしてものごとの構造を考えることです。
( 0^〜^)
さて、とある娘。小説があるとしましょう。その小説は、ずいぶん前に書かれたもので、当時はたいへん人気があったらしい。じゃあ読んでみるか、と、ストーリーはちょっと珍しいかもしれないけれど、市販の小説ではけっこうありふれている。どうしてこんな話が面白いと評判になったのだろう。
率直にその感想を述べたとします。ストーリーじゃないんだよ、当時の娘。の雰囲気に絶妙にマッチしていて、本物の娘。が動いているような感じがしたんだよ。
( 0^〜^)
そんなこと言われても、当時のその「感じ」を知らない読者は困ってしまいます。娘。小説が共時的であるとするならば、当時のことを指し示す何かがなければ、読者はその「感じ」を共有することができません。最後に出てくる言葉は
从*・ 。.・)<古参ちねちね
- 564 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/07(金) 22:38
- ( 0^〜^)
これでは双方ともに不幸に陥ってしまいます。「雰囲気」とか「感じ」というものこそが共時的なのであり、娘。小説が共時的なのではありません。
一般の小説と違い、作者や読者たちが共有しなければならないもの、娘。がなければなりません。ならば小説に娘。であると指し示す事実が必要です。娘。に関する知識があれば、誰もが知っているような事実。
( 0^〜^)
当然わたしたちが知りうる事実など微々たるもので、一個の小説として成り立たせるためには、その事実を補完する解釈や妄想でふくらませることになります。人によってその解釈や妄想が異なるわけですから、多種多様な物語が生まれることでしょう。そしてそれこそが娘。小説の豊穣をもたらしたのでしょう。
- 565 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/17(月) 06:18
- (0`〜´)<顎たん、消すなYO!
- 566 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/17(月) 22:30
- 文体の弊害
(0`〜´)<ブツブツ
( ^▽^)<よっすぃ〜、どうしたの?
(0`〜´)<顎たんがこのスレに貼られた宣伝スレをあぼ〜んしたんだ
( ^▽^)<良いことじゃない
(0`〜´)<いくない これじゃあ「作者と読者にとって極めて有害なスレ」がageられただけじゃないか。ただでさえ存在していいのか悪いのか怪しいスレなのに。
- 567 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/17(月) 22:31
- ( ^▽^)<それはおいといて、あたしの小説読んでくれる?
(0`〜´)<小説?
( ^▽^)<あたしたちが主人公の物語を書いたんだ 読むよ
吾輩は梨華である。名前はまだ無い。
どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でチャオチャオ泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて人間というものを見た。しかもあとで聞くとそれはヨッスィという人間中で一番獰悪な種族であったそうだ。このヨッスィというのは時々我々を捕えて煮て食うという話である。しかしその当時は何という考もなかったから別段恐しいとも思わなかった。ただ彼女の掌に載せられてスーと持ち上げられた時何だかフワフワした感じがあったばかりである。掌の上で少し落ちついてヨッスィの顔を見たのがいわゆる人間というものの見始であろう。この時妙なものだと思った感じが今でも残っている。第一毛をもって装飾されべきはずの顔がつるつるしてまるで薬缶だ。その後娘。にもだいぶ逢ったがこんな片輪には一度も出会わした事がない。のみならず顔の真中があまりに突起している。そうしてその穴の中から時々ぷうぷうと煙を吹く。どうも咽せぽくて実に弱った。これが人間の飲む煙草というものである事はようやくこの頃知った。
※この作品には、今日からみれば、不適切と受け取られる可能性のある表現がみられますが(ry
- 568 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/17(月) 22:31
- (0`〜´)<……
( ^▽^)<どう? うまく書けてるでしょ
(0`〜´)<名前は梨華なのに、名前がまだないとか……いやいや、それはおいといて、おおいに不満だ
( ^▽^)<やっぱりパクリはダメ?
(0`〜´)<パクリはアレとしてだ、文体が問題だね
( ^▽^)<文体?
(0`〜´)<文豪の書いた文章だから、非常にうまい だけども、娘。小説においてはそれは不純物なんだ
- 569 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/17(月) 22:32
- ( ^▽^)<文章が上手ならみんな楽しんでくれるんじゃない?
(0`〜´)<それは一般の小説の場合だよ 娘。小説では、うまい文章が娘。に先立ってめだつことは許されないんだ 読者はその文章に目をくらまされて、肝心要の娘。のことをおなざりにしちゃうんだ 読者に悪意はなくても
( ^▽^)<読者はちゃんと娘。を読み取ってくれるよ
(0`〜´)<読者を信用しちゃいけない ここに実例がある
http://mseek.nendo.net/event/pacifico03/1075981625.html
↑許すべからざる話
http://mseek.nendo.net/imp/1056376558.html#r385
↑その感想
(0`〜´)<ストーリーはまったくでたらめなのに、文章にまどわされたこの読者は「切ない」とまで錯覚を起こしてしまっている これは文体が引き起こした弊害だ
- 570 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/17(月) 22:32
- ( ^▽^)<じゃあどうすればいいの?
(0`〜´)<文章を平易に、簡潔に、余計なものを削ぎ落とすんだ そこに文章があるかどうか読者がわからなくなるまでに そうすれば、おのずと娘。が主となるはずだ
( ^▽^)<じゃあそうしてみる
( ^▽^)<できたー
梨華とヨッスィは、出会い、やがて別れた。(おしまい)
(0`〜´)<……
- 571 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/18(火) 01:13
- >>569
文体にまどわされたからこそ駄(ryが楽しめたんだから、むしろ文体は
必要不可欠とさえいえる
- 572 名前:名無し娘。 投稿日:2004/05/18(火) 21:04
- 要するに、名前が大事だって言ってんだな。
スワッピングさいこー。
- 573 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/18(火) 23:19
- (0`〜´)
>>571 そんなんじゃダメなの!
>>572 どこをどう要したんんだ
- 574 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/19(水) 23:19
- なにがダメ? 楽しんだほうが勝ち組。しかめっつらして理屈を
こねまわしてるよりいいよ」。
- 575 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/20(木) 00:03
- (0`〜´)
それはけして娘。(小説)を楽しんでいるわけではないのだ
理想と現実が食い違う場合、それは現実のほうが間違っているのだ
すなわち上部構造を下部構造が(ry
- 576 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/20(木) 02:10
- しかし娘。ネタをうまく文中に組み込んだ18ペネロウプを例に
挙げておいて、それはないんじゃないか?
- 577 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/20(木) 02:53
- 知ってたらあれだけど、ペネロウプ書いたのはこのスレの人だよ
- 578 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/20(木) 22:15
- 知ってたけど作品と作者は別のものだよ
- 579 名前:名無し娘。 投稿日:2004/05/20(木) 22:56
- 娘。小説は作者の自己満足のためにあるんじゃないの
- 580 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/21(金) 02:09
- 読者にとっては作者はどうでもいいよ。
作者にとっては読者はどうでもいいように。
- 581 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/21(金) 21:40
- (0`〜´)<話がずれてるような
- 582 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/22(土) 12:31
- 読者を意識しない作者と言うのが信じられない。
話はさらにそれるけど。
- 583 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/22(土) 22:15
- 作者って読者を意識してるようでしてないと思うけど。
読者としての自分は意識してるかもしれないけど。
- 584 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/23(日) 14:39
- (0`〜´)<作者と読者については>>542-543
- 585 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/09(水) 20:04
- ちねちね党要綱
( 0^〜^)
おさらいすると、
*娘。小説は「娘。」が主でなくてはならない。
*登場人物が娘。であることを指し示す「何か」が描写されなければならない。
この二つがあてはまるかどうかのツールが、
*登場人物である娘。の名前を他の無関係な名前に変えて違和感があるかどうか
(いわゆる交換不可能性)
- 586 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/09(水) 20:04
- ( 0^〜^)
さて、問題となるのが「*登場人物が娘。であることを指し示す「何か」が描写されなければならない」という項目です。読者は読み進めるうちに、どうしても「はたしてこれは自分たちが知っている娘。なのか? もしかしたらまったく違う人物でも小説は成り立つのではないか?」という疑問を持ってしまいがちです。
世の中にストーリーがあふれかえっている今、誰も書いたことのなかった独創的な話などもう存在しません。娘。でなくてかまわないなら、その辺に転がっている小説を読めばよい。そのような自体を作者は避けなければなりません。
- 587 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/09(水) 20:04
- ( 0^〜^)
そこで、作者は一種の担保を差し出します。それは実際のエピソードだったりする場合が多くなるでしょう。そのエピソードは小説のストーリーと深く絡んでいれば、読者は安心してその登場人物が娘。であると看做してくれるでしょう。
( 0^〜^)
しかししかし。
その鎮痛薬も効き目は長くは続かないのです。作者は断続的に投薬しなければなりません。しかもストーリーに絡んだ効果的なものを。
これは作者にとってたいへんな負担となります。何百何千ものレスに渡る大長編が当たり前のようになってしまった今、そんなことが果たして可能なのでしょうか?
- 588 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/09(水) 20:05
- ( 0^〜^)
というわけで、苦しんでいるそこのあなた。長編はあきらめて短編にしなさい。悪いことは言わないから。
- 589 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/10(木) 00:53
- 大長編のなかに一個あれば充分
- 590 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/10(木) 22:17
- (0`〜´)<一個で支えるのはムリっす
- 591 名前:vV)(Vv 投稿日:2004/06/14(月) 23:17
- じゃあ3個ぐらい
- 592 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/16(水) 23:08
- 長編ちねちね党に到る病
( 0^〜^)
さて、クイズ大会です。名作と言われる娘。小説の書き出しをわたしが書いたらどうなるか、やってみました。元の話はなんでしょう?
- 593 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/16(水) 23:09
- 1.
夜が更けた。
地中海の涼しげな風を私は心地よく感じた。
私は、時間がだんだんゆっくりと流れていく錯覚にとらわれた。
海岸沿いの通りは行き交う人でいっぱいだった。
それはいつものことなのだが、ラマダーンになるといっそうひどくなる。
飢えた人々はいつラマダーンが終るのかと待ちわびているのだ。
すでにテーブルには食事が並べられている。
奇妙な静寂が支配した。
- 594 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/16(水) 23:09
- ( 0^〜^)
2.
大学の夏休み直前、親からの仕送りが止まった。
父の会社が不景気で満足に給料が払えなくなってしまったらしい。
それならそうと早く教えてほしかった。もっとも、その事実を早めに知ったからといって、私がどうにかできる話ではない。
授業料や家賃は払ってくれるらしいが、生活費は自分で稼げという。
自慢ではないが、私は深層のお嬢様よろしくバイトなぞしたことがなかった。
金銭ではなく人間関係の問題だった。
他人からあれこれ指示されて喜ぶ人間ではなかった。
そんな私に見合うバイトなど数が知れていた。
- 595 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/16(水) 23:09
- ( 0^〜^)
3.
ロッカールームの雰囲気は最悪だった。あともう少しというところでワールドカップの出場権を逃したのだ。
涙にくれる者、うなだれる者。
矢口真里は悄然として腰をおろしていた。
( 0^〜^)
4.
私は古文が大の苦手だった。辻と加護もいばれるような点数ではないのだが、私のこの26点という点数を下回る人間はそうはいない。おかげで私は二人の罰ゲームを受けることになった。
- 596 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/16(水) 23:09
- ( 0^〜^)
5.
よっすぃが私の元から離れて一年がたった。よっすぃは「一人前になったら帰ってくる」と約束してくれたのだが、もうその期限が過ぎた。がまんできなくなった私は家出を決意し、よっすぃを追った。
場所は東京であり、田舎育ちの私には別天地だった。それでも慣れない電車を乗り継ぎながら、私はよっすぃが住んでいるアパートになんとかたどり着いた。
( 0^〜^)
6.
蒸し暑い黄昏時、吉澤はふらふらと家路を歩いていた。コンビニ袋をぶら下げながらよろよろ歩く様は、疲れたサラリーマンとあまり変わらない。
安アパートの自分の部屋にそっと入った。寝ている石川を起こさないように忍び足で風呂場に入ると、ようやく吉澤は一息ついた。
今日も犬のように働いた。明日矢口から支払われるであろう報酬を、さて何に使おうかと吉澤は皮算用を始めた。引越し費用、被服費、食費、そして何よりも登録料のことが吉澤の頭痛の種だった。
- 597 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/16(水) 23:10
- ( 0^〜^)
結論。わたしに長編は向いていない。
- 598 名前:vV)(Vv 投稿日:2004/06/16(水) 23:22
- 1:あなたの声が聞こえる
2:カテキョ
3:狂気の145cm
4:水魚な二人
5:トラップフォーカス
6:ハウンドブラッド
- 599 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/05(木) 21:51
- 二条河原落書
( 0^〜^)
此の頃シークにはやる物 放置パクリに偽文学
誤爆タイトル打ち間違え 二重投稿板違い
俄か批評家ネタバレレス ageレスochiレス雑談レス
自スレ忘るる企画人 ネタが入りたるハードディスク
一言感想阿諛追従 感想書きなる成出者
更新してもレスもなく 漏るる人なきまたーりスレ
慣れぬ返レス上のレス 相も変らぬレスをして
顎たん投稿珍しや したり顔なる話書き
我も我もと見ゆれども 巧みなりける偽り話
愚かなるにや荒しレス 業者広告満ち満ちて
煽りに顔を歪めつつ 気色ばみたる管理人
短編バトル近づけば うかれて騒ぐ放棄人
投稿数は数知れず 投票数を上回る
あまねく流行る大長編 初めの方の記憶なし
板ごとに立つそのスレは 荒涼数レス倉庫行き
シーク童の口ずさみ 十分の一をもらすなり……
- 600 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/10(火) 22:28
- 誰が娘。を殺すのか
( 0^〜^)
ども、五流推理作家(?)で妄想日記書きです。
今晩は推理小説と娘。小説のお話をしましょう。
( 0^〜^)
少なからず、推理娘。小説がこれまでに書かれています。わたしも書いています。
さて、余人はいざ知らず、わたしの書いた推理小説で人死にが出ることは滅多にありませんでした。そこで「どっちらけな結末で事件は解決する」などと、心ない感想書きに非難されることもあります。
はて、なぜ私は人死にの出ない推理小説を書くのでしょう。そもそも推理小説って何なのでしょうか。
- 601 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/10(火) 22:28
- ( 0^〜^)
推理小説は、まず1930年代にアメリカとイギリスで盛んに書かれ、読まれました。なぜこの二国だったのかという理由は、諸説いろいろあります。とある評論家兼小説家は以下のように断定しました。
*第一次世界大戦前は、制限戦争(またはその名残があった)が、大戦は総力戦となった。
*その結果、大量の人間がボロ屑のように死んでいった。
*それまでの戦争のような英雄的、栄光ある死は存在しなくなった。
*失われた尊厳ある死を取り戻さなくてはならない。
*推理小説において、被害者たる死者は、探偵と犯人によってスポットライトを当てられる。
*犯人に殺されるという最初の特権的地位、探偵による解決で第二の特権的地位を与えられる。
( 0^〜^)
推理小説の中で行われる殺人は、犯人によって行われますが、その死が意味を持つのは探偵が探偵するからです。戦場ではそんなことは行われません。そこでの死は無名の死なのですから。
戦争での無意味となってしまった死は、現代日本でも起こっています。延命治療でほとんど意識もなく、ただ息をしているだけという病人は「意味ある生」を生きているのでしょうか。
- 602 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/10(火) 22:28
- ( 0^〜^)
さてさて、娘。小説に移りましょう。娘。小説は「娘。+小説」ですから、わたしたちは小説の内部たる「物語」のほかに、小説の外部たる「物語」(つまり、テレビやコンサート会場で見ることのできるホンモノの彼女たち)を想起しないわけにはいきません。
ということは、必然的に小説内部で行われた殺人は、小説外部の彼女とリンクすることになります(当然ながら読者の脳内でですよ)。
( 0^〜^)
はて、このことは何を意味しているのでしょうか。殺人、死にはネガティブなイメージがあります。無惨に殺された彼女の死体の描写があれば、それがそのまま一つのイメージとなり、読者はホンモノの彼女にそれを重ね合わせる作業をします。
わたしは「平家みちよ」が殺される話を書きました。読者はその「死」のイメージと、ホンモノの彼女を結合させます。死、すなわち現世からの退場は、彼女の(一応の)わたしたちの眼前の舞台からの退場に変換させられます。隠喩ですね。
- 603 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/10(火) 22:29
- ( 0^〜^)
それによって、作者は読者に一定のイメージや印象を植えつけようとしているのでしょう。しかし、これは一種の操作にすぎません。
個々の死は、もはや世界にとって無意味です(つまり彼女の退場は無意味である!?)。作者はそれを推理小説にすることで、犯人に殺させ探偵に探偵させることで、スポットライトを当てようとしたのでした。それによって彼女の死に栄光を与えようとしたのです。
しかしながら、それは結局詐術に他なりません。先の話では事件は解決されませんでした。意味を取り戻すことは、現在のところ不可能だからでしょう。
( 0^〜^)
推理小説が書かれるのは、それが一つの時代精神だからです。
ホンモノの彼女たちは加入と卒業を繰り返します。そのことに対する一つの抵抗と言えるかもしれません。ホンモノの彼女たちだって、「卒業」というスポットライトを浴びてきました。しかし、もちろんわたしたちはそれが「無意味」であることを知っています。無意味でも、意味あることとしてそのように扱っています。それは欺瞞、詐術なんでしょうか。
- 604 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/10(火) 22:29
- ( 0^〜^)
推理小説は現代の裏返しのような存在です。「意味」を書くことで、背後の「無意味」を浮かび上がらせるわけですね。
さて、一方。推理小説における「犯人−探偵」の図式は、「作者−読者」の図式であると言われています。作者が読者に対して謎を出すのだから、作者が犯人役で読者が探偵役となるのですから。
ところが、「謎を出せ」と作者に命令するのは読者です。ここで立場が逆転します。作品をめぐって、読者は犯人になるのです。となると、無意味の「死」にスポットライトを浴びせようとするのは読者ということになります。作者は敏感にそれを察知して形に表すだけの存在です。
( 0^〜^)
つまり、「娘。」を殺すのは読者、あなたなのです。
- 605 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/15(日) 19:46
- 作品で読者を犯人に仕立てることに失敗したのに詭弁によって成就させようとするとは…
- 606 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/17(火) 17:42
- 〃〃∩ _, ,_
⊂⌒从#’Д’) <詭弁ちゃうよ!
`ヽ_つ ⊂ノ
ジタバタ
_, ,_
〃〃 从#’Д’)∩ <いーたんも犯人やりたいんやよ!!
⊂ (
ヽ∩ つ ジタバタ
- 607 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/26(火) 23:11
- (0^〜^)<ネタがにゃー
- 608 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/05(金) 21:20
- ‖ ‖
ノハヽヽ ‖ 吉澤ひとみの短期集中講座 ...‖
(0^〜^) /.‖ ..‖
(1 ∀)つ .‖ 娘。探偵小説解読 .‖
┳━━━┳. ‖ ‖
┃┌─┐┃  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┃│ │┃
┃└─┘┃
┣━━━┫
- 609 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/05(金) 21:21
- 第1回 論理の構造
( 0^〜^)
謎は解決されなければなりません。そして、読者を納得させるには、その解決に至る推理が論理的でなければな
りません。
なるほど、多くの探偵小説で、探偵は論理的な推理を行います。ではその推理のどのあたりが論理的なのでしょう
か。
( 0^〜^)
暇な学者がわかりやすい例をあげてるので、これをパクっちゃいます。
1 重いナイフ傷はすべて出血につながる
2 これは重いナイフ傷であった
3 出血があった
- 610 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/05(金) 21:21
- ( 0^〜^)
推理は、「演繹的な推理(ディティクション)」「帰納的な推理(インダクション)」「仮説形成(アブダクション)」の三つの方法があるそうです。
演繹的な推理では、「重いナイフ傷はすべて出血につながる、これは重いナイフ傷であった」よって「出血があった」という流れになります。この推理方法のよいところは、純粋な論理だけで導かれた結果は、必ずといっていいほど妥当なものになることです。
帰納的な推理では、「これは重いナイフ傷であった、出血があった」よって「重いナイフ傷はすべて出血につながる」という流れになります。これは最後に「実験」で実証する必要が出てきます。
この「演繹」「帰納」という言葉は、高校に通ったことのある人なら、一度は耳にしたことがあるでしょう。思い出すだけでも身の毛がよだつ数学の時間。
- 611 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/05(金) 21:21
- ( 0^〜^)
最後の「仮説形成」。これはあまり聞かない言葉です。この推理方法は、次のような筋道をたどります。
「重いナイフ傷はすべて出血につながる、出血があった」よって「これは重いナイフ傷であった」
( 0^〜^)
なんでしょう、これは。出血があったからといって、それはナイフ傷だとは限らないのではないでしょうか。出血をもたらす凶器などいくらでもあるでしょう。
この三番目の推理方法、いくらなんでもこれを使う探偵なんかいるわけないじゃないか。あにはからんや、ほとんどの、もしかしたらすべての探偵はこの「仮説形成」、すなわち「憶測」を使って推理しているのです。
- 612 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/05(金) 21:22
- ( 0^〜^)
『Hot Soup Summer』
ttp://www.geocities.co.jp/Bookend-Hemingway/7323/hozon/tanpen3/hotsoupsummer.html
( 0^〜^)
この娘。探偵小説で、吉澤は不思議な光景を目にします。どこかのおじさんが暑い日に熱いコーンクリームスープの缶を三本買っていたのです。
石川は次のような「仮説形成」を行います。
「金魚は口の大きい缶の中に入れることができる」
「男は口の大きい缶を買った」
よって、「男は金魚を缶の中に入れた」
- 613 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/05(金) 21:22
- ( 0^〜^)
演繹的な推理方法ならば、「金魚は口の大きい缶の中に入れることができる、男は金魚を缶の中に入れた」よって「男は口の大きい缶を買った」。
帰納的な推理方法ならば、「男は口の大きい缶を買った、男は金魚を缶の中に入れた」よって「金魚は口の大きい缶の中に入れることができる」
( 0^〜^)
こうして三つ並べてみるとどうでしょう。演繹的な推理、帰納的な推理、ともにこれでは探偵小説になりません。当たり前すぎて、読者に爽快なカタルシスを与えることができないからです。
しかしながら、先ほど書いたように、仮説形成では、その推理が真実なのかどうかわかりません。そこで、ホームズ物語ならば、「どうしてわかったんだい」と驚いてくれるワトスンが、あるいは仮説を検証してくれる者──「犯人の自白=作者」の存在が必要となるのです。
- 614 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/05(金) 21:22
- ( 0^〜^)
『Hot Soup Summer』では、吉澤がワトスン役を務めています。が、石川の仮説=憶測は何一つ検証されないまま、登場人物たちが幸せなまま終わります。いや、ちょっと待ってよ、と読者が手を伸ばそうとしても、幕は強引に下ろされてしまうのです。
もし吉澤存在せず、石川が仮説検証を示すだけだったとしたら、「あれやこれやをなんとなく推理して自己納得していく話」(byキャラクター小説の世界)と言われてしまいます。
( 0^〜^)
探偵が最後になって「犯人は最初からわかっていた」などとほざくのを聞いて、「なら最初に捕まえておけよ」とよくつっこまれるのですが、探偵は「仮説検証=憶測」しかできないのですから、最初に犯人を指摘しても鼻で笑われるだけです。
ですので、探偵は罠をはったり自白を引き出そうと苦心するわけです。あるいは、憶測の幅を狭めようと、いろいろな状況証拠をかき集めて回るのです。
- 615 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/05(金) 21:23
- ( 0^〜^)
『最後の誕生日』
http://mseek.nendo.net/event/messe05/1088347291.html
( 0^〜^)
ここで使われている石川の推理は、「犯人しか知りえないことを知っているから、その人間が犯人だ」という論法です。
「犯人しかボトルの破片の形を知りえない」
「矢口は破片の形を知っている」
よって、「矢口が犯人である」
- 616 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/05(金) 21:23
- ( 0^〜^)
これは見事な演繹的な推理です。もちろん、大前提となる「犯人しかボトルの破片の形を知りえない」のはほんとうなのかとか、「矢口がうかつすぎるし、不自然だ」という批評もありうるでしょう。
ここでは、ワトスン役も、犯人の自白もありません。もちろん、演繹的な推理によって導かれたのですから、それらは不要となり、最後の陰鬱な締めがいっそう効果的となるのです。
( 0^〜^)
しかし、このような演繹的な推理はほとんど不可能に近いのは前述したとおりです。
娘。探偵小説には、厳しい茨の道が控えているのです。
- 617 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/06(土) 21:36
- | |/ ◎◎ \|
| | ◎◎◎ |
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/ __ノハヽヽ____
/ / (0´〜`) / 吉澤ひとみの短期集中講座
/ / ̄O⌒⌒O  ̄ )
/ / ※Hitomi※ / 娘。探偵小説解読...zzz
(___________,ノ
- 618 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/06(土) 21:37
- 第2回 探偵する理由
( 0^〜^)
君、誰の許可を得て、探偵なんかしてるんだ?
( 0^〜^)
謎は、きっちりおつりなしに解明されなければなりません。それは、謎の存在がわたしたちの心をかき乱すからです。不思議な現象を解き明かしたい、それは人間の持つ根源的な欲求なのでしょう。
しかし……。
- 619 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/06(土) 21:37
- ( 0^〜^)
「批犯罪化」というものがあります。それまで犯罪であった行為が、犯罪でなくなることです。大昔は姦通罪というのがありましたが、現在の日本の刑法にはそんな罪状はありません。法益を重視する立場から言えば、侵害される夫の法益などない、という理屈になるのでしょうし、社会秩序の維持を重視する立場だったら、もはや姦通は社会秩序を乱すものではない、ということになるのでしょう。
刑法の守るものは「法益」である、との説が主流なのですが、なかなかどうして、「社会秩序」という説のほうが理屈ぬきに強い気がします。
( 0^〜^)
そう、探偵が謎を解くのは頭脳の欲求だ、と探偵は言うでしょう。しかし、人々が探偵に望むのは、カオスに陥った人間社会に秩序を取り戻すことなのです。それ以上でもそれ以下でもありません。
普通の探偵小説でさえそうなのだから、娘。探偵小説の場合はこの点がもっと強調されるべきでしょう。名だたるあふぉ揃いの面々が、知識的欲求のために探偵するなんて、おとぎ話じゃないんだから。
- 620 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/06(土) 21:37
- ( 0^〜^)
『冬の雨』
http://mseek.nendo.net/event/pacifico01/1039436341.html
( 0^〜^)
探偵するのは吉澤です。彼女はけして、脳細胞が求めるままに探偵するのではありません。辻がクリスマスツリーを壊したという疑いが、その場の雰囲気を気まずくしてしまったため、仕方なく行っているのです。もし、辻が叱られることなくまったりな雰囲気に終始しているのだったら、探偵する必要がないでしょう。けして、クリスマスツリーの所有者の侵害された法益のために探偵するのではないのです。
失われた秩序を回復させることを第一義に、そしてその場のみんなを納得させる推理だけがここに求められています。そして吉澤は、第一の推理を披露します。すなわち、カーテンがツリーにひっかかって倒れたのだと。
( 0^〜^)
この推理は、飯田に対して説得力を持ちえませんでした。だから吉澤は強引に納得させるのですが、これでは失敗です。だから、吉澤は再び秩序を回復させる推理を行わなければなりません。飯田さんはしぶしぶながらも納得させられたのですが、読者はまだ納得していないのだから。
そこで、吉澤は第二の推理を行います。その推理は、当然ながら「仮説形成(アブダクション)」なのですが、その問題はここでは省きます。
- 621 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/06(土) 21:38
- ( 0^〜^)
さて、吉澤の第二の推理によって秩序は回復されたのでしょうか?
とりあえず、ツリーに関する問題は、明快に解かれたと言ってよいでしょう。しかしながら、別の問題が浮かび上がりました。その動機が、辻と加護の隠された確執が明らかにされてしまいました。つまり、再び秩序が乱されてしまったのです。そしてその責任は、その確執を露わにさせた吉澤=探偵にあります。
しかし、これはもはや探偵の手には負えないものとなっています。ついでに吉澤と石川の微妙な関係までもが浮上してきて、そのまま終わってしまいます。
( 0^〜^)
しかし、それは物語内部の問題。探偵の役割が謎を解決して秩序を取り戻すことであるならば、探偵小説の役割は謎の解決を通して隠されたものを明らかにすることだからです。
『冬の雨』では辻と加護、石川と吉澤の対比が鮮やかに提示されました。わずかながらに得られる、彼女たちの痕跡から隠蔽されたものを露わにする装置の一つが、娘。探偵小説であるのです。
- 622 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/12(金) 22:37
- 探偵の論理と犯人の論理
( 0^〜^)
さて、論理を駆使するのは探偵ばかりとは限りません。犯人だって、なかなかどうして、実に論理的な考えをするものです。
( 0^〜^)
探偵の論理と犯人の論理の違いとは何か。単に、世の中に受け入れられるかどうかの違いだけです。シャーロック・ホームズは、探偵になっていなければ随一の犯罪者になっていたと書かれていますし、初期の明智小五郎に到っては犯罪者と紙一重です。
- 623 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/12(金) 22:37
- ( 0^〜^)
たとえば、憎んでいる人間がいるとしましょう。常識人ならば、「あいつの存在が憎い」のであるならば、昇華するなりなんなりするところでしょう。しかし犯人は「あいつの存在をなくしてしまえばいい」となるわけです。世の中、殺人が絶えたことなどないのですから、ごく普通の感情ということになります。
常識人がそれを踏みとどまるのは規範意識あるいは損得勘定が働くからであって、そんなものは実に根拠薄弱であうことは言うまでもありません。
( 0^〜^)
さて、探偵小説においては、探偵の論理を愉しむ話と、犯人の論理を愉しむ話の二種類があることになります。娘。探偵小説ならば、その論理がホンモノ(と思われる)彼女たちの痕跡に立脚していることが望ましいのでしょう。
- 624 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/12(金) 22:37
- ( 0^〜^)
『アメの袋』
http://mseek.nendo.net/wood/999265995.html#r1
( 0^〜^)
この話では、犯人と目される人物は、(「辻を甘やかしたい」→)「辻に食べ物を与えたい」→「辻のアメ袋を盗めばよい」という論理をたどります。その論理は、正しいのでしょうか、正しくないのでしょうか。
この話、犯人に対比されるべき常識人(おそらく矢口)を配置すべきなんでしょう。なぜなら、探偵役がちっとも常識人ではないからです。
- 625 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/12(金) 22:38
- ( 0^〜^)
『おまえたちが犯人だ』
http://mseek.nendo.net/wind/1048597738.html#r148
『有限実行』
http://mseek.nendo.net/event/big04/1063603536.html
( 0^〜^)
この二つの話では、探偵がありもしない(?)事件をでっちあげ、挙句の果てに探偵自身が犯人であるとの結論を下してしまいます。
ここに探偵と犯人の親近性が表れています。「犯罪者は芸術家で、探偵は批評家だ」との言葉がありますが、とんでもない。探偵=犯人、すなわち自作自演の関係にあるのです。
- 626 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/12(金) 22:38
- ( 0^〜^)
探偵の論理は、前述のとおりアブダクション(仮説形成)に頼りがちですが、犯人の論理は純粋に論理的なものです。犯人の論理を前面に打ち出したほうが、娘。探偵小説としては成立しやすいのかもしれません。
( 0^〜^)
この項、宣伝を兼ねています。
- 627 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/11(金) 20:54
- いくら叫んでも誰も助けてくれないし
(0^〜^)
『ポケチ!』
http://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/test/read.cgi/wood/1093623972/
- 628 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/11(金) 20:55
- (0^〜^)
はじめのうほうは軽快なコミックノベルなのですが、最後、新垣への吉澤の手紙で様子ががらっと変わってしまいます。そして、その手紙が重く心にのしかかってきます。なぜだろう?
(0^〜^)
ストーリーだけ追えば、モラトリアムから抜け出せないでいる大学生の心情がそのまま語られているだけ、と取れます。それだけではなんなので、もうちょい掘り下げて見ましょう。
就職活動と「ポケチ」配りの対比があります。通常の価値判断によれば、「ポケチ」配りなど、学生アルバイターかフリーターの仕事だと思われるでしょう。つまり生活を支える職業としてはあまりにも不安定で、不完全です。しかしながら、この吉澤は通常人と異なり、「ポケチ」配りこそが愉悦の時をもたらしてくれると考えています。
- 629 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/11(金) 20:56
- (0^〜^)
ドイツ語でいう Beruf と Arbeit の違いです。Beruf とはもともと神より与えられた「天職」の意味で使われていました。つまり通常の「仕事」「職業」と異なり、強い倫理的態度が求められます。
「ポケチ」配りは、それそのものはたいした仕事ではないかもしれません。配られる「ポケチ」は、配られる方はポケットティッシュが目当てですが、配る方はポケットティッシュにくっついている広告が目的です。ポケットティッシュそのものはあっというまに消費されますが、目に飛び込んでくる広告は、その紙が捨てられても、わたしたちの深層心理に深く刻みこまれます。
(0^〜^)
「ポケチ」配りにかかる諸費用、パルプ代、印刷費、人件費、すべてはこの広告効果に変換されます。広告とはきわめて資本主義的な産物です(旧ソ連に商品の看板広告があった!?)。そして、ヴェーバーによれば Beruf 「天職」観念こそが、資本主義を発達させる精神的エネルギーになったのであるから、一見、社会的にドロップアウトしたとみなされる吉澤こそが、資本主義の担い手として最もふさわしい人物であることが、ここに示されているのです。
そして吉澤のあとを引き継いだ新垣は、「ポケチ配り」に精を出します。きわめて資本主義的で、非資本主義的な行為……。
- 630 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/11(金) 20:56
- (0^〜^)
あー、やめやめ。
(0^〜^)
娘。小説に娘。が必要ならば、娘。小説感想にだって娘。が必要でしょう。
- 631 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/11(金) 20:58
- (0^〜^)
この手紙の部分を読んだわたしは、吉澤ヲタなわたしは、言いようもない不安にとらわれたのです。「卒業」したら、それまで自然にやっていたことがまったく通用しなくなる世界。これまでそういう例を多く見せつけられてきたわたしは、その不安を一笑に付すことなどできません。
しかし、いつかは「卒業」するときがきます。いつまでもモラトリアムにいることはできません。吉澤の上には、もう矢口しかいませんし。
(0^〜^)
「ポケチ」配りは、普通の職業に比べると本業と言えるものではありません。娘。で例えるなら、フットサル普及活動がそうかもしれません。「球蹴りなんかしてないで、歌やダンスをもっと練習したらどうなんだ」と。
田舎に帰る吉澤は、まあ敗北者でしょう。「ポケチ」配りなんか、通常人には慰めにもならない、とるにたらない仕事です。いつかはわたしたちの目の前から消えてしまう、しかし、彼女はどこかで「ポケチ」配りをやっているかもしれない、そんな彼女の姿を、いつまでも、わたしは、想像、し続けることが、できたらいいな。
- 632 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/11(金) 20:59
- (0^〜^)
※ 「かなりテキトーなこといったんだけど里沙ちゃんマジに受け取っちゃうからおかしくてさ」という一文から、この手紙そのもがフェイクという可能性も考慮に入れる必要があるかもしれません。
- 633 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/09(水) 22:11
- 娘。と探偵小説
( 0^〜^)
http://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/test/read.cgi/dream/1100959705/
ミステリ短編スレがたいへん寂しいかぎり。「人は誰でも一つくらいはトリックのネタを持っているものだ」とよく言われていますが、トリックがあればミステリが書けるわけではありません。トリックのネタを持っていたにしても、その処理方法でとまどう人が多いのではないでしょうか。
まず、「ミステリにはトリックがつきものだ」という誤謬を正さなければなりません。ミステリは単なるパズル、犯人あてごっこではありません。ミステリ、あるいは推理小説という呼び名が誤解を招いているのでしょう。探偵小説と呼ぶのがしっくりきます。ことに娘。小説+ミステリであるならば、トリックやパズルが主眼になってはいけません。光を当てられるべきは娘。なのです。
( 0^〜^)
では、どうしたらいいのか、と迷っているそこのあなた。いいやり方がありますぜ。
- 634 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/09(水) 22:13
- ( 0^〜^)
ミステリの構造はいたって単純で、謎→解決、これだけです。トリックというのは謎を作るためのスパイスであって、必須ではありません。しかし解決部分はなくてはならないものであり、それは偶然ではなく人知によってなされなければなりません。「トリックよりロジック」と言われるゆえんです。
では謎を作り、解決させましょう。はたしてそれは娘。小説たりえるのか。
( 0^〜^)
ちょいと視点を変えてみましょう。
探偵小説にはたいがい名探偵が出てきます。もちろん、出てこない話もあるのですが、人々の印象に残るのは、平凡な探偵ではなく、神のような知恵を持つ名探偵です。
先に書いたように、名探偵の推理は演繹的でも帰納的でもありません。状況証拠から、いくつかの仮説を形成するのです(状況証拠は重要だ、とホームズは述べています)。探偵は即断しません。複数の仮説を打ち立て、その後だんだん明らかになってくる事情や証拠で仮説をふるいにかけます。そうしておいて、仮説が一つだけになってから「謎は解けた」「真実は常に一つ」などと言い出すわけです。何人も死んでから「わかった」言うのは遅い、という非難は当たりません。何人か死ぬまで仮説が一つにならなかっただけのことです。
- 635 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/09(水) 22:14
- ( 0^〜^)
仮説を一つに絞るに当たって、動機が重要なファクターとなります。この動機が曲者です。「すべての手がかりは読者に余さず提示されなければならない」と言われていますが、動機は(少なくとも直接的な)証拠ではないからです。つまり、動機は後出しできるのです。ホームズ物の「緋色の研究」は、推理小説部分の第一部に対しドラマ風の第二部を対置し、第二部において動機を示しています。これは「あり」です。
ここでいう動機は、広い範囲でとらえてください。謎に至る経緯も含みます。そこにあなたの見た「娘。」をぶちこみましょう。
( 0^〜^)
さて、名探偵が名探偵たるゆえんはこの(広義の)動機をつかみとる能力にあります。探偵小説に出てくる犯人は、尋常な思考回路を持っていません。平凡な犯人は平凡な警官に任せておけばよい。
ブラウン神父は犯人の異常な思考をシミュレーションすることができます。ホームズは一歩間違ったら犯罪王になっていただろうと言われています。明智小五郎は屋根裏をごそごそと動き回りました。つまり、名探偵は犯罪者の気質を持っており、だからこそ犯人の思考、動機をとらえることができるのです。
- 636 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/09(水) 22:14
- ( 0^〜^)
これを娘。小説化しましょう。娘。は娘。独特の思考回路を持っていることでしょう(あなたはその痕跡をどこかで目にしていることでしょう)。その独特の思考によって引き起こされた謎は、同じ娘。でなければ解きほぐせないでしょう、希代の名探偵でないかぎりは。あなたの見つけたそれを少し膨らませれば、謎と解決は自然と生まれてくることでしょう。
こうすることによって、娘。小説でしか表現できない探偵小説ができあがります。
( 0^〜^)
まとめ
時間の流れ : (動機≒隠された経緯)→ 謎 → 解決
叙述の流れ : 謎 → 解決(動機≒隠された経緯)
※隠された経緯に「娘。」の要素をぶちこむ
※その経緯によって、犯人役と探偵役(そして被害者役)が決定される
- 637 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/09(水) 22:15
- ( 0^〜^)
※このとおりにやって出来上がった話がどんな出来栄えであろうとも、責任は負いかねます
- 638 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/14(土) 01:11
- 大の大人が自作解説とか
(0^〜^)
学校で起こったあれやこれやをなんとなく推理して藤本が自己納得していく話……キャラクター小説の世界
最後はお約束のようにどっちらけな結末で事件は解決する……感想書き
- 639 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/14(土) 01:12
- (0^〜^)
「自作解説をすることは、作者の敗北にすぎない」みたいなことを太宰治が言ってましたが、それでも評論家Sに異例の反論を行った桐生夏生のように(その反論が妥当なものかどうかは別として)、あえてその愚を犯さなければならない場合があるのかもしれません。
(0^〜^)
『晴れやかな舞台』
http://mseek.nendo.net/wood/997701209.html#r1
- 640 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/14(土) 01:12
- (0^〜^)
案内板などで「推理物きぼん」というレスを見つけるたび、わたしは自薦する誘惑にかられてしまうわけですが、おそらくその人は自分の話など求めていないだろうと、自制します。なぜなら、わたしの探偵話はミステリの約束事を破っているだろうからです。
ミステリの骨子はトリックではなく論理である、そして探偵の論理は演繹的ではなく仮説形成=憶測である、と上のほうで説明しました。演繹的な論理というのは、言わば必然の積み重ねであって、おもしろいところは何もありません。読者の求めているのは論理学の講義ではありません。だからアクロバティックな論理を用意する必要があり、無理を重ねるため憶測と呼ばれるものになってしまうのです。
(0^〜^)
もちろん作者は意識的に、または無意識的にそのことを承知しており、そのことを隠すためにいろいろと修辞的手法をこらします。最後の決め手として、探偵の論理を裏付けるために犯人の自白ないしそれに類する事象が叙述されます。
もし、探偵の推理が正しいのなら、そんな自白など必要ないでしょう。自白があること自体、探偵の推理がいかにあやふやなものかを示しています。
(そこで、安楽椅子探偵という、話し手の話だけで推理する探偵小説形式があるのですが、自白する場面がないからといって、やはり探偵の推理の正しさを保証するものではありません)
- 641 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/14(土) 01:12
- (0^〜^)
では、「晴れやかな舞台」ですが、どうでしょう。吉澤の推理は、一見論理的ですが、やはりこれは仮説形成=憶測にすぎません。複数ある可能性の一つでしかありません。ところが、読者をごまかすための自白の場面がここにはありません。それに類する場面もないとは言えないのですが、その描写はあくまで吉澤の主観にすぎません。「自己納得」にすぎないのです。
と、ここまでの読解となると、「どっちらけな結末」と受け取られることになります。普通の探偵小説と違い、仮説形成=憶測であることをまったく(ではないけれど)粉飾していないからです。
(0^〜^)
そんなことは最初からわかっています。だからこそ、もう一回ひっくり返さねばなりません。吉澤は自らの探偵の論理を使って、そのまま犯人の論理に転倒させます。自らの推理が合っているのならば、自分もまた、みんなと同じように犯人になれるはずだと。
犯人の論理は常人のそれではありません(少なくとも本格探偵小説では)。その起動を逸することなくトレースすることができる唯一の人物こそが探偵です。探偵と犯人は眷属であり、近親憎悪に満ちています。
みんなからはぶられたと思い込んだ吉澤が思い切った行動に出たわけですが、その結果を叙述する必要はないでしょう。吉澤の推理=憶測が正しいのかどうか、判断するのは読者だからです。そしてそれは、全ての探偵小説に言えることであり、その意味でこの話はアンチ・ミステリであるのかもしれません。誰がそんな話を求めるのでしょう?
- 642 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/14(土) 01:13
- (0^〜^)
仮説形成についてはC.S.パースの著作、シービオク「シャーロック・ホームズの記号論」などを参照。
またこれに関する実作として法月倫太郎「密閉教室」など。
安楽椅子探偵については都筑道夫「退職刑事」など。
- 643 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/24(日) 23:46
- よろしくお願いします
茨姫
http://mseek.nendo.net/event/pacifico04/1079191473.html
太陽は壊れやすい黄色
http://mseek.nendo.net/event/messe07/1110640714.html
- 644 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/25(月) 21:14
- 間テクスト性の罠
( 0^〜^)
『茨姫』
http://mseek.nendo.net/event/pacifico04/1079191473.html
( 0^〜^)
間テクスト性とは、そのテクストが別のテクストによって意識的に、あるいは無意識的に影響を受けていることを指します。それは単なる元ネタであるということを意味するのではなく、登場人物、ストーリー、構成、物語など、テクストのありとあらゆる諸要素に働きかけられるものであります。
例えば、聖書はほとんどすべての西洋小説に影響を与えていますし、シャーロック・ホームズ物語はすべての探偵小説に影響を及ぼしています。現代の作者は無数のテクストに身をさらしており、それらの影響を自らの生み出したテクストに反映させていることが容易に想像することができるでしょう。
- 645 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/25(月) 21:15
- ( 0^〜^)
となると、この間テクスト性を緻密に分析することによって、テクストに隠されている新しい解釈を読み取ることも可能になります。そしてそのことは、作者を丸裸にすることにもつながるでしょう。実にいやらしい作業です。
この話は、タイトルに『茨姫』とつけられています。当然のことながら、私たちはグリム童話の『いばら姫』を想起せざるをえません。たとえ作者が「とんでもないことだ、やめてくれ」と懇願しても、わたしたちはそれを止めることはできないのです。では、グリム童話の『いばら姫』というフィルターを通して眺めてみましょう。
( 0^〜^)
グリム童話の『いばら姫』は、以下のような話です。なかなか子供の生まれなかった王様と王妃がいましたが、庭園の蛙のお告げにより、かわいらしい女の子が生まれました。喜んだ二人は国をあげてお祝いしますが、食器の数の都合で一人の巫女を招待することができませんでした。これを深く恨んだ巫女は、「15歳になったら糸かき棒(編み棒)で指を刺し、死んでしまうだろう」と呪いをかけます。他の巫女がこの呪いを解いたのですが、副作用で「15歳になったら100年間眠りつづける」ようになってしまいます。王様はこれを避けようと、国中の糸かき棒を焼却処分したのですが、それも空しく、姫は糸つむぎ部屋で糸かき棒で指を刺してしまい、そばにあったベッドに倒れ深い眠りに落ちます。姫だけでなく、城中のみんなが眠ってしまいます。城はいばらに包まれ、中に入ることができません。100年たった頃、噂を聞きつけた王子が現れると、いばらは彼のために道をあけ、王子のキスでようやく姫と城の者は目を覚ますことができました。二人は結婚して幸せに暮らしたということです。
- 646 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/25(月) 21:15
- ( 0^〜^)
偉大な先人の研究によると、これは処女喪失(を怖れる)話です。糸かき棒で指を刺してみましょう。血が出るでしょう。糸つむぎは女性の仕事でしたから、これは立派なメタファーです。ようやく生まれた子供ですから、親はそれを恐怖します。国中の糸かき棒、つまり男性を娘から遠ざけます。しかし娘もやるもので、当時庶民の秘密の遊び場だった糸つむぎ部屋で、ちくりと刺されてしまいます(でなければ、ベッドがあるわけがありません)。
この童話の原テクストはすでに失われてしまい、グリムによって改変されたものしか残っていません。しかし、丹念に読み上げれば、グリムが隠そうとしたものがこのように暴かれてしまいます。童話とは王侯貴族のものではなく、庶民のもの、庶民の夢が投影されているのです。
( 0^〜^)
ならば、この『茨姫』にも、間テクスト性という連鎖により、庶民の無意識が埋め込まれていることになります。彼女は白い包帯でぐるぐる巻きにされています。これは彼女の処女性を守る防護服です。死のメタファーがあちこちに埋め込まれていますが、これは彼女の処女性の死(への恐怖)を表しています。
しかしながら、最後に明かされるように、彼女は傷一つありません。一方で、彼女は別の彼女のように傷つきたがっています。処女喪失への恐怖と願望が同時に彼女のうちに存在しているのです。アンビバレンツな感情が彼女を支配しています。しかし、彼女の対象は男性ではなく同性に向かっています。どんなに彼女が腰を振っても、彼女の処女性は損なわれるどころか、ますます聖性を帯びていってしまうでしょう。
- 647 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/25(月) 21:15
- ( 0^〜^)
作中人物やその行為がメタファーであるならば、本体は作者自身の無意識ということになります。つまり、作者は彼女に対し処女性の保持と喪失を同時に願っているのです。彼女は作者によって保護され、同時に攻撃されます。すでに失ってしまっているもう一人の彼女に羨望の眼差しを向けながら。
いずれ作者は彼女と一体化するでしょう。いや、ちょっと違う。作者は『茨』となるのです。いばらとなって彼女たちを包み込むでしょう。そして永遠に彼女(たち)の処女性を守ることでしょう。それが作者の願望なのですから。
( 0^〜^)
キャハハハッ
- 648 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/29(金) 22:06
- これの感想を見たいです
http://mseek.s47.xrea.com/test/read.cgi/messe/1119175953/
- 649 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/18(日) 21:28
- 突然失礼します。いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
ってなんでこのスレだけスルーなのさー別にいいけどシクシク
- 650 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/09(木) 21:28
- 観念への系譜
( 0^〜^)
『舞波と学級文庫』
ttp://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/test/read.cgi/kinder/1123080897/l50
『美貴帝今昔物語(改訂版) オタの者が関白の侍従に恋をする話』
ttp://mseek.nendo.net/wood/1077456315.html#r528
芥川龍之介『好色』
ttp://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/90_14976.html
山田風太郎『うんこ殺人』
竹本健治『ウロボロスの基礎論』
( 0^〜^)
何か更新しないと落とされそうなので適当に書きます。
- 651 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/09(木) 21:28
- ( 0^〜^)
さて、日本には古来からの伝統である「うんこ文学」というジャンルがあります。すでに「古事記」の冒頭において、我が国の生みの親であるイザナミノミコトが、自分の嘔吐物や糞尿から多くの神々を生み出す場面が描写されています。また、我が国最古にして最高の小説である「源氏物語」においても、桐壺の更衣に嫉妬した女性たちが廊下に糞尿を撒いていやがらせをしています。良寛さんもうんこの歌をものにしています。
このように、誰がなんと言おうとも、我が国においては「うんこ文学」こそが正統の名にふさわしいまことに文化的な潮流があるわけです。
( 0^〜^)
さて、明治になって「観念」なるものが北村透谷によって初めて本邦にもたらされて以来、ありとあらゆるものが観念化されていきました。この観念が個人にとどまっているうちはそれほど害はなく(それでも周りの人間にとってはおおいに迷惑だ)、これが個人ではなく宗教になったり政党になったりすると世界中がひどい目にあうことになるのですが、ここではふれません。
この観念化というのは、結局は自己欺瞞のことを指すと言われています。つまり、自分と社会のおりあいがつかなくなると、弱い人間はそれを自分ではなく社会のせいにします。それだけではただの子供なだけですが、ちょっと頭が回るとそれを正当化する論理をひねり出すようになります。この論理が緻密であるため(飛躍を含んでいるのですが)、一個の理論として成立し猛威をふるいはじめます。
- 652 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/09(木) 21:29
- ( 0^〜^)
あらゆる観念の中でもっとも有名なのが「恋愛」です。内面世界と外面世界が対立するとき、常に内面世界は敗れてしまい、敗軍の将となった内面世界の最後の牙城は恋愛である、と北村さんは主張するわけですが、この「恋愛」なるものが、現実の男女の関係からはかけ離れた観念となっています。敗れた自己の回復のためだけに恋愛がとりあげられているのですから、そのいびつさがわかるでしょう。
ところがこれがおおいに世の中で流行ってしまいました。なぜならその論理が、飛躍を含んでいるがためにたいへん面白かったからです。面白ければ何でもいいんです。この潮流は現在でも続いています。恋愛小説を読むようなことがあったら、ぜひ注意してみてください。
( 0^〜^)
この観念なるもの、明治期に輸入されたといいましたが、実は過去の日本文学の中にもあったのです。それが今昔物語巻三十の第一話「平中が本院の侍従に恋をする話」です。平中は頭の良い侍従に恋をするのですが、のらりくらりとかわされてしまい、かなわぬ恋なら、いっそのこと侍従のうんこを食べて失望すればすっかり忘れてしまうことができるだろうと、それを食べようとしたら、先回りされて香木にすりかえられてしまったという話です。
なんとも頭が痛くなるような話ですが、これを芥川がリテイクして「好色」という短編にしています。なぜ芥川がこれを選んだのかというと、もちろん天才作家である彼が日本の伝統である「うんこ文学」をものにすることで己の立場を強化しようとしたという政治的な事情もあるのですが、この平中という人物が先ほどの意味での「観念」にとりつかれた人間であることに興味を持ったからです。
- 653 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/09(木) 21:29
- ( 0^〜^)
内面世界という敗軍の将にとって最後の牙城である「恋愛」にもいる場所がなくなってしまった平中は、さらなる自己欺瞞に陥ります。その対象がうんこです。ここにはもはや本来の排泄物としての姿はなく、恋しい侍従から生み出された忌み嫌うべき妖怪のごとくに意味が転じています。そして失望したいがために、それを食べる=自分の体内に取り込もうというのですから、彼の倒錯ぶりは北村さんも真っ青です(二重の顛倒となっている)。
最後に彼が敗れ去るという結末は、観念の恐ろしさを今昔物語の作者が知悉していたことを物語っています。
( 0^〜^)
このように「観念化されたうんこ」は、芥川によって日本文学の本流になるかと思われたのですが、ことはそう単純には進みませんでした。第二次大戦直後、戦争中はきわめて観念的な少年だった山田風太郎が「うんこ殺人」を発表して世に
衝撃を与えます。こちらのほうは、人間の肉体を単なる道具と化すことに主眼を置いた忍法物で一世を風靡した作者であることから、逆に妻子の死体にまみれたうんこの存在感が映えています。人間の肉体のほうが観念化されたために、そこから排泄されたうんこは肉体の外部としてまことに実のあるものとして、つまりうんこの本来性を取り戻しているわけです。
これをモチーフあるいはオマージュとした竹本健治「ウロボロスの基礎論」においては、物語の半分くらいまでは山田風の実質的うんこであったのが、最後の最後で観念的うんこに変貌してしまいます。中で述べられている議論とは裏腹に、ラブレー的うんこから遠く離れてしまいました。
- 654 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/09(木) 21:29
- ( 0^〜^)
この「観念的うんこ文学」は、とうとう飼育にもその触手を伸ばし始めています。『舞波と学級文庫』にそのきざしが見え始めています。「うんこ文学」は日本文学の正統ですが、「観念的うんこ文学」は似て非なるものです。観念が党派性を帯びた時の恐怖を忘れてはなりません。アウシュビッツやスターリンの粛清は、党派観念が引き起こしたものであることを多くの歴史家が記しています。
うんこの本来性を取り戻しましょう。飼育を清浄で穢れ無きうんこ文学に満ちた世界にするため、みんなで手を取り合って「娘。うんこ小説」を書いていきましょう。ほら、早く。
- 655 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/24(金) 21:48
- ポジション
( 0^〜^)
うっかり下手なことを書くとあちらこちらで叩かれるようになりまして、まことに感想書きにとって受難のときであるのでしょう。まあ確かにおかしな感想もあるのですが(自分のことは棚に上げる)、生暖かい目で見守ってください。
さて、「企画に中にミステリがあるよ」とだまされて読んだ話の感想を書きます。
「浮揚するガキさん」(テーマ「高橋愛」)
( 0^〜^)
この話を読んだのは、各ヲタにさんざん罵倒された「とくばん」(2006/3/23)を見たあとであることを明記しておきます。なぜなら、目をそむけたくなるような「とくばん」的世界が、この短編にも表れているからです。
話の構造(プロット)としては単純で、「新」「旧」モーニング娘。のメタファーが過剰なくらいに並べられています。それを一つ一つ検討するのは省略します。そして一応感動的な(?)ラスト。
- 656 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/24(金) 21:49
- ( 0^〜^)
問題の焦点は「新」「旧」にあります。「とくばん」に対する過剰反応もそうでした。「新」モーニング娘。がないがしろにされ、「旧」モーニング娘。ばかりよく扱われる……「旧」は味が濃く、「新」は薄い……
ほんとうにそうなんでしょうか。「新」「旧」の二つを対立させるように浮かび上がらせることによって、焦点がぼけた(姿を隠した)要素があります。最後の場面で、ステージに立ったメンバーは、中澤裕子、飯田圭織、安倍なつみ、保田圭、後藤真希、石川梨華、辻希美、加護亜依の8人です。矢口がいないのは別の問題(*) として、ここには福田、石黒、市井がいません。福田たちは「モーニング娘。」ではなかったのでしょうか?
( 0^〜^)
「とくばん」的世界に表れる「旧」モーニング娘。は、「過去」のモーニング娘。ではないということです。「かつて」モーニング娘。であったもの、と言い換えてもいいのかもしれません。時間軸においては、「新」モーニング娘。と同じく、「今」の「かつて」のモーニング娘。であったものです。
ところが、その「今」の「かつて」のモーニング娘。と、「過去」のモーニング娘。が混同され、そのことが隠されてしまいます。「過去」の面白い「うたばん」の映像が流れると、それは「今」の「かつて」のモーニング娘。の生み出したものという錯覚です。ステージに、TVに、「私たち」の大好きだったモーニング娘。が現れる。
- 657 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/24(金) 21:49
- ( 0^〜^)
しかし、それは「過去」のものです。「圧倒的なパワー」を持っているのは、「今」の「かつて」のモーニング娘。だったものではないのです。「今」の飯田は「かつて」のジョンソンではありません。「旧」モーニング娘。も、「新」モーニング娘。と同じように苦しんでいます。
ここに「新」「旧」の対立構造は幻であることがはっきりしました。新垣の大好きな「モーニング娘。」はドームのステージにはありません。そこには眷属があるのみです。幻をどうしてぶっつぶすことができるのでしょうか。
( 0^〜^)
こんなふうな感想を書くから、叩かれるのもむべなるかなです。
- 658 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/24(金) 21:49
- ( 0^〜^)
(*) なぜ矢口がそこにいなかったのか、を考えると、この話の新垣の心理状況を表しているのかもしれません。そうでないのかもしれません。
- 659 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/04(火) 23:46
- 作者の影
( 0^〜^)
「どうしてなんだろうと考えたところ、作者さんの影が見えてしまうからだという結論に。 」
という感想に対し、「作者の影が見えるなんて怖いですね(イヤミ」という返しがありました。
この「作者の影」とはどのようなもので、どのようなメカニズムによるものなんでしょうか。
( 0^〜^)
読者は、わたしたちは、自分をとりまく現実世界から逃れるように虚構世界に入り込もうとします。ですから、虚構世界を提供する作者は、読者に現実世界を忘れさせるようにしなければなりません。そのために、作者は、ミステリーとかサスペンスとか、あるいは文体とか異化効果とか、時間の移動とか寓話とか、アイロニーとか言外の意味とか、意識的にあるいは無意識的にさまざまな技巧をこらして、読者に虚構世界へ誘うのです。
- 660 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/04(火) 23:47
- ( 0^〜^)
しかしながら、読者はいろいろな理由によって、ふっと現実世界に引き戻されてしまうことがあります。それが作者の預かり知らぬ外的要因(借金取りが来たとか赤ん坊が泣いてるとか)ならば仕方のないことですが、作者の責となるものも多々あります。
登場人物に感情移入できない、描写が鼻につく(違和感がある)、ストーリーにリアリティがない(因果関係に飛躍がある)、文章がひらがなばかり(あるいは難しい漢字ばかり)で読みにくい、改行されてないので読みづらい、どっちらけなオチだった(そこまで言うか)、などなど。
( 0^〜^)
ロラン・バルトが言うところの「作者の死」とまではいかなくても、「作者の影」が見えると萎えるというのは、虚構世界から現実世界に急速に呼び戻されることによって、先ほどまで現実世界と変わらぬものだと思っていた(思い込んでいた)ものが、実はやっぱり結局のところ作者が作った作り物の世界だということに気づかされるからです。
よく地の分で、過剰な一人称の文章を見かけますが、それはある程度の技巧の一つではあるものの、やはり「作者の影」が見えてしまうことになります(すでにスターン等がやっていて、古すぎる手法でもあるし)。また、語り手が作者である物語もありますが、やはりリアリズムという幻想を打ち破ってしまうことは否定できません。そんな破壊を読者は求めていないのです。相対的に相対主義的となった現代では、作者という特権的な地位をもつものを否定する傾向もあります。
- 661 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/04(火) 23:49
- ( 0^〜^)
さて、くだんの感想ですが、物語という森の中に分け入ることを躊躇させた理由として、「作者さんの主張通りに話が進んでしまうような気がするのです」と述べています。どういうことかと言いますと、登場人物たちの主張や論理についてこの読者は共感することができず、それでも話がトントンと進んでいるのはどういうことなのだ、と異議申し立てしているのです。自分は納得していない、でも他の登場人物は納得している、それはなぜか、作者が登場人物にむりやり納得させているからだ、そんな手前勝手で特権的な作者の介入は断じて許さん、というわけです。
こうなってくると、作者としても困ってしまうのですが(すべての読者が納得するような主張などあるはずがないからです)、それでもこの読者が虚構世界に歩みを進めることができなかったのは厳然たる事実です。これは双方にとってたいへん不幸な事態です。
( 0^〜^)
この「作者さんの主張通りに話が進んでいく」という不満ですが、すべての物語が「作者の主張」どうりに進むのは当然のことです。作者の意思とかけ離れて物語が勝手に進行していくなんて、それこそありえない話でしょう。作者はそれを悟られないように技巧をこらすのです。
私見では、この物語で語られた主張は、けっこう真っ当なものであること(真偽は別にして)、その主張や論理と地の文がマッチしていなかったところがあるのではないかと思います。どうせすべての読者を納得させる主張がないのだから、もっとぶっとんだ論理を挿入することもできたのではないでしょうか。すでに確定している物語にあれこれ注文つけるのはあまり良くないことですが。
- 662 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/04(火) 23:49
- ( 0^〜^)
作者も読者もいろいろたいへんなんですよ、これで。
- 663 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/14(日) 12:03
- ゾッコンしてしまった
- 664 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/28(金) 20:27
- 娘。小説=キャラ小説?
(0^〜^)
「キャラクター小説の世界」というサイトがありまして、そこでは多くの娘。小説が紹介されています。コンテンツの一つでは娘。メンバーごとに分けて、それぞれがどのような「役割」をあてがわれているか、説明されています。
たぶん、キャラクター小説というのは、いわゆる「ライトノベル」と同義だと思うのですが、どうなんでしょうか? そして、娘。小説はキャラクター小説、あるいはライトノベルなんでしょうか?
(0^〜^)
キャラクターとは人格、性格のことです。ライトノベルとは、風の噂では「アニメやゲームみたいな小説」のことらしいですから、キャラクターを本来の意味で捉えてはいけないのでしょう。キャラクターではなく「キャラ」、文字や記号と捉えたほうがよさそうです。
「アニメやゲームのような小説」というのは、それらの世界観や設定を持ち込んだ小説ということでしょう。つまり、キャラクター小説やライトノベルというのはアニメやゲームから取り入れた設定にある種の記号を体現する登場人物を放り込んだ小説である、ということになります。
- 665 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/28(金) 20:28
- (0^〜^)
さて、たとえばアメリカ人に日本語の小説本を見せてみましょう。ふつうのアメリカ人は日本語を知りませんから、紙に印刷された日本語の文章を理解することはできません。妙な線が入り混じっているように見えるでしょう。
また、日本語がわかるアメリカ人を連れてきても、書いてあることは一応理解できるでしょうが、深く理解することは難しいでしょう。逆に、『アフガニスタンの戦場で送った陣中生活の経験は、すくなくとも私を気軽に、いざといえばすぐにも旅に出られる男にする効果があった』というイギリスの小説を日本人のわたしが読んでも、予備知識がなければ、この文章の背後にある社会背景を読み取ることはできません。
(0^〜^)
つまり、作者が提出した文章を読者であるわたしたちが読むことができるのは、作者と読者の間にこの小説を読むための共通項や約束事があるからです。日本語で書いてあること、日本の社会や歴史を知っていること、日本の伝統的な風情を知っていること、日本語の慣用表現を知っていること。これらを「コード」と呼びます。
外国の小説をすらすらと読み解くことができないのは、このコードが存在しないからです。
- 666 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/28(金) 20:28
- (0^〜^)
ライトノベルがアニメやゲームのような小説であるというのは、ライトノベルに存在するコードが、アニメやゲームから持ち込まれたということを意味します。エヴァやドラクエで描かれていた世界、人物類型、決まりごとを知らないと、ライトノベルの世界がわからなくなるということです。
では、娘。小説はどうでしょうか? 多くの娘。小説のコードは、アニメやゲームのそれであることが多いでしょう(アニメ・ゲームだけでなく、サブカルと呼ばれるもの、マンガや映画も含みます)。全部とは言いませんが。
(0^〜^)
特に顕著なのが登場人物でしょう。名前と外面はモーニング娘。のそれらです。しかしながら、与えられた内面はアニメやゲームから持ち込まれたコードです(外面すら持ち込まれたコードであるときもあります)。
一般の小説だってそうじゃないか。他の小説や分野から影響を受けない登場人物なんているわけないじゃないか。という反論もあるでしょう。確かにそうなのですが、一般の(近代的な)小説においては、コードは約束事にすぎません。約束事を媒介として、登場人物(主に主人公)の内面・性格を読み取っていく作業が読書ということができるでしょう。
ところが、ライトノベルにおいては、約束事にすぎなかったコードが読者の欲望の対象に変化されています。よく知らないのですが「ツンデレ」というアニメかどっかから持ってきたコードを小説世界に投入します。すると読者は「ツンデレハアハア」というような受容の仕方をするわけです。
- 667 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/28(金) 20:28
- (0^〜^)
娘。小説も同じです。そこにあるのは、どこかから持ってきた「萌える」コードをただひたすらに消費する姿です。(そうじゃない、どこか他所から持ってくるんじゃなくて、娘。小説作者が新たに作り出すコードだってあるかもしれないじゃないか。その場合、その作者はプロになるべきです。儲かるよ、たぶん)
これは仕方がないことです。一般の(近代的な)小説のように記号ではない、人格を与えられた人物を描こうにも、わたしたちは彼女を知らないので描けないのです。ならしょうがない、内面はどこかから持ってくるから名前だけ借りるよ。
(0^〜^)
その結果どうなるか。たぶんコードが使いつくされるか、リサイクルするか(その結果似たような話ばっかりが蔓延するかも)。コードがなくなったからもういいや、娘。に変わる次の入れ物を探しに行くか。
未来は明るいです。
- 668 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/28(金) 20:29
- (0^〜^)
この項、自分のことは棚に上げてます。
- 669 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/01(火) 21:51
- みきよしみきよし
(0^〜^)
前述のとおり、ライトノベルでは物語(そこに展開される物語と、世界観の背後にある物語両方です)よりも、世界観や設定、キャラが主となります。それらには萌えデータベースから、任意のコード(萌え要素)が複数選択され投入されます。
萌えデータベースとはいいましたが、まあいわゆるお約束の集合体です。萌えというのは、「読者が快と感じる」くらいの意味で、ハアハアするような一見危なげな人が見せる醜態であるとは一言も言っていませんので、ご留意ください。
(0^〜^)
萌えデータベースは、小説・ゲーム・アニメ・マンガ・映画、ファンタジー・ミステリー・SF・ジュブナイル・歴史物など、サブカルを中心に多くのジャンルから抜き出されたコードで成り立っています。もちろん、アイドルもそのジャンルの一つです。
作者は想定している読者に対し、要求されたコードを抜き出して、世界観とキャラに与えます。その究極が2chの801板で、ここではありとあらゆるものが萌え要素と化しています。歌丸×楽太郎、財布×ポケットとか。
- 670 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/01(火) 21:52
- (0^〜^)
娘。小説では、主としてメンバーの関係性(を表す何か)が、萌え要素となり、萌えデータベースに登録されます。ここでは、実際の娘。の行動とはほぼ関係なく、娘。個々人が記号化され、その記号化されたメンバー及びメンバーどうしの関係がコード化されるということです。
たとえば、よく「いしよしキボン」「いちごまキボン」と、リクエストを受けつけるスレがあります。それを受け、作者はいしよし小説を展示しますが、そのストーリーやプロットに関係なく、読者はまず第一義として「いしよしハアハア」するのです。また、2chの狼でのテレビ実況で、亀井と道重が並んで立っているだけで「さゆえりキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!! 」と書き込まれるのも、同じ仕組みです。
(0^〜^)
もちろん萌え要素とならないコードは萌えデータベースから排除されます。娘。小説(飼育小説)の世界で典型なのが「男」です。つんく♂やユウキなどは、コードとして認識されはしますが、それは萌えデータベースにはなく、あくまで一般のコードとしてです。オリジナルの男は追放されます。
飼育作者は、好む好まずにかかわらず、この萌えデータベースを意識しないではいられません。「ノベルモニ」というサイトからリンクされている「O2L」というサイトに、娘。小説作者のインタビューがあります。もちろん彼氏彼女たちが作者の代表だ、というつもりはありませんが、インタビュー受けるくらいの人たちだから一定の読者がいる人たちだという前提で、恣意的に引用してみます。
- 671 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/01(火) 21:52
- (0^〜^)
エロ火
「最近のいしよし(吉澤×石川)を書く人っていうのは、いしよしを好きというよりも、いしよしを書いてる自分たちのことが好きなんじゃないか」
カネダ
「終わらせたくないって気持ちが最近沸々と(笑)。終わらせるのが怖いというか。自分で言うのはキモいんですけど、あの世界観は気に入ってるから、残念な感じがしますね(笑)」
ブランカSY99
「現実世界の動きのほうが速すぎて、対応がかなり苦しかったんですよ」
ふぐつら
「この話は書きすぎないように気をつけましたね。カップリングのイメージを逆なでするような描写はダメだし」
「基本的に現実から離れた話は書きたくない」
ゆとり
「「いしよしの是非について」みたいな感じでどこかで語られてたんですよね。「もう飽きた」とか、「いやまだまだ」とか」
和泉俊啓
「身も蓋もない言い方すると「文字によるアイコラ」ですよね」
「あの世界自体が主人公、みたいなところがありますので」
S-MEGA
「このキャラがこういうをやったり言ったりしたら面白いだろうなとか、かっこいいだろうなとか」
カルア
「昔読んで面白かった小説とかマンガとかそのへんの影響はちょっと強く出てるかもしれないです」
イヌキチ
「モーオタ妄想よりも創作に頼る部分が増えると思うので、勢いは出ないかなぁと」
「(ストーリーよりリアルネタに重きを置いたか?)キャラですね。石川がネガとか、辻がてへてへとか、そういった感じです」
りゅ〜ば
「実物のモーニング娘。がどうなってるのか、よくわからなくなってきたというのもあります」
B
「飼育作品に関しては、羊でいわれていたイメージとは違って、キャラクターだけでなくて、筋もしっかりしてるなぁという印象を受けました」
「キャラクターは、全員書いていて楽しかったですね。好き勝手に書いていたので」
「小ネタとかは意識しないでも勝手に入ってきたりしますから」
ごっつぁむ
「市井もちょっと絡ませてるのは、世間の波に飲まれたというか」
takatomo
「作った世界観を崩す恐れがあるので。あとは、いかに、世界観を納得させるかです」
「設定で遊ぶのが好きなんですよね」
氷上
「人から借りて読んだ漫画なんですが、とにかくこの設定が頭から離れなかったんです」
上海(インタビュー受けてないので本人のサイトより)
「自分は逆に好きなキャラほど自分設定が異様にあって、ハロモニとか自分設定を補強するために見ていたようなものです」
(敬称略)
- 672 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/01(火) 21:53
- (0^〜^)
もちろん、スタンスの違いはありますが、世界観、設定、キャラについて多くの言及があります(恣意的に抜き出したのですから当たり前ですが)。多くの作者は、世界観やキャラを先に決めて、そこからストーリーを構成しているようです。
いや、違う、自分はそうじゃない、という作者もいるでしょう。そうかもしれません。しかし、統計をとったわけではありませんが、ストーリーやプロットを練るより、世界観やキャラを作り上げるほうが楽しい、という作者が多いのではないでしょうか。
(0^〜^)
このように、萌え要素が消費されるいっぽうで、物語の存在が希薄化されていきます。
- 673 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/01(火) 21:53
- (0^〜^)
この項、いつものごとく自分のことは棚に上げています。
- 674 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/04(金) 22:08
- そんなもの捨ててしまえ
(0^〜^)
さてさて、それではどうすればこの萌えコピー地獄から抜け出すことができるのでしょうか。
これはたいへん困難な道です。萌えデータベースは世界のあらゆるものから引き出された萌え要素の集合体です。データベースにないものは少なくなっているでしょうし、たとえデータベースにないものが見つかったとしても、それはたちまちデータベースに取り込まれてしまうからです。
だいいち、わたしたちは娘。本人がどのような人物なのか、その素の姿を知ることはできません。テレビやコンサート会場で、化粧された顔しか見せられることがないのです。これでは彼女たちを描くための何かをつかむのに、制限があります。
(0^〜^)
しかし、それでもわたしたちは何かをつかみとりたい、そのような欲望を捨てることはできません。テレビモニタからこぼれ落ちてくる僅かな残滓を拾い上げ、ほかのものにはない、娘。独特のコードを作り続けることは、第一の道となるでしょう。
エロ火は彼の掲示板に以下のような叫びを残しています。
「僕が読みたいのは作者の一方的で気持ち悪くも美しい純粋な娘。に対する欲望であったり、ストーリーの枠に押し殺されていないモーニング娘。が活き活きと躍動している姿なのです」
- 675 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/04(金) 22:10
- (0^〜^)
「ストーリーの枠」というのが、萌えデータベースに他なりません。ただ、上の表現では言葉足らずで、「ヲタ×娘。」でも書けというのかよ、という誤解を招きかねません(ある意味正解なんですが)。
画面をこらしてようやく娘。の残滓を拾い上げたとしましょう。ハロモニの映らないところに住んでいる方は、You Tube かどこかのブログで拾ってください。その些細な光景を無限に増幅させると、一個の妄想ができあがります。その妄想は他でもない、あなたという一人のヲタが作り上げたものです。
(0^〜^)
簡単にいうと2chの一行ネタスレみたいなものです。2chのネタスレでは、100レスも進めば妄想の勢いは減衰し、コード化し、データベースに取り込まれますが、それでもいいじゃないですか。また別の残滓を見つけてヲタフィルター(萌えフィルターではない)で増幅させればいいのです。
弱点がありまして、長編化はほぼ無理でしょう。
- 676 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/04(金) 22:12
- (0^〜^)
娘。小説にかぎらないことですが、文章を書くとき、その文章は「わたし」の文章ではありません。他人の誰かの文章です。表現するというのは、自己の中にある他者を描くことです。わずかな残滓を拾い上げたヲタの妄執が無意識のうちに影響を与え、それを文章化することで「娘。小説」が生まれます。
『落日バラスト』
ttp://mseek.nendo.net/event/pacifico04/1079788691.html
(0^〜^)
「わたしがうばいにきたのは、モーニング娘。の魂です」と宣告する悪魔に恐れおののくのは、実は作者(ヲタ)です。そのヲタの望みが娘。自身によって打ち砕かれるという逆説が描かれています。
この恐怖、脱力感は娘。ヲタ以外には出せません。娘。ヲタ以外の者にとっては、娘。の消失は恐怖ではありませんし、またこのストーリーは他の二次小説(FFとか)には使用できません。元となるエピソード(残滓)は娘。が生み出したものだから。このような理由でこの短編は「娘。小説」として傑作たりえているのです。
- 677 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/04(金) 22:12
- (0^〜^)
文中敬称略。
この項、(以下略)。
- 678 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/08(金) 21:24
- 自由だ
(0^〜^)
かつて言文一致運動というものがありました。江戸時代までは、たとえば「これも仁和寺の法師、童の法師にならんとする名残とて、おのおのあそぶ事ありけるに、酔ひて興に入る余り、傍なる足鼎を取りて、頭に被きたれば、詰るやうにするを、鼻をおし平めて顔をさし入れて、舞ひ出でたるに、満座興に入る事限りなし。」なんてことを実際にしゃべっていたのではありません。書くほうと話すほうとで両方で別々の文法があったのです。
この相当に難しい書き言葉ではなく、話し言葉で文章を書こうとしたのが言文一致運動です。坪内逍遥が提唱し、山田美妙や二葉亭四迷が試みたという歴史的事実は、高校の授業を寝ていなかった人ならばご存知のことでしょう。以下は四迷の「浮雲」の冒頭。「千早振る神無月ももはやあと二日ばかりとなった二十八日の午後三時頃に神田見附の内より塗渡る蟻、散る蜘蛛の子とうようよぞよぞよわき出でてくるのはいずれも頤を気にしたもう方々、しかしつらつら見てとくと点検するとこれにも様々種類があるもので、まず髭から書き立てれば口髭頬髯頤の髭、やけに隆起したナポレオン髭に狆の口めいたビスマルク髭、そのほか矮鶏髭、貉髭、ありやなしやの幻の髭と濃くも淡くもいろいろに生え分る。」
- 679 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/08(金) 21:25
- (0^〜^)
少々ぎこちないところもありますが、ほぼ現在の現代文に近いことがわかるでしょう。しかし、しかし。たとえば、「それらの夏の日々、一面に薄の生い茂った草原の中で、お前が立ったまま熱心に絵を描いていると、私はいつもその傍らの一本の白樺の木蔭に身を横たえていたものだった」と、堀辰雄の名文のこれ、わたしは実際にこのように話している人を見かけたことがありません。いるかもしれませんが、きっと変な人です。
このように、言文一致の現代文とはいえ、それはあくまで根本の文法的な話であり、完全な言文一致はありません。もちろん、「ライ麦畑でつかまえて」のように、ティーンエイジ・スカースで語られる話もありますが、わずかな例外に過ぎません。それらはたいがい一人称であって、三人称で完全に「話し言葉」で語られる小説があるのでしょうか?(あるかもしれません)
- 680 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/08(金) 21:25
- (0^〜^)
「プライベートインタビュー」
ttp://mseek.s47.xrea.com/test/read.cgi/big/1156010672/
ネタバレありです。
(0^〜^)
この話ではすべての文章が会話文ですから、話し言葉で語られています。当たり前ですね。さて、話し言葉と(現代の)書き言葉の相違は、伝達される情報の量と効率です。話し言葉というのは、よけいな修飾語やら副詞やらなんやらがひっきりなしに挿入されるため、なかなか話したいことが伝わりません。
たとえば、この話の冒頭では、『松浦が霊能力者の番組にゲストで出演した』ことが語られています。このように、通常の書き言葉なら19文字で済むところ、この話では252文字費やされています。
- 681 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/08(金) 21:25
- (0^〜^)
もちろん、それが作者の狙いです。狙いでなければ、そんなふうに書きません。当たり前ですね。主題に入りそうで、なかなか入らない、群盲象を撫でるような感触が読者をおそいます。本格的にやるならば、もっと関係のなさそうな文章を詰め込むところでしょうが、制約のためにそこまではしていません。
こういう話を「遠心的な話」といいます。通常の話は、主題がまん中にでんと座っていて、それを主人公たちがあれこれいじくるわけですが、遠心的な話では外側からゆっくりとまん中に近づいていく感じになります。
(0^〜^)
一方、この話は通常の小説は異なり、会話形式のパートとインタビュー形式のパートから成り立っています。地の文はありません。誰が言ったか、小説の本質は自由にあります。俳句は五七五、短歌は三十一文字、詩なら韻を踏むなどの決まった形式がありますが、小説は何も制約がありません。自由です。
ですから、会話形式でも、インタビュー形式でも構いません。形式から自由なのに、わざわざ形式に縛られにいくのも自由です。
- 682 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/08(金) 21:26
- (0^〜^)
はたまた一方、この話は擬似ミステリになっています。擬似とはいえ、ミステリです。ならば曲がりなりにも形式に縛られます。すなわち、謎と(一応の)解決です。なぜ擬似ミステリなのかというと、遠心的な構造のせいで「藤本に何か起こったらしい」ことしかわからず、何が謎なのかが謎になっているからです。
では解決の部分はどうか。この場合、探偵するのは読者です。では読者は、最後に明かされる解決を、まがりなりにも導けるようになっているでしょうか。ミステリはパズルではないので、解決の糸口があますことなく提示されていなくても構いません。この話の肝は「藤本は松浦を嫌っていた」というこの一点ですが、これについては評価がわかれることでしょう。
(0^〜^)
そういう意味では、この話は成功したとは言い切れません。ただ、小説という自由な形式に不自由をもたらすことの意味は大きいです。まあ、娘。小説であるというだけで不自由そのものを体現しているわけですが。
(0^〜^)
とりとめのないものになりました。
- 683 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/15(水) 20:46
- 刹那的
(0^〜^)
せつなてき 【刹那的】
(形動)
[1] 非常に短い時間であるさま。瞬間的。
[2] 目の前の快楽を求めるさま。 ・ ―な喜び
(0^〜^)
刹那とは、非常に短い時間を表す単位です。向こうの言葉でクシャナです。6,480,000刹那が24時間となります。24時間は86,400秒なので75刹那が1秒となります。こういうあてはめをナーガールジュナは嫌がって否定しました。
そんなことはどうでもいいのです。
『壁の少女』
ttp://mseek.nendo.net/event/big10/1136641446.html
- 684 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/15(水) 20:46
- (0^〜^)
読めば一目、50年という気の遠くなるようなそうでもないような長い時間と、炎に焼かれて燃え尽きる僅かな時間を対比させ、後者の優勢なることを指し示している話です。
日本の風土がそうさせるのか、日本人は尺度的に小さい・短い・細かいものを尊ぶところがあると思います。広大な庭園よりわびさびの庭、大きな機械より小型化された精密機械、散文詩よりも五七五。こじつけですが。「花に嵐の喩えもあるぞ サヨナラだけが人生だ」とか、「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響あり」とか。これ両方とも、出所は外国じゃないか。
(0^〜^)
まあ日本うんぬんは置いといて、永遠を求める人間に対し、ある種の嘲笑が浴びせかけられるという話は、昔からよくあります。秦の始皇帝が不老長寿の薬を求めてナントカを東の海に派遣させ、辿り着いたのが日本だとか、永遠の時を生きる魔女ヘケートとか。
永遠の時の話だけではなく、絶対的・恒久的なものではなく、ごくごく平凡なものに真の価値があるとかいう話も、これまた定番です。チルチルミチルとか。それは非常に良くない。
- 685 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/15(水) 20:46
- (0^〜^)
永遠と刹那は比較するべきものではありません。そもそも、ものの存在が因とか縁とかによって生成と消滅を絶えずくりかえす状態にあり、その生成消滅のサイクルを表す言葉です。その縁によってはものはいろいろな形をなすことになるので、確固たる実体などありようもない、というほんとかどうだかわからない話です。
あるいは、「五蘊仮和合」というものがあり、これによるとすべてのものごとはいろんな要素が仮に集まり合わさって現れるらしいです。どれか一つの要素が欠けたら成立せず、スポットライトのように一つの焦点を結んだ「刹那」に、ものごとが姿を現します。この「刹那」はさきほどの1/75秒どころではなく、人間の世界に当てはめると数十年に当るそうな(宇宙規模に当てはめれば、数十年でも「刹那」なのだと)。
(0^〜^)
まあそんなことはどうでもいいのですが、辞書に「非常に短い時間であるさま」と登録されていて、それが一般の慣用であるのならば、それはそれでいいとしましょう。問題は最後の一文、「刹那的で、美しかった」です。単に「美」ならば、これまでの文中に出てきてますが、この二つの語句をとうとう並べてしまいました。
この最後の一文まで、「刹那>永遠」という価値観は暗喩で示されていました。ところが、この締めの文章は直喩というか、作者の生の価値観がむき出しにされています。むき出しにしてもいいのですが、それまでの謙抑的な文章が発していた効果はなんだったのでしょうか。
- 686 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/15(水) 20:47
- (0^〜^)
「美」とか「刹那」とか、そういう言葉は作中の人物に語らせるだけで十分だったのです。作者が大きな声を出さなくても、わたしたちはじゅうぶんそのことを承知しています。なぜなら、彼女たちのファンなのだから。
- 687 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/31(火) 20:16
- 娘。小説?
(0^〜^)
はてさて、世間では戦後レジームの脱却とか社会保険庁の解体とか社会の仕組みのありようについてあーでもないこーでもないとやりあっている最中、「キッズ小説は娘。小説に含まれるのか」という浮世離れした論争があったそうです。
「キッズ小説」という言葉で話が通じているのだから、記号論的には娘。小説とは少なくとも同一の範疇にないことは明らかなのですが、それでは話は終わってしまいますし、論じている方々もそれは重々承知のことでしょうから、別の角度から見てみましょう。
(0^〜^)
さて、わたしは、「縁もゆかりもない話の登場人物の名前を娘。の誰かに当てはめるだけで『娘。小説』とか言ってんじゃねーよm9(^Д^)プギャー」論者です。これについては今までさんざんやりつくし誰も相手にしない状態にまでなっていますので、詳細は割愛します。
その立場から「キッズ小説」を読みますと、はたしてその小説が名前だけ借りた小説、つまり交換可能な小説であるかの判断が、ベリヲタでもキュートヲタでもエッグヲタでもないごく普通の一般人であるわたしには、まったくつきません。彼女たちのことをまったく知らないからです。
- 688 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/31(火) 20:16
- (0^〜^)
どうしてかと言いますと、普通に暮らしている上では、キッズたちを目にすることがないからです。だから、小説の彼女たちと、テレビでの彼女たちを比較する術がない。いや、普通に暮らしてたら全人口98%の一般人はハロモニ@なんぞ見ませんが、それでも毎週なんらかの情報を伝えてくれる媒体があるのは大きいです。
キッズたちだって活動しているのは確かですが、コンサートやDVDくらいでは、ふだんの彼女たちが何をし何を考えているかという妄想を膨らませるには、情報が少なすぎます。
(0^〜^)
娘。の面白さは、彼女たちの関係性にあります。一人一人はソロ活動もままならないスキルしか持っていないタレントですが、それが何人も集まると集団としての面白さが湧き上がる。まっさきにあるのは、個人ではなく関係です。だから、娘。小説も複数の娘。が登場します。
その関係性が、キッズに関してはわたしには見えません。もちろん人生を投げ打って入れ込んでいる人たちにはそれがよく見えるのでしょう。でもそれでは多くの普通の人たちの支持は得られません。だから揉めるのです。
- 689 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/31(火) 20:16
- (0^〜^)
まあ、娘。もハロモニ@といくつかのラジオくらいしかありませんから、事情はそう変わりなくなっているのでしょう。「娘。小説」も「キッズ小説」も、五十歩百歩なんですからみんな仲良く。
(0^〜^)
一つ可能性があるとしたら、それはガッタスです。定期的に試合がありますし、ムックや本も出てますし、夏休みにはお台場で練習やら試合やらやっています。全部見ることはできないでしょうが、詳細なレポを書いてくれる人がいっぱいいます。メンバー的にも、85年組、ベリ、キュート、エッグが揃っています。ついでに柴ちゃんもいます。
どういう事情かはわかりませんが、紺野も復帰してCDも出してコンサートで歌っています。こちらのほうが情報量たっぷりで、彼女たちの関係性を描いた『娘。小説』が可能となっています。みなさん、時代はガッタスです。美しい娘。小説を築き上げようではありませんか。
- 690 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/31(火) 20:17
- (0^〜^)
あ、ガッタスって娘。いないじゃん。
- 691 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 22:24
- 物語と共同作業(そして感情移入)
( 0^〜^)
このまま放っておくと落ちてしまうので何か書きます。
( 0^〜^)
「なっちはすごいよ」(の一部)
ttp://mseek.s47.xrea.com/test/read.cgi/pacifico/1199343571/3n
- 692 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 22:25
- ( 0^〜^)
このテクストを使用して、読者のとる共同作業を示してみましょう。
なお、過去ログ行きのことを考え、当該テクストを以下に転載します。
番号はわたしが付したもので原テクストにはありません。
( 0^〜^)
1. なっちはいつだって僕だけの天使さ
2. つまらない俺のライフを明るい笑顔によって
3. ちがうものに変えてくれるのさ
4. はらはらするときもあるけれど
5. すぐになっちは笑顔に戻る
6. ごめんなさいと謝れば
7. いくら事故っても大丈夫さ
8. よってなっちは無罪
- 693 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 22:25
- ( 0^〜^)
これをつらつらと眺めただけで、読者は言語行為、コミュニケーション行為にかかる様々な問題をすでに解決しています。そうでなければ日常生活が送れません。
読者は何よりも先立って、この文章を発信した何者かがいることを把握します。まず、この文章を「m-seek」にアップロードした作者がいること。そしてそれはこのテクスト内の語り手「僕」「俺」(なんだこれは)と、まず同一視できるものであること。ただし、作者と語り手は一応は別物として扱う必要があること。したがって、物語内の諸作用は主として語り手の心理作用に大きくかかわるものであること。
( 0^〜^)
1.によって示される修辞表現は、一種の誇張法です。「いつだって天使さ」ということを語り手が断定するためには、語り手の常日頃に現れ関係するすべての人間と比較検討する必要があります。語り手の年齢は明らかにされていませんが、それまでの人生、そしてこれからの人生に出会うだろう人間の数を考えれば、このような結論を導くために割かれた時間を考慮することはまったくの無駄です。誇張法でなければ、ロクな考えもないままこのような即断を下すそそっかしい人間であることを示しているのかもしれません。が、とりあえず後者の判断は保留します。
語り手の氏素性はけして高いものではありません。古今東西を問わずやんごとなき身分のお方が「俺のライフ」などと口にするはずがないでしょう。
- 694 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 22:25
- ( 0^〜^)
このような共同作業と並行して、読者は脳内の百科事典を猛スピードで検索します。1.にある「なっち」とは何か、平凡社百科事典にも広辞苑にもないこの名詞は、「天使」との比喩であり主語にあることから、人名かそれに類するものであると推測します。そして、この文章が「m-seek」にあり、読者の趣味嗜好という、まったくテクストの内容から離れた要因から、「なっち」が「安倍なつみ」という人物であることが同定されます。ここポイント。
ただし、ここで読者は一個の問題にぶつかります。語り手の「安倍なつみ」と読者の「安倍なつみ」がはたして同一のものなのかどうかという根源的な問題は置いといて、「なっち」が「天使」である理由が示されていないからです。唯一の情報は2.「明るい笑顔」ですが、これではいかにも弱いでしょう。つまり、語り手は強度の情緒不安定状態にあることが示唆されています。
このようにして、読者は語り手を「どうしようもないヲタ」であると同定行為を行います。当該テクストのような一人称の物語において、読者は語り手についての同定行為がなければ、次の段階に進みません。
( 0^〜^)
さて、語り手が「どうしようもないヲタ」であるということは、語り手が「信頼できない語り手」であることを指し示します。通常、語り手は語り手が目にしたこと耳にしたことを包み隠さず読者に提示することが求められるのですが、普通に考えればそんな人はいないでしょう。自分か誰かに都合の悪いこと──学校の勉強ができないとかここ数年お外に出たことがないとか──を聞かれてもいないのに進んで他人に話す人がいるでしょうか? 加えてこの語り手は重度のヲタで、目にブラインドがかかっています。簡単にその叙述を信用してはなりません。
そのように考えますと、4.「はらはらするとき」、5.「すぐに〜笑顔に戻る」、6.「ごめんなさいと謝れば」、7.「事故っても大丈夫さ」、8.「なっちは無罪」という諸情報の信頼性も揺らいできます。(ここで、「語り手は信用できないから、『なっちは有罪』なんだ! と早合点してはいけませんよ)
しかしながら、あやしいのは語り手の価値判断であり、そのような価値判断がなされる契機となった出来事があったことは否定できません。つまり、4.「はらはらする」ような出来事、6.「ごめんなさいと謝」るような事態、7.「なっちは無罪」という判決が下るような事件があったことは、この物語内ではまぎれもない事実であります。
- 695 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 22:27
-
( 0^〜^)
読者はこのような事実を把握し、それが何なのか、語り手の価値判断は正しいのかどうかをこの後の物語で判断するわけですが、実はここで一個の物語が終わっています。(この続きのレスはあるのですが、それを斟酌することが無用なことは明らかです)
ここで、それならば読者は外部のデータベース(さきほど使ったものです。「m-seek」やら何やらで、この「なっち」が「安倍なつみ」であることを同定したように)を参照すべきなのかどうか。しかし、さきほどの同定行為は「なっち」が安倍なつみという名前であることを指し示したにとどまります。(最近見ませんが)テレビやコンサート会場で目撃されることがあるあの人と同定されたわけではありません。ですから、「なっちが無罪」かどうかの判断を、「テレビやコンサートで見かける安倍なつみが無罪」かどうかにすりかえることはしてはいけないのです。あくまで、その判断はテクストによらなければなりません。
( 0^〜^)
無罪を「s」、有罪を「〜s」とします。「語り手は……を信じる」をBm、「語り手は……を知っている」をKm、「語り手は……を望む」とします。これまでの一連の推敲と原テクストによって、読者は以下の思考を行います。
(∀x) [s(x)v〜s(x)]
Km {[(∃x)〜s(x)・(x=なっち)]・Wm[(∃x)s(x)・(x=なっち)]} ⊃
Bm可能 [〜s(x)・s(x)]
記号の詳しい意味については省略しますが、2行目においては「語り手はなっちが無罪であることを論理的に不可能であることを知っている」、最後の行においては「語り手は無罪だろうが有罪だろうがそんなの関係ねえと思っている」ことを表します。
- 696 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 22:27
- ( 0^〜^)
ここにおいて、読者は語り手が開き直っていることを確信し、そしてどうやら「なっち」は有罪であること(無罪ならば開き直る必要はどこにもありませんから)、あるいは少なくとも語り手が心の奥底ではそう思っているという情報を手にすることができました。
そして同時に、なっちは無罪有罪にもかかわらず、「なっちは天使」であることが再確認されます。語り手(あるいはもしかしたら作者)が、読者に対し信じさせ、行わせようとする諸形態──共同作業により、一個の事実が露わになりましたが、それがテクストの持つ美的メッセージなのです。こんなややこしい作業を読者は一瞥しただけで行うことができる、これは「なっちが天使」だからです。
なっちはすごいなあ。
- 697 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/06(日) 09:26
- なんか面白いことやってますね
- 698 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 23:23
- (0^〜^)v<楽しいことやってるYO!
- 699 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/05/23(金) 22:51
- ジークフリートの死
(0^〜^)ノ ヨッ
平凡な生を生きている皆様、こんにちは。
「車輪と唄」(『臆病者の衝突』より)
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/grass/1179582246/2-32n
(0^〜^)
わたしに黙って揉め事なんてズル過ぎる──というのはひとまず置いといて。
「劇的」なものにあこがれる平凡な主人公たちが、その愚かしさに気づくという、
まあどこにでもあるお話です。
- 700 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/05/23(金) 22:51
- (0^〜^)
「悲劇のヒロイン」「劇的な変化」「自分を思って自殺した恋人」「平凡」「凡庸」「OL」
などなど、二つの相反する概念を、ある箇所では直接的に、ある箇所では隠喩的に、
それこそ凡庸なまでにそこかしこに貼り付けてあるのは作者の親切心からでしょう。
(0^〜^)
二つの大戦は、わたしたちに残されていた可能性──固有の死の可能性という幻想を
打ち砕きました。わたしはわたしの物語の主人公ですらなく、名前をはぎ取られた
単なる存在でしかありません。それは皆様もじゅうぶんご存知のことです。
(0^〜^)
一方、自転車で電車にはねられて体がバラバラになるという自殺の仕方は、
年間3万人を超す自殺者を出す日本においても、レアケースでしょう。
これは、19世紀以前ならともかく、現代においてならなんとか及第点を得られる
個性的な死といえるのでしょう。少なくとも主人公たちにとっては。
- 701 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/05/23(金) 22:52
- (0^〜^)
わたしや、主人公たちは、ワーグナーの歌劇に出てくるおぞましい「竜の死」しか、
死ぬことができません。わたしは凡庸な存在でしかないのですから。
主人公たちは踏切の前で立ち止まりました。
彼女たちに英雄的な死は訪れなかった。これからも訪れないでしょう。
これは、凡庸を肯定したからではありません。
固有の死というものは、やはり存在しないからです。
(0^〜^)
ではどうすればいいのでしょう。
わたしはわたしが凡庸であること、凡庸を受け入れればいいのでしょうか。
いや、受け入れることは構いません。
昔、オルテガというサッカー選手が
「凡庸な精神が自己の凡庸であることを承知の上で、
大胆にも凡庸なるものの権利を確認し、これをあらゆる場所に押しつけようとする」
と、嘆きました。
後段が問題になるということですね。
- 702 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/05/23(金) 22:53
- (0^〜^)
自分は凡庸であり、そうであることを開き直り、他人に「竜の死」を押しつける。
なんとご立派な。わたしは凡庸ですが、ゾンビにはなりたくありません。
最後、「些細な変化」とありますが、これは主人公たちが自己の凡庸を
認識したのではありません。凡庸であることへの開き直りの醜さをです。
(0^〜^)
一方、終劇後のファルス──この物語にふさわしいエピローグではありませんか。
(0^〜^)ノ バーイ
- 703 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/06/11(水) 20:54
- どこも変わらず
(0^〜^)
アーサー・シモンズは、「文学でもっとも容易な技術は、読者に涙を流させることと、
猥褻感を起こさせることである」と言っている。
──三島由紀夫
- 704 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/06/11(水) 21:07
- (0^〜^)
何も付け加えることはありません。
- 705 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/06/28(土) 22:12
- 「ファンタジー」幻想
(0^〜^)ノ
一人で完結する企画・批評感想編だYO!
(0^〜^)
書いていたときの意図や目的などすっぱり忘れて、
そこにあるテクストだけを手がかりに、自分の書いたものを批評するのです。
10 亡霊
ttp://mseek.s47.xrea.com/test/read.cgi/pacifico/1213185405/
- 706 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/06/28(土) 22:13
- (0^〜^)
レス4-5等にある「リスト」からわかるように、このテクストは芥川龍之介の諸作品を
なぞらえています。それぞれが、どの元作品に対応するかは、暇な人は考えてみてください。
(0^〜^)
そうなると、当然、読者は「間テクスト性」を頭に置きながら読み進めることになります。
間テクスト性とは、そのテクストとそれに先行するテクストの間に関連性のことで、
その関連性から読解のためのコードやら何やらが導かれます。
(0^〜^)
すると、ここでは芥川の小説が使われているから、そこから読みの手がかりを探ろう。
いやいや、後半は京極堂の憑き物落としのパクリだから、ミステリのコードを使うべきだ。
そうなると、前半の連続殺人の部分は、ミステリによくある見立て殺人じゃないか。
……。
- 707 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/06/28(土) 22:13
- (0^〜^)
ところが、この物語は「謎−解決」というミステリの構造にはなっていませんでした。
人が死んでるからといって、ミステリだと決めつけてはいけません。
各々の殺人事件は後半部分であっさりと「犯人はつかまっている」で終わらせています。
(0^〜^)
「謎−解決」のかわりに、この物語の構成は「幻想−現実」となっています。
うまい言葉が思いつかないのですが、「幻想」とは何か不可思議なできごと、
「現実」はそれに対する合理的な解釈のことです。
いや、それだと「謎−解決」の図式と違いないじゃないかと言われそうですが、
「謎−解決」図式が「犯人・被害者・探偵」の三役が必要なのに対し、
「幻想−現実」図式では「体験者・解釈者」の二役であるところが異なります。
(0^〜^)
この物語における幻想とは、「河童」の存在です。
岡井は幻想を体験し、吉澤が解釈を下す。
(ここで、吉澤がトリックをしかけたことも、解釈をややこしくしてしまっています)
ただそれだけの話なわけです。
- 708 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/06/28(土) 22:14
- (0^〜^)
では、ここで、どうして「幻想−現実」図式にしたのかという根本的な疑問が湧いてきます。
「幻想」部分だけで終わらせる物語のほうが世の中多いです。
「現実」的な解釈なんかいらないよ、「幻想」のただ中にいさせてくれよ、と。
(0^〜^)
ここでうんうん唸っていたら、見つかりました。
芥川龍之介の小品『奇遇』です。
(0^〜^)
味わい深い小説なので、ぜひ青空文庫あたりで読んでいただきたいのですが、
話の筋は以下のとおり。
大昔の中国の話。男性が夢の中で美しい娘と出会う。
起きて夢の中で見た場所に行くとその娘がいて、娘のほうでもその男の夢を見ていたという。
アア運命ノ出逢イ、不思議ナ話ダナー。
(0^〜^)
少し場面がかわって、この男女が会話をしています。
こういう作り話を娘の両親にしつこく話して、奇遇な話ということで娘さんをお嫁にください、
うむ、そういうことなら娘をやろう、と相成ってヨカッタヨカッタ。
- 709 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/06/28(土) 22:14
- (0^〜^)
このあともう一度話がひっくり返されるのですが、もういいでしょう。
芥川は「馬の脚」やら「仙人」やら、不思議な話を書いているのですが、
本質的には解釈を加えないではいられない理知的な小説家です。
「幻想」なんか、それこそ幻想にすぎないのだと。
それが『奇遇』に如実に表れていて、編集者にも呆れられてしまいます。
そして、本テクストで「幻想−現実」図式が用いられたのも、
そうした芥川の諸作品に対する間テクスト性を考慮すれば、当然のことだったのです。
(0^〜^)
まとめますと、前半部分の疑似見立て殺人、河童の出現、物語構成と、
全体に渡って徹頭徹尾、芥川のテクストを利用した小説構造となっていました。
それでは芥川諸作品と娘。(ないし娘。小説)の関係性という話になるのですが、
それはまた次の機会に。
- 710 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/06/28(土) 22:15
- (0^〜^)
とりあえず、本テクストの作者が「ぼんやりとした不安」を抱えて
この世からオサラバしないことを祈りましょう。
(0^〜^)ノシ
- 711 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2009/03/25(水) 23:20
- 223 名前:名無飼育さん[???] 投稿日:2009/03/25(水) 21:58
KOREA NO.1!!!!!!
WBC TRUE WINNER = KOREA
- 712 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/23(木) 23:22
- 倫理的な「私」
(0^〜^)
人間の社会的な行動は、倫理に基づいてなされます。
「りんりりんりと夜も眠れず」などと、倫理というと口うるさい野暮なエチケットみたいなものと思われてしまうかもしれませんが、古代ギリシアの賢人が分厚い本を残したように、人間の行動原理を律しているのは事実です。
当然ながら、娘。小説にかかわる人たちも、様々な倫理(論理じゃないよ)的な問題にさらされています。
(0^〜^)
娘。小説が成り立つためにいちばん初めに必要なのは、娘。小説の作者です。実は娘。ではありません。ああ、そこの人、勘違いしないように。作者がいちばん重要と言ってるわけではないですよ。「はじめに言葉ありき」。言葉をつむぐ作者がいなければ、娘。小説ができないことは自明でしょう。
ということは、作者が娘。小説を書くという社会的行動は(たとえ、読者が一人もいないとしても!)、その作者の倫理を内包していることになります。
- 713 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/23(木) 23:22
- (0^〜^)
はて、倫理とは何か?
(0^〜^)
さきほど行動原理と言いましたが、行動原理のひとつと言い直します。一般的には、人間の行動を縛る方向に働きます。「法は最小限の倫理」なわけですが、個々人、あるいは社会が有するおおまかな法律であるとと考えましょう。
娘。小説作者は、「娘。小説に、娘。を出さなければならない」という倫理に縛られます。当然です。少なくとも登場人物に娘。の名前をふらなければなりません。まあ、ここまでは問題ないでしょう。
(0^〜^)
さて、今度は作者は娘。小説の世界の中で、登場人物である娘。がとる行動、彼女たちをとりまく世界、そこで起こる出来事についても、倫理的に否かどうかで頭を悩ませることになります。
小説は自由な文芸形式です。そして、形式のみならず、その中身も本来的には自由なはずです。わたしたちは、憲法で保障されている(そして、憲法なんかなくても保障されるべきである)思想信条の自由を有しています。つまり、何を書いてもいいのです。
ところが、実際はそんなことはありません。
- 714 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/23(木) 23:23
- (0^〜^)
たとえば、娘。小説の中で娘。が覚醒剤を使ったりしたらどうでしょうか。それはOK? では、殺人事件を起こすのはどうでしょうか。お前が言うな? では、娘。が地下鉄でサリンを撒くのはどうでしょうか? 現実の被害者がいる事件を元にするのは問題だ? それなら、娘。が恒星間宇宙船の内部で水素爆発テロを起こすのはどうでしょうか? SFならいい? 戦国時代にタイムスリップした娘。が延暦寺焼き打ちを起こすのは? 娘。が崇峻天皇を暗殺するのは?
(0^〜^)
ときどき作者と読者の間で騒動が起こりますが、これはそれぞれの倫理のぶつかりあいなわけですね。
これまでの傾向から見ると、作者の95%はドライです。娘。小説に出てくる娘。は、作者にとって自分のストーリーに奉仕させる駒にすぎません。だって、作者の勝手に登場人物がストーリーを進めることはないのですから。
いっぽう、その作者の小説の読者は、作者に比してウェットになります。受け身ですから。そのストーリーは読者が作ったものではありませんから、娘。は駒ではないのです。ここに齟齬が生じます。
ストーリーの都合上、娘。がひどいめにあう・あわせる場合があったとき、作者は自分の倫理と照らしあわせ、あるときは自分の倫理ぎりぎりのところでストーリーを作る場合があります。読者の閾値はそれより低い場合が、半分くらいあるかもしれません。すると、作者と読者、あるいは閾値の高い読者と低い読者が罵り合いを始めるのです。
- 715 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/23(木) 23:23
- (0^〜^)
傾向と対策
娘。がひどいめに合わせる話より、ひどいめに合う話の方が非難される度合いが高いようです。ですので、読者の批難が怖い人は、娘。をどんどんサディストにしましょう。どうしてもひどいめに合う話にしたかったら、美談仕立てにしましょう。「恋空」とかそんな感じで。あるいは「純文学」風味にして、主人公に「やれやれ」と言わせるとか。
- 716 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/25(土) 23:48
- 感想は特にないです
- 717 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/09(火) 00:37
- ttp://mseek.s47.xrea.com/test/read.cgi/pacifico/1243091076/l50
駄文で申し訳ありませんが、この感想を書いてはくれませんでしょうか。
- 718 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/12(金) 19:30
- >>717
今気づいたのでしばしお待ちを
- 719 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/15(月) 19:47
- 無常という事
(0^〜^)
ゆく川の流れは絶えずして
しかももとの水にあらず
無常とはつまり、世の中のいっさいの現象はとどまることなく常に移り変わっていくものという考え方、イデオロギーです。このイデオロギーは相当に強固で、日本人の心をとらえて離しません。日本人が無宗教だなんてとんでもない、世界に誇れるブッディストの集団です。花といえば日本では桜のことで、これほどまでに日本人があの薄いピンクの花びらに心奪われるのは、四月ころにぱっと咲いてぱっと散る、そのうつろいが「美しい」と、きっとDNAに刷り込まれているからでしょう。
- 720 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/15(月) 19:48
- (0^〜^)
「絵里」と「亀井絵里」は別個の存在で、作中においてもそのとおりに扱われています。それどころか「亀井絵里」のほうはなんだか酷い目にもあっています。それは必然です。「亀井絵里」とは、本人からわかち放たれた一個の概念にすぎません。わたしたちが見ることができるのは、その「亀井絵里」のほうであって、けして「絵里」のほうではありません。ならば、わたしたちが扱うべきは、「絵里」ではなく「亀井絵里」のほうとなります。
(0^〜^)
いろいろなサジェスチョンのとおり、「亀井絵里」は、二次創作キャラクターの暗喩であると読み取ることもできます。二次創作キャラクターなど、ことに一次のものが現実の人間である場合、当人にとっては忌み嫌うべき存在にすぎません。あなたの生活の一部が極限にまで誇大妄想にまで膨れ上がり、それがインターネット上の掲示板に描かれることを想像すればわかるでしょう。ですので、最後に「絵里」が「亀井絵里」を受け入れる、中にはそういう人がいるのかもしれませんが、だいたいのところ、これは作者の願望です。
- 721 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/15(月) 19:49
- (0^〜^)
しかし、それは非難されるべきものではありません。構造的には、「絵里」ですら小説内の登場人物、つまり二次創作キャラクターにすぎないのですから、二次創作キャラクターが二次創作キャラクターを受け入れる話、この意味でもメタフィクションということになります。二次キャラが二次キャラを否定することできないよね、などと言っても始まりません。課題はその先にあるのです。
(0^〜^)
前提となるべきは、彼女たちの舞台が、そしてわたしたちの舞台がモーニング娘。であるということです。そこでは、常にとどまり続けることはなく、万事が変化していくところです。もとの水などありません。だからこそ、日本人が桜を愛で続けるがごとく、わたしたちは娘。に惹きつけられ続けているのです。
しかし、一抹の不安がそこにあります(ハイデガーの言うところの不安であり、恐怖ではありません)。無常観が日本を支配しはじめたのは、源平の争いを描いた「平家物語」が人口に膾炙したころだと言われています。鎌倉時代のことですが、つまりそれまでは「無常」ではなかった、「常なるもの」があったということになります。
- 722 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/15(月) 19:50
- (0^〜^)
われわれは「無常」なるものがわかっていない、なぜなら「常なるもの」を見失っているからだと小林秀雄が書きました。なんだかいやらしい書き様ですが、わたしたちこそがこの言葉のよき理解者といえるでしょう。わたしたちは「常なるもの」を知らず、そのことを自覚的に「不安」に思っているのですから。そのうえで、小林は書きます。記憶するだけではいけないのだろう、思い出すことが必要なだと。その思い出すという行為は、そのまま、二次創作という忌み嫌うべき因業につながっているのでしょう。ならば、わたしたちが引くべき言葉は、冒頭に掲げた「方丈記」の一文ではなく、鴨長明と同時代の人物、藤原定家の日記「明月記」の有名な一文しかありません。
- 723 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/15(月) 19:50
- (0^〜^)
世上乱逆追討に満つといえども
紅旗征戎わがことにあらず
源平の争乱のさなか、貴族たちが右往左往している様子を見た若き日の定家が、「天下の乱れ、争いなどわたしの知ったことではない、わたしはただ歌の道に生きるのだ」という決意表明です。出世争いのほうには飛び込んでいったそうですがそれはさておき、歌の道を邁進した彼が「作り上げた」のは、「幽玄」と言われる人工的な和歌の世界でした。
- 724 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/15(月) 19:51
- (0^〜^)
来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ
「まつほ」とは、淡路島の地名で、「来ぬ人を待つ」とも掛けていますが、もちろん定家自身は「まつほ」にも行っていないし、人を待っていたりしません。徹頭徹尾、すべてを想像の産物で世界を構築しています。虚構の世界を構築し、そこに自分の心情を注ぎ込むのが「幽玄」の世界だ、と言ったら怒られる気がしますが。ですが、これでいいのです。わたしたちは思い出す、想像することしかできません。この世界は虚構だ、虚構こそがすべての世界においてこそ、わたしたちは「常なるもの」を思い、「無常」を愛でることができるのですから。わたしたちが思い続けるからこそ、この世界があり続けることができるのですから。
(0^〜^)
いかがでしょうか?
- 725 名前:一介のファン 投稿日:2009/06/16(火) 23:48
- さすがです、快哉を叫ぶ思いがしました。
誰かがスレをクリックした瞬間からその物語は読者のものになるのは当然ですが、
たった一人でもいいから、言いたいことを受け取ってくれる人がいなければやはり寂しいものです。
大分歩み寄ってくれたのでしょうが、優しく紐解いて下さり感謝至極。
個人的な話を人様のスレで長々と書いてしまい申し訳ありませんが、
僕が娘。小説というか飼育にハマったのは坊主さんのメタ小説に触れてからなので、
最後に坊主さんの言葉を頂けて、本当に嬉しいです。
ありがとうございました!
P.S.何度か言っていますが、2ちゃんで、すってぷ=坊主説を刻んだのは僕でした。
オフ会では坊主さんを絶賛しておきます。
- 726 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/10(木) 20:05
- いしよし小説の危機と超越論的いしよし現象学
( ^▽^)
桃板の「いしよし小説総合スレッド〈九冊目〉」をみてみると……
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/music/605/1163256228/410-425n
7月に更新されたいしよし小説は
『屋根の下のベース弾き』
『あの樹の下で』
『こぉるど けーす』
『Pleasures2』(ただし桃板)
のわずか四つ。飼育のみなら三つだけという状況にあります。
いしよし小説おわた、ですましてもいいのですが。
- 727 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/10(木) 20:06
- 1.いしよし小説の危機とは何か
( ^▽^)
「ここでいう危機とは、それぞれの個別いしよし小説の理論的、
実践的成果を問題にするのではなく、
そのいしよしの意味の全体を徹底的にゆるがすような危機なのである。」
と、先人は言っております。
つまり、いしよし小説が進歩したとか退歩したのかを言ってるいるのではありません。
( ^▽^)
「飼育がその意味を得るところの『絶対的』いしよしへの信頼、飼育の歴史の意味への信頼、
人間性への、飼育住民の自由への信頼が崩壊するのである。
飼育住民の自由とは、いしよしの個体としての存在、
また普遍的いしよしとしての存在に理性的意味を与えうるという
いしよしの可能性にほかならない。」
何がなんだかわからなくなってきましたが。
- 728 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/10(木) 20:08
- ( ^▽^)
いしよし小説の進歩や興隆によって、
世界はすべていしよし的なものとして説明できるという妄念が広がりました。
するとそれが飼育住民の生の意味にまで侵犯するようになってしまいました。
どういうことかと言いますと、いしよしというある意味道具にすぎなかったものが
普遍性をおびてしまい、それが絶対的な基準になって、
逆に人間性を失わせることになってしまったのです。
( ^▽^)
たとえばのはなし。
何もいしよしに限った話ではないのですが、
いしよしだよしごまだみきよしだと、おのおののヲタが抗争を広げお互いに侮辱しあった結果、
いしよし等々によって住民の生がいきいきするどころか
とげとげしくなってしまったみたいなはなしです(かなり違う)。
( ^▽^)
これこそが、先人のいう「いしよし小説の危機」の正体なのです。
- 729 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/10(木) 20:09
- 2.いしよしの普遍化
( ^▽^)
「いしよし的な自然の普遍化によって、新たないしよし小説の指導のもとに、
いしよし自体が理念化されることになる。現代的に表現してみれば、
いしよし自体が普遍的多様体になるのである。」
いしよしが「小説」という形式においても盛んになったのは、
二人の関係性が小説のコードに合致していたからです。
コードですから、他のジャンルの小説にも似たようなものはいっぱいあります。
( ^▽^)
ところが、このコードというのがくせものでした。
コードに則っているという事実から、ある程度の普遍性が想像されてしまい、
それがある種の飛躍により、それそのものに普遍性があるものだという顛倒が起きてしまう。
コードだって、人間が生み出した概念にすぎないのですから、
それによって導かれる普遍性など決めつけにすぎないのです。
- 730 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/10(木) 20:10
- 3.いしよし世界は普遍性に先だつ
( ^▽^)
「いしよし世界は普遍性に先だって、飼育住民にとっていつもすでに存在していたし、
それがいしよし小説の時代になってもまた、そうした在り方をとりつづけてきたのである。」
いしよしという存在じたいは、いしよし小説に先行して存在していました。
ですので、いしよし小説ないしそのかもしだす普遍性らしきものに
わたしたちはまどわされてはいけません。
わたしたちは、いしよし小説それじたいが絶対客観的なものであるという
ある種の自然主義的態度を、いしよしそれ自身へと還元する必要があります。
これが超越論的(いしよし的)還元と、専門用語で言います。
- 731 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/10(木) 20:11
- 4.現象学的=超越論的いしよし的還元が基礎となる
( ^▽^)
これらの課題は現象学によって遂行される、と先人は言います。
普遍的いしよしというものをまずエポケー(判断停止)します。
そしてそうして見えてくるもの中で、疑うことのできない内在的確信をとらえます。
いしよし自身の存在性を考え始めると、コードと(偽の)普遍性にからめとられてしまいます。
コードに頼るのではなく、いしよしの二人自身からこぼれおちてくる何かをとらえるのです。
こうすることにより、わたしたちにはいしよしそのものを理解することはできませんが、
いしよしという確信構造は理解することができます。
( ^▽^)
こうすることで何が、どのように解決されるのか?
現状、いしよしに限らず娘。小説の絶対数の減少はさけられません。
ですが、ありきたりのコードに頼って量産してもそこには意味がありません。
コードに頼るキャラクター小説なんてそこかしこに溢れているのですから、
いずれ本当に消滅してしまうでしょう。
それを避けるためには、上記のようにある方向へ特化・純化するしかないと考えます。
( ^▽^)
この項、でたらめです。
- 732 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/22(土) 23:47
- だから間テクスト性の罠だと何度いったら(ry
(0^〜^)
さて、いしよし小説の危機論に対して、「みきよし小説と差異」なる題名の反論が続く
予定だったのですが、いしよし小説どころか飼育自体が危機に陥ってしまったため、
どうしたもんかなあと思いつつ、エポケーしながら日々を過ごしていましたら、
飼育ブログなるものができてしまい、それじゃあこのスレもういらなくね?
そっちでやらないと迷惑じゃね? みたいな感じになってしまいましたが、
もちろんそんな遠慮などせず、何事もなかったかのように先を続けます。
(0^〜^)
すると、ななしチャットのほうに、ちくりっ子からのご注進を見つけました。
ちくりっ子は性根がそうなっているのでもう一生ちくり続ける運命にあります。
彼の者の呪われた生に幸あれ。
その飼育ブログを見ると、ある人をほめるためにわたしをけなしています。
これはいけない。AをだしにしてBをほめる・けなすという論法をやってはいけないと、
小学校で習わなかったのでしょうか。
さらに、けなす論拠も示していないので、単なる誹謗中傷です。
きっと、以前わたしに「あふぉ」呼ばわりされたことを根に持っているにちがいない
(論拠のある「あふぉ」呼ばわりですよ?)。
- 733 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/22(土) 23:49
- (0^〜^)
さて、江戸の敵は長崎で討ちましょう。それが節度ある大人というものです。
(0^〜^)
そのブログの下のほうに進むと、「青薔薇企画」についての記述があります。
これは、第八回の短編企画に出された「ANGEL FACE」という話を
書きなおそうというもので、どのような経緯があったのかはわたしは知りません。
それに対し、ブログの書き手は「今から思えば相当失礼な企画だったと思います」
「別ジャンルですが他人の作品をインスパイアして散々あさってな方向に
滑らせたなんて真似をしでかしてしまった」としおらしくしていますが、
勘違いも甚だしい。そんな矮小な問題ではないのです。
(0^〜^)
あらゆる文章(テクスト)は、先行する文章から影響を受けます。
これを避けることはできません。大昔のこと、ドイツのある人がある学者の論文を
ほめて「この論文はいっさいの引用がないところがすばらしい」と話したところ、
ある貴族が「引用が一つもない文章なんて、無人島ででも書けるんじゃね?」
と答えました。このエピソードは、この論文が己の思考のみを頼りに書かれたという
価値をわからない貴族の無知を笑うためのものですが、
貴族の意見はある意味もっともなところがあります。
テクストには、必ず他のテクストからの何らかの痕跡があるのです。
- 734 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/22(土) 23:51
- (0^〜^)
ここでは、間テクスト性という概念を用います。
これは、テクストを読み込むときに用いる技法のひとつですが、
「書きなおし」は、先行テクストである「ANGEL FACE」を読み込むという作業が
不可避で、企画に参加した者すべてが意識的あるいは無意志的に行ったものです。
間テクスト性についての詳細は、wikipediaでも見ていただくとして、
間テクスト性のひとつとして、「ハイパーテクスト性(ハイポテクスト性)」
というものがあります。これは、wwwの世界のようなもので、
まあ、テクストは他のテクストとの関連性があるからこそテクストとして
存在しうるのだと言ってもいいでしょう。
(0^〜^)
さて、ここからは問題点をつらつらあげていきますので、
まとまりのあるものではないことをあらかじめご了承ねがいます。
- 735 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/22(土) 23:59
- (0^〜^)
書きなおしという作業は、間テクスト性にかかわることはすでに述べました。
そこには、もはや「原作者」という概念はありません。
そんなものは著作権法の中だけに存在します。
テクストが、wwwのように網の目の一つにすぎないのでしたら、
どれがオリジナルであるかなどと主張することは困難になるからです。
「今思えば失礼だった」などと、原作者に対する配慮を見せつけるような
態度はありえません。
さらにいえば、その「原作者」も「モーニング娘。」と称される「オリジナル」の
改編者の一人です。まるで泥棒が泥棒の物を泥棒して「すまんかった」と
言っているようで、めまいがします。
(0^〜^)
さらに「書きなおし」は「パロディ」の問題を含みます。
パロディとは何かという議論は百家争鳴状態なので省きますが、
ここでのパロディはパスティッシュ等を含む大きな概念ととらえてください。
書きなおしとパロディは異なります。
異なるからそれぞれ名称がついているのでしょう。
ではどこに違いがあるのでしょうか?
パロディは先行テクストの存在を隠しません。
隠すどころか、おおっぴろげに「こいつを改編してやったぜ」と高らかに
宣言しています(明示されているかどうかは別ですよ?)。
いっぽう、書きなおしは、先行テクストの存在を隠蔽し、
あたかも己が「オリジナル」であると僭称する行為です。
間テクスト性を否定するのであれば、それこそ無人島でやっていればいいことです。
- 736 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/22(土) 23:59
- (0^〜^)
わたしはこの企画にパロディを出しました。
書きなおし企画にパロディを出したのは、
そんな企画など無意味だ(有害でさえある)ということを示すためだったのでしょう
(当時の頭の中のことは覚えていないので、外形的に判断しました)。
パロディの手法としてはどこにでも転がっているようなもので、
それこそなんのオリジリティもありません。
そんなものに「最上位のおもしろさ」などと言われてもね。
(0^〜^)
というわけで、この企画はとんでもないものであったことを、
わたしは声を大にして主張します。
その後も書きなおし企画があったみたいですけど、どんな感じだったんでしょうね。
- 737 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/12/05(月) 15:01
- 久しぶりに美貴様のうんこみたいな能書きが読みたくなりました
- 738 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/12/31(土) 23:51
- この十年、この二十年
(0^〜^)
何故上げるかね。
(0^〜^)
この一年、よっちぃと推理小説しか追っていませんでした。
そのあたりのことをちらほらと。いろいろネタバレ注意。
- 739 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/12/31(土) 23:51
- (0^〜^)
1990年代、綾辻やら法月ら「新本格」と呼ばれる若手によって本格探偵小説が興隆を極めました。例外はいくらでもあるとして、パターンは三つありました。叙述トリック、日常の謎、極端な形式化です。
叙述トリックとは、地の文に読者をだますトリックが仕掛けられたもので、綾辻、折原が得意としました。こんなのばかり読まされると、読者の方でもうんざりしてくるもので、綾辻さんなどはまともに本を書かなくなりました。きっと財産がいっぱいできたんでしょう。それでも、今でもこれを使う人はたくさんいます。似鳥とか。叙述トリックは推理小説だけのテクニックではなく、一般小説でもけっこう見られます。乾さんのとある恋愛小説では、推理小苞は無縁な読者は、今もってそれがトリックがしかけられたことに気づいていないかもしれません。あと、島田雅彦のとある小説もラストがそうなのですが、多くの読者は蓮見の解説読むまでわからないでしょう。
(0^〜^)
日常の謎というのは、恐るべき殺人事件は起こらないものの、日常生活に謎を見出して、そこに潜む悪意を浮き彫りにするものです。わたしは、これが最後まで残るだろうと予測していたのですが、どうも最近違う方向に進んでいるようです。日常の謎では長編のプロットを支えるのは無理ですから、短編を量産するしかありません。粗製乱造です。それを避けるために、作者はちょっと特殊な職業について日常の謎を書くようになりました。本屋、図書館司書、掃除人、Jリーグの道具係、和食器の店員、等々。安直だ。こちらも、推理小説から離れていきそうな人が出てきそうです。
極端な形式化というのは、冒頭に特殊な世界を創り上げておいて、その法則に基づいて事件が起こり、謎が解決される話です。山口雅也のアレは死者が蘇る世界での殺人事件の話、京極夏彦のアレは見えるものが見えなかったり、見えないものが見える世界の話です。最初にちゃんと説明がされているので、その解決に読者は渋々頷くしかありません。やたらと分厚い本になるのが難点で、作者もだいたい出がらしになってしまいます。この系統は、登場人物のキャラクター化と親和性があり、清涼飲料水(?)を経由して舞城や西尾にいたり、ライトノベルとなりました。
- 740 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/12/31(土) 23:52
- (0^〜^)
最後に残ったのは、愚直なまでに端正な探偵小説を目指した人々です。奇をてらわずにいるからこそ、長い間書き続けることができるのでしょう。代表格は有栖川です。あと、青春ものは読者が代替わりして一定の需要があるので、小説家になりたい人にはおすすめです。もちろん作者も代替わりが激しいのですが。
(0^〜^)
娘。小説も、かなり量は減ってきていますが、それでも十年続いているわけですから、愚直な書き手が多いのでしょう。奇をてらった話など、とうに誰かが書いているのだから、そんなものに価値を見出してはいけません。
- 741 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/12/31(土) 23:52
- (0^〜^)
最後に、柏レイソルばんじゃーい。
- 742 名前:みおん 投稿日:2012/01/04(水) 11:06
- 新本格というと人間が書けてないという議論が活発になされていたらしいですね。
日常の謎の特殊職業だけ元ネタがわかんないなぁ。
最近の娘。小説の書き手はバカミスに活路を見出している感じですね。
もちろん愚直な書き手も多いですけど。
- 743 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/09/13(金) 22:40
- 長文書けなくなった
(0^〜^)
・ネットでの二次小説(特にSS)の多くは、 登場人物「会話」 の形式
・娘。小説のように普通の小説形式は少ない(独断)
・娘。小説でも初期は 登場人物「会話」 の形式は少なくなかったが駆逐された
・嘲笑も浴びてた
・紙に印刷して喫茶店で推敲なんてことする人もいた
・(これ聞いて、表面上、苦笑する人いなかった)
・なぜ娘。小説では 登場人物「会話」形式 が絶滅したのか?(してない)
(0^〜^)
・論証は省略して結論のみ
・ネットでの二次小説のオリジナルは、小説(ラノベ含む)、マンガ、アニメが主
・キャラ付けはオリジナルにおいてすでになされている
・読者も作者も了解済み
・よって二次小説ではキャラ付け不要(コード化もすでにされている)
・キャラ付け不要なので、地の文で説明はいらない
・だから会話のみでストーリーを進めることになる
- 744 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/09/13(金) 22:41
- (0^〜^)
・一方、娘。小説のオリジナルは娘。たちであり、キャラ付けはほとんどなされていない
・というか不可能(本人もわかっていない)
・なので作者が一からキャラ付けする必要がある
・そんなの会話だけじゃ無理
・作者と読者の了解は、二次小説を読み進めながら次第に深まる
・いっぱい情報書かないと、了解できない
(0^〜^)
・ここで、ある意味不可解な現象が起こる
- 745 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/09/13(金) 22:41
- (0^〜^)
・アニメ等の二次小説ではキャラ付け不要なので、キャラの面白さでは読者がつかない
・よってストーリー重視となる
・娘。小説では、キャラ付けで読者をつけることが可能
・キャラ付けだけでストーリーがほとんどない話も出てくる
・めんどくさくなって、コード化されたキャラ付けをしやがる奴も出てくる
・ということで、登場人物「会話」形式ではストーリー重視、
・普通小説形式でキャラ付け重視という、通常の印象とは逆転した現象が起こる(ほんとか?)
- 746 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/11/01(金) 22:53
- キャラ付けだけでストーリーがほとんどない話ってどんなのですか?
- 747 名前:名無飼育さん 投稿日:2014/02/09(日) 22:39
- (0^〜^)
具体例出すと差し障りあるのですが、例えばいちゃついて終わるだけの話とかです。
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