ラブスタンダード!
- 1 名前:れご 投稿日:2009/04/12(日) 03:47
- はじめまして。
れご、と申します。
今日は愛理のお誕生日ですね!
ということで愛理主人公の小説を書いてみたいと思います☆
あまり決めてないのでどうなるかわかりませんがお付き合いいただけるとうれしいです。
- 2 名前:[ airi ] 投稿日:2009/04/12(日) 04:24
-
――何でこんなことになってんだ。
サッカー部所属中三男子こと矢野敦士はとても困っていた。
時は、部活終わりの土曜放課後。ここは人気の少ない図書館。
目の前には数学の問題集。
今日が期限に迫った宿題をやっているのだが、問題が頭に入ってこない。
- 3 名前:[-airi-] 投稿日:2009/04/12(日) 04:25
- 矢野は数学が、そう……大得意なのだ。
もう一度言うが、大得意。
むしろ5教科のうち数学しか得意ではない。
まったく難しくない今日の宿題がなぜ頭に入ってこないかというと、すぐ横にいる――
「ねーこのグラフ、なんで3のとこ通るの?」
無邪気な女の子のせいだった。
おいおい顔ちけーよちけえ、と矢野は思うが口には出せない。
隣からながれてくるいい匂いに惑わされないように、矢野は問題をにらんだ。
- 4 名前:[airi] 投稿日:2009/04/12(日) 04:27
- 「この3の分だけ、グラフが上にあがんだよ」
「へー」
「今日も授業でやっただろ」
「……寝てた」
にゃはは、と気の抜けた感じで笑った少女のことを、矢野はにくめなかった。
鈴木愛理。中学三年生。ゴルフ部。数学が苦手。
矢野の持っている情報はこれぐらいだった。
あと、クラスの菅谷と仲がいい。
- 5 名前:[airi] 投稿日:2009/04/12(日) 04:28
- じゃーこれは、と愛理が言う。
「−2になってるから、2つ下がるの?」
「そう」
「ふーん。……よし、書けたー」
愛理が書いたばかりのプリントを、矢野が手に取る。
「一個ずれてる」
「あれ」
- 6 名前:[airi] 投稿日:2009/04/12(日) 04:28
- あわてて直す愛理をなんとなく見てる矢野の、後頭部がはたかれた。
「って!」
矢野が振り向くと、違うクラスで部活が同じの、蔵田がいる。
「なにしてんだよ」
「宿題」
「へー」
にやにやしている蔵田を無視するごとく、矢野はもう解き終わった問題を真剣に眺める。
「明日、部活、裏グランドらしいぞ。なんか使ってんだって」
「わかった」
- 7 名前:[airi] 投稿日:2009/04/12(日) 04:29
- 問題集から顔を上げないまま、そっけない返事を返して蔵田をやり過ごすと、
矢野は後ろを向いて図書室入り口を確認した。
誰かいたりしないかを。
「明日も部活なの?」
「おう」
「大変だね」
「ゴルフ部は?」
「明日は休み」
「そっか」
- 8 名前:[airi] 投稿日:2009/04/12(日) 04:29
- 宿題は完璧に終わったが、矢野は席から動かなかった。
愛理が動こうとしなかったからだ。
矢野はなんとなく外を眺める。
雲が夕焼けで朱くなってきた。
愛理は、あ〜、とよくわからない奇声を発して、机に突っ伏した。
- 9 名前:[airi] 投稿日:2009/04/12(日) 04:30
- 「今年は受験だねー……」
「だな」
「矢野は高校どこ受けるの?」
「葉玉いきたいけどなあ。サッカー強いし」
「へー、いいじゃん」
「でも学力足らない」
「えー矢野勉強できるでしょ」
「俺が得意なのは数学だけだって」
「そうなんだ。でもいいなあ……数学できて。
私いっつも数学わるくて親にがんばれって言われてるんだー……。でも苦手」
愛理はちょっとしょぼんとしている。
- 10 名前:[airi] 投稿日:2009/04/12(日) 04:30
- 「谷川の教え方じゃしゃーねーよ。下手くそだし」
「そうなの?」
「あれじゃあ分かんない」
「私1年ときも、谷川先生だったよ?」
「マジかよ……そりゃきついな」
「ねー、また数学教えてよ」
「え」
「さっき分かりやすかったし」
- 11 名前:[airi] 投稿日:2009/04/12(日) 04:31
- 愛理はキラキラした笑顔を向ける。
「……いいけど」
「やった! じゃーさじゃーさ、メアド交換しよ。分からないとこ聞きたいし」
愛理はピンクでいろいろストラップの付いたケイタイを手にする。
矢野も黒いケイタイをカバンの奥から取り出した。
「じゃ私受信」
「俺送信か、えーっと、どこだ……」
そんなこんなで番号交換となった二人でした。
- 12 名前:れご 投稿日:2009/04/12(日) 04:39
- 今回はここまでです(゚∞゚)
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/12(日) 06:03
- これ男ものだよね
黒板に書いた方がいいと思うよ
- 14 名前:れご 投稿日:2009/04/12(日) 06:43
- よくわからないままスレッドを立ててしまいました!すいません……
移動の申請をしてきました。
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/12(日) 23:09
- さわやかで良い感じじゃないですか
- 16 名前:1-2.airi 投稿日:2009/04/19(日) 21:33
- 愛理は、ケイタイにちゃんと登録されたか、電話帳を確認した。
「よし、はいったー。あ、提出何時だったっけ?」
「たしか6時」
「もうちょっとしかない! 出してくる」
「おう」
- 17 名前:1-2.airi 投稿日:2009/04/19(日) 21:34
- 愛理は荷物をまとめながら、席を立とうとしない矢野を見た。
「矢野まだ帰んないの?」
「あー、ちょっと」
「そっかー。今日ありがとね」
ばいばい、と小さく手を振る愛理を、先に図書室から送り出す矢野だった。
まわりに冷やかされたくなかったからだ。
- 18 名前:1-2.airi 投稿日:2009/04/19(日) 21:34
- 一人だけになった図書室の静かさに浸りながら、
矢野はしばしボーっとする。
そろそろいいか、と立ち上がり、荷物を肩にかける。
ふと外を見た。
校門前に愛理と梨沙子らしき姿が見える。
いつもどおり仲良さげ。
一緒に帰るようだ。
ほほえましく思いながら、矢野も図書室を出た。
- 19 名前:1-2.airi 投稿日:2009/04/19(日) 21:36
- 夕暮れにひっそりとしかけた廊下を歩く矢野は、
玄関下足箱に座り込んでDSをやってる倉田を見つけた。
「あれ」
「ん、おーす」
倉田は一瞬だけ目を矢野に向けて確認すると、
再びゲーム画面に集中する。
- 20 名前:1-2.airi 投稿日:2009/04/19(日) 21:37
- 「帰んねーの?」
「あー、あやの待ってんだよね」
あやのとは、遠藤あやの。倉田の彼女である。
「そっか」
「よし! セーブしてと」
倉田はDSを脇に置いた。
- 21 名前:1-2.airi 投稿日:2009/04/19(日) 21:38
- 「仲良いんじゃねーの、さっき」
「いやただ数学教えてただけだし」
「へーー」
じゃーな、と矢野はそそくさと、
その場を去っていった。
- 22 名前:1-2.airi 投稿日:2009/04/19(日) 21:38
- 一方、倉田。
倉田もそろそろ待ちくたびれてきた。
大きく背を伸ばしながらあくびすると、
あやのがそう急ぐでもなく廊下の向こうからやってきた。
スカート若干短めで、
胸元のボタンもゆるいめ。
なんだか色っぽい。
- 23 名前:1-2.airi 投稿日:2009/04/19(日) 21:39
- ゆる〜り歩くあやのが倉田に気づいた。
「おまたせ〜」
「おっせーよ」
「ごめん、あっちゃんと話してた〜」
「じゃ行くか」
「うん」
- 24 名前:1-2.airi 投稿日:2009/04/19(日) 21:39
- 二人並んで歩き出す。
「あ、あやのさあ」
「ん?」
「B組の鈴木ってわかる? ゴルフ部の女」
「わかるけど、なに〜?」
あやのがちょっと不機嫌な声になった。
- 25 名前:1-2.airi 投稿日:2009/04/19(日) 21:40
- 「いやちげーって、矢野がさ。
さっき仲良くしてたんだよ、鈴木と。だから」
「な〜んだ」
「女子の評判どうかなと思ってさ」
「あ〜、さっき、あっちゃんがね、
あっちゃん、保健委員じゃん。
鈴木さんも保健委員でね。
なんかなくして困ってたとき助けてくれたんだって」
「へえ」
「だからいい子だと思うよ〜」
「そっか」
倉田は少しうれしそう。
- 26 名前:1-2.airi 投稿日:2009/04/19(日) 21:40
- あやのがふと気づいた。
「そういえば、今日親いないんだ」
「マジで! 遊びいくわ」
「え〜、なんで〜」
「いやほら、『君に届け』の続き読みたいしさ」
「ふ〜ん」
「……ほんとに親いないよな?」
- 27 名前:れご 投稿日:2009/04/19(日) 21:42
- 今回はここまでです(゚∞゚)
>>15:名無飼育さん
ありがとうございます(´▽`)
これからも爽やかな感じ出せるようがんばります!
- 28 名前:(side-takigawa)平凡ストーリー 投稿日:2009/04/24(金) 21:33
- 僕は平凡な人間だけど、そんな自分と、自分を取り巻く世界が好きで、
これからも平凡な物語が続けばいいと願っている。
- 29 名前:(side-takigawa)平凡ストーリー 投稿日:2009/04/24(金) 21:33
- ―― 平凡ストーリー ――
- 30 名前:(side-takigawa)平凡ストーリー 投稿日:2009/04/24(金) 21:34
- 滝川透は平凡な人間だった。
背丈は普通、運動も人並み、顔はたまにかわいいと言われることもあるが、あくまでたまに。
唯一できることと言えば勉強くらいのものだったけど、
名門開英館高校に入ってしまえばそれすら平均レベルでしかなかった。
中学生の頃は優秀だったのに、開英館で落ちこぼれて、不良になってしまった人もいる。
でも、滝川はそれにすらならず、あくまで順調で平凡に暮らしていた。
優秀な人材が集まる開英館で授業にしっかりついていけるのは、実はちょっとした自慢だ。
ただ、そういった平凡な自分のことを、滝川は嫌いではない。
できればずっとこのまま、平凡に一生を過ごしたいと思っている。
波風の立たない人生。
それが滝川の望んでいることだった。
- 31 名前:(side-takigawa)平凡ストーリー 投稿日:2009/04/24(金) 21:35
- 「透、新しいやつ買った?」
「え、どれのこと?」
「ほら、DSの」
「ああ、買った買った」
「まじかよ、いいなー」
ゲームはそれなりに好きだけど、のめりこむほどではない。
でも、なんかみんなが話している話題のゲームには、とりあえず一度手をつけてみる。
「あ、俺もそれ買ったよ」
「まじで、じゃあ今度一緒にやろうよ」
「あ、今俺持ってるけど。透は?」
「もちろん持ってきてる」
そういって、鞄からDSを取り出す。
「じゃあマックでもいってやろうぜ」
「いいねー」
- 32 名前:(side-takigawa)平凡ストーリー 投稿日:2009/04/24(金) 21:36
- 透はこういうなんでもない会話が好きだ。
今日も一日平凡に過ぎていくのを感じれるからだ。
そうしてマックでひとしきりゲームをやった後、
透はみんなと別れ、定食屋に向かう。
透の両親は帰るのが遅い。
だからたまにこうやって帰りにご飯を食べてから帰る。
それが許されるくらいには、お金のある家だった。
- 33 名前:(side-takigawa)平凡ストーリー 投稿日:2009/04/24(金) 21:36
- 「いらっしゃいませー!」
元気のいい声が響く。
「あ、透君、いらっしゃい」
「どうも」
人懐っこい笑顔で迎えてくれたのは、看板娘の清水佐紀だ。
ここの店は家族経営でやっていて、愛想のいい佐紀はすこぶる評判がよかった。
なんかこういうアットホームな感じを、透は結構気に入っている。
- 34 名前:(side-takigawa)平凡ストーリー 投稿日:2009/04/24(金) 21:37
- 最初にこの店に来たきっかけは、近所に住んでいる鈴木愛理に連れられてだった。
彼女はほんとにいまどきの女の子っていう感じだったから、
こういう店に連れてこられたときはちょっと驚いた。
多分夕食のない透のことを気遣ってのことなのだろうけど、
足繁く通うようになった今ではそれに感謝している。
「注文決まった?」
「うーん、ミックスフライ定食で」
「またー? 好きだねえ」
佐紀が笑いながら厨房に入っていく。
でもすぐに、ごちそうさま、という声が聞こえて、慌ててレジに向かった。
会計に向かった人は、メガネで不精髭の、よく見るお客さんで、
常連さん、という響きが似合うこの店はやっぱりいいなと思った。
- 35 名前:(side-takigawa)平凡ストーリー 投稿日:2009/04/24(金) 21:37
- ちょうどエビフライに手をつけたとき、隣の席の話声が耳に入った。
中学生くらいだろうか、少年たちが数人でわいわいと話している。
「こいつさー、この間鈴木と仲良くしてたんだぜ」
「え、B組の? まじかよ、かわいいじゃん」
「してねーよ。クラスメートだし普通だって」
「照れんなって」
「照れてねーし」
どうやら、恋愛の話で盛り上がってるらしい。
- 36 名前:(side-takigawa)平凡ストーリー 投稿日:2009/04/24(金) 21:38
- 「鈴木もかわいいけど、菅谷もいいよな」
「なんだよ、お前菅谷派?」
「なんかいいじゃん、お嬢様って感じで」
「でもあの子、ライバル相当多いぜ。バスケ部の山西も狙ってるって聞いた」
「山西!?菅谷と山西がくっついたらまじで美女と野獣じゃん」
「確かに!」
食事をしながらも、意識はついつい彼らの話にいってしまう。
滝川は今まで胸が高鳴るような出会いをしたことがない。
もっと言えば、胸が張り裂けるような別れも経験していない。
滝川はこの16年間誰かと付き合ったことはなかったが、
周りのほとんどもそうだし、それが普通だと思っている。
- 37 名前:(side-takigawa)平凡ストーリー 投稿日:2009/04/24(金) 21:39
- 少年たちが帰る頃にはもう結構な時間になっていて、
滝川はそこで初めて今日見たいドラマがあったことを思い出した。
「ごちそうさまです!」
伝票と代金を置いて店を出る。
その後ろでは、お金の確認を終えた佐紀が、笑顔でひらひらと手を振っていた。
外に出ると、辺りはもう真っ暗だ。
等間隔に続く街灯の光が遥か遠くを照らし、家までの道のりを長く感じさせる。
- 38 名前:(side-takigawa)平凡ストーリー 投稿日:2009/04/24(金) 21:40
- (やばいなー)
ドラマの開始まではあと五分。
前回の衝撃的なラストを考えると、最初の十分が勝負な気がする。
そのドラマを見なければ何がまずくなるというわけではない。
確かに面白いストーリーだとは思ったが、はまるという程でもなかった。
ただ、明日の学校での話題はそのドラマ一色になるのだろうし、
それを考えると見逃すわけにはいかなかった。
時計代わりの携帯を制服のポケットにしまうと、滝川は走り出す。
そして、二つ目の十字路に差し掛かったときだった。
- 39 名前:(side-takigawa)平凡ストーリー 投稿日:2009/04/24(金) 21:40
- 「うわっ!?」
「キャッ!」
強い衝撃を感じて地面に倒れ込む。
幸い頭は打たなかったが、腰をしたたか打った。
「いってーっ……」
何が起こったのか分からないまま、痛みで一瞬目の前が見えなくなる。
白んだ景色が徐々に元に戻ったとき目の前にあったのは、
滝川と同じように尻もちをつく一人の女の子だった。
少女は呆然とした表情のままゆっくりと顔を上げる。
滝川は痛みも忘れ息をのむ。
開英館にはいないような美少女がそこにはいたのだ。
- 40 名前:(side-takigawa)平凡ストーリー 投稿日:2009/04/24(金) 21:41
- 「えっと…」
少女の容貌に気を取られ、滝川は何をしていいのか分からない。
ちょっと間を置いたあと、起こしてあげればいいのだと気付き、
そのためにはまず自分が立たなければいけないとわかった。
「大丈夫ですか?」
いちいちめんどくさい思考のプロセスを踏んで、やっとここまでたどり着く。
「あ、はい。すみません、急いでたから前も確認せずに…」
「いや、こっちこそ物凄い勢いで走ってたから。痛かったでしょ」
「いえ、大丈夫で……あっ!」
少女の鞄からバラバラと荷物がこぼれおちる。
結局二人はまた地面に腰を落とし、慌てて荷物を拾う。
ちょうど街灯の光があまり届かない場所だったから、案外時間がかかった。
- 41 名前:(side-takigawa)平凡ストーリー 投稿日:2009/04/24(金) 21:41
- 「重ね重ねすみません…」
ようやく荷物を拾い終えたころ、少女がまた謝る。
「いや、これくらい…。それより、さっき痛かったでしょ?」
「大丈夫です!私、丈夫なんで」
力こぶを作った少女の鞄から、また荷物が落ちる。
「「あ…」」
二人、また慌てて拾う。
そして、笑い合った。
- 42 名前:(side-takigawa)平凡ストーリー 投稿日:2009/04/24(金) 21:42
- そういえば、と滝川が気付く。
「なんか急いでたんじゃないの?」
「あ、そうでした。でも平気です、くだらないことなんで」
「くだらないこと?」
「ほんとしょうもないことなんで…」
「そっか…」
なんとなく、沈黙。
初対面なんだし、別にこのまま帰ればいいのだけど、
滝川はもう少しこの少女と話したいと思った。
- 43 名前:(side-takigawa)平凡ストーリー 投稿日:2009/04/24(金) 21:42
- 「実は僕も急いでたんだけど…。くだらないことで」
「なんですか?」
「ドラマが見たくて…」
少女がぷっと噴き出す。
「実は、私もです」
「ほんとに?」
滝川も噴き出す。
- 44 名前:(side-takigawa)平凡ストーリー 投稿日:2009/04/24(金) 21:43
- その後は、特に会話が続くでもなく、お互いに「気をつけて」と声を掛け合い別れた。
なんとなく少女の後ろ姿を見送って、滝川も帰路につこうとしたそのとき、
足もとに何か落ちていることに気づいた。
「なんだこれ…手帳?」
中を見るのはちょっとだけ抵抗があったが、
周りに誰もいなかったこともあり、こっそり開く。
生徒手帳だった。
「なんだこれ、はははっ!」
外だというのに、滝川は大声で笑い出す。
- 45 名前:(side-takigawa)平凡ストーリー 投稿日:2009/04/24(金) 21:43
- 曲がり角で少女とぶつかって、彼女が去ったあとには生徒手帳。
なんてありきたりで平凡なドラマなんだろう。
歩き出した滝川は、もうすっかり話題のドラマなんてどうでもよくなってしまっていた。
それでももし間に合ったなら、
さっきのあの子が楽しみにしていたドラマを見てみようと思う。
走ったせいか高鳴る心臓を落ち着けるように、滝川はゆっくりと歩く。
もう一度生徒手帳を見ると、1ページ目で菅谷梨沙子が、にっこりと笑っている。
そこの交番を越えれば、もう家だ。
大分ゆっくりとした歩みだったけど、滝川は多分ドラマの続きを見る。
- 46 名前:(side-takigawa)平凡ストーリー 投稿日:2009/04/24(金) 21:44
- (side-takigawa)平凡ストーリー おわり
- 47 名前:れご 投稿日:2009/04/24(金) 21:47
- 今回はここまでです(゚∞゚)
いきなりサイドストーリーとかいって変な人でてきてすいません。
本編は日曜日あたりに更新します!
- 48 名前:3.airi 投稿日:2009/04/26(日) 22:02
- 一方、倉田と別れ帰宅する矢野。
矢野はチャリ通学である。
自転車置き場からチャリを引っ掴んで、田んぼ道を駆け抜ける。
ここいらの街は、駅から少し離れるとけっこうな田舎なのだ。
- 49 名前:3.airi 投稿日:2009/04/26(日) 22:02
- 家に着くと、自転車をしまいがてら、
車庫の横に飼ってる柴犬の頭を撫でる。
ふとカレーの匂いが、台所から漂ってきた。
腹もいい感じに空いているし、急いで家に入った。
- 50 名前:3.airi 投稿日:2009/04/26(日) 22:02
- 台所をのぞくと、矢野の母がカレーを混ぜ混ぜしている。
「おかえり」
「ただいま」
「すぐ食べる?」
「うん」
矢野はカバンを置いて、どっかり腰掛けた。
「カバン部屋置いといで」
「……へーい」
矢野は素直に従う。母を怒らせると怖いのだ。
- 51 名前:3.airi 投稿日:2009/04/26(日) 22:03
- 階段を上がり部屋のすみにカバンを投げ置くと、ふとケイタイを取り出す。
メールがきてる。
矢野はベッドに仰向けにねっころがり、ケイタイを開く。
愛理からだった。
===========
今日はありがと〜☆宿題
助かっちゃった(^^)また
わかんないとこあったら
おねがいします(>_<)
===========
またいつでもいいよ、的な返事を打ち込んで送信。
- 52 名前:3.airi 投稿日:2009/04/26(日) 22:04
- 下の台所へ行ってカレーを食ってると、玄関からドタドタとうるさい音がした。
母が言う。
「沙織帰ってきたかな」
沙織とは、矢野沙織こと矢野敦士の姉である。
現在高校3年生。
彼氏は、おそらくなし、と敦士は思っている。
- 53 名前:3.airi 投稿日:2009/04/26(日) 22:04
- 「たっだいまー」
と台所に入るなり、沙織のでかい声。
敦士はチラッと沙織を見た。
顔はそんなわるくない。スタイルも。
ただ弟の敦士は知っている。
性格ががさつなのだ。部屋もめっちゃ汚い。
- 54 名前:3.airi 投稿日:2009/04/26(日) 22:05
- そんな弟の内心に気づかない沙織、
「連れてきたよー」
と言うと、入って入って、と後ろの誰かを促す。
(まさかの彼氏か?)と敦士が注目していると、
現れたのは、すらっとした美少女だった。
「はじめまして矢島といいます!」
美少女はその可憐なスタイルを無視するがごとく元気に挨拶した。
(これはねーちゃんと気が合いそうだな)と敦士は思った。
- 55 名前:3.airi 投稿日:2009/04/26(日) 22:06
- 「舞美にさあーうちのカレー美味しいって話したら、
食べたいってことになってね」
「カレー大好物なんで」
舞美はさっそく食う気満々で目を輝かせている。
矢野母もうれしそうだ。
「そうなんだー、どしどし食べてってねー。
舞美ちゃん、中学は泉中?」
「はい」
沙織が口を挟む。
「うちらの代じゃ有名だったんだから、舞美。足速すぎて」
「ははは」
「でも高校で仲良くなったんだよねー」
「ねー」
- 56 名前:3.airi 投稿日:2009/04/26(日) 22:06
- 敦士はちょい早めに食い終わると、そそくさと居間へ移動する。
台所の棚から持ってきた菓子をテーブルに置くと、
テレビをリモコンでつけた。
台所から声が聞こえる。
「弟さん?かわいいね」
「えー、そう? 馬鹿だけどねー」
「ううん、頭もよさそうな」
「ないない、それはない」
テレビのバラエティ音声に混じってくる二人の会話を聞きながら、
(舞美さん、見る目ねーなー)と敦士は思った。
バラエティを見ながら、敦士はうつらうつらしてくる。
今日の練習はなかなかハードだった。
ちょっとだけ、机に伏せて目を閉じた。
- 57 名前:3.airi 投稿日:2009/04/26(日) 22:06
- ふと目覚める。
台所の電気も消えて、気配がない。
敦士はしっかりと眠ってしまったようだ。
時計を見ると、9時を回っていた。
- 58 名前:3.airi 投稿日:2009/04/26(日) 22:07
- 部屋に戻って、ベッドにほかり投げていたケイタイを手に取る。
愛理からメールが来ていた。
===========
ドラマ見てる?ガッキー超
カワイイ〜☆
===========
敦士も新垣結衣は嫌いじゃない、いやむしろ好きだ。
部屋の小さいテレビをつける。そのドラマがやってた。
(ほわーっとした感じが鈴木と似てるな…)と敦士は思った。
- 59 名前:れご 投稿日:2009/04/26(日) 22:13
- 更新しました(゚∞゚)
>>2-11 1.airi
>>16-26 2.airi
>>28-46 (side-takigawa)
>>48-58 3.airi
- 60 名前:(side-ohara)うららかな夕暮れ 投稿日:2009/04/30(木) 00:15
- うららかな春の夕暮れ。
大原は日課としてるドラムの練習も終え、薄めのジャケットを羽織り家を出る。
ただ食事に行くだけだから、特に身なりは整えていない。
黒ぶちメガネに無精髭はいつもの彼のスタイルだ。
しばらく自転車をこいでいると、最寄りの駅が見えてくる。
ラーメン屋とか中華料理屋とかが見えたが、なんとなく気が乗らなくてそのまま通りすぎる。
せっかくだから今日は「はるひ」に行こうと決めた。
- 61 名前:(side-ohara)うららかな夕暮れ 投稿日:2009/04/30(木) 00:15
- 「はるひ」は家族経営の定食屋で、駅の反対側にある。
大原の家からはちょっと距離があるが、漫画や週刊紙が充実していて、結構気に入っている。
中に入ると、いらっしゃい、というマスターの落ち着いた声が大原を迎え入れた。
「ハンバーグ定食で」
「はーい、ハンバーグ定食一丁!!」
でも、それに答える従業員は誰もいず、
それに気づいたマスターは「かしこまりましたー」と自分で厨房に入る。
なんとなく後ろ姿が寂しかったが、大原はいつものことと特に気にはせず、
マガジンを手に席につく。
マスターの後ろ姿よりも、「あひるの空」の続きの方が気になった。
- 62 名前:(side-ohara)うららかな夕暮れ 投稿日:2009/04/30(木) 00:16
- ちょうど食事が終わって、マガジンも読み終えた頃、ジャージ姿の学生が姿を見せる。
とたん、店内は賑やかさに満ち、大原は忌々しげに顔を歪めた。
ちょうどこれから恋愛漫画を読もうとしていたのに、これでは台無しだ。
「おっちゃん、トンカツ定食一つ!」
「あ、もう一つ!」
「しょうが焼きで!」
立て続けに言われテンパるマスターを横に、少年どもはまた騒がしい会話に戻る。
あいつの胸がでかいだとか、コンビニのねーちゃんがかわいいだとか、
どうでもいい内容は、声の大きさゆえに嫌がおうにでも大原の耳に入ってくる。
否、実はすごく興味がある。
あるんだけど、僕はもういい大人だし、胸とか興味ないもんね!とか大原は思う。
- 63 名前:(side-ohara)うららかな夕暮れ 投稿日:2009/04/30(木) 00:18
- 「あれ、敦士?久しぶりー」
店の奥からかわいらしい女の子が出てくる。
中学生とも高校生ともとれるような幼顔だ。
「あ、佐紀さん、お久しぶりっす」
彼らの中で、一番大人びた少年がそれに応じる。
「沙織、元気してる?」
「うざったいくらい元気っすよ。こないだも舞美さんと二人でたんぼに突っ込んだとか言って
自転車ぼろぼろにして帰ってきました」
「相変わらずだねー…。久々に会いたいな」
「あ、どうせあいつ暇なんで、ここに来るように言っときますよ」
「ほんと?ありがとう」
少女はそういうと、にかっとまあるい太陽のような笑顔を見せる。
それから、彼らのもとを去ろうとしたとき、大原と目が合い、再び少年たちを振り返る。
- 64 名前:(side-ohara)うららかな夕暮れ 投稿日:2009/04/30(木) 00:18
- 「そうだ、あんたたちもうちょい静かに話しなさい。家の中まで響いてたよ」
「あ、すんません」
少年の一人が謝り、それにうんうん頷くと、その少年の頭をぽんっと叩く。
「ま、ゆっくりしてって」
そのあと、再度振り返り大原のもとにくる。
「いつもありがとうございます!うるさくってすみません」
「いや、いいっすよ、別に。騒がしいくらいが落ち着くんで」
大原が笑顔で答えると、少女もつられてさっきのまあるい笑顔になる。
- 65 名前:(side-ohara)うららかな夕暮れ 投稿日:2009/04/30(木) 00:19
- 「ゆっくりしてってくださいね」
ぺこりと頭を下げると、カウンターの中に戻っていく。
少年たちの大量の料理を作るのだろう。
大原はもう一度、漫画を読み始める。
うるさいのは変わらずだが、気づけば穏やかな気持ちになっていて、
恋愛漫画はすんなり頭に入ってきた。
店のドアが開き、いらっしゃいませー!という少女の元気な声。
看板娘の背中越しにその声を聞きながら、
こういう風景もこの店を気に入ってる理由の一つなのかもしれない、と大原は思った。
- 66 名前:れご 投稿日:2009/04/30(木) 00:21
- サイド更新しました(゚∞゚)
本編更新は日曜日の予定です!
>>2-11 1.airi
>>16-26 2.airi
>>28-46(side-takigawa)平凡ストーリー
>>48-58 3.airi
>>60-65(side-ohara)うららかな夕暮れ
- 67 名前:4.maimi 投稿日:2009/05/03(日) 21:19
- 矢野家でたらふくカレーをいただいて、家に帰り着いた舞美。
今日は遊び疲れていたのもあって、すぐ寝てしまった。
- 68 名前:4.maimi 投稿日:2009/05/03(日) 21:19
- 舞美の朝は早い。
今朝も、いつもどおりの5時半起床だ。
日課のジョギングのため。
まずはストレッチで体をほぐしたあと、
10キロを一時間のペースで軽く流す。
毎日定刻に走っていると、日の出が早くなるのを実感する。
『一日で3分、太陽が早くなる』
舞美はふと、地学の先生が言ってたことを思い出した。
- 69 名前:4.maimi 投稿日:2009/05/03(日) 21:19
- 家の近くの河畔が、舞美のジョギングコース。
きちんと舗装された広めの道は人気があって、
お年寄り夫婦、お腹の出っ張ったお父さん、
犬の散歩をするマダムとすれ違ったりする。
早朝といえど、人は、町は動き出している。
舞美は、一日を多く使えるような気がして、
いつも、少しうれしいのだ。
- 70 名前:4.maimi 投稿日:2009/05/03(日) 21:20
- 舞美はIpodで曲を聴きながらジョギングする。
中田ヤスタカの音に飽きてきたので、
最近のお気に入りはラスマスフェイバー。
テンポのいい音を耳に流し込みながら、
周りを流れていくいつもどおりの景色に浸りつつ、
舞美は軽快に体を動かす。
- 71 名前:4.maimi 投稿日:2009/05/03(日) 21:20
- 一時間のジョギングののち、5分ほどウォーキング。
家に帰ってきてストレッチをしたあとは、
クールダウンのためシャワーで脚に水を当てる。
怪我の防止も怠らないのだ。
- 72 名前:4.maimi 投稿日:2009/05/03(日) 21:21
- 舞美は伸びやかな脚を丁寧にシャワーで冷やすと、
ささっと拭いて、シャワールームを出た。
人影に気づいて声をかける。
「あれ、おはよ」
「……おはよ」
眠たげな顔で答えたのは、舞美の兄、矢島祐平だった。
「お兄ちゃんテンション低いー」
「舞美が朝から高すぎんだよ……」
「そっかなー」
「また走ってきた?」
「うん」
「ホント元気だなあ」
感心したようにそういうと、舞美の代わりにシャワールームに入る。
「あれ、シャワー使うの」
「眠気覚まし」
- 73 名前:4.maimi 投稿日:2009/05/03(日) 21:21
- 舞美は軽い朝食をとると、出かける支度をはじめた。
今日はバイトなのだ。
高2から始めたコンビニバイト、もう丸1年になる。
自転車に乗り10分ほど駆けて、
舞美は働いてるコンビニに着いた。
- 74 名前:4.maimi 投稿日:2009/05/03(日) 21:22
- ちゃちゃっと着替えてタイムカードを押していると、
男のバイトが現れた。
おはよー、と茶髪をワシャワシャさせながら、若干眠そう。
「あれ、橋村さん今日入ってましたっけ?」
舞美が問いかけた相手、橋村こと橋村智弘は、
フリーのアルバイター、フリーターである。
今風ではあるが中身は朴訥としていて、
そのあたりに舞美は好感を持っている。
- 75 名前:4.maimi 投稿日:2009/05/03(日) 21:22
- 「なっきぃ体調崩したらしくて、俺が代わり」
「そうなんだ」
「俺としてはいっぱい入りたいし、ありがたいけど。
なっきぃ大丈夫かな、インフルとかじゃねーよな」
なっきぃとは4月から入ったバイト、
新高1のぴっちぴち女子高生、中島早貴のことである。
物覚えがよくテキパキ仕事するので、
店長含めみんなに気に入られている。
「あとでメールしてみます」
「うん」
そんなこんなで、舞美のお仕事タイムスタートです。
- 76 名前:れご 投稿日:2009/05/03(日) 21:25
- 更新しました(゚∞゚)
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- 77 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/08/29(土) 23:31
- 舞美がこれからどうなっていくのか楽しみです
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